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バックストリート・ボーイズ【DNA WORLD TOUR】ロサンゼルス公演ライブ・レポート
2019年8月3日、ロサンゼルスで行われたバックストリート・ボーイズのライブ・レポートが到着した。数々のヒット曲を惜しみなくパフォーマンスしながら、最新アルバム『DNA』の全米1位で証明したヴォーカル・グループとして第二の黄金期を迎えていることを証明するような熱狂的なショウとなった。(文・写真:鈴木美穂)
昨年、約5年ぶりのシングル「ドント・ゴー・ブレイキング・マイ・ハート」がアメリカのiTunesチャートで1位を獲得し、今年1月にリリースした最新作『DNA』は18年ぶりに全米アルバム・チャート1位を記録したバックストリート・ボーイズ(以下BSB)。ラスベガスのプラネット・ハリウッド・ホテルでのレジデンシー公演も大成功のうちに終え、5月11日からニュー・アルバムの名前を冠した世界ツアーに乗り出した。ロサンゼルス公演の会場は、BSBにとって4度目となるステープルズ・センター。約18,000人収容のアリーナは、20代から40代の男女で満杯になっていた。
今ツアーのサポートアクトは、ブライアン・リトレルの息子ベイリー・リトレルだ。まだ小さな頃にBSBのロサンゼルス公演でステージに飛び入りしていたベイリーは、バンドを従え素敵なシンガーに成長していた。
9時すぎ、イントロが流れると同時にステージ前に降りていた横長のLEDスクリーンがだんだんと上昇、ステージ背後の巨大なスクリーンがあらわになった。このダブル・スクリーンにメンバーたちの映像が連続で映し出された後、ゆっくりと上がった巨大スクリーンの陰から、横一列に並んだ5人が登場。黒に赤と白のアクセントを入れたカジュアルな衣装で揃えている。
オープニングは「アイ・ワナ・ビー・ウィズ・ユー」。1996年発表のデビュー作『バックストリート・ボーイズ』の収録曲だ。総立ちになった会場は、大歓声を上げて一気に盛り上がりを見せた。「ザ・コール」、「ショウ・ミー・ザ・ミーニング・オブ・ビーイング・ロンリー」、「インコンプリート」、「シェイプ・オブ・マイ・ハート」、「クィット・プレイング・ゲームズ」、「君が僕を愛する限り(アズ・ロング・アズ・ユー・ラヴ・ミー)」等、時代を経ても色褪せないヒット曲の合間に『DNA』からの新曲をしっかり取り込み(計32曲中8曲)、彼らが過去のヒットに頼らずに現在進行形で進化していることを証明するステージになっていたのだが、新曲でも観客の熱が冷めないよう、4曲の新曲は各メンバーがMCをした後にソロで曲を部分的に歌うという工夫がなされていた。まず「ドント・ウォント・ユー・バック」を演った後に、ブライアンがファンに『DNA』を1位にしてくれたことにお礼を述べ、「ノーバディ・エルス」を。次に「ゲット・ダウン」の後に、ハウィーが「これまで僕たちが素晴らしい遺産を作るのを助けてくれてありがとう。これは君たちを含めた全員の遺産だよ。そして僕たちは今、一緒に新しい遺産を作ろうとしてる。これは僕の一番好きな曲なんだ」と語り、「シャトー」を。そしてニックは、「ザ・ウェイ・イット・ワズ」をそれぞれに披露。観客の熱は冷めるどころか盛り上がり続けた。
ケヴィンとAJはソロではなく、2人で余興(10月に日本公演を控えているので詳細は控えておく)を含めたMCをしてから、「パッショネイト」を披露。AJの「取材で俺たちが成功し続けた理由を良く聞かれるんだけど、まず一つ目が音楽、そしてもう一つは、君たちファンのおかげだよ!」というMCには、大歓声が巻き起こった。
「デビュー当時に自分たちの力量を業界の人たちに見せるためにアカペラで歌っていたんだ」とニックが語った後に披露されたアカペラの新曲「ブリーズ」では、上にあったスクリーンがステージまで降りてきて、そのスクリーンの枠の上に5人が並んで歌うという演出。彼らは、唯一無二のハーモニーを響かせた。BSBの最大の武器は、この5人が一緒になることでしか出せない魅惑のハーモニーだが、踊っている時ですら、口パクは一切ない。現代のポップ・シンガーの多くは、どんなに歌唱力がある人でもダンスをする曲ではヴォーカルをバックで流している。それをやらないBSBは真のヴォーカル・グループで、その姿勢はデビュー当時から変わらない。
ニックがソロのMCで「新しい顔がたくさん見えるよ、新しいファンは叫んで!」と言った時、歓声はそれまでの10分の1位になった。意外そうな顔でニックが「26年前からずっとファンだった人!」と叫ぶと、耳をつんざくような大歓声。ここでは8~9割方が、昔からのファンのようだ。そのため後半での1997年発表の「エヴリバディ」に続く1995年のデビュー・シングル「ゴーイン・オン」の流れで、観客の熱狂ぶりはピークに達した。小さな子供の頃に彼らに憧れていた若者たちがいまだに大歓声を上げる(私の前列の女性は、「ブライアン、愛してるー!」と全力で叫んでいた)ほど、5人全員が揃って魅力的で、息の合ったダンスのキレも歌声も、約20年前に記録的な成功を収めた『ミレニアム』ツアーの時と変わりない。逆に当時超現実的で大掛かりな演出と彼らの声をかき消すほどの少女たちの叫び声がなくなった分、BSBの一流のパフォーマンスの凄さがより見えるようになったと思う。それでいて、曲の合間でお互いに話しながら観客を楽しませるショウマンシップは昔通りで、何度も笑わせてくれる瞬間があった。
ショウのラストは、不朽の名曲「アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ」。この夜最大の大合唱を巻き起こし、その後アンコールの1曲目は「ドント・ゴー・ブレイキング・マイ・ハート」。再び会場はヒートアップし、続く「ラージャー・ザン・ライフ」の最後にはステージから花火が打ち上がり、およそ1時間50分の贅沢なショウは幕を閉じた。間違いなく、第二の黄金期に突入したBSB。時代を超越したヒット曲の数々で26年のキャリアを総括しながら、オーディエンスを取り込んで未来を描いてみせた素晴らしいステージだった。
Los Angeles will always be a special place for this band. Thank you for celebrating 26 years with us last night! #bsbla #dnaworldtour pic.twitter.com/3vx3tjQwL3
— Nick Carter (@nickcarter) August 4, 2019
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