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川口レイジ デビューEP『Departure』特集 ~洋楽も邦楽も関係ない、希望に満ちた一枚をレビュー
川口レイジのデビューEP『Departure』が7月24日にリリースされた。詳細は後に譲るが、今回のEPに収録されている楽曲はすべて国内外のトップランナーとの共作である。“新人”のシンガーソングライターである川口が、様々なエッセンスを吸収しつつ、自分のやりたい音楽を共に作り上げる。今回のEPは、今のアーティストがどのようなスタイルで突き進んでいるのか、その一つの回答を示してくれるだろう。
川口レイジというプラットフォーム
“川口レイジ”の名をあなたはもう耳にしたことがあるだろうか?1994年生まれの25歳、新人シンガーソングライターである川口が、2019年7月24日に7曲入りのデビューEP『Departure』をリリースした。EPのリードソングとなる1曲目「Summers Still Burning」、そして先行曲として既にデジタルリリースされている「Like I do」は、ここからの夏本番に向かうシーズンの気分をいやがおうにも掻立てるビートの効いた2曲に仕上がっており、ダンスホールで盛り上がること必至のサマーチューンたちだ。
▲川口レイジ「Like I do」
SKY-HI、Awich、YENTOWN、SALU、ゆるふわギャングといったアーティスト勢のMVを次々と手掛けていることで話題の映像クリエイターSpikey JohnがディレクションしたMVをさっそくチェックしてほしいところだが、川口は既にYoutube再生回数40万回を突破している先行タイトルを持っている。それが、このEPの3曲目にも収録されている「R.O.C.K.M.E. ft.Marty James」(Dave Audé Remix)だ。2018年に配信でリリースされていたこの曲のタイトルを見れば、アメリカのポップソングのシーンを知る人ならばもう気づく人もいるかもしれない。そう、何を隠そう、この曲でフィーチャーされていたマーティー・ジェイムズとは、2017年から全世界的にYouTube上でもはや天文学的ともいえる63億回以上という再生回数を叩き出し、歴代の記録を更新し続けているルイス・フォンシによる「Despacito ft. Daddy Yankee」のソングライターなのだ。今回このEPでは冒頭3曲はいずれもマーティー・ジェイムズと川口レイジによる共作であり、日本人アーティストとしては初の共作が実現したというだけでも話題性は十分なほどだ。
▲ルイス・フォンシ「Despacito ft. Daddy Yankee」
「R.O.C.K.M.E. ft.Marty James (Dave Audé Remix)」のMVでは、日本でのシングルチャートアクションも驚異的な売上を記録しているBTS(防弾少年団)の最新曲「Boy With Luv」などのコレオグラフィー(振付)を手掛けているノルウェーのダンスチームQuick Styleが、こちらも初めて日本人アーティストのミュージックビデオをトータルディレクションしたことで話題に。新人であった川口のわずか1曲のみの先行配信でありながら、40万回という再生回数を既に獲得しているというわけだ。
▲川口レイジ「R.O.C.K.M.E. ft.Marty James (Dave Audé Remix)」
アーティストがある意味でプラットフォームのようになり、さまざまなプロデューサー陣がコーライティングで名を連ねる時代。これまでの日本のポップス界で用いられた“シンガーソングライター”という言葉からあぶり出されるイメージでは到底括り切ることのできない大きなスケール感で、これからのポップソングは制作されていく。
リリース情報
川口レイジ Debut EP『Departure』
- 2019/7/24 RELEASE
- <初回盤生産限定盤(CD+DVD)>
- BVCL-980-1 2,700円(tax out)
- <通常盤(CD)>
- BVCL982 2,200円(tax out)
- [CD]
- 01. Summers Still Burning
- 02. Like I do
- 03. R.O.C.K.M.E. ft.Marty James (Dave Audé Remix)
- 04. falling down
- 05. Flame of Love
- 06. Night Divin’
- 07. two prisoners
- [DVD]
- 01.「R.O.C.K.M.E. ft.Marty James (Dave Audé Remix)」MV
- 02.「Like I do」MV
- 03.「Summers Still Burning」MV
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ネットネイティブ世代の自由さと独自の魅力を両立
高校時代までは剣道や野球などに没頭していたが、16歳の頃に父を亡くし、その時に父の遺品だったギターと出会ったことから音楽に触れるようになり、自身でも動画サイトなどに耳で覚えたカバーを投稿するようになったという川口。もはや日本だろうと他の国だろうとインターネット上にボーダーはほとんど存在しない状況のなか、世界中の音楽を耳で辿り、自分流にインターネットで発信をできるようになった世代の代表格ともいえるのかもしれない。また同時に、たとえばBTSがアジア発のアーティストとしてビルボードチャートで快進撃を遂げ、既に国境など関係無しにその魅力と実力で認められるようになった今、言語の壁やハンデなど、音楽制作や表現に言い訳にはならないことをナチュラルボーンで理解できている世代ともいえるのだろう。まだデビュー前であった2017年に川口は自らL.A.と東京を往来するようになり、マーティー・ジェイムズと知り合ったことで、デビュー作にして超弩級のコラボレーションを実現するに至っている。
▲川口レイジ「Summers Still Burning」
ヨーロッパから始まったラテンミュージックの大流行は未だ世界を席巻し続けているが、スペイン語で歌うラテン・アーティストと同様に、アジアの言語がサウンドの中で活かされ、あらゆる世界的なプロデューサーやアーティストと相互乗り入れをしながら発展していくような未来を願ってもよいのかもしれない、と、川口のデビュー作を聴いているとなんとも明るい気持ちにさせられる。
また本作に「R.O.C.K.M.E. ft.Marty James」のリミックスも既に手掛けたL.A.拠点のグラミーノミネート日本人プロデューサーstarRoとの共作曲であるバラード「two prisoners」が収録されているのも興味深い。川口自身が「ボーダレスなたくさんの出会いをくれる音楽の楽しさを日々感じている」とコメントしているように、日本人アーティスト同士の出会いももはや国内ではなかったりするだろうし、自身の感覚を何ものに縛られることなく活動できる状況を作り出すことが、今の時代のアーティストが第一に成すべきことかもしれない。
ちなみに、川口レイジ自身はフェイバリットアーティストとして、カミラ・カベロやブルーノ・マーズと並んで玉置浩二の名も挙げている。そんなところに、ネットネイティブ世代の自由さが感じられるような気がするのは私だけだろうか?いつの時代に流行したものであるかに必要以上にとらわれることはなく、いいものはいいと言える世代ならではのセンスで、ここから未来へと踏み出す決意。そういった“Departure=出発”の希望に満ちた一枚となっている。
そして、彼がインスタグラムで時折投稿しているお気に入り曲のカバーも是非チェックしてみていただきたい。というのも、ここまでさまざまにコラボレーションの豪華さやそこに込める期待について触れてきたが、そもそもは川口レイジが持つ歌の力があってこそ、すべては成り立っているものでもあるはずだからだ。シンガーとしてのプリミティブな部分での輝きをベースに持ちながら、自由に世界レベルでスタートラインをきった川口に期待したい。
リリース情報
川口レイジ Debut EP『Departure』
- 2019/7/24 RELEASE
- <初回盤生産限定盤(CD+DVD)>
- BVCL-980-1 2,700円(tax out)
- <通常盤(CD)>
- BVCL982 2,200円(tax out)
- [CD]
- 01. Summers Still Burning
- 02. Like I do
- 03. R.O.C.K.M.E. ft.Marty James (Dave Audé Remix)
- 04. falling down
- 05. Flame of Love
- 06. Night Divin’
- 07. two prisoners
- [DVD]
- 01.「R.O.C.K.M.E. ft.Marty James (Dave Audé Remix)」MV
- 02.「Like I do」MV
- 03.「Summers Still Burning」MV
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