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“自分探し”がメイントピックに~2019年度上半期JAPAN HOT 100の歌詞を解析

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 歌詞サービス『プチリリ』を運営する株式会社シンクパワーと、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)が共同開発した歌詞探索ツール、「Lyric Jumper」を用いて、複合ソング・チャート、JAPAN HOT 100の上位200曲の“歌詞トピック”を解析した。

 “歌詞トピック”とは、産総研が研究開発した解析技術(※)を用いて、シンクパワーが保有する膨大な歌詞データを自動解析し、各歌詞に出てくる単語の出現の仕方から、その歌詞に最も適切だと自動的に決定されるトピックのこと。「Lyric Jumper」では“青春”、“夢と未来”といったような、20個のトピックのいずれかが割り当てられる。

 「Lyric Jumper(https://lyric-jumper.petitlyrics.com/)」のサイトにて、アーティスト検索ウィンドウで検索すると、該当アーティストの上位5トピックの構成比を示すドーナツグラフやトピック構成が似ている「類似アーティスト」が表示され、「フレーズ」や楽曲名などをクリックするとより詳細を確認することができる。

 例えば、今年度上半期に注目された3アーティスト、あいみょん、米津玄師、星野源で検索すると以下の画面が表示され、それぞれのトピック構成が全く異なり、その構成がアーティスト個々が持つイメージと近似していることから、意識的、無意識的に関わらず、楽曲と同時に歌詞も聴いていることが分かる。

 本特集では、今年度上半期JAPAN HOT 100の上位200曲のトピックをそれぞれ解析し、トピックごとの8指標のポイントをそれぞれ合算、総合ポイントでそれらのトピックをランキング化した。

順位 占有率 トピック名 出現率が高い
単語の例
該当楽曲例
1 22.7% 自分探し 自分、みんな、希望、不安 「黒い羊」欅坂46、
「白日」King Gnu
2 21.7% ラブソング 愛、好き、気持ち、想い 「マリーゴールド」あいみょん、
「U.S.A.」DA PUMP
3 14.8% 大人の恋愛(女性編) 私、あなた、涙、約束 「Lemon」米津玄師、
「プロローグ」Uru
4 12.5% 大人の恋愛(男性編) 僕、君、嘘、約束 「HAPPY BIRTHDAY」back number、
「キュン」日向坂46
5 6.4% 青春 僕ら、夢、風、恋 「打上花火」DAOKO×米津玄師、
「クリスマスソング」back number
6 5.7% 自由気まま 元気、最高、気分、幸せ 「今夜このまま」あいみょん、
「トリセツ」西野カナ
7 2.7% 一途な恋 大好き、大切、一番、奇跡 「ハッピーエンド」back number、
「シンデレラガール」King & Prince
8 2.3% ノスタルジー 空、海、大地、胸 「パプリカ」Foorin、
「小さな恋のうた」MONGOL800
9 2.2% 夢と未来 夢、明日、未来、笑顔 「Yes we are」三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、
「THE GIFT」平井大
10 2.0% 永遠の愛 愛、永遠、願い、記憶 「I beg you」Aimer(エメ)、
「Rain」亀梨和也
11 1.9% イケイケ マジ、ビート、ハイ、リズム 「桜」DA PUMP、
「THROW YA FIST」THE RAMPAGE from EXILE TRIBE
12 1.9% センチメンタル 心、思い出、風、いつか 「アイデア」星野源、
「orion」米津玄師
13 1.4% 光と影 闇、光、罪、神 「Over "Quartzer」Shuta Sueyoshi feat.ISSA、
「BLUE SAPPHIRE」HIROOMI TOSAKA
14 1.1% 浮世離れ 人間、宴、浮世、常世 「新宝島」サカナクション、
「丸の内サディスティック」椎名林檎
15 0.4% 硬派 俺、おまえ、道、時代 「Get Wild」TM NETWORK
16 0.3% 戦うヒーロー 正義、勇気、平和、パワー 「逃走迷走メビウスループ」松浦果南(諏訪ななか),黒澤ダイヤ(小宮有紗),小原鞠莉(鈴木愛奈)
17 0.0% コトバ遊び キューン、キッス、ルンバ、チョコ 該当楽曲無し
17 0.0% みんなでうたおう みんな、いっしょ、げんき、友だち 該当楽曲無し
17 0.0% 人生 男、女、酒、故郷 該当楽曲無し
17 0.0% 混沌(カオス) 解放、無敵、マッハ、ステップ 該当楽曲無し

“自分探し”が首位に。“大人の恋愛(男女合算)”が“ラブソング”を上回る

 「自分」「みんな」「希望」「不安」などの単語出現率が高い“自分探し”が合計ポイントの占有率が22.7%で歌詞トピックランキングで首位となった。「黒い羊」「白日」以外には、三浦大知「Blizzard」やキンプリ「君を待ってる」、WANIMA「アゲイン」などなど、39曲が該当。アイドル、バンド、ソロ、男女の別を超えてアピールする歌詞のメイントピックとなっていることが分かる。

 また、「私」「あなた」「涙」「約束」の出現率が高い“大人の恋愛(女性編)”は14.8%で、「僕」「君」「嘘」「約束」の“大人の恋愛(男性編)”は12.5%となり、合算すると27.3%になる。これは、シンプルな「愛」「好き」「気持ち」「想い」の“ラブソング”の21.7%を上回る。この3トピックと、“一途な恋”、“永遠の愛”も加えた恋愛トピックソングは53.7%と、5割を超える楽曲が恋愛をテーマとしている。

 “自分探し”と“恋愛”、相矛盾し、表裏一体ともいえるこのテーマがヒット曲トピックの大半を占めており、このことは「分断」と「絆」が喧伝される今日の世相と近似している。『歌は世につれ~』と、昔から言われていたように、今日でも世相が歌詞トピックのトレンドを形作っていることがよく分かる結果だ。

 続いて、8種類のデータを掛け合わせた総合ソング・チャートJAPAN HOT 100ならではといえる、指標ごとのランキングを用いて、より詳しく検証してみよう。

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順位 トピック名 R CD DL ST LU TW MV K Twitter回数 動画再生回数
1 自分探し 1 1 2 3 2 1 1 4 2,604,226 284,949,648
2 ラブソング 2 2 3 1 1 4 3 2 1,212,652 151,749,072
3 大人の恋愛
(女性編)
3 4 1 2 6 2 5 1 2,007,604 109,210,492
4 大人の恋愛
(男性編)
4 3 4 4 4 3 2 5 1,467,477 207,970,867
5 青春 5 8 5 6 5 12 4 3 106,210 109,672,295
6 自由気まま 6 7 7 5 3 5 9 8 366,986 22,056,243
7 一途な恋 12 13 13 8 7 8 6 6 188,880 43,984,795
8 ノスタルジー 10 12 6 14 8 9 13 7 144,778 8,640,177
9 夢と未来 8 6 10 12 13 6 10 13 347,933 15,234,694
10 永遠の愛 11 5 9 13 15 7 8 9 236,219 25,175,074
11 イケイケ 7 10 12 10 9 11 7 14 117,652 28,152,553
12 センチメンタル 9 14 8 7 10 14 11 11 57,182 14,124,091
13 光と影 15 9 11 11 12 10 12 15 143,482 12,684,273
14 浮世離れ 14 - 15 9 11 15 14 10 2,293 5,902,365
15 硬派 13 - 14 15 14 - 15 12 0 2,361,057
16 戦うヒーロー - 11 16 - - 13 16 - 104,669 518,581
17 コトバ遊び - - - - - - - - - -
17 みんなでうたおう - - - - - - - - - -
17 人生 - - - - - - - - - -
17 混沌(カオス) - - - - - - - - - -

※略称について:R(ラジオ)、CD(シングル)、DL(ダウンロード)、ST(ストリーミング)、LU(ルックアップ=PCでのCD読取数))、TW(Twitter)、MV(動画再生)、K(カラオケ)となります。

 “自分探し”から“ラブソング”へ

 いつものJAPAN HOT 100的にいうならば、“自分探し”が4冠を獲得して総合首位、で落着となるが、ここで注目したいのは、CD(シングル)指標の1位で、DL(ダウンロード)やST(ストリーミング)では1位を逃している点だ。つまり、デジタル領域、特にストリーミングからヒットが生まれる傾向が顕著となった昨今、既に“自分探し”は古いトピックとなり、トレンドはストリーミング1位の“ラブソング”に移りつつあることが推測できる。レンタルマーケットを反映するLU(ルックアップ=PCでのCD読取数)は長期的にはCD購入者層よりも若い年齢層の動向を示していて、そこでも“ラブソング”が“自分探し”を上回っていることもトレンドの移行が既に始まっていることが分かる。「自分」「みんな」「希望」「不安」から、「愛」「好き」「気持ち」「想い」への移行が起きているのは、世相の反映、という観点から、実に興味深い事象だ。

 今年度より取り入れたK(カラオケ)指標でも興味深い総合順位との逆転が起きている。“大人の恋愛(女性編)”が1位、続いて“ラブソング”が2位、3位は“青春”で、“自分探し”は4位、“大人の恋愛(男性)”が5位だ。“女性編”の「私」「あなた」「涙」「約束」のほうが、“男性編”の「僕」「君」「嘘」「約束」を大きく上回ること、“青春”の「僕ら」「夢」「風」「恋」が“自分探し”を上回ること、これらはカラオケの特性を明確に示している。

 もうひとつ、興味深いのは、R(ラジオ)指標が6位まで総合順位と変わらない点だ。前段で述べた通り、最大公約数としてのトピックは“自分探し”と“恋愛”に収束していて、それを裏付ける事象であるともいえるし、また同時に、パーソナリティとリスナーの1対1のメディアであるラジオの今年度上半期におけるトピックが“自分探し”だった、ということは、実に今日的な結果といえるだろう。

 楽曲は「歌詞」「メロディー」「ハーモニー」「リズム」「構成」から成り立っている。なかでも、日本語や英語が混在する日本特有の形式となった「歌詞」は、邦楽曲のオリジナリティという点において重要な役割を果たしている。ビルボードジャパンでは、今後もジャパンチャートデータと歌詞との関連について考察を進め、当サイトで公表していく。

 

※歌詞トピック解析技術について

産業技術総合研究所(佃 洸摂 研究員、後藤 真孝 首席研究員)が研究開発した「歌詞トピック解析技術」は、膨大な歌詞データを与えるだけで、アーティスト、歌詞、単語という3階層の構造を考慮しながら、歌詞でのさまざまな単語の出現の仕方を解析し、各歌詞のトピックを自動的に決定することができる。 この技術は、膨大な歌詞データ全体の単語の出現傾向を考慮しながら、その傾向の差異が端的に表現されるように事前に決めた個数のトピック群を自動的に生成し、各曲の歌詞のトピックとして、その中のどれが適切かを自動的に決定する。(Lyric Jumperでは20個のトピックを生成) これにより、人手では対応できない膨大な歌詞にトピックを付与して利用することが可能となる。

 


Lyric Jumper(リリックジャンパー)

「Lyric Jumper」は、歌詞サービス『プチリリ』を運営する株式会社シンクパワーと、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が共同開発した歌詞探索ツール。アーティストの持ち歌の歌詞の傾向を歌詞トピック解析技術によって自動解析して、20個のトピックの比率として可視化できる。また、歌詞の傾向が似ている他のアーティストが「類似アーティスト」として表示されるため、ユーザはこれまでの歌詞検索方法とは違うアプローチによって、さまざまな歌詞との出会いを楽しむことができる。
https://lyric-jumper.petitlyrics.com

 


 


株式会社シンクパワー

歌詞サービス『プチリリ』を運営するシンクパワーは、邦楽・洋楽あわせて270万曲以上の歌詞データを保有している歌詞データカンパニー。歌詞アプリ、Webサイトの運営や提携サービスへの歌詞提供のみでなく、AIスピーカーをはじめとするIoT機器など新たなデバイス向けの提供、「歌詞先読み機能」など音声サービスにも積極的に歌詞サービスを広げている。また、歌詞の傾向を可視化できる『Lyric Jumper』をAPIとして、音楽配信サービスのプレイリスト作成やトレンドの分析など、制作・マーケティングに活用いただけるようなツールを提供できるよう進めている。
https://www.syncpower.jp/

 


 

2019プチリリ上半期ランキング

自社アプリと、プチリリの歌詞データベースを提供している音楽サービスを含めた、「音楽再生とともに歌詞が表示された数」を集計期間内に合算・集計したランキング。定額制聴き放題サービスを含めたさまざまな音楽サービスでの歌詞表示結果が反映されているため、楽曲の売上ランキングとは異なり、ユーザーが歌詞とともに深く音楽を聴きこんでいる曲を知ることができる、他にはないランキングとなっている。
https://petitlyrics.com/contents/2019firsthalf_ranking.html

 

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