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【FUJI ROCK FESTIVAL '19】ライブ&フォト・レポート

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 新潟県・苗場スキー場にて2019年7月26日~28日にかけて開催された国内最大級の野外音楽フェスティヴァル【FUJI ROCK FESTIVAL】。今年は、ザ・ケミカル・ブラザーズ、シーア、ザ・キュアーをヘッドライナーに迎え、来場した13万人(前夜祭を含む)の音楽ファンを熱狂させた。

 台風の影響による大雨で、2日には<GREEN STAGE>~<WHITE STAGE>間の道が浸水し、一時封鎖されるという前代未聞のハプニングも起こったが、出演発表時から話題をさらったRED HOT CHILLI PIPERSから、怒涛のセットで最終日を締めくくった石野卓球まで、国内外のアーティストたちが個性豊かなパフォーマンスを繰り広げた。ここでは、編集部&FM802のDJによる当日の白熱のライブ&フォト・レポートでフェスの模様を振り返りたい。

RED HOT CHILLI PIPERS
11:00~ @ GREEN STAGE



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LUCKY TAPES
11:40~ @ WHITE STAGE



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思い出野郎Aチーム
12:30~ @ FIELD OF HEAVEN



 あぁ、今年もフジに来れたんだ…!

 そう何度も実感した“ベースボールシャツのおじさん8人組”ソウルバンド、思い出野郎Aチームのステージは、フロントマン高橋が「ダサい掛け声!」と煽る「キープオンムービン!キープオンダンシン!」のコールでスタート。7年前にルーキーの出演を勝ち取った1曲「グダグダパーティー」だ。途中、“苗場の夜は君と”に歌詞を歌い替えると、すでにご機嫌なヘブンは一気に最高潮!そのまま抜群のグルーヴに乗せ、「Magic Number」を今夜苗場で聴けたら/森の中で一日中ライブを見ている「アホな友達」…と、この日限りの歌詞が次々飛び出し歓声が上がる。その度に苗場にいる喜びを噛み締めた。“売れないバンドマンの彼氏”を歌う「週末はソウルバンド」では「久々にデートかと思えば苗場でフジロックに来ているし、家賃を滞納しているのに三日間通し券は買えるのね」とアレンジ。うまい!を通り越しなぜか感動。

 彼らの歌からは、誰もが持つ“日常”みたいなモノを すぐそこに感じる。

 働いたり学校に行ったり、みんなそれぞれの毎日を越えて苗場に居て、この瞬間があるから、たまに歌って、楽しく暮らせる。そんな事を考えながら、きっと次のダンスにも間に合うのだ!と思えた。(Text: カワシマリサ)

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ANNE-MARIE
12:50~ @ GREEN STAGE

 「コンニチワ!フジロック!」とピンクのチュチュ風ワンピ姿で元気にステージに登場し、思わず体が動き出すダンスホール・ナンバー「Ciao Adios」、バウンシーな「Do It Right」など、アッパーなチューンに合わせ、ステージを縦横無尽しながら観客を煽っていくアン・マリー。

 エド・シーラン、ショーン・メンデス、ルディメンタルらが自分にとっての“完璧”を語る動画がスクリーンで流された「Perfect to Me」では、「完璧じゃなくても大丈夫、それが私にとっての完璧だから」という心を打つメッセージをメロウに歌い上げ、エモーショナルなギターのメロディにのせて元恋人との思い出を歌う「Then」では伸びやかな美声を披露。異国ながらも、観客と積極的にコミュニケーションをとる姿も好感度大で、「Trigger」の歌詞と振り付けを熱心に教える一幕で、途中脇の匂いを「ちょっと臭いかな?」と嗅ぐ、等身大なユーモアのセンスにも笑いが起こる。

 ラストは、クリーン・バンディットとの大ヒット・ナンバー「Rockabye」、ノスタルジックな「2002」、そしてマシュメロとタッグを組んだ「FRIENDS」の人気曲3連発で、快晴の<GREEN STAGE>を多幸感で包み込んだ。

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SABRINA CLAUDIO
14:00~ @ RED MARQUEE



 中毒性抜群な楽曲と等身大のキャラで<GREEN STAGE>を沸かせたアン・マリーと対照的に、今回が初来日となるサブリナ・クラウディオはとろけてしまいそうな官能的な歌声と華やかなオーラで、じわじわと<RED MARQUEE>を異次元へトリップさせてくれた。

 バンド・メンバーによる余興(?)も去ることながら、ライトブルーのレースのセットアップを纏ったサブリナがオン・ステージするとフロアが揺れるほどのどよめきが起こる。序盤は「I’m wanting you~」の印象的なリフレインと丹念なピアノのタッチにスモーキーな歌声が映える 「Stand Still」、「見せてあげる、どう感じるべきか」と挑戦的なヴォーカルとロックなドラムがドラマチックに絡み合う「Orion's Belt」を立て続けに投下。すると「ジャパーン、あなたたちのエネルギーを感じたいの。これが私にとって初めての来日。今日ここに来ることができて圧倒されている。初めまして」と、凛とした印象からは想像できない、ややたどたどしいMCに彼女がまだ22歳であることに気づかさせられる。というのもハーフアップの髪を揺らし、演奏に合わせて妖艶にポーズを決めながら観客に訴えかける姿は、敏腕プレイヤーたちによる強力なバンド・サウンドに引けを取らない貫禄と自信に溢れているからだ。

 来るニュー・アルバムからの新曲「Holding The Gun」や「As Long As You’re Asleep」もアーティストとしてのポテンシャルの高さを予感させる内容で、圧倒的な表現力を持つヴォーカルとバンドの緩急をつけた演奏で魅せた「Take One To The Head」から「I Belong To You」で観客のヴォルテージは絶頂に。類稀なる才能とスター性を遺憾なく発揮した彼女をさらに大きな舞台で拝む日はそう遠くないだろうという期待に胸弾むステージだった。

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KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD
14:50~ @ WHITE STAGE



 今月発売される15作目(!)のアルバム『Infest The Rats' Nest』のアートワークが回転する映像をバックに、ツイン・ドラムのマイケル(右)とエリック(左)がトライバルなビートを完璧なユニゾンで叩き出すと、メタリカTで決めたフロントマンのスチュ率いるバンドがオン・ステージ。

 新作がヘヴィ・メタルに焦点を当てた作品ということもあり、冒頭の「Self-Immolate」、「Organ Farmer」では、人力グルーヴと速弾きフレーズが苗場の静けさを切り裂いていく。変拍子的なリズムから始まる10分強の「Crumbling Castle」は、サイケ、プログレ、パンク、ファンクなど、これまで彼らの作品を血肉化した大傑作。繰り返されるキャッチーなリフに合わせて揺れる観客は、軽いトランス状態に入りそうな勢いだ。セットの半分が新作からの楽曲で、もっと過去曲も聴きたかった感も否めないが、 そんな中「Robot Stop」~「Gamma Knife」~「The Lord of Lightning」の怒涛の3本立てには観客のテンションも爆上がりで、ステージ左手で、キーボード、マラカス、コーラスなどマルチに演奏するアンブローズによる渾身のハーモニカ・プレイとスチュのヴォーカルとの絡み合いは見事としか言えなかった。

 常に前を見据え、ハイペースで作品をリリースしまくる彼らの現在のモードが十分に堪能できる、濃厚なパフォーマンスにアドレナリン放出しっぱなしだった。

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OAU
15:40~ @ FIELD OF HEAVEN



 直前の雨も止み始め、<FIELD OF HEAVEN>はスタート前から既に多くの人で溢れかえっていた。まずは「Banana Split」からスタートするステージ。繰り出されるアッパーなリズムセッション、そこにヴァイオリンとギターが重なり、「Making Time」へ。伸びやかなMARTINの歌声が高らかに響き、更に広がる壮大な音世界。「最高じゃん」という言葉のあと「こんにちはソウル・フラワー・ユニオンです」とボケながらMCを始めるTOSHI-LOW。

 「まるで夢のような光景」と話しながら、「夢の跡」へ。叙情的なメロディが、郷愁を誘う歌声が、夏の苗場に溶けていく。中盤ではELLEGARDENの細美武士が登場し、会場からはより一層大きな歓声が沸き起こる。細美は「ここのステージが好きで、ずっと出たかったから嬉しい」と笑顔を見せた後、「Where have you gone」を一緒に歌った。

 9月に発売となるアルバムの曲を織り交ぜながら、ラストの曲は「始まったばかりなのに帰りの歌です」と「帰り道」。切なさを帯びたメロディを聴きながら、心に刻んだ光景は様々なれど、誰もが大切な人を脳裏に想い描いたに違いない。

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JANELLE MONAE
16:50~ @ GREEN STAGE



 初来日で初フジロックとなったジャネール・モネイのライブは、昨年リリースされたアルバムの表題曲「Dirty Computer」でスタート。キレキレに動く身体から放たれる歌声と、コロコロかわる豊かな表情に観客はあっと言う間に魅了されていく。

 鮮やかな色彩で照らされる中、彼女はシンガー、ラッパー、ダンサーと変幻自在に表現者としての姿を変える。<パンセクシュアル(全性愛)>であると告白した彼女はこのステージで人間自体を愛することを宣言していた。爆音のバンドサウンドを武器に「Q.U.E.E.N.」「Electric Lady」「PrimeTime」「Pynk」といった楽曲の力強いメッセージをあらゆる手段を用いて観客に届けているのだ。

 終盤の「Cold War」での美しいアカペラ・パフォーマンスに、「Tightrope」で締めくくるキメの応酬は新時代のソウル・クイーンそのものの姿だ。彼女は更新される時代性と歴史の上に成り立つグルーヴを内包して突き進むのだ。

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TORO Y MOI
17:50~ @ RED MARQUEE



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ELLEGARDEN
18:50~ @ GREEN STAGE



 昨年10年ぶりに再始動を発表したELLEGARDEN。その後に実施したライブツアーでは、当然チケット難民と呼ばれる可哀想なファンが全国各地に多発。もちろん私もその1人。そして、2019年フジロックの初日。物販はオフィシャルとは別に専用エリアが設けられ、凄まじい人数がグッズを求めて並んでいた。それだけ必要とされていたのだ、ELLEGARDENというバンドは。

 ELLEGARDENとして11年ぶりとなるフジロックは「Fire Cracker」でスタート。序盤から咆哮のような歓声の中、狂乱の盛り上がりを見せる。続く「Space Sonic」で更に観客はヒートアップ。と思いきや、一瞬、熱気が引いた。あれは数万人が目の前で繰り広げられるライブが現実であると再認識していた瞬間だったと思う。「は?ステージにエルレがライブしてんだけど?まじで?」と。そして、我に帰ったファンたちは改めてヒートアップ。「Supernova」「金星」「ジターバグ」「Salamander」など名曲の数々が披露され、待ちわびていた時間を噛みしめながら熱狂の渦は広がっていった。

 大歓声が鳴り止んだ後からに会場から聞こえてきのは「生きててよかった・・・」というファンの声。何があったか知らんけど、本当だね。2019年にフジロックで「Make A Wish」シンガロングする世界線があるなんて思いもしなかったよ。

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MITSKI
20:00~ @ RED MARQUEE



 今年2月に2年ぶりのジャパン・ツアーを大盛況に納めたMitski。フジロック初出演はファン歓喜の再来日であったが、9月にNYで開催となるイベント出演を最後にしばらくライブ活動を行わないという発表があったばかり。次に彼女のステージを観ることができるのはいつか…そういった想いからか<RED MARQUEE>は人の多さでステージ上が見えないほどであった。

 SEが流れスクリーンに映し出された「MITSKI」という大きな文字。バック・バンドの登場に続いてMitskiが現れ、演奏が始まった。まずは「Goodbye, My Danish Sweetheart」緩急の強いメロディーに胸が高鳴っていく。「テント住まいの方、お疲れ様です」と淡々としたMCが笑いを誘い、空気がほぐれたかと思うと、ステージ中央に設置されたテーブルと椅子を前にセクシー・ポーズを構え「Francis Forever」へ。美しいメロディーと憂いをまとったMitskiの歌声にセンチメンタルで押しつぶされそうになった。

 ダンサブルなビートが特徴的な「Dan The Dancer」では、テーブルの上に寝そべったり、足を持ち上げ漕ぐように動かしたりしながら、美しい歌声を響かせるMitski。なんとも不思議な光景だが、コケティッシュなそのパフォーマンスに虜になっていった。そして「Your Best American Girl」では呑みこまれるように聴き入ってるオーディエンスの様子も印象的だった。Mitskiの音楽からは、わからないものをわからないままに愛する寛容さとそれに伴う葛藤を同時に感じる。〝胸がはちきれそう〟なほど苦しく美しい、孤高のシンガー・ソングライターとの濃密な時間だった。(Text: FM802 DJ板東さえか)

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TYCHO
20:00~ @ WHITE STAGE



 夜の帳が降りた<WHITE STAGE>に降り立ったのはTYCHO。最新作『Weather』を直前に発表、キャリア史上初となるボーカルと歌詞を本格的に導入し、更なる世界観の広がりを見せたことは記憶に新しく、今回の来日を待ちわびていた人も多いだろう。

 『Weather』からのナンバーは勿論、新旧様々の曲を織り交ぜて展開されるその音世界は、息をのむほど美しい。ノスタルジックなエレクトロ・サウンドが、夜の苗場を鮮やかに彩っていく。中盤ではヴォーカルにセイント・シナーが登場。透明で澄んだ歌声、浮遊感のあるサウンドスケープが絡まり合い、残響までもが景色を描く。ロック、ポップ、エレクトロ、アンビエント、シューゲイザーなど、様々な要素を包括しながら、ドリーミーでキャッチ―な音世界。スクリーンに投影された映像も、その世界を更に増幅させるような美しい描写が印象的で、ヴィジュアル面でも活躍するスコット・ハンセンの才能を垣間見た。

 メンバーがステージを去り、残響が消えても鳴り止まない拍手。TYCHO新章の始まりを告げた、素晴らしいステージだった。

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THE CHEMICAL BROTHERS
21:00~ @ GREEN STAGE



 午前中とは打って変わり午後からは雨が降ったり止んだりの苗場。初日のヘッドライナーでもあるケミカル・ブラザーズを控えた<GREEN STAGE>は雨も上がり、大勢の観客がフジロック8年ぶりとなる彼らの登場を待ちわびていた。

 定刻になり、馴染みのSEから大歓声に迎えられながらエドとトムが定位置に着き、1曲目に選んだ曲は「GO」。直前のツイートで最新セットでのショーを公言していた彼ら。期待通り頭から一瞬にして<GREEN STAGE>をダンスフロアに変貌させると「Free Yourself」「CHEMICAL BEATS」と、最新アルバムの楽曲や往年のヒット曲を絶妙にMixしつつ、満員の観客をケミカルワールドに引き込んで行く。ビジュアルも大型LEDモニターの特性を生かし、映像に合わせ裏側からレーザーを照射したり、ミラーボールを利用したライティング、紙吹雪、シャボン玉など思わずニヤリとする演出も随所にみられた。 ショーは大ヒット曲「Star Guitar」や「HEY BOY HEY GIRL」で中盤に突入。

 いつ聴いても多幸感溢れるヒット曲の連続に、皆一同に両手を上げ、「Hear We Go !!」とシンガロングし踊り狂う。やっぱり苗場で観るケミカルは別格だと確信した。そして、日本人で初めてとなるゆるふわのNENEがフィーチャーされた曲「Eve Of Destruction」を経て、大地を揺るがす低音と映像とリンクしたバルーンがフロアに解き放たれ「SATURATE」で中盤のピークを迎えた。 少しのブレイクの後、「Escape Velocity」から終盤へ差し掛かり、ケミカルらしい爆音と重低音をフロアの隅々まで響かせ、キャッチャーな映像と共に徐々にとBPMを上げたかと思えば、超エモーショナルな「Wide Open」で感傷的な色に染める。

 そしていよいよラストパートへ。巨大な2機のロボット共に「Galvanize」のフレーズでフロアは再び大歓声に包まれ、「Leave Home」、「Block Rockin’ Beats」で最高潮に。最後はケミカルの代名詞とも言えるノイジーで戦闘的な爆音を苗場の山々に響かせ、「HOLD TIGHT FUJI ROCK」のメッセージと共に初日の<GREEN STAGE>を締めくくった。


来日時のミニ・インタビューはこちらから▶

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THE LUMINEERS
21:30~ @ FIELD OF HEAVEN



 ザ・ルミニアーズほど観客のポジティブなヴァイブスを取り込みながら、ライブの高揚感をビルド・アップすることに長けたバンドは稀だろう。大定番ナンバー「Ho Hey」や「Submarines」の軽快なアンサンブルに、観客が一丸となって掛け声やハンドクラップで花を添える光景は、何度体験しても心躍るし、ステージ前方に横並びになったメンバーが、白熱の演奏を繰り広げる「Big Parade」は、常にライブのハイライトだ。

 フロントマンのウェスが依存症に苦む家族について書いた、と説明したダークな内容と対照的なアップリフティングなサウンドのコントラストが印象的な「Leader of Landslide」や彼の哀愁漂う歌声ともの悲し気なピアノの調律が胸に突き刺さる「Donna」など、9月にリリースを控えるニュー・アルバム『III』からの新曲の反応も上々だった。確かな演奏力を持っているからこその応用力や即興性に培われた彼らのライブを観ると必ずその唯一無二な魅力を再確認させられるが、今回はフジロックという環境も助けて、その魔法がさらに増幅されたように感じた。

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THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES
22:00~ @ WHITE STAGE



 初日の<WHITE STAGE>のトリとして登場したのはトム・ヨーク・トゥモローズ・モダン・ボクシーズ。ライダースジャケットを着て笑顔を見せるトム・ヨークの姿は『ウォーキング・デッド』の最悪キャラ、ニーガンみたいだった。

 ライブをスタートさせた彼はシンセを操り、ベースを弾き、マイクを持って歌う。そして、にこやかに会場を見渡して「コンバンワァ!」と挨拶する。今夜の彼はとても穏やかだ。

 「Impossible Knots」「Not the News」「Traffic」といった最新作『ANIMA』からの楽曲を軸に「Black Swan」「The Clock」「AMOK」などソロキャリアの中で生み出してきた作品を織りまぜるセットリストで、機械的なサウンドと人力のグルーヴが混ざり合い、オーディエンスの熱狂とともに循環していく。

 夜の山奥でバッキバキのVJ映像と共に鳴り響く極上の音楽は、『ANIMA』で描かれた夢の世界だ。そんな夢の世界は求め続けられ、ダブルアンコールまで巻き起こる。ラストはトムが音楽を担当した映画『サスペリア』からの「Suspirium」。美しいピアノの旋律で余韻を残しながら幕を閉じた。

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BIGYUKI
23:30~ @ RED MARQUEE

 深夜の【RED MARQUEE】に登場したのは、BIGYUKI。ア・トライブ・コールド・クエスト、J・コールなどのビッグ・アーティストのサポートで知られ、現在カマシ・ワシントンの北米・アジアツアーに帯同、昨年の朝霧JAMでベスト・アクトとも称賛された話題のキーボーディストだ。フジロック開催直前に行われたマーク・ジュリアナの公演でも圧倒的な存在感を放っていた彼のパフォーマンスを一目見ようと、深夜にも関わらず、多くの人がマーキーに詰めかけていた。

 今回はギターとドラムのトリオ編成。ジャズを基軸にしたゴリゴリのトラップ・ミュージック。繰り出される音の波、重低音に、序盤からマーキーのフロアが大きく揺れる。美しさと轟音の狭間で暴れまわる極上の演奏。繰り返されるフレーズの重なりはリズムと相まって唯一無二のバンド・サウンドへと昇華していった。

 BIGYUKIは、秋にはカマシ・ワシントンのアジアツアーに帯同。9月3日(火)、4日(水)にはビルボードライブ大阪で公演も決定している。ロバート・グラスパーも「BIGYUKIは日本のロバート・グラスパー」と絶賛した、話題のパフォーマンスをお見逃しなく!

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SUNSET ROLLERCOASTER
10:20~ @ RED MARQUEE



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怒髪天
11:00~ @ GREEN STAGE



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GEZAN
11:40~ @ WHITE STAGE



 まるで真っ赤な雷に打たれたようだった。それくらい痛烈に強烈にあの光景は心に刻まれた。上下赤の衣装に身を包んだマヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo)の「2019年7月27日 音の海の中で探す存在の証明。GEZAN始めます」の宣言と共に「忘炎」で開演。

 「東京」では、何か神聖な儀式のようにカルロス・尾崎・サンタナ(Ba)が民族楽器ディジュリドゥを吹き「俺たちは今変わらなければいけない。何を変えるべきかはこの場所では言わない。想像力の向こう側。赤い花が咲いたら。革命だよ、これは!」とマヒトが叫ぶ。彼から放たれる言葉はどれもが詩的で劇的。そしてリアルを伴いながら矢のように我々の胸に刺さり、問いかける。

 7年前の<ROOKIE A GO-GO>以来の出演。彼らはその時から<WHITE STAGE>に立つイメージができていたと話し、マヒトは「ここに連れてきてくれたものは、金とかコネとかそういうものじゃなくて、自分たちの想像力だ」と言い放つ。その言葉が大きな説得力となって「Absolutely Imagination」という強力なアンセムへと流れ込んだ。ダイブとモッシュの海の中、曲の途中で雨が降り始め、マヒトの「もう雨やしめちゃめちゃしようぜ」を合図に、続く「BODY ODD」ではラッパーのCampanellaや鎮座DOPENESSなど様々なゲストが入れ替わり登場しマイクをリレー。不穏なビートが加速していく。フロアもそれに呼応する。ラストは「DNA」で「僕らは幸せになってもいいんだ」とメッセージを届け、全7曲40分間でGEZANはその存在を証明した。それに対峙しながら我々も必死に探していた。強く赤い光に打たれた後で、尚も私は自分の存在証明について深く考えさせられている。(Text: FM802 DJ深町絵里)

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蓮沼執太フィル
12:10~ @ FIELD OF HEAVEN



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ZOO
13:10~ @ WHITE STAGE



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JAY SOM
14:00~ @ RED MARQUEE



 中心人物のメリーナを含む5人編成のバンド総出で行っていた直前のサウンドチェックでもほぼフルで演奏されていた「Baybee」で幕を開けたジェイ・ソムの初来日ライブ。原曲のファンキーなベースラインは健在だが、後半メリーナとギタリストのオリヴァーがかき鳴らすロックなギターがなんとも痛快。続く、故エリオット・スミス的な哀愁漂う美メロ・ナンバー「Ghost」も緩急をつけた大胆なオルタナ風アレンジが加えられており、冒頭2曲から原曲と一味も二味も違う、遊び心ある自由な演奏で観客をノックアウト。

 中盤は、80'sラウンジ・ミュージックの残り香も感じさせるメロウな「Tenderness」やシューゲイザー的ギターが爽快な「Superbike」など、今月リリースされる最新アルバム『Anak Ko』からの新曲がメインに披露された。

 フィナーレは「The Bus Song」〜「Pirouette」の流れで、約10分間に及ぶ壮大なジャム・ナンバーとなった後者のスペイシーなグルーヴ感、メンバーによる歯切れのいいギター・カッティングとうねるベースの駆け引きは圧巻。破格のセンスと気骨を持ったアーティストであることを痛感させられた。本人がやたら快活な口調で「また来年!」と言っていたが、来日公演にぜひ期待したい。

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CAKE
14:50~ @ GREEN STAGE



 80年代のニュース番組のオープニング/プロレスラーの入場テーマ的な不思議なSEが5分以上流れ続け、異様な空気に包まれる<GREEN STAGE>。

 髪も髭も真っ白になった名物フロントマンのジョン・マックレア率いるCAKEがオン・ステージすると、メランコリックなトランペットの音色が散りばめられた「Frank Sinatra」〜「Sheep Go to Heaven」のお決まりのシングアロングでワームアップ。2011年(!)からフル・アルバムをリリースしていない彼らが、昨年突如発表したヴィブラスラップの音色がアクセントとなった政治的ナンバー「Sinking Ship」と続く。観客の中には、ヴィブラスラップを持参している気合の入った猛者もいて、雨脚がだんだん強くなっていくも、毎度、曲のイントロが鳴るだけで歓声が上がるあたり、彼らのライブを待ちわびていたファンが多かったことがわかる。

 途中、湿気のためギターのチューニングがうまくいかず、「ギターが労働環境に抗議してるけど、従わせてみせる。力づくで。今の時代、世界中どこでも力がものを言う」とマックレア節も炸裂。ハイライトとなった「Short Skirt/Long Jacket」では観客を右側と左側に分け、どちらがコーラスをより大きな声で歌えるかを競う「ナナナ対決」も行われ、マックレアのラップ調ヴォーカルとヴィブラスラップ・プレイが爽快な「The Distance」で締めくくられた。観客からリクエストされていた「I Will Survive」のカヴァーは時間オーバーで演奏されなかったものの、彼ららしいアクの強い、痛快なライブだった。

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DYGL
15:50~ @ RED MARQUEE



 この1年、活動の拠点をロンドンに移し2ndアルバム『Songs of Innocence & Experience』を7月にリリースしたDYGL。世界を股に駆けるステージを見ようと集まったオーディエンスからは高い注目度が伺えた。

 ステージバックにアルバムのアートワークが浮かび上がり4人が登場。アルバムのオープニングを飾る「Hard to Love」で幕開け、「Let It Sway」「Spit It Out」とアッパーに畳み掛ける。Akiyama(Vo/Gt)の「生活も社会も、納得いってないことがある人は歌ってくれ!」の言葉から「Bad Kicks」へ。フロアからはオーーッ!と歓声、拳があがった。この頃、テントのサイドからは雨が吹き込むほどに雨足が強まっていたが、ぐっとテンポを落とした「Boys on TV」、スロウな「Ordinaly Love」が続きバンドの演奏に惹き込まれていった。

 「好きな音楽が導いてくれるところには必ず何かがある」、そんな言葉のあと披露された『A Paper Dream』はこの日のハイライトといっても過言ではない。『Don't You Wanna Dance In This Heaven?』での激しいパフォーマンスにフロアのボルテージは最高潮へ。ラストの『Don't Know Where It Is』は実に力強く、バンドもオーディエンスもぶっちぎりにロックだった。2年前と同じ場所で格段に進化を感じさせたパフォーマンス。DYGLの現在地を見せつける圧巻のステージだった。(Text: FM802 DJ板東さえか)

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ASIAN KUNG-FU GENERATION
16:50~ @ GREEN STAGE



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ALVVAYS
17:50~ @ RED MARQUEE



 カナダはトロント発のシューゲイズ・ドリーム・ポップ・バンド、ALVVAYS。11月の来日は全日程完売させ日本でも人気の彼女達が<RED MARQUEE>に登場。強まる雨の中、唯一雨の影響を受けずにライブが観れる会場には溢れんばかりの観客が押し寄せていた。

 彼女達が1曲目に選んだのは「Hey」、次に「Adult Diversion」と早めのBPMが強くなる雨音とシンクロするかのうよう。しかしながら荒天とは対象的な、軽やかなドラムとギターが紡ぐ甘酸っぱさとキラキラ満載のメロディー、そしてフロントマン、モリー・ランキンの儚い歌声が会場を癒していく。

 中盤ではTHE BREEDERS 「Divine Hammer」のカヴァーを披露。それ以外はあまり長くない彼女達の曲を2ndアルバム中心に次々と演奏する。どの曲もノスタルジー溢れ、浮遊感のあるポップなサウンド。まるで夢の中にいるような感覚になり時間を忘れさせてくれたステージは「Next of Kin」でラストを迎え、大きな歓声と同時に、大雨という現実に引き戻されてしまった。

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MARTIN GARRIX
21:00~ @ GREEN STAGE



 ダンス・ミュージック界のプリンス、マーティン・ギャリックスがフジロックに初登場。雨でずぶ濡れとなった大自然を前に登場した彼は、キラーチューンを連続投下。背後の巨大な映像セット、火花、火柱、レーザービームとあらゆる演出を用いてオーディエンスの感覚をハッキングしていく。

 「ジャパーン、アーユーレディッ?!!!!3、2、1、レッツゴー!!!!」で、ズドーン。

 ド定番すぎる流れをキメまくり、苗場は魔法にかかったように熱狂の高みへ突入。巨大な会場のテンションをコントロールできるのは、世界中のフェスを渡り歩く彼だからこそ持ち得る特別な力だと思い知らされる。

 EDMチューンでたたみかけるだけで終わらないのも彼が魔法使いである理由だ。序盤の「No Sleep」での大合唱を見せたシーンや、他アーティストと自身の楽曲を用いたマッシュアップ、そして涙なしでは聴けない盟友アヴィーチーの「Waiting for Love」までこの時間に必要なストーリーを繋げていくのだ。大雨の中でのパフォーマンスとなったが、そんな状況を軽々と乗り越えて<GREEN STAGE>という巨大なダンスフロアに昇華させた。

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AMERICAN FOOTBALL
20:20~ @ WHITE STAGE



 細やかなヴィブラフォンの音色に合わせ、メンバーのシルエットがゆっくり浮かび上がるという粋な演出で1曲目の「Silhouettes」が始まり、情緒的なギターが入る瞬間から押し寄せる音の洪水に飲み込まれる。

 主に1stと新作からの楽曲から構成されたライブだったが、「Honestly?」のブリッジから佳境に入る部分やドラムのスティーブが「The Summer Ends」の冒頭でトランペットを手にした瞬間に大歓声が上がっていたのには、やはり彼らのデビュー作がいかにここ日本で愛されているかが伺える。いい意味で覇気がないキンセラの歌声も円熟味が増し、20年近く前に書かれた楽曲に難なくフィットしているのにも驚かされる。今回サポート・ギターとしてソー・マッチ・ライトのダミアンが参加しており、パラモアのヘイリー、スロウダイヴのレイチェルらのパートをハニカミながらも繊細な歌声で彩っていたのも印象的だった。

 その後も、テクニカルかつ壮大なサウンドスケープがゆっくりと紡がれていき、ラストの「Never Meant」で至福のカタルシスへ。まるで緊張の糸が切れたかのように、観客が一丸となって拳を振り上げながら、シンプルながらも胸にズシリと刺さるリリックを大合唱する光景は忘れることないだろう。

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SIA
21:10~ @ GREEN STAGE



 聴きたい曲はやってくれた。シーア本人がステージに立ってひたすら歌ってた。マディー・ジーグラーまで出てきてくれたし。で、僕たちは何を観たんだっけ? 終了後に聞こえてきたのは「ヨカッタ」「スゴカッタ」といったあっけらかんとした言葉だけ。私もすぐに「あの曲がうんたらかんたら~」なんて感想は出てこなかった。

 ステージセットは飾り気がなくとことんシンプルで、ライティングの為のスクリーンのみ。そして、雨、雨、雨。スタート前に苗場と観客を浄化させるという神話クラスの演出だ。

 そんな豪雨の中、お馴染みの黒金2分割ヘアーのシーアが登場。もちろん表情はわからない。もこもこと蠢くドレスから同じヘアスタイルで彼女の分身とも言えるマディー・ジーグラーが飛び出す。本来1つであるはずの<身体>と<歌声>を分離させたのだ。スポットライトが当てるのは<歌声>のみで、<身体>の部分はダンサーが拡張させて表現する。それは<感情>と<理性>が分離した世界でもあった。

 アルバム『This Is Acting』の収録曲を中心に、これまでのヒット曲を織り交ぜながらステージはどんどん進む。人間は<感情>と<理性>を分離することはできない。だから目の前で繰り広げられる美しい世界にどんどん魅了されていく。憧れて、感動し、歓声をあげることしかできないのだ。

 僕たちが観たのはシーアという巧みな芸術家のインスタレーションだった。音楽ライブというフォーマットを抜け出し、楽曲を媒介にして分離した世界を共有する時間。ライブとして、それが正解なのかわからない。だって人間は<感情>と<理性>を分離することはできないから。だからこそ愛おしいのだ。きっと。

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DEATH CAB FOR CUTIE
22:00~ @ WHITE STAGE



 悪天候のために約15分セットが短くなることが事前発表されていたこともあり、情緒的な「I Dreamt We Spoke Again」から、リズム隊ニックとジェイソンのタイトで、熱を帯びた演奏に後ろ盾され、2曲目の疾走感溢れる「The Ghosts of Beverly Drive」で、早くもバンドは全力投球モードに。

 巨大LEDを取り入れた大掛かりなプロダクション、万能プレイヤーのデイヴ、トリッキーな演奏も難なくこなすザックが正式メンバーに加わった5人編成の鉄板の布陣となったことで音の厚みも増し、前回の来日から約7年間で着実にアリーナ・バンドへとなりつつあることが、冒頭数曲から伺える。とはいえ、彼らが長年愛され続ける理由の一つである人間味も随所で感じられ、キーが高い部分で、相変わらずベンの声が微妙に裏返ってしまう「What Sarah Said」、ややぎこちないハンドマイクで朗らかに歌う「Title and Registration」では、思わず笑みがこぼれてしまった。

 ベンがアコースティック・ソロで、繊細に歌い上げる白眉「I Will Follow You Into The Dark」から「I Will Possess Your Heart」の鉄板ビルドアップを経た「Soul Meets Body」で、強まるばかりの雨脚に渾身の「パラッパー」シングアロングがかき消されてしまったのは残念だった。だが、ラストの「Transatlanticism」の感動的なリフレインが終わっても鳴り止まない歓声に対して、ベンが他のメンバーに合図し、珍しく全員でお辞儀をしていたのは印象的だった。過去最悪とも言える大雨を吹き飛ばすほどに熱い観客の思いと、それに応えるメンバーの真摯な演奏の相乗効果が生みだした鳥肌モノの75分だった。

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HANGGAI
11:00~ @ GREEN STAGE



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SANABAGUN.
11:40~ @ WHITE STAGE



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STELLA DONNELLY
12:40~ @ RED MARQUEE



 入口の外まで観客が集り、とてつもない熱気に包まれた<RED MARQUEE>だが、ステラ・ドネリーがにこやかに登場し、1曲目の「Grey」を、クリスタルのような透きとおった声で歌い始めると、テントが一瞬で静まり返る 。デビュー・アルバムのタイトル・トラック「Beware of the Dogs」や“ラブ・ソング”と語る「Mosquito」など1曲、1曲丁寧に紹介しながら、シンガー、ギタリストとしての魅力を存分に発揮していく。

 ライブ中盤に差し掛かり、父権社会にメスを入れる「Old Man」でやっと、彼女と同世代だと思われるフレッシュな面々によるバンドがオンステージすると、荒削りだが息の合ったアンサンブルにより楽曲たちが彩りに溢れていく。

 ローファイなビートにのせて「私の目を見て大丈夫だと言って」、「私は死にたくない」などシリアスな歌詞を展開する「Die」で、ギターのジャックとともに蟹ダンスをノリノリで踊ると、そのギャップにより曲のメッセージ性が強まるのは不思議だ。ライブがYouTubeで生配信されていたため、オーストラリアで観ている父親に「ハイ、ダッド!」と呼びかけ、彼のために自身の幼い頃の写真をこの日バックドロップとして使ったという親孝行な一面も。

 約50分のステージで、とにかく様々な表情を見せながら観客を魅了し、今後もさらなる飛躍を予感させたステラ。今の時代にだからこそ生まれ、今の時代だからこと必要な逸材であることがひしひしと伝わってきたライブだった。

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TENDRE
14:00~ @ RED MARQUEE



 昨夜の豪雨が嘘のように晴れた最終日。太陽が照りつける<RED MARQUEE>には続々と人が集まってくる。河原太郎ことTENDREとその一行がサウンドチェックにステージに現れると会場から歓声が上がる。

 メンバーは松浦大樹(Dr)、小西遼(Sax)、高木祥太(Ba)、そして今回のフジロック3日間全てオンステージしているAAAMYYY(Key/Syn)。このサポートぽくない最強のメンバーで「ただいま、フジロック」と1曲目「DRAMA」からスタート。

 のっけからテンション高く「フジロック楽しんでますか?」と会場を煽り、ハンズクラップを促し、自らギターを持ちカッティングを披露。会場と一体となり全身でこのステージを楽しんでいる。ライブ終盤のMCで「ルーキー、アバロン、レッドと来たけど、やっぱり頂点目指したい」というようにフジには特別な思い入れがあるようだ。「KAMERA」ではAAAMYYYを「前おいで」と誘いハンドマイクでデュエット。最後は「もう少し遊びたい、もっと踊れますか?」と「RIDE」でオーディエンスを踊らせステージを締めた。

 TENDREは、9月10日にReiと東京で、10月2日には大阪でVIDEOTAPEMUSICとのビルボーライブ東阪での2マンライブが決定している。

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HIATUS KAIYOTE
14:50~ @ GREEN STAGE



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PHONY PPL
15:50~ @ RED MARQUEE



 「フジロックコンニチワー」といきなり始まったブルックリン発の新世代5人組ソウル・バンド PHONY PPLのステージ。<RED MARQUEE>には東のPHONY PPL、西のTHE INTERNETとも称されるヒップホップソウル・シーンの最重要バンドを一目観ようと大勢の観客が押しかけていた。

 今年1月に待望のアルバム『mo'za-ik.』をリリースし、来日。名だたる人気ラッパー達からもバック・バンドとして起用されるなど演奏力の高さは噂になってはいたが、彼らは頭からその演奏力を見せつけた。

 ステージ上を跳ね回り歌うエルビー(Vo.)に野太いとベースとドッシリとしたドラムのリズムに合わせ、エイシャのピアノの音色がとても心地よく、耳に残る。そこに軽やかなイライジャのギターのリフが合わさり極上のグルーヴが会場を包み観客からは曲中にも何度も歓声が上がる。全編通してエルビーは覚えた日本語を交えながら1曲ずつ観客と掛け合いながら歌っていたのが印象的。バンド・メンバー達も皆本当に楽しそうにライブをする光景に会場全体が自然と彼らのグルーヴ巻き込まれて行く。最後は新譜から「Before You Get a Boyfriend」で会場全体がシンガロングし、盛り上がりは最高潮のまま終演した。次のフジはどのステージで観れるのか。今後の活躍が楽しみなバンドがまた一つ増えた。

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HYUKOH
16:30~ @ WHITE STAGE



 フジロックでの勇姿を目撃しようと駆けつけたのであろう、アジア圏からのリスナーも数多く見受けられた会場。ライトブルーのゆったりとしたセットアップで登場したオ・ヒョク(Vo&Gt)は、そのエッジの効いたセンスで注目を集めるファッションアイコンとしての存在感も漂わせる。雄大なアンサンブルの「Wanli」で開演。ボーカルは抜けが良く、クールでいて叙情的。韓国語詞の独特の語感も心地が良い。

 印象的なリフが繰り返される「Tokyo Inn」や疾走感に満ちた「Comes and Goes」 など次々と披露。ソウルフルでブルージーなロック、サウンドもボーカルも変幻自在だ。ボーカルが終始サングラスを着用し顔色一つ変えることなく歌い上げる一方で、イ・インウ(Dr)は上半身裸でダイナミックに叩き続ける。4者4様のストイックなプレイスタイル。総じて『硬派なバンド』という印象を残した。ラストの「Love Ya!」では、その清らかで甘美なメロディーにオーディエンスが一様に体を揺らし、会場は愛に包まれた。

 たった一言「Thank You.」だけという限られたMC、まるで粛々と任務を遂行するかのように彼らはただひたすらに演奏し、音で観客の心を捉えた。音は国境を越える、を明らかにしたステージであった(Text: FM802 DJ深町絵里)

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KOHH
18:10~ @ WHITE STAGE



 最終日夕方の<WHITE STAGE>。近年国内外から注目を集め続けるKOHHのライブを目撃しようと多くの観客が集まっていた。

 ライブは今年2月にノンプロモーションで突如リリースしたアルバム『UNTITLED』からの収録曲「ひとつ」「Imma Do It」でスタートし、「Drugs」「Hate Me」といったメッセージ性が強い楽曲も配置。ステージを右へ左へ動いて会場を煽り、この今この時こそが重要であると絶唱する。

 重低音を帯びたソリッドなトラックが空気を震わせ、ライブの醍醐味とも言える迫力ある音像が広がるのだが、異質さを放っていたのは背後のライブ映像だ。強烈なエフェクトがかかり、色彩を帯びたり、失ったり、歪んだりを繰り返す。

 彼の存在を虚ろに体感するという不思議な時間。YouTube配信も大絶賛されていたが、現地では現場にいることの感覚を狂わされるようだった。

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JASON MRAZ
18:50~ @ GREEN STAGE



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VINCE STAPLES
20:00~ @ WHITE STAGE



 アメリカの著名TV番組を自らパロディした映像がループする中、「拍手!」という文字がスクリーンに突如映し出され、ヒップホップ界に新たな息を吹き込む、若きカリスマ=ヴィンス・ステープルズが大歓声の中ステージに。

 「今日は楽しんでくれよ!」というMCとともに、序盤の「FUN!」から低音バッキバッキのサウンドが<WHITE STAGE>を揺らす。本人も想像以上の観客が集まったことに満足そうで、「今日は大勢の人が来てくれたな!ありがとう!」と、メロウな「745」ではステージの端に座り、興味深い様子で観客を見回していた。派手な演出は一切ないが、彼が淡々と真摯に“伝える”ラップには強力な引力があり、そのパワーを軸に起爆剤ナンバー「Get the Fuck Off My Dick」、「Prima Donna」、「BagBak」など人気曲を立て続けに投下し、さらには映画『ブラックパンサー』に提供した「Opps」のヴァースも披露。喘息持ちでありながらも、全身全霊でパフォーマンスしているため、途中吸入器を使っていたのも、従来のラッパーのイメージを覆していて新鮮だった。

 一際大きな歓声が上がった「Black Suede」では、前方でモッシュが起こり、ヴィンスも「もとデカく!もっとデカく!」と煽ると、それをさらに煽る掛け声も沸き、まるでクラブのような狂乱状態に。だが、これでは終わらず、最後に「俺のマグヌム・オプスだ」と地元ロング・ビーチに捧げる「Norf Norf」を満を持して披露する姿は眩しく輝いて見えた。

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KHRUANGBIN
21:00~ @ FIELD OF HEAVEN



 【FIELD OF HEAVEN】の大トリはクルアンビン。3月の来日ツアーが全公演ソールドアウト。話題の彼らを観に溢れんばかりの人が押し寄せていた。移動するのも大変な程、この時間のヘブンにこんなに人がいるのはあまり見た事がなく注目の高さが伺える。独特のコスチュームに身を包んだメンバーが登場すると大歓声が沸き起こり、ヌルリとショーが始まった。60~70年代のタイ・ファンクの影響をベースにゆるくエキゾチシズムなグルーヴに初っ端からオーディエンスはメロメロに酔いしれる。妖艶なローラ・リーのベース、サイケデリックでブルージーなマーク・スピアーのギター、ドナルド”DJ”ジョンソンのファンク・ドラム、この3人が奏でるメロディーはどこか懐かしく民謡の様にすんなりと耳に入ってくる。「ハロー フジロック!」とオーディエンスを煽りつつ、ゆったりとショーは進む。シームレスに繰り出される楽曲。時間をも忘れさせてくれるグルーヴィーな雰囲気に3日間で疲れた身体を委ねながらユラユラと楽しんでいるとショーは終盤に。YMOカバー「Firecracker」でフロアは大盛り上がり。そのまま「Maria También」へとなだれ込む。最後に耳馴染みの名曲を差し込むニクい演出でフロアは最高潮に達し、本編は終了した。前日の深夜、CRYSTAL PALACE TENTでもDJとし出演していた彼ら。「Firecracker」含め日本の曲も数々スピンし会場を沸かせていた。新旧問わず様々な国の音楽を取り込みながらアレンジし昇華していく彼らのライブは今後も世界各地に中毒者を生み出すだろう。

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THE CURE
21:00~ @ GREEN STAGE



 2013年出演時には約3時間のにも及ぶセットを披露し、伝説となったザ・キュアーが、結成40年を迎えて再び苗場の地に戻って来てくれた。ロバート・スミスが腕を大きく広げ、まるで指揮者が構えるようなポーズを取ると「Plainsong」の煌びやかなシンセ音が流れ星のように<GREEN STAGE>に放たれ、「また会えたね」という言葉でライブがスタート。

 御歳60歳となったロバスミだが、その芯の通ったヴォーカルはブレることなく「Pictures of You」、「Lovesong」、「Fascination Street」などの人気曲を完璧に、淡々と歌い上げていく。彼のギタリストとしての才能は忘れられがちだが、そのエモーショナルで、独特の雰囲気を持ったギター・トーンは、これらの楽曲で存分に発揮されていた。これほど大きな会場で、大勢の観客を相手に演奏しているものの、曲がダイレクトに伝わってきて、インティメイトに感じるのは、彼のひたむきさと照れ屋な性分ゆえのもので、彼らが今でも各国のフェスのヘッドライナーに抜擢されている要因の一つに思う。

 ライブの演出面において特出した部分は少なかったが、今回がいつもと一味違ったのは、長年ベーシストを務めるサイモンが急遽来日キャンセルとなり、彼の息子のエデンがピンチヒッターを務めたということ。大役を見事にこなしたのはもちろんだが、他のメンバーに比べてやや若い彼が加わったことで、演奏がよりタイトになり、燦爛たるものに変貌していた気もする。

 「Friday I'm in Love」や「Close to Me」など、誰もが知るヒット・ナンバーで畳み掛けたアンコールでは、<GREEN STAGE>後方まで総立ちに。思い思いに音楽に合わせて踊るフジロッカーにとって、陶酔感と安堵感に溢れた桃源郷のような異空間が広がっていた。そしてあっという間にラストの「Boys Don't Cry」が終わり、名残惜しそうに客席を見つめ、ステージを去っていくロバスミは最高に愛らしかった。いつまでも子供のような、一途な眼差しを持つ彼の後ろ姿、そしてザ・キュアーという究極の癒しに、3日間の疲れは一気に吹っ飛んでいった。

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JAMES BLAKE
22:00~ @ WHITE STAGE



 最終日の<WHITE STAGE>のトリとなるジェイムス・ブレイクのライブ。最新作『アシューム・フォーム』で披露した次なるステップへ踏み出した彼自身を体現するような素晴らしいパフォーマンスだった。

 前回2016年のフジロックでは不評だった(笑)ルコックのジャージから一転、今年はロング丈のスタイリッシュなコートで登場。このあたりも新作で見せた心境の変化によるものだろうか。

 新作でファンを驚かせたのは、他者との交わりを濃くしたサウンドと、メロディーラインの美しさだ。この日のパフォーマンスでも、スピーカーから放出される音像は、輪郭がはっきりとしており、より静かで、重厚。そして、彼が歌う声とメロディーが生き生きとしている。

 喉の不調から予定されていたセットリストが変更されていたようで、更に当日機材トラブルでYouTubeのライブ配信は中止となっていた。しかし、ステージ上の彼からそんな不安は感じることはない。 「Life Round Here」や、ラストに披露された「The Wilhelm Scream」などこれまでの楽曲たちが新たな生命を受けて動き出したかのように、際立って魅力的になっていたことに驚かされた。また素晴らしい音楽を聴かせてくれるに違いないと確信するステージだった。


 フジロック3日間、<WHITE STAGE>を〆るのは3年振りの出演となるジェイムス・ブレイク。

 美しく荘厳なエレピの音色から始まったステージは豪華ゲストを迎えてリリースされた新作『Assume Form』のタイトル曲でもある「Assume Form」。彼の曲の根幹でもある暗くズシリとした重低音というよりは何処か夢想的な印象を受けた今作の象徴する曲からのスタート。3日間の疲れた身体に心地よく染み込んでゆく。ショーは新旧の曲を混ぜつつゆったりと進んでいく。「コンバンワ、ニホンニコレテウレシイデス」と流暢な日本語で挨拶し「Barefoot In The Park」を披露。ジェイムスらしい深く重い低音、彼の細く美しい声と歌姫ロザリアの声が<WHITE STAGE>に響き渡る。中盤はエレクトロな曲を旧譜より折り込み満員のWHITE STAGEを踊らせる。間にはアンドレ3000の参加した「Where’s The Catch」を挟み込むなど曲調にも変化をつけ楽しませてくれた。時折、寄ってくる虫達を払う仕草がモニターに映し出されると会場からは笑いと歓声が起こる。前回のフジの時もそうだったが、どうやら彼には虫をも惹きつける魅力を持っているのか。そんな和やかの雰囲気のまま「Retrograde」で終盤に突入。「Don’t Miss It」とラストは「The Wilhelm Scream」と披露し「Thank you so so so much ! マタネ!」とステージを降りた。

 後にアナウンスがあったが、喉の不調と機材トラブルなど完全な状況でなかったようだ。しかしながら新旧の楽曲を散りばめ、荘厳で美しくそして少しPOPな新しいジェイムス・ブレイクは2019年の<WHITE STAGE>の幕を閉じるのに相応しいショーだった。

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Night Tempo
22:00~ @ WHITE STAGE



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G&G Miller Orchestra feat. トータス松本
24:00~ @ GREEN STAGE



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