あいみょんは、総合ソング・チャートJAPAN HOT100で全順位中31曲、総合アルバム・チャートJAPAN HOT ALBUMSでは全順位中4タイトルを送り込み、当ランキングではラジオとストリーミングで2冠を獲得、他指標でも高ポイントを叩き出し、昨年度年間16位から同首位の米津玄師を逆転して堂々の総合首位を獲得した。昨夏よりストリーミング・ポイントを複数曲で積み上げつつ、年末地上波特番で弾みをつけ、アルバムとシングルのコンスタントなリリースでそれぞれの高ポイントを維持し、総合首位獲得に落着させた、一連の経緯は明らかだが、そのなかでも好調なストリーミングが他指標にも波及、ラジオ、ダウンロード、ルックアップ、動画再生、カラオケでの高ポイント獲得に繋がったことは見逃せない事実だ。今回の首位獲得を機に、ストリーミングが主流となりつつある今日において、あいみょんは国内音楽シーンのロールモデルのひとつとなった。
▲ 「マリーゴールド」MV / あいみょん
一方、昨年年間首位の米津玄師もまた、ストリーミング・ポイントが非解禁のためゼロであるにも関わらず、今年度上半期において、ダウンロード、ルックアップ、動画再生、カラオケで4冠を獲得、総合2位となった。年末のNHK紅白歌合戦での実演でトップ・アーティストとしての弾みをつけ、JAPAN HOT100では全順位中25曲(「打上花火」「砂の惑星 feat.初音ミク」「パプリカ」を除く)、JAPAN HOT ALBUMSでは全順位中4タイトルを送り込み、前出の4指標であいみょんを激しく追い上げたが、ストリーミング・ポイントの大差を覆すには至らなかった。とはいえ、“動画”ストリーミング指標とも言い換えられるYouTubeとGYAO!合算の動画再生指標では、合計456,294,308回で1位となり、2位のあいみょんの305,889,824回との差は約1.5億回で、“オーディオ”ストリーミングが解禁となったときの強さは容易に予想できる。
このように、2019年の国内音楽シーンは米津玄師とあいみょんを基準に語られる年となるだろう。
もうひとつ、今年上半期で忘れてはならないのは、世界的なクイーンのリバイバル・ヒットだ。JAPAN HOT100では全順位中29曲、JAPAN HOT ALBUMSでは全順位中35タイトルを送り込み、ダウンロード、ストリーミング、CDセールス、動画再生で高ポイントを獲得、堂々総合3位に躍り出た。映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットが牽引し、デジタルとフィジカルの両領域でシェアを広げたのは、当アーティストのみの現象で、このムーヴメントが世代を超えて世界的に巻き起こったことを示す。これは洋楽のシェアが下落中の日本においても、洋楽ヒットのチャンスが日本で全く失われたわけではないことを示す好例といえる。
▲ 映画『ボヘミアン・ラプソディ』予告編
最後に、ストリーミング解禁が全体的な市場シェア拡大に繋がったアーティストとして、back numberを挙げておきたい。LINE MUSICでの先行配信を皮切りに、ストリーミング解禁を果たしたback numberは、JAPAN HOT100では全順位中29曲、JAPAN HOT ALBUMSでは全順位中4タイトルを送り込み、ストリーミング5位、総合4位となった。主な指標でのランキングにおける昨年と今年の上半期を比べると、CDセールスでは昨年49位で今年は8位、ダウンロードでは昨年3位で今年は2位、ルックアップでは昨年6位で今年は3位と、ストリーミング解禁が他指標にマイナスの影響を与えずに、むしろプラスとなったことを示している。
続く総合2位を獲得したのは、ONE OK ROCKの約2年ぶり、通算9作目のオリジナル・アルバム『Eye of the Storm』。2月13日にCDリリース、そして15日に配信リリースされた同作は、上半期累計で288,560枚を売り上げてCDセールス4位、53,961DLを売り上げてダウンロード3位、そしてルックアップは3位をそれぞれマーク。星野源『POP VIRUS』もONE OK ROCK『Eye of the Storm』も、フィジカルとデジタルの両セールスで好成績を収めつつ、加えてルックアップでは初登場から現在までトップ10内から漏れた週はなかった。こうしたチャート・アクションが示す通り、セールスが作品の鮮度と比例し、発売週をピークとして緩やかに減少していく一方、レンタル動向を映し出すルックアップ指標では作品の需要を長期的に観測することができる。“購入(≒所有)”はもちろん、音楽のヒットを語るうえでは“接触”も欠かせない要素なのだ。
上半期“Hot Albums”で1位に輝いた星野源の『POP VIRUS』が、2019年の上半期ダウンロード・アルバム・チャートでも首位を獲得した。2018年12月31日付けの初登場1位から4週連続でダウンロード・チャートを制した本作は、自身初となる5大ドームツアー【星野源 DOME TOUR 2019『POP VIRUS』】の開幕となった2月2日&3日の京セラドーム大阪公演を機に、再度首位に返り咲き、計5度の本チャート1位に輝いた。NHKで放送されたライブ特別番組のオンエア後にはダウンロードが急増し、テレビ番組の露出がデジタルセールスに繋がる動きが濃く見えた。
『POP VIRUS』と約1,600ポイント差で上半期2位だったのが、クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)』だ。初動ダウンロード数で比べると『POP VIRUS』と大差があるが、長期的なスパンで比べると、同名映画のロングヒットに合わせてダウンロード数が徐々に上がっていった『ボヘミアン・ラプソディ』の方が、高いダウンロード数を記録する週が続いた。クイーンは7位に『クイーン・ジュエルズ』、10位に『ALL TIME BEST 1998-2018』の計3作品がチャートインしているが、これが『ボヘミアン』効果であることは明らかだ。
3位のONE OK ROCK『Eye of the Storm』、4位のあいみょん『瞬間的シックスセンス』、5位の米津玄師『BOOTLEG』、6位のback number『MAGIC』は、どれもデジタル領域で人気のあるアーティストたちの作品だが、その中でも【2018年上半期 Download Albums】で2位だった米津玄師『BOOTLEG』が、1年経った今回でも上位5作品に入っているということに驚きだ。年末の紅白歌合戦でダウンロードが急増した本作は、現在もコンスタントにダウンロードを獲得している。長くチャートインする傾向が見られるデジタル領域でどこまで記録を伸ばすのか。今後のチャートの行方が気になるところだ。
その他、DA PUMP「U.S.A.」、エド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」、DAOKO× 米津玄師「打上花火」などロングヒット楽曲が上位を占める中、ONE OK ROCK「Stand Out Fit In」が6位、「Wasted Nights」が11位を獲得するという結果となった。上半期チャートの結果を見ても、ストリーミングは一度上位にチャートインすると、様々なプレイリストに入れられるなどリスナーとの接触機会が増加し、ロングヒットとなる傾向が強い。2019年の年間チャートでは、あいみょん「マリーゴールド」が逃げ切るか、6月3日付チャートで20週連続首位を食い止めたOfficial髭男dism「Pretender」が抜き去るか、後半の動きにも注目だ。
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