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セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズ国内盤新作『ヤング・シック・カメリア』発売&初来日記念インタビュー



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 米アラバマ出身ソウル・ロック・バンド、セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズの初来日公演が迫る中、2018年に本国でリリースされた最新アルバム『ヤング・シック・カメリア』の国内盤が本日(2019年4月3日)に発売となった。このリリースと初来日を記念し、圧倒的な歌唱力と存在感でバンドを率いるフロントマンのポール・ジェーンウェイへのインタビューが到着した。【コーチェラ】や【グラストンベリー】などの世界的音楽フェスに出演し、ライブバンドとして欧米で高い評価を獲得してきたセント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズについて、また自身の音楽のルーツなどについて語ってくれた。

「ライブに4人しかいなくても、5万人もいても、自分が持っている力を全て出し切るんだ。」

——現在、ツアーの真っ最中ですが、どうでしょう?ツアーは楽しんでいますか?バンドの調子は、いかがですか?

ポール・ジェーンウェイ(以下:ポール):いいと思うよ!9月にこっちでニュー・アルバムをリリースしてからというもの、かなりの数のツアーをこなして来たんで、みんな調子がいいよ。かなり強烈なライブをやっているんで、ちょっと大変ではあるけど、文句は言えないね。

——4月にはオーストラリアをツアーする前に日本に立ち寄って、大阪と東京でライブをすることが決まっていますね。日本公演が決まった時は、どんなことを思いましたか?

ポール:とてもエキサイトしたよ。日本は僕がずっとプレイしたいと思っていた国だけど、まさか自分がバンドに入って日本でプレイすることになるなんて、夢にも思っていなかった。だから、このことは一生忘れないよ。そして今回の公演がうまくいって、また戻ってこれるといいな!

——日本に来るのは今回が初めてですか?

ポール:初めてだよ。日本に行ったことがないから、妻を連れて行くんだ。早めに行って、出来ることをやっておきたい!(笑)とても楽しみだよ。

——日本という国には、どんなイメージを持っていますか?

ポール:そうだなあ…。

——イメージを持っていたらの話ですけど。

ポール:すごく変に聞こえるかもしれないけど、実は僕は日本のプロレスの大ファンなんだ。日本語で放映される番組もあるけど、僕は日本語を知らないんでね。ちょこっとはわかるけど。だから、これが日本に対する僕のイメージなんだ。聞いた話では、みんな温かくもてなしてくれるし、公共交通機関がとても発達しているってこと。食べ物も楽しみだ。全く別世界だよね。特に、アメリカの片田舎のアラバマからだと。昔から神秘的なところだと思っていた。ものすごく遠くて、僕が慣れ親しんでいるものとは違いそうなんだもの。でも、そこが魅力的なんだな。違う経験が出来るんだからね。

——来日公演では、どんなライブを見せてくれるのでしょうか?ファンはどんなことを楽しみにしていったらいいですか?日本のファンにメッセージがありましたら、ぜひ。

ポール:エナジー全開!汗だくになるよ。みんなには笑顔になって欲しいし、笑って欲しいし、全て楽しんでほしい。僕たちのライブはハイ・エナジー・ショウで、山あり谷ありだ。バラードがあるかと思うと、ダンサブルな曲もある。日本のオーディエンスがどんな反応を示すのか、僕にはさっぱりわからないけど、僕たちはどこへ行っても、いつもやっていることをやるだけだ。僕たちのショウをやるだけだよ。そしてみんなが観たいのはそれだと思うんで、このバンドがスタートしてからずっとそうしてきたんだ。



▲St. Paul And The Broken Bones: NPR Music Tiny Desk Concert

——セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズは精力的にツアーしていますが、総勢8人+スタッフという大所帯の旅は、何かと大変なことも多いのではないでしょうか?あなたなりのツアーの楽しみ方の秘訣はありますか?

ポール:1人だけの時間がなかなか持てないから、その時間を見つけることだね。僕が興味を持っていても、他のみんなにとっては興味が無いものだってあるから、それは僕がやればいいことだ。僕は1人でもかまわない。僕たちみたいにたくさんツアーしていると、毎日誰かの機嫌が悪い。だから、嫌なヤツにならずに優しくするよう心がけているよ。親切になって、理解してあげられるようにしているんだ。大したことでなくても、8人もいると些細なことがおおごとになるんでね。でも僕は、1人になれる時間を見つけられさえすればいい。1人でディナーに出かけたり、美術館に出かけたりすると、正気を保つ手助けになる。

——アラバマでバンドを始めた時、全米はもちろん、世界中をツアーするようなバンドになりたいと考えていましたか?また、実際に世界中をツアーしている現在の状況を、どう思っていますか?

ポール:いや、そんなことは思ってもいなかったよ。もちろん、どこまで行けるかやってみたい気持ちはあったけど、最初の頃の僕たちの目標は、アラバマ州バーミングハムの<Bottletree Café>をソールドアウトにすることだった。「それが出来たら成功だ!」って思っていたよ。幸いにも僕たちは様々な目標を達成してきた。「日本!今度はそこを征服しよう!そこで安定した人気を得よう!」と思って、それを叶えようとする。目標はどんどん変わるんだ。だから、ある時点で世界中をツアーすることが目標になったけど、最初は思ってもいなかったね。

——ブロークン・ボーンズは、2000年代の半ば、ポールとジェシー・フィリップスが出会ったことがきっかけで始まったそうですが、どんな出会いだったんでしょうか?

ポール:僕たちはバンドでプレイして出会ったんだ。彼は楽器店で働いていたんだけど、そこに僕が一緒にバンドをやっていたヤツも働いていて、ジェシーは僕がいたバンドでベースを弾くことになった。そして意気投合したんだ。随分昔のことのように思えるな。実際昔だけど、僕たちはすごく仲のいい友達になった。でもそのうち、「僕たち、これからの人生どうすればいいんだ?」って思うようになって、「有終の美を飾るために、レコーディングをして僕たちの音楽関係に終止符を打って、別々の道を歩もう」と思ったんだけど、実はそこからザ・ブロークン・ボーンズが生まれたんだ。(笑)クレイジーだよね。ジェシーは僕の結婚式の時の付添人をしてくれた友達なんだよ。親友であり、ビジネス面ではバンド仲間という稀な関係なんだ。

——お2人の音楽の趣味は同じだったのですか?

ポール:そうだね。彼が僕のアパートにやって来た時、僕はトーキング・ヘッズの『Remain In Light』を持っていたんだけど、それを見た彼は「あっ!」って言った。僕たちの趣味は同じだったんで、ソウルについて、そしてあらゆる音楽についての話をした。意気投合したよ。僕は教会で歌って育ったんで、彼は「じゃあ、それを元に曲を書こうよ」と言った。そうして始まったんだ。



▲St. Paul & The Broken Bones - All I Ever Wonder (Official Video)

——ブロークン・ボーンズというバンド名は、どんなところから?

ポール:あれは僕が考えたんじゃない。ジェシーが考えたんだ。僕は自分の名前なんか入れたくなかったけど、“セント・ポール”の部分はからかい半分なんだ。僕は教会で育ったし、酒も飲まないんでね。絶対に飲まないわけではないけど、こうすると面白いと思ったんだろう。ブロークン・ボーンズは、僕たちが最初に書いた曲が「Broken Bones And Pocket Change」で、‘Broken bones and pocket change That is all she left me with’というくだりがあったんだ。つまり、このバンドは金がなくなったってこと。

——おっしゃるように、あなたは10歳の頃から教会で歌っていたそうですね?

ポール:4歳の時に始めたんだ。とにかくずっと歌ってきたんだよ。物心ついた時から歌っていた。

——その後、いわゆる世俗の音楽にも興味を持つようになったわけですよね?

ポール:そうだね。教会も好きだったけど、大きくなるにつれ、外の世界に目を向けるようになったんだ。僕は人口800人の町で育ったけど、外にもうちょっと目を向けるようになったら、そっちが大好きになったんだよ。それでバーで歌ったりギターを弾くようになったんだ。つい手を出してしまったんだな。(笑)

——その手の音楽のどんなところに惹かれたのでしょうか?

ポール:外界から隔離された狭い世界で生きていたところへ、ビートルズやローリング・ストーンズといった音楽を聴くと、「ワオ!」って思うよね。人生が変わるよ。音楽観が変わる。それまで、僕にとっての音楽は神との交流だった。それがビートルズやストーンズからレイディオヘッドまでを聞くと、教会音楽でないものにハマるようになったんだ。本を読んだり、音楽を聴いたりした。遅れを取り戻さないといけない気がしたからだ。そういうものを聴いて育たなかったんで、「遅れを取り戻さなくちゃ!ビートルズの曲を覚えなくちゃ!」って思ったんだよ。今思えば変だけど、なんせ小さな町でのことだったからね。でも、素晴らしかった。ある意味、宗教を見出したようなものだったよ。(笑)あれは僕の人生を変えたんだ。

——教会音楽以外で最初に惹かれたのは、誰の何という曲だったか覚えていますか?

ポール:子供の頃、教会音楽以外で聴いていたのはソウルだった。オーティス・レディングにサム・クック、そしてスタイリスティックスという70年代のグループがいた。教会音楽以外で僕が聴いていたのはそれくらいだった。サム・クックの「A Change Is Gonna Come」とか、アレサとかがいいシンガーだと思った。今でもそう思っているよ。彼らはいつの時代にも優れたシンガーだもの。ティーンエイジャーになると僕は、レイディオヘッドの『OK Computer』とかを聴くようになった。「これ、何だ?」って思ったのを覚えているよ。「ワオ、これは異質だな」って思った。



▲Sam Cooke - A Change Is Gonna Come (Official Lyric Video)

——教会で歌っていた経験は、現在のバンド活動にどんなふうに役立っていますか?

ポール:100%役立っているよ!ライブで歌うということは、そこにいるみんなと心を通わせることだと僕は思っている。本当に素晴らしいコンサートを観ると、クレイジーな気分になる。心が通い合っている気がするんだ。教会でも、ライブでも、僕は常に100%の力を出して歌う。ライブに4人しかいなくても、5万人もいても、自分が持っている力を全て出し切るんだ。


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セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズ「ヤング・シック・カメリア」

ヤング・シック・カメリア

2019/04/03 RELEASE
SICP-6085 ¥ 2,640(税込)

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Disc01
  1. 01.キュムラス pt.1
  2. 02.コンヴェックス
  3. 03.ゴットイットバッド
  4. 04.NASA
  5. 05.マチュア pt.2
  6. 06.アポロ
  7. 07.Mr.インヴィジブル
  8. 08.ハリケーンズ
  9. 09.ディシペイティング pt.3
  10. 10.リヴウィズアウトユー
  11. 11.コンケイヴ
  12. 12.ケイヴフローラ pt.1
  13. 13.ブルーズド・フルーツ
  14. 14.ゴットイットバッド (ライヴ) (国内盤ボーナス・トラック)
  15. 15.フロー・ウィズ・イット (ユー・ガット・ミー・フィーリング・ライク) (ライヴ) (国内盤ボーナス・トラック)

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