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STRAIGHTENER(ストレイテナー)『スパイラル』ホリエアツシ単独インタビュー



STRAIGHTENER(ストレイテナー)『スパイラル』ホリエアツシ単独インタビュー

 今年1月19日にアニバーサリーイヤーの締め括りとして幕張イベントホールでワンマンライブ【21st ANNIVERSARY ROCK BAND】を開催し、そこで「ファンのひとりの人生の為に1曲作りたいな」という想いから制作した新曲「スパイラル」を披露し、オーディエンスの涙を誘ったSTRAIGHTENER(ストレイテナー)。ホリエアツシ(vo,g,key)がその新曲について、自身の心境やストレイテナーの在り方の変化と共に語ってくれた。

テナー世代が築いたシーン「独特ですよね。今までになかったと思います」

--バンド結成20周年、メジャーデビュー15周年を迎えた20周年。ストレイテナーにとってどんな1年になったなと感じていますか?

ストレイテナー「21st ANNIVERSARY ROCK BAND 2019.01.19 at Makuhari Event Hall」/ティザー映像
ストレイテナー「21st ANNIVERSARY ROCK BAND 2019.01.19 at Makuhari Event Hall」/ティザー映像

ホリエアツシ:大事なアニバーサリーイヤーだったので、結構前々からどんな1年にするか考えていて、2年ぐらい頭をフル回転させていましたね。

--アニバーサリーイヤーを重要視されていたんですね。

ホリエアツシ:5年前にメジャーデビュー10周年を迎えて、そのときも大々的にいろいろやらせてもらって、日本武道館でワンマンライブ【10th Anniversary 2013.2.17 Live at 日本武道館「21st CENTURY ROCK BAND」】を開催して、それの映像作品とベストアルバム『21st CENTURY ROCK BAND』をリリースして、そこから全都道府県ツアーをまわったんですね。2013年、その10周年の年が結構大きくて。あれがあったから、その後のバンドにとって良い影響をもたらしたというか、いろんな活動のヒントになっていった1年だったので。そのときにはもう「また5年後に何をやろうか」といろいろ考えていたんですけど、それが徐々に現実として近付いてくるにつれて、考えることが多くなりすぎてパンパンでしたね。

--具体的には、どんなことに頭がパンパンになるほど熟考していたんでしょう?

ストレイテナー『PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~』楽曲ダイジェスト
ストレイテナー『PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~』楽曲ダイジェスト

ホリエアツシ:初めてトリビュートアルバム『PAUSE ~STRAIGHTENER Tribute Album~』を作ってもらったんですけど、その計画からずっと頭の回転が止まっていない感じ。それが2年ぐらい続いてました。責任感というか、人に任せられないところだったし、結果として僕たちにとっても、僕たちのファンにとっても、トリビュートしてくれたバンドやアーティストのファンにとっても、すごく「熱い愛がこもったトリビュート」というのが全面的に溢れ出ているモノになって。僕らはもちろんですけど、外からの評価も高かったから“自分の作品として”すごく誇らしいですね。達成感がありました。その辺から同世代とか近いバンドとの関わり方もさらに深くなって、去年の【ARABAKI ROCK FEST.18】でトリを務めさせてもらって、そこでもコラボをしたりとか、ステージ上でいろんな人たちとセッションさせてもらったりして、どんどんどんどん積み重なっていって。点で終わらずに全部繋がっていくような印象もありました。

--ストレイテナー世代のバンドは個性がバラバラですけど、想像以上に強い絆を持つシーンになったなと感じています。

ホリエアツシ:独特ですよね。今までになかったと思います。最初から「俺たちは同じシーンだ」とか「新しいシーンを一緒に作っていこうぜ」という意識は特になかったし、個々のバンドが個々のスタンスでやってきて、それが10年とか20年とか積み重なっていくにつれてお互いをリスペクトし合うようになっていって、いつしかすごく居心地の良いシーンが出来ていた。なので、最初から積極的に絡んできた訳ではないんですよね。で、多分、僕らより上の世代の人たちってタテの繋がりがあったと思うんですけど、僕らはあんまりそういうのはなくって、タテよりもヨコで繋がっている感じがします。

--例えば、何も知らない人がストレイテナーとACIDMANとTHE BACK HORNのアルバムをそれぞれ聴いたら、この3バンドが仲良くなるとは思わないじゃないですか。

ホリエアツシ:(笑)

--音楽性もキャラクターも全然違うし(笑)。

ホリエアツシ:テーマ性が違いますからね。

--でもそれゆえにお互いをリスペクトし合えたんでしょうね。

ホリエアツシ:そうですね。だからファン同士も繋がっていったんだと思います。少し前もストレイテナーのツアー行程とすごく近いところでTHE BACK HORNもツアーをまわっていたりして、その両方のライブに行ってるお客さんもたくさんいましたし。元々たぶん全然違うファン層だったと思うんですけど、今はファン同士が繋がっていってる感じがあるなと思います。

--メジャーデビュー10周年がその後のストレイテナーに良い影響をもたらしたと仰っていましたが、どんな音楽をこれまで表現してこれたなと思いますか?

ホリエアツシ:その5年前に、音楽的な意味で「ひとつ確立できた」という実感があったので、そこからの5年間はちょっとずつ間口を広げていくというか……それまでは「刺さるところに深く刺さってほしい」というスタンスだったんですけど、大人になるにつれて音楽に触れる機会や触れ方が変わってくる。僕自身もそうだったし、やっぱり若い頃ってのめり込んで、自分の好きなモノをどんどんどんどん探求したいと思うんですけど、そういう時間の使い方もだんだん出来なくなっていくし、おそらく僕ら世代は自分の家族を持ったり、仕事が忙しくなっていったりして、その中で自然と触れられる音楽ってオープンなモノだったりする。僕もそれは実感していて、そういう意味でだんだんと意識が変わっていくから、表現のスタンスも変わっていってる感じがしますね。

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--かつては懐疑的だった要素も「俺たちが取り入れたらどうなるんだろう」と楽しんで取り入れられるようになったりとか?

STRAIGHTENER(ストレイテナー)『スパイラル』ホリエアツシ単独インタビュー

ホリエアツシ:そうですね。ジャンルとかもね、ごく自然に取り払えるようになってきたし、日常でラジオを聴くことが結構多いんですけど、以前は自分が全く興味のないジャンルや世代の音楽が流れてきたらチャンネル変えたり、ラジオを消して自分の好きなCDを聴いたりしていたんです。でも今はそんなことなくて「最近、こっち側の音が良いんだよな」みたいな話もしますし。自分たちが作る音楽に近いモノ、意味をもたらすモノから聴いていっていたのが、全然遠いところの音楽に何かを感じさせられるようになった。そういうところは大きくなっていってるのかなって。視野が広くなっている。

--ひとつの縦軸を掘れるだけ掘って、登れるだけ登って、ひとつ確立できたモノがあるからこそ横軸も広げられるようになったところはあるんじゃないですか?

ホリエアツシ:そうですね。何も無理やり感がなくなってきた。もちろん出来ることと出来ないことはありますし、自分たちがやったところで「ダサいんじゃないか」と思うこともあるんですけど、「格好良い」って思う基準が広がってきているのかな。敢えてダサいことをやろうとは思わないですけど、「格好良い」「好きだな」って思えるモノが増えてきている気がします。以前はとにかくシリアスなモノが好きだったので、「眉間にシワを寄せていないと格好良くない」みたいな感じだったんですけど(笑)。

--ちなみに、20年間にわたって絶え間なくストレイテナーを継続できた要因は何だったと思いますか?

ホリエアツシ:僕は、自分のバンドでありながらストレイテナーのファンなんです。それがいちばん大きな要因かなと思います。ファンとしての目線があるから「こうしなきゃいけない」というよりは「こうしてほしいな」みたいな。だからメンバーひとりひとりに対しても「こういうドラムを叩いてほしい、こういうベースを弾いてほしい、こういうギターを弾いてほしい」というファン目線があったりとか、「ここまでの曲が作れたのなら、もっとこの部分を開いて出していっても良いんじゃないかな」と思ったりとか、そういう目線を持てているのは大きい。その目線が生まれたのは10年過ぎたぐらいですかね。そのあたりから曲の作り方とか解剖できているというか、自分では「ストレイテナーってこういうバンドだ」と思っていたけど、まわりの人から見たら好きな理由が実は全然違うところにあるとか、そういうことに気付いていった。若い頃に若気の至りで突っ走るのも大事だったと思うけど、その先は走る速度をちょっと緩めて、まわりの景色を見始めて成長していく。だから今は「自分っぽくないことを如何にバンドっぽく表現するか」それが面白いと思っていますね。

--3月27日リリースのデジタルシングル『スパイラル』は、今のお話とすごくリンクする部分があるなと感じました。歌詞ひとつ取っても「こんなにダイレクトな言葉で表現するバンドだったっけ?」と驚かされるような変化があって。

STRAIGHTENER(ストレイテナー)『スパイラル』ホリエアツシ単独インタビュー
▲デジタルシングル『スパイラル』ジャケット写真

ホリエアツシ:出そうと思っても飲み込んでしまうような表現が「スパイラル」の中には出てきていて。これまでは聴く人の気持ちにあんまり自分で立とうとしなくて、ちょっと遠くを見ていて、その中で自分の感情とかが自然と出てくる曲が多くて、「この人の為の曲を作ろう」とか具体的なモチーフがない曲ばかりだったんですけど、今回は「ツアー」というテーマにあって。1月19日にアニバーサリーイヤーの締め括りとして幕張イベントホールで開催した【21st ANNIVERSARY ROCK BAND】で披露した際に流した映像も自分がツアーで撮ったやつなんですけど、そういうモノも全部ひっくるめて、ファンの為というか「ファンのひとりの人生の為に1曲作りたいな」と思ったんです。

--「きみがいないせかいには いきたくない」というフレーズは、どんな背景や想いから生まれたモノなんでしょう?

ホリエアツシ:これは誰かがそう思っているというよりは、私情というか、自分の感情が出てますね。誰かの為に何かをするって、実はすごくエゴというか、自分に返ってくることを求めてるから……そこの葛藤というか、結局相手が居てくれることによって自分も生かされている。自分だけしかいなくなっちゃったら、自分が存在する意味がなくなってしまう。そういう想いですかね。ツラいことはもちろんあるんだけど、ツラさよりも先に“生きる幸福感”があることを意味している。

--すごく普遍的というか、万人に突き刺さる可能性が物凄く高い楽曲ですよね。すごく素直な歌だと思いました。

ホリエアツシ:朝、目が覚める前に、夢と現実のあいだみたいなところで作っていて。起きたときに「これ、自分の曲じゃないかもな」と思ったんですけど、ベッドを出て、ギターを持って、再現していく中で「あれ? これ、ちゃんとオリジナルかもな」と思えてきて。その日の朝のうちに一気に形になっちゃったんで、これはちょっと奇跡的な曲だなと思います。最近、アレンジでいろいろ仕掛けを作るというか「新しい要素を取り入れよう」っていう曲もあったんですけど、この「スパイラル」は素直に歌を主軸に据えながら、バンドの音も素直に出したほうがいいなと思って、シンプルなアレンジにしたらこういう形に仕上がったんですよね。

--そういう生まれ方をした曲って今まであったんですか?

ホリエアツシ:こういう生まれ方をした曲はないですかね。夢の中で曲を作ることはこれまでもありましたけど、それがきっちりそのまんまの形になっていくというのは珍しい。

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ストレイテナー×ACIDMAN×THE BACK HORN「この3バンドで旅に行きたいね」

--その「スパイラル」を初披露した【21st ANNIVERSARY ROCK BAND】はどんなライブになったなと思いますか?

ストレイテナー×秦 基博 - 「灯り」MUSIC VIDEO
ストレイテナー×秦 基博 - 「灯り」MUSIC VIDEO

ホリエアツシ:今までにない“ショウ”にしたくて、そのイメージはメンバーとも共有できてたし、とにかく「ストイックにバンドの像を見せつける」ライブは散々やってきたし、遊びの部分とか場面を変える部分とか自分たちも求めていて、そういう意味でセンターのサブステージというのもやりたいと思ったし、秦くん(秦 基博)が出てくれたのもすごく大きかった。ここでやっとコラボレーション曲「灯り」を生で披露することが出来たから。コラボレーションした後になかなかライブで共演というのが実現しなくて、結構ヤキモキしていたんですけど、「この日の為に取っておいた」と考えたら意味があったなって。逆に良かったなって。リリース直後のフェスとかでやっちゃっていたら、この幕張での共演はなかったし。あと、あの曲がなかったら「スパイラル」みたいな表現、言葉の使い方も出来ていなかったと思うんです。徐々に徐々に自分たちがやれることっていうか、自分を納得させられるようなモノが増えていて「このバンドでこれをやっていいんだ」と解けていっている。「灯り」はそのきっかけのひとつですね。

--そんなストレイテナーが今後どんな楽曲を生み出していくのか興味深いです。

ホリエアツシ:作ってみないと分からないですけど、今の気持ちとしては、今までになかったモノを創りたいし、こういう「スパイラル」みたいな曲とはまた違った意味での間口の広さ、ジャンルレス感のある音楽をロックバンドとして作っていきたい。なんだかんだで「ビックリさせたい」という想いがあって、期待に応えるよりも覆していきたいですね。今、バンドが良い状態にあるので、何かを創るときにひとつになる。なので、どういう曲を作るかは分からないですけど、良いモノが出来そうな予感はします。

--長崎を歌った新曲「LOVERS IN NAGASAKI」についても伺いたいのですが、そもそもどういった経緯で生まれたんでしょう?

長崎〇〇LOVERSソング『LOVERS IN NAGASAKI』スライドショー
長崎〇〇LOVERSソング『LOVERS IN NAGASAKI』スライドショー

ホリエアツシ:長崎市の観光大使に任命して頂いたことがきっかけなんですけど、お題というかね、写真を見て曲を作り、詞を書くっていう作品だったので、普段とは違う作家モードになれたこともあって、作家としての自分とシンガーとしての自分を際立たせた曲になっていて、めちゃくちゃ良い曲を作れたなって思います。こういう機会がないと、ここまで素直なメロディー、普遍的な音は鳴らせないと思うし、NAOTOさんとビルボードライブでのイベント【ROCKIN' QUARTET】で共演できたことで「LOVERS IN NAGASAKI」のアレンジもオファーできたので、タイミングにも恵まれたましたね。

--また、6月には、ストレイテナー、ACIDMAN、THE BACK HORNの3バンドによるスプリットツアー【THREE for THREE】が東名阪3都市で開催されます。

STRAIGHTENER(ストレイテナー)『スパイラル』ホリエアツシ単独インタビュー
▲『21st ANNIVERSARY ROCK BAND 2019.01.19 at Makuhari Event Hall [Blu-ray]』ジャケット写真

ホリエアツシ:ストレイテナーは性格が捻じ曲がっているので、この2バンドをネタにしてイジらせてもらっていて、大変お世話になっているんですけど(笑)、それぞれにアニバーサリーイヤーを同時期に迎えていて、去年の夏ぐらいから顔を合わせる度に「周年が終わった後っていったん落ち着くじゃん。そこで燃え尽きないようにしようぜ」みたいな話をしていて、それで「この3バンドで旅に行きたいね」と。なので、今一度ふんどしを締めなおして戦っていく為のツアーでもあるんですよね。あと、3バンドで「グッズ、どういうの作る?」とか「ツアータイトルどうする?」とか考えるのも楽しくて。THE BACK HORNのマツとACIDMANの大木くんと3人で夜な夜なLINEし合ってるんですけど、「大木くん、やっぱり拘り強ぇな」みたいな(笑)。最初「めっちゃふざけたツアータイトルにしようぜ」って言っていたんですけど、結果的にどんどんどんどん格好良くしようとしていて!

--大木さんっぽい(笑)。

ホリエアツシ:やっぱり三枚目にはなれない人なのかな(笑)。そういうのも面白いです。一緒に何かやろうとするとこういうことになるんだなって(笑)。

--では、最後に。ここからのストレイテナーはどうなっていくと思いますか?

ホリエアツシ:20周年は達成感もあったし、「本当にできるのかな?」と思うぐらいのことを詰め込んだから、この先はちょっと肩の力を抜いて、自然と生まれていく創作意欲を大切にしていきたい。決して生き急がずにやりたいなと思っています。

Interviewer:平賀哲雄

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