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クイーン ライブ番組一挙放送記念~『ボヘミアン・ラプソディ』チャートアクションを紐解く
世界中でクイーン旋風が吹き荒れている。映画『ボヘミアン・ラプソディ』の空前の大ヒットにより、洋楽部門のCDセールスが減少する中、サウンドトラックが大ヒットを記録。また先日の【第91回アカデミー賞】では<主演男優賞>など計4部門の受賞によりさらに注目を集め、国内の興行収入120億円突破に拍車をかけている。この空前のクイーンブームを、Billboard JAPANで発表しているチャート・アクションとともに解説。また、WOWOWで放送されるクイーンのライブ映像3作品の一挙放送を前に、その3公演の見どころをご紹介しよう。
映画のヒットに伴う音楽チャート・アクション
クイーンのボーカリストで、1991年に45歳という若さで亡くなったフレディ・マーキュリー。その壮絶な生き様に迫る映画『ボヘミアン・ラプソディ』は記録的な動員数を数え、映画史上にその名を刻む大ヒット作品となった。2018年11月9日の日本公開から75日目となる2019年1月22日、ついに日本国内での興行収入100億円を突破した本作。世界興行収入としては8.6億ドル(約953億円)を超えているが、中でも日本での興行収入は全米に次ぐ世界2位となる数字で、この結果からも本作が“日本人ウケ”したことがはっきりと窺える。
音楽を主題として掲げた映画といえば、『SING/シング』、『ラ・ラ・ランド』、『グレイテスト・ショーマン』、そして【第91回グラミー賞】で歌曲賞を受賞した『アリー/スター誕生』など、この数年間で公開されたものはいずれも話題作となっている。なぜ今、映画音楽がここまで注目を浴びているのか。その理由の一つとして考えられるのが、映画と音楽、二つのコンテンツを繋げる引力のような互助関係だ。
バンドの代表曲に加え、劇中のライブ・シーンで使用された音源なども収録したアルバム『ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)』のチャート・アクションを振り返ってみる。2018年10月19日に全世界同時リリースされた本作は、11月3日付の米ビルボード・アルバム・チャート“BILLBOARD 200”で22位にデビューし、その翌々週には3位まで上昇、クイーンのアルバムとしては38年ぶりとなるトップ3入りを果たした。その後、最新の2019年3月2日付チャートでは2位にまで到達している。
もちろん日本でもヒットした。映画の公開がアメリカから2週間ほど遅れたこともあって、日本では未公開状態のまま、サウンドトラックは2018年10月29日付のビルボードジャパン総合アルバム・チャート“HOT ALBUMS”に31位でデビュー。しかし11月9日に映画が公開されると、強力な追い風を得たと言わんばかりにセールスが急増し、11月19日付チャートで6位まで大きくジャンプアップ。現在までに首位獲得こそないものの、計16週連続でトップ10内を守り続けている。中でも映画の動員数と興行収入がピークを迎えた12月、クイーンは24日付の“HOT ALBUMS”に『ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)』を含む、計8作品をチャートインさせている。つまり、クイーン名曲の誕生秘話的な側面も持つこの映画を通じて、その楽曲の魅力は往年のファンに懐古を促しただけでなく、若い世代には新鮮な音楽との出会いをもたらし、旧作の世代を超越したリバイバルに繋がったということだ。
一方でそのサウンドトラック作品は、映画のリピーター増加に大きく寄与しただろう。特に映画をきっかけにクイーンを知った新規リスナーに顕著だと思うが、観賞後にこのサウンドトラックを聴いた時、何万人もの観衆が熱狂するあのライブ・シーンが脳内に蘇ってきたのではないだろうか。フレディのピアノの上に置かれたドリンクの位置まで徹底されたというその再現度を確かめたくなったのではないか。ライブの臨場感を映画館でもう一度体感したくなったはず。手拍子も大合唱も推奨している“胸アツ応援上映”という施策も気が利いている。
その色あせない音楽の魅力がコンテンツとコンテンツの架け橋となり、世代を超越したヒットを世界中で生み出した。映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、先日の【第91回アカデミー賞】で作品賞こそ逃したものの、主演男優賞、編集賞、音響編集賞、録音賞の最多4部門を受賞。式のオープニング・アクトは、クイーンとアダム・ランバートが飾り、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」と「伝説のチャンピオン」の2曲をパフォーマンスし、会場を大いに沸かせた。
▲Queen and Adam Lambert 2019 Oscar Opening Performance
番組情報
『クイーン ライブ・アット・ウェンブリー・スタジアム 1986』
2019年3月3日(日)午後5:30~、WOWOWプライムにて放送
2019年3月7日(木)夜9:10~、WOWOWライブにて放送
『クイーン オデオン座の夜 ~ハマースミス 1975』
2019年3月7日(木)夜8:00~、WOWOWライブにて放送
『クイーン+アダム・ランバート LIVE from SUMMER SONIC 2014』
2019年3月7日(木)夜10:30~、WOWOWライブにて放送
2019年4月26日(金)夜8:30~、WOWOWライブにて放送
番組サイトはこちら→ https://www.wowow.co.jp/special/014697
クイーンの歴史的ライブの見どころを紹介
クイーン ライブ・アット・ウェンブリー・スタジアム 1986
映画『ボヘミアン・ラプソディ』で多くの観客の涙を誘った【ライブ・エイド】への出演をきっかけに復活を遂げたクイーンは、1986年にアルバム『カインド・オブ・マジック』を発表。そのアルバムを携えた【Magic Tour】でクイーンはヨーロッパを廻ったが、本ツアーはメンバー4人が揃った最後のツアーになる。本公演は【ライブ・エイド】の開催会場であり、ツアーのハイライトとなる英ウェンブリー・スタジアムの2日目の模様を記録したライブ映像だ。2日間で延べ15万人を動員したスタジアムということで、その準備にも一苦労。序盤にはステージの建設や芝生を板で覆い隠す作業が映し出され、その規模の大きさを確認することが出来る。ライブでは、フレディの「エーオ」コールが健在で、そのコールがスタジアムの隅から隅まで響き渡る瞬間は鳥肌もの。フレディは遠くからでも分かる黄色のジャケット、ブライアンはロングヘアにボーダーシャツ、ジョンは軽やかなスポーティールック、そして髪を短くしたロジャーは相変わらず両腕にリストバンドと、メンバーにもそれぞれ個性が確立されている。このライブ映像を観て、改めて映画『ボヘミアン・ラプソディ』でメンバーを演じた俳優陣の酷似ぶりに脱帽する。このツアーまでに12枚ものスタジオ・アルバムを発表していたクイーンは、「アンダー・プレッシャー」や「地獄へ道づれ」、「ボヘミアン・ラプソディ」、「RADIO GA GA」、「ブレイク・フリー(自由への旅立ち)」など、数々のヒット曲を余すことなく披露。ラストの「伝説のチャンピオン」は号泣必至だ。だんだんと日が沈み暗くなっていく中、数万人が一緒になって手を叩き、合唱する光景は、音楽で世界を制する数少ないアーティストにのみ与えられる特等席である。その光景を映し出したこの記録的なライブは見逃せない。
収録日:1986年7月12日
収録場所:イギリス・ロンドン ウェンブリー・スタジアム
(c)Getty Images
クイーン オデオン座の夜 ~ハマースミス 1975
「ボヘミアン・ラプソディ」を収録したアルバム『オペラ座の夜』で全英チャートNo.1に輝いたクイーンが、そのリリースから約一か月後のクリスマス・イブに行った英ハマースミス・オデオン公演。現在はイベンティム・アポロに名前を変えているこの会場は、1932年の設立以降、国内外のトップ・アーティストがライブを行う聖地だ。クイーンが初めてこの劇場でライブを行ったのは、1973年の12月のこと。そこから約2年後の1975年12月24日に行われたこの公演は、その数週間前に同劇場で連日公演を行った彼らの【A Night at the Opera Tour】の全英ラスト公演を記録したものだ。メンバー4人揃って長髪にタイトスーツに決めたルックスがとても印象的だが、加えてオーディエンスとステージのその近さにも驚かされる。クイーンの定番ナンバー「ナウ・アイム・ヒア」や、「キラー・クイーン」、デビュー曲「炎のロックンロール」など、ライブで披露された楽曲は意外にも最新アルバム『オペラ座の夜』の収録曲は少なく、過去のアルバムからバランスよく披露された。当時大ヒット中だった「ボヘミアン・ラプソディ」のイントロがかかると観客が一気にヒートアップする光景が目に見える。「ボヘミアン・ラプソディ」に注目して、他のライブ映像と見比べてみるのも面白いかもしれない。現代のライティング演出と比べると質素に見えてしまうのは確かだが、メンバーのソロパートでカラフルなスポットを当てるなどして、プレイを際立たせている。ライブ中盤には、ブライアンのソロパートもたっぷり含まれているので、彼のファンは要注目だ。このライブ映像を見てハッと気付かされるのが、現在では当たり前となっているスマホのスクリーンによる光漏れが一切ないということ。そういったデバイスがまだ無かった時代だからこそ、目の前のステージに集中できる――そんな時代に憧れるばかりだ。
収録日:1975年12月24日
収録場所:イギリス・ロンドン ハマースミス・オデオン
クイーン+アダム・ランバート LIVE from SUMMER SONIC 2014
1991年11月24日、HIV感染合併症によりフレディが死去し、1997年にジョンがバンドを離れたことで、クイーンはブライアンとロジャーの2名体制となる。【Magic Tour】を最後にツアーから離れていたクイーンは、2005年に英バンドのフリーやバッド・カンパニーのボーカルを務めたポール・ロジャースを招いて、クイーン+ポール・ロジャースとしてツアーに復帰。そして2011年以降、ポールに代わってボーカルを務めているのが、『アメリカン・アイドル』出身のアダム・ランバートだ。実はアダムは、「ボヘミアン・ラプソディ」で『アメリカン・アイドル』の地方オーディションに挑み、決勝で「伝説のチャンピオン」をクイーンとステージ共演するという、バンドと深い繋がりを持つ。その共演時にクイーンから直々にラブコールを受けたというアダムは、クイーン+アダム・ランバートとして【SUMMER SONIC 2014】にヘッドライナーという大役で初参戦。今回放送される東京会場の全曲放送は本放送が初となる。ミュージカル出身のアダムらしい伸びやかでドラマチックな歌唱力とそのルックスは、フレディとは違うカリスマ性を感じさせ、オリジナルを尊重した新しいアレンジでオーディエンスを耳と目で楽しませる。クイーンの楽曲をただ再現するだけのライブバンドでは決してないこともうかがえる。ライブ中盤には、クイーンの過去の来日映像やフレディとアダムがデュエットする場面が映し出され、粋な演出に観客も涙。ウェンブリー公演で最後に“クイーン”姿になったフレディへのオマージュとも言えるクラウンを被ったアダムの歌声と、ブライアンとロジャーの超絶プレイが体中に響く「ウィ・ウィル・ロック・ユー」からの「伝説のチャンピオン」は、サマソニの歴代パフォーマンスの中でも10本の指に入るベストアクトと言えるだろう。
収録日:2014年8月17日
収録場所:千葉 QVCマリンフィールド
(c) SUMMER SONIC All Rights Reserved
番組情報
『クイーン ライブ・アット・ウェンブリー・スタジアム 1986』
2019年3月3日(日)午後5:30~、WOWOWプライムにて放送
2019年3月7日(木)夜9:10~、WOWOWライブにて放送
『クイーン オデオン座の夜 ~ハマースミス 1975』
2019年3月7日(木)夜8:00~、WOWOWライブにて放送
『クイーン+アダム・ランバート LIVE from SUMMER SONIC 2014』
2019年3月7日(木)夜10:30~、WOWOWライブにて放送
2019年4月26日(金)夜8:30~、WOWOWライブにて放送
番組サイトはこちら→ https://www.wowow.co.jp/special/014697
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