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デヴィッド・T. ウォーカー来日記念特集~ジャンルを越えた大物たちを広くサポートしてきた稀代の名ギタリスト~
60年代からモータウンの代表的アーティスト、スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイ、ジャクソン5、シュープリームスらのバックを務め、同時にアレサ・フランクリンやレイ・チャールズ、バリー・ホワイトといったソウル〜R&Bシンガーたち、クインシー・ジョーンズやクルセイダーズ、マリーナ・ショウといったジャズ・アーティスト、そしてキャロル・キングや日本のDreams Come Trueに至るまで、ジャンルを越えた大物たちを広くサポートしてきた稀代の名ギタリスト、デヴィッド・T.ウォーカー。そうしたセッション活動に併行して、60年代終盤から積極的にリーダー・アルバムを作り、その数は今や15枚を数える。更にジョー・サンプル、チャック・レイニーとのプロジェクト作品や、日米混成のバンド・オブ・プレジャーなど、重要作品は枚挙に暇がない。
68年のモータウン・レビュー(スティーヴィー・ワンダー、マーサ&ザ・ヴァンデラス)を皮切りに、来日回数も多数。特に80〜90年代は、クルセイダーズのサポートやDreams Come Trueのセッションなどで来日を重ねてきた。でもソロでの来日公演が実現したのは、実は割と最近で、わずか12年前の07年のこと。その前年に、70年代にオード・レコードからリリースした人気ソロ作『DAVID T. WALKER』 (71年:通称REAL T.)、『PRESS ON』(73年)、『ON LOVE』(76年)が3枚まとめて初CD化されたのがキッカケで、多くのデヴィッド・T.シンパが詰めかけた熱気溢れるステージが展開された。通常セッション・ギタリストの単独公演というと、ジャズ・フュージョン系ファンかアマチュア・ギタリストが客席を埋めることになるが、彼の場合はスタジオ・ワークの守備範囲の広さを反映してか、ソウル・ファンや西海岸ロック好きも足を運び、幅広いファン層で大盛況。そしてこれ以降ソロ公演は順調に回数を重ね、その合間にはマリーナ・ショウのレギュラー・バンドやバンド・オブ・プレジャー、ラリー・カールトンやエヂ・モッタのショウでの客演などでも日本へ来てくれた。だから少なくても年1度くらいは、ポロンポロンと乱れ舞う甘美なギター・プレイに、ナマで酔うことができた。
そのデヴィッド・T.がこの3月、1年2ヶ月ぶりにソロ・ツアーで来日する。ただ今回の公演は、これまでとは少しニュアンスが違うことになりそうだ。最大の要因は、ソロ名義のすべてのジャパン・ツアーに同行してきたレギュラー・ドラマー:ンドゥグ・レオン・チャンスラーが昨年急死し、ジェイムス・ギャドソンがその後任に就くこと担っているからである。前回来日の際、激ヤセしていたンドゥグに心配の声が上がったが、“病気ではなくて健康的に痩せた”という返事をもらっていた。ところが実際は…。 でもファンの皆さんならよくご存知のように、デヴィッド・T.とジェイムス・ギャドソンも旧知の仲である。マーヴィン・ゲイなどL.A.でのモータウン・セッションを共に支え、かつてのデヴィッド・T.ソロ作でもボトムを固めていた間柄だ。その意味では、ンドゥグよりギャドソンの方がデヴィッド・T.との付き合いは長く、ギャドソンとのパフォーマンスに期待する声も高いようである。パーカッシヴで若干派手なドラムを叩くンドゥグに対し、ギャドソンはスムーズなグルーヴでジワジワとゆっくり盛り上げていく。他の2人、バイロン・ミラー(b)とジェフ・コレラ(kyd)は不動なので、そのスタイルの違いがバンドとどう共鳴し合うのか。そこに耳をそばだてつつ、熱い想いを籠めて見守りたい。
更に2019年は、モータウン60周年のアニヴァーサリー・イヤー。以前自らが参加したモータウンの名曲たちを、自分のアルバムで再演しているデヴィッド・T.だから、ステージでもマーヴィン・ゲイ「What’s Going On」や「I Want You」、『Inner City Blues』、スティーヴィー・ワンダー「Superstitions」、ジャクソン5「I Want You Back」「Never Can Say Goodbye」、マーサ&ザ・ヴァンデラス「My Baby Loves Me」、など、毎回多くのヒット曲を披露している。でも今回はその比重が少し増してくるかも。以前のショウでも、“モータウン・クラシック”をテーマにセットリストを組んだことがあったと記憶するが、まもなく行われるショウも、その再現プラス・アルファが基本フォーマットになるかもしれない。 とはいえ、メロウネスの極致をたっぷり堪能させてくれるデヴィッド・T.のギター・プレイには、何の変化もないはず。御歳77歳ながら、その演奏は枯れることなく、未だにセクシー。そんな3月のライヴが、今から愉しみで仕方がない。
▲David T. Walker - What's Going On (Live)
公演情報
デヴィッド・T. ウォーカー
featuring ジェフ・コレラ, バイロン・ミラー and ジェ-ムス・ギャドソン
ビルボードライブ東京:2019/3/5(火)-6(水)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2019/3/8(金)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
Text: 金澤寿和
ミュージック・フォー・ユア・ハート ~ベスト・オブ・デヴィッド・T.ウォーカー~
2017/10/10 RELEASE
UCCR-1064 ¥ 2,750(税込)
Disc01
- 01.Eleanor Rigby
- 02.Love’s Theme
- 03.あなたのかわいい人
- 04.Street Life
- 05.God Bless The Child
- 06.Holidays Are Mirrors
- 07.お願いします
- 08.For All Time (Overture)
- 09.Global Mindfulness
- 10.Justified
- 11.Song For My Father
- 12.Thoughts
- 13.Soul, In Light & Grace
- 14.Wear My Love
- 15.I Want You
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