Billboard JAPAN


Special

<インタビュー>ジェニーハイの軌跡と今後について 「Lemon」ならぬ「Mikan」でチャート首位を狙う!?



インタビュー

 川谷絵音がプロデュース兼ギターを務め、中嶋イッキュウ(tricot)、小籔千豊、くっきー(野性爆弾)、新垣隆がメンバーとして名を連ねる異色バンド=ジェニーハイ。BSスカパー!の番組『BAZOOKA!!!』から生まれたこのバンドは、夏フェス出演やミニアルバムのリリースなど、派生元の番組を飛び出して活動規模を拡大している。今回ビルボードジャパンでは、改めてバンドの成り立ちからデビューまでの足跡を追うとともに、普段のメンバーはどのように音楽を楽しんでいるのか、今回は残念ながら欠席したくっきーを除く4人に話を訊いた。

 お笑い芸人、ロック・ミュージシャン、現代音楽家――いまだかつて類を見ないキメラ的混成バンドとして誕生したジェニーハイ。やはり音楽との接し方はメンバーそれぞれだった。それはおそらく、このバンドの“面白さ”を形成する要素の一つなのだろう。そして、何よりバンドのブレーンを務める川谷絵音の“音楽のヒット”に対する知見の深さには驚かされた。メンバー誰かのファン、あるいはジェニーハイのファンだけに留まらず、少しでも多くの音楽人に読んでいただければ幸いである。

――まず最初に、このバンドの成り立ちについて教えてください。

小籔千豊:言いだしっぺは『BAZOOKA!!!』のスタッフでした。番組が2017年にリニューアルして、レギュラー・メンバーとしてイッキュウさんが入ってきてくれたんです。そしたらくっきーも芸人やりながらバンドしてるし、僕もドラムのレッスン行ってるから、「番組でバンドを作るってのはどうでしょう?」って。

――わりと唐突な感じで?

小籔千豊:最初は「はいはい、そうですね」って感じだったんですけど、何回も言ってくるから「本気ですか?」って言ったら、「本気です」って言ってきた。だったら曲を作ってくれる人とか、ギターやピアノを弾いてくれる人が必要じゃないですか。僕は全然下手やし、むっちゃ上手い人がいないと紛れない。スタッフさんにも「誰を入れたいですか?」って聞かれたから、僕は「ベストはギターに川谷さん、キーボードに新垣さん」って答えたんです。自分でも言いながら「これはちょっと無理かもな…」とは思ってましたけど、番組スタッフは音楽のことをなんも分かってないので、「オファーするだけしましょうか」って言うんですよ。そしたらお二人とも引き受けてくれることになって。

――バンドが成功する予感はありましたか?

小籔千豊:「面白くなりそうやなぁ。どうなるんやろ」くらいでしたけどね。そのあと川谷Pが曲を作ってきてくれて、2月にレコーディングして、3月にお披露目したんです。で、その2日後に新曲が4曲きて、スタッフに「5月に録ります」って言われたんですよ。素人に2か月で4曲やらせるって、めちゃくちゃスパルタじゃないですか? だから「うおーっ」て必死に練習しましたよ。そしたら7月に【JOIN ALIVE 2018】に出ることが決まって、また練習。9月には【コヤブソニック2018】に出て、気付いたら10月17日を迎えてCDが発売されて、iTunes 1位、Apple Music 1位、タワレコさんも売り切れたところが結構あるみたいで、「なんやこれ…?」ってなりましたね。



ジェニーハイ「ランデブーに逃避行(LIVE ver.)」

――川谷さんはオファーが来た時、どう思いましたか?

川谷絵音:嬉しかったです。テレビとかを通して小藪さんが曲を聴いてくれていることはなんとなく知っていたし、「面白そうだな」と思ったので、特に迷うことなく「やります」って答えました。

――indigo la Endやゲスの極み乙女。をはじめ、今や川谷さんはたくさんのプロジェクトを抱えていますが、その活力になってるものはなんだと思いますか?

川谷絵音:いや、何も考えてないんですよ。別に重荷だとも思わないし、やりたいことをただやってるだけで。後々スケジュールを見て「うわ、キッツ」って思うことはありますけど、それぐらいですね。最初から「これをやるとキツいな」と思って断ったことはないです。

――新垣さんはいかがでしたか?

新垣隆:例の騒動があった時、小藪さんの番組が一番初めに自分を取り上げてくださって、その中で音楽家として紹介してもらえたことに助けられた面がとても大きかったんです。そのあと小藪さんに何度か『BAZOOKA!!!』に誘ってもらって、去年の夏頃にバンドのお話をいただいて、「それはもう是非」ということで参加させていただきました。

――イッキュウさんはtricotのフロントマンとしても活動されていますが。

中嶋イッキュウ:番組の企画ということもあって、最初はここまでの規模になるとは思ってなかったですね。「楽しそうだからやりたい」って流れに身を任せているうちにここまできた感じです。

――川谷さんとイッキュウさんはこれまでもバンドで活動されてきましたが、ジェニーハイを始動して新しく得られたものはありましたか?

川谷絵音:僕が今までやってきたバンドのメンバーって、みんな難しいことができる人たちだったから、楽曲もどこまでも難しくできちゃうんですよね。でも、ジェニーハイに関しては「リズムをシンプルにしよう」とか「ベースを分かりやすくしよう」とか、そういったところからスタートしたバンドなのでいつもとは違ったんです。すると「ここをシンプルにすると歌が映えるな」とか逆に気付くこともあって、曲作りの面で刺激を受けましたね。別にそれを「他のバンドに還元しよう」みたいな目的があるわけじゃないんです。ただ、僕はわりと足し算ばっかりするタイプで、引き算的な制作アプローチはあまりしてこなかったので新鮮でした。

――他のバンドと混同する部分ってないのでしょうか?

川谷絵音:indigoとゲスに関してはごっちゃになって考えることもありますけど、基本的には「この日はこのバンド」みたいにハッキリと分けてます。ジェニーハイは自分がメンバーで、なおかつヴォーカルが別にいる唯一のバンドなので、その時点でもう分かれますね。DADARAYもヴォーカルは違いますけど、メンバーとして自分が参加してるわけじゃないですし。

――メンバーとしてプロデュースすること、外部のプロデューサーとして関わること、それぞれの違いは大きいですか?

川谷絵音:違いますね。やっぱりメンバーが並んでる中に自分がいるかどうかは大きな違いだと思います。

――イッキュウさんはtricotとのバランスはいかがでしょうか?

中嶋イッキュウ:tricotの結成からもう8年くらい経つので、バンドを新しく組むということ自体が8年ぶりになるんですよ。だからその結成したての感じというか、メンバーと意思疎通させていく作業とか、練習していて「やっと合ってきたな」って感じることとか、すごくワクワクしてます。

――初期衝動を思い出すような。

中嶋イッキュウ:あと、tricotでは自分でメロディを作って歌っていて、それはクセでやってるところも大きいから、自分では気づけないことが多いんです。何か新しいことをしたいと思った時、誰かから受けた刺激を反映させると「ちょっと新しくなれたかも」って思うことがあるんですけど、ジェニーハイは自分がバンドの中にいる分、もろに他のメンバーから刺激を受けている。絵音さんが書いたメロディや歌詞も、自分が歌うんだって考えると聴こえ方も違ってきて、tricotでは得られなかったものばかりです。

――具体的にはシンガーとしてどんな引き出しが増えたと思いますか?

中嶋イッキュウ:tricotでは結構力任せに、感情的に歌うことが多いんですけど、ジェニーハイでは「こういう曲です」ってことをちゃんと伝えようと考えながら歌ってますね。絵音さんが作ったイメージを「どんな感じなんやろ」って考えながら。ちょっと柔軟になった気がします。

――なるほど。ミニアルバム『ジェニーハイ』ですが、まず手応えをお聞かせください。

小籔千豊:音楽的なことはPに丸投げしていたので、僕が仕上がりに関して言うのはあれですけど、「色んな人に好きになってもらえるやろうなぁ」って思いました。僕はゲスもtricotも好きやけど、例えばゲスもあんま好きちゃう、tricotもあんま好きちゃう、僕もくっきーもあんまり好きちゃう、新垣さんのことはもう嫌いや!っていう人にも…

一同:(笑)

中嶋イッキュウ:その人は新垣さんに何されたんや!(笑)

小籔千豊:僕は売れる売れへんの前に、なんとか成立させることに精一杯でした。それで練習中にゲスの新曲を聴いたりすると、普通に音楽として楽しむというより、「ここ、めっちゃむずそう」とか「この部分はできそう」とか「このフィルインは苦手なやつや」とか、そういう聴き方をするようになって(笑)。

――好きなバンドの曲も聴き方が変わったわけですね。

小籔千豊:ジェニーハイの曲も、一生懸命練習して全部通せるようになってから初めて「あ、この曲好きや」って思うようになるんですね。まぁ、これだけちゃんとした方々がおるから、「確かなものにはなるやろな」とは思ってましたけど、思ってた以上に売れてるので、ホンマはちょっと引いてます。

――【JOIN ALIVE 2018】では念願の夏フェス出演も叶ったわけですが、ライブのパフォーマンスを振り返ってみていかがでしたか?

小籔千豊:僕はなんとなく舞台立てば余裕やろって感じでしたね。Pとガッキーとイッキュウさんがおればミュージシャンとして成立する。だからトークでスベったとしても曲が良いから大丈夫やろうし、万が一に曲があまりウケなかったとしても、くっきーがおるからトークで盛り返せるやろ、と。音楽フェスなら誰かしらのファンはおるやろうし、全然ホームやと思いました。この5人やったら楽器無しでも30分持たせる自信あります。

――新垣さんは夏フェスいかがでしたか?

新垣隆:もちろん特別なことでしたけど、私はみなさんに寄りかかってる感じなので、いつも安心して演奏してます。バンドとして楽しいなって思いながら。ただしラップは除きます。

一同:(笑)



ジェニーハイ「ジェニーハイのテーマ」MUSIC VIDEO

――「ジェニーハイのテーマ」はメンバー全員の自己紹介ラップ・ソングでしたね。ミュージック・ビデオでは謎の行進のようなダンス(?)も披露してますが、あれの発端は…?

小籔千豊:番組中に僕とイッキュウさんとくっきーでPを尋ねた時、「ほな、いきましょか」ってグレイシー・トレインみたいな感じで行ったんです。で、フェスに出た時「あれで登場しよう~」って軽いノリでやったんです。くっきーはすごく嫌がってましたけど、それが採用された形です。

川谷絵音:ジェニーハイ・トレイン。

――あとハンド・サインも…。

川谷絵音:「g」ポーズですね。

中嶋イッキュウ:最初間違ってたんですよね、「j」にしちゃってた。

小籔千豊:「銭(ゼニ)」にもちょっとかけてますね。

――川谷さんはミニアルバムを作るにあたって、まず作品の方向性を決めたりしたのでしょうか?

川谷絵音:いやぁ、全然決めてないですね。ばーっと作って、ばーっと録ったって感じです。とりあえず1枚出さないと分からないんですよね、バンドって。むしろジェニーハイは、そういうの作らなくてもいいんじゃないかなって思います。もしかしたら次の新曲もラップかもしれないし。

新垣隆:(表情を曇らせながら)それはやめましょう…。

小籔千豊:こんなしかめ面のガッキー見たことない(笑)。

川谷絵音:「ジェニーハイのテーマ」はMVの再生回数の伸びが良かったし(笑)。

小籔千豊:まさかのヒップホップ・ユニットに…。そしたらラップ苦手なガッキーはDJやりますか。

――イッキュウさんはいかがですか? このアルバムの仕上がりに関して。

中嶋イッキュウ:バラエティに富んでるというか、6曲とも全然違う曲だったので、アルバムとしては少ない曲数だとは思うんですけど、充分楽しめるなって思いました。次にどんなものが来るかも全然分からないですし。それはお客さんやCDを買ってくれた人も同じだと思うんです。こんなにバラエティ豊かな曲が入ってたら、次にどんな曲がくるか全然予想できない。tricotみたいにバンド全体で曲を書いてるわけじゃないからこそ、今後どういう風になっていくのかなって楽しみになってます。

――ジェニーハイの活動で糧になったものはありましたか?

中嶋イッキュウ:そうですね。私生活でちょっとイラッとしたことがあっても、ジェニーハイのこと考えたら「自分の人生、すごく恵まれてるな」って思えるようになって、なんだかポジティブになりました。

一同:(笑)

中嶋イッキュウ:新垣さんのコンサートを観に行かせてもらった時、「こんなに素晴らしい人とバンドやってるんだ」って、すごく感動して帰ったのを覚えてます。

川谷絵音:新垣隆さんとバンドできる人なんて、きっと後にも先にも僕らだけだと思います。



――みなさん、普段はどのように音楽を楽しんでいますか?

小籔千豊:スマホで聴きますね。CDを買ってインポートする時もあるし、1,000円くらいの聴き放題サービスを使う時もあります。僕コピバンやってるんですけど、練習する時にゆっくりになるアプリがあるんですよ。それは買った曲じゃないと再生できない。だから「この曲コピーしたいな」って時は、その曲を買ってスピードを変えて練習したりします。

――プレイヤー的な聴き方ですね。

小籔千豊:ここ2年くらい、YouTubeや聴き放題サービスで「よそのバンドさんはどんなことしてはんのやろ?」って聴いているのは、自分の勉強のためにしてる部分もあるんですよ。僕、あんまりバンド聴いてこなかったんで。「さぁ、自分でバンドするぞ」ってなった時にどうしたらいいか分からなかった。だから聴く音楽のジャンルはかなり拡がりましたね。

中嶋イッキュウ:私もサブスクリプションですね。そもそもCDをほとんど買ったことがなくて。お兄ちゃんがずっとCDを集めていて、それをずっと聴かせてもらっていたので、自分で買うっていう習慣がなかったんです。だから初めてCD屋さんに入ったのも、自分のCDがリリースされて挨拶回りに行った時でした。

川谷絵音:へえ、そうなんだ! 意外。

――お兄さんはどんな音楽を?

中嶋イッキュウ:めっちゃいろいろ聴いてましたね。洋楽も邦楽も、インディーズものまで。10-FEETとかすごく聴いてたかな。家がCD屋さんって感じ。で、お兄ちゃんがずっとリビングで流してるんですよ。それを聴いて「いいな」と思ったやつを借りたりしてました。

――自分から積極的にCDやレコードを探しにいく、ということはなかったんですね。

中嶋イッキュウ:今は、音楽を聴きたくなるきっかけってライブなんですよね。ライブに行って新しい音楽と出会って、それを聴きたいからサブスクリプションで探す、って感じです。共演したバンドを好きになって聴くことも多いですし。ライブがかっこいいバンドが好きなんですよ。

――最近ライブで惚れたバンドは?

中嶋イッキュウ:最近対バンしたSurvive Said The Prophetはめっちゃかっこよかったです。あまり前情報もない中で誘ってもらって、ライブ見たらすごく良かった。帰ってからずっと聴いてましたね。



Survive Said The Prophet - found & lost | Official Music Video

――新垣さんは普段、音楽をどのように聴いていますか?

新垣隆:最近はYouTubeですね。自分の音楽体験は20歳くらいまでが大きくて、その当時はFMラジオをチェックして、レコードとかカセットテープで聴いてました。

――自分から新しい音楽を探しに行くタイプでしたか?

新垣隆:20代くらいまではそうでしたね。今ではYouTubeで昔の音楽も最近の音楽も全部聴けちゃうので、すごい時代ですよね。でもすごく良いことだと思います。

川谷絵音:僕もサブスクですね。ほとんどのサービスに登録してます。KKBOXはアジアの音楽に強いなど、それぞれ特色がありますから。

――プレイリストで聴くことが多い?

川谷絵音:そうですね。例えば『Pitchfork』のプレイリストをバーって聴いて、良かったものだけをレコードで買って聴いたりします。ミスチルの最新作(『重力と呼吸』)がCDでしかリリースされていないので、久々にCD買いましたけど、今はほとんどサブスクかレコードですね。

――レコードを購入するのは所有欲から? それとも音?

川谷絵音:音ですね。CDでは聴けない音がレコードにはあるんで。

――では、やはりサブスクのプレイリストで新しい音楽と出会うことが多い?

川谷絵音:そうですね。あと、海外ブロガーのオススメもよくチェックしてます。ほとんど刺さらないんですけど(笑)。ただ、たまにすごい当たりがある。

――リスナーにとっては国境も年代も関係ない時代で、聴ける音楽の母数が大きくなればなるほど、それぞれ好みの当たり外れも顕著になっていきますよね。

川谷絵音:今は音楽へのアクセスが本当に楽で何でも聴けちゃうから、逆に最近疲れてきちゃって(笑)。新しい音楽もほとんどがヒップホップじゃないですか。フジロックに行っても打ち込みばっかりで。だから結局、昔に聴いてた音楽を引っ張り出してきたり、ずっと同じものばかりを聴き続けるループに入ったり。そういうのがしばらく続いたりすると、また「サブスクで聴こう」ってなったり。でもレコードに関しては同じものばかり聴いてますね。

――打ち込み主体の音楽は好みではありませんか?

川谷絵音:打ち込みは好きなんですけど、最近のプレイリストは同じような音が多すぎて耳が疲れちゃって。

――最近のオススメのバンドを教えてください。

川谷絵音:Heavy EnglishっていうNYの三人組のバンド。まだ全然知名度はなくて、YouTubeの再生回数も大したことないんですけど、めちゃくちゃイイですね。元々シューゲイザーやオルタナがすごく好きで、ギタートーンもクランチな音が一番好きなんです。そういうタイプでバチコーンってハマるバンドが最近いなかったんですけど、久々にきましたね。ハードロックとかも通ってそうな感じ。普段ハードロックそのものは聴かないんですけど、ハードロックを通過した音楽は好きなんですよね。



Heavy English - 21 Flights



――世代も音楽遍歴もバラバラな皆さんですが、普段チャートを見ることはありますか?

小籔千豊:この業界に入るまでは見てましたね。当時はランキングもいっぱいありましたし。あとは車に乗ってる時とか、FMでランキング形式の番組が流れてたように思います。20歳くらいの時、ジャケ買いしてみたCDがクソほど良くなかったり、店員さんのコメントに惹かれて買ったやつが「なんやこれ…」って感じだったりしたので、素人にはチャートってすごく便利ですよね。Pみたいにばーって聴いて良さげな音楽を探すって作業は、なかなか普通の人間にはできないと思いますし。

――最近はあまり見ないですか?

小籔千豊:ありがたいことに忙しくさせていただいてるので、なかなか余暇の時間がないんです。大阪帰っても新喜劇の打ち合わせとかバンドの練習とかしたり、家族と過ごすしたり。今年は音楽に接近しまくってることもあって、趣味を挟む隙間がないですね。

新垣隆:でも、ジェニーハイのランキングの結果は気になりますね。

川谷絵音:僕、ばりばりチャート見てますよ。だいたいの売上枚数なら、他のアーティストの方の数字も把握できてると思います。チャートを見過ぎてて、発売される前から「この人はこのぐらい売れるだろうな」って分かる気しますし、おおよそ予想通りになるんです。レコード会社の方より詳しい自信がありますよ(笑)。専門学校で授業とかしたいくらい。「この曲はSNSでこのくらい話題になって、このくらい売れて、こういう推移をしていて…」とか。だからビルボードジャパンのチャートは良いなって思います。

――ビルボードジャパンではCD売上、ダウンロード、オーディオ・ストリーミング、ラジオ・オンエア、ルックアップ(CDの読み取り回数)、ツイート数、動画再生回数の7指標からなる総合チャートを発表しています。

川谷絵音:CD売上だけじゃなく、配信とか動画再生回数とかも合わせないと、今の時代は何が流行ってるか分からないですよね。例えば、あいみょんって、CD初週売上だけだとそこまで上位にはならないですけど、ストリーミングも合わせたら、ものすごい回数が聴かれているじゃないですか。一見、CDがそれほど売れてないアーティストでも、実際はすごく聴かれていたりする。あいみょんみたいに、サブスクですごく聴かれているアーティストを見てると、「新しい時代が来てるな」って思いますね。

中嶋イッキュウ:CDの読み取り回数も分かるんですね。

――オンラインの機器にCDを取り込むと、曲名やアーティスト名が出ますよね。あれはGracenoteデータベースに登録されている情報にアクセスしているんです。その回数をルックアップと呼んでいます。

川谷絵音:ジェニーハイはビルボード・チャート向きだと思います。配信とかYouTubeの再生回数も多いので。

小籔千豊:Twitterでも呟かれてるよね。

川谷絵音:今すごく伸びてきてる。ただシングルは出してないからな…。

小籔千豊:じゃあ次はシングルですね。

中嶋イッキュウ:バンドのミーティングをしてるみたい(笑)。

――川谷さんはそういった部分も含めてプロデューサーなんですか?

川谷絵音:いや、これはもう趣味です(笑)。アーティストの顔を見ると上に数字が出てくるくらい、真剣に追っちゃうんですよね。

――ドラゴンボールのスカウターのような(笑)。逆にこういった指標があるといい、みたいなメディアはありますか?

川谷絵音:ツイート数の集計まで入ってるのはすごいですよね。そこまでくるとなかなか…。インスタでCDの画像を載せてる投稿の数とか?

小籔千豊:これからはインスタやね。

川谷絵音:あとはYouTube Musicが始まったらどうなるか…。

――話題は変わりますが、みなさんがヒットを感じる瞬間ってどんな時ですか?

小籔千豊:僕自身は『すべらない話』に出た後、山形県で道を歩いていて顔を指差された時に「売れた」って思いました。『吉本新喜劇』はMBS(毎日放送)だけなので。あと、(タレントの)彦麻呂さんと関西テレビのフロアでぶつかりそうになった時に、僕を見て美味しそうな食べ物を見つけた時と全く同じ顔したんですよ。「わぁ~、『すべらない話』に出てた人や~」って。その時も「売れた」と思いましたね。

――めちゃくちゃ具体的ですね(笑)。

川谷絵音:僕は甘利大臣(経済財政相)が「私以外私じゃないの」の替え歌をうたってた時は、「すごいことになってるな」って思いましたね。

小籔千豊:マイナンバーカードのやつ。あれは語呂、悪かったよなぁ。

――分かりました(笑)。では最後に、ジェニーハイの今後の野望を教えてください。

川谷絵音:ビルボードジャパンのチャートで1位ですね。「U.S.A.」を超えたい。

――おぉ、打倒「U.S.A.」!

川谷絵音:あとは「Lemon」ですけど…あれを超えるのはかなり難しいのかなと思います。ここ10年でもトップレベルのヒット曲の一つですよね。

――ビルボードジャパンの年間チャートでも、今年は「Lemon」が現時点で暫定首位です。

川谷絵音:圧倒的ですよね。

――「Lemon」がヒットしている要因って、川谷さんは何だと思います?

川谷絵音:例えばもうすでにヒットしていて、若い人がたくさん聴いてるイメージのあるアーティストだと、グレー層の人たちは入りづらいと思うんです。「若い人の音楽だから…」みたいな。あと、そういったアーティストを斜めに見てる人たちも絶対にいる。でも、米津玄師ってめちゃくちゃ良い意味で“ちょうどいい”んだと思うんです。たくさんの人が聴いてるけど、エッジィでオシャレな感覚もあるというか。

――ポップとコアの中間みたいな。

川谷絵音:そうです。音楽的な良さももちろんありますけど、「米津玄師を聴いてる」って言われたら「私も聴いてる」って言いやすい状況なのかなと思います。

――なるほど(笑)。

川谷絵音:もちろん今後、米津玄師もどんどん“売れてる人”になっていくので、それだけで斜めに見るリスナーも一定数は出てくるとも思います。そういう意味でも「Lemon」を超えるような未知の新曲がすでに楽しみですよね。

小籔千豊:じゃあ、僕らも「Mikan」って曲を作って対抗しましょう!

一同:(笑)

写真





Interview by Takuto Ueda / Photo by Yuma Totsuka

ジェニーハイ「ジェニーハイ」

ジェニーハイ

2018/10/17 RELEASE
WPCL-12939 ¥ 1,650(税込)

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Disc01
  1. 01.片目で異常に恋してる
  2. 02.ランデブーに逃避行
  3. 03.強がりと弱虫
  4. 04.スーパーマーケットフレンド
  5. 05.ジェニーハイのテーマ
  6. 06.東京は雨

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