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ヴァネッサ・カールトン来日記念インタビュー ~新しい音楽の世界への旅路にオーディエンスも連れて行きたい
米シンガーソングライター、ヴァネッサ・カールトンが2018年12月に16年ぶりの来日公演を開催する。Billboard Hot 100で最高5位を獲得したデビュー曲「A Thousand Miles」は、リリースから15年以上経った今でも、CMやドラマに使用され、耳に残るメロディーと切ない歌詞で多くのリスナーの心を掴んでいる。これまでに5枚のアルバムを発表しているヴァネッサは、作品ごとに新たなサウンドに挑戦し、今年は6か月連続でカバーソングを発表。フリートウッド・マックやニール・ヤング、ロビンなど、様々なジャンルの楽曲を彼女なりの解釈とサウンドで生まれ変わらせた。今回Billboard JAPANが行った最新メールインタビューでは、このカバー曲や曲作り、#MeToo運動など、この16年間における彼女の変化と活動を追う。
新しい音楽の世界への旅路にオーディエンスも連れて行きたい
−−デビューしてから、この16年の間にフルアルバムを5枚リリースしていますが、この年月の間で、音楽に対する姿勢や、あなたが作る音楽に変化はありますか?
ヴァネッサ・カールトン(以下:ヴァネッサ):一人の人間として変化を遂げてきたし、それが私の作品やミュージシャンとしての展望に反映されているわ。初期の私はすごく若かったし、私よりも力を持った人たちを喜ばせようと頑張っていたと思う。今の私が力を入れているのは感性を磨くことと、自分に縛りを作らず、新しいことに挑戦すること。まだ開拓したことのない、新しい音楽の世界に身を置きたいし、その世界への旅路にオーディエンスも連れて行きたい。誰もが変化をしていくなか、みんなどこかで繋がっているようなね。
▲Vanessa Carlton – Willows
−−2017年4月に米Billboard.comが行った「A Thousand Years」の15周年インタビューの中で、「20代前半でアルバムをリリースするには未熟だった」と告白されていましたが、現在はどうでしょうか? 昔より自信は付きましたか?
ヴァネッサ:20代の頃は、学ぶべきことがたくさんあったし、それは今でも変わらない。世界中にその作品が知れ渡る前に、きちんと時間をかけて“寝かせる”アーティスト達を参考にしていたのに、人生で初めて書いた曲が、まるでそれらが私を定義付けるようなかたちで表に出てしまって、すごく悪戦苦闘していたわ。でも今の私は、それを受け入れているし、一人の人間として、そしてミュージシャンとして成長するための過程における人生経験の一つなんだと認識しているわ。今、新しいアルバムに取り組んでいるところなんだけど、この作品が伝えるものとは何かを熟考したわ。
−−デビュー・アルバム『Be Not Nobody』や初期の作品に比べると、近年の作品はサウンドも違う作品になっていますね。曲作りで一番重要視していることは何でしょうか? ピアノでメロディーを作るところから始めることが多いですか?
ヴァネッサ:アルバムにはコンセプトがあるべきだと私は思っていて……、でもそのコンセプトがどんなものになるかは、何曲か作ってみないと見えてこないの。ここ最近だと、一度頭の中で歌詞の構想を考えてから、その歌詞に合うメロディーを考えているわ。でも、ほとんどは、音が先に浮かんで、それから私が伝えたいストーリーが後から舞い降りてくることが多いわね。
−−発表から15年以上経った今でも「A Thousand Years」は世界中で愛されています。あの象徴的なイントロは、ザ・フーの「Baba O'Riley」やアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」、コールドプレイの「The Scientist」のように、一瞬でリスナーを引きつけるものになっていますが、瞬時に人々の心を掴むコツはどんなものだとお考えでしょうか?
ヴァネッサ:私が思うのは、人は歌い手が本心で歌っている曲に魅了されやすいということ。「A Thousand Years」は、17歳の少女が心から書いた曲。私は誰かの真似をしようなんて、少しも思わなかった。それがラッキーなことにウケたのよね!
▲Vanessa Carlton - A Thousand Miles
−−俳優のテリー・クルーズがコメディ映画『最凶女装計画』(2004年)で、この曲を歌いブレイクしましたが、ハリウッドのセクハラ被害を告白した数少ない男性の一人です。ヴァネッサもバレエ界のおけるセクハラ問題について声を上げていますよね。その勇気ある行動には反対の声もあったと思いますが、背中を押してくれた存在とは?
ヴァネッサ:娘が私のモチベーションの源よ。彼女の面倒をしていなければ、ここまで勇敢になれていなかったかもしれない。今後生まれてくる子供たちにとって、今より良い世界でなくてはならないから、そのためにリスクを負うのは当然。より良い世界にするためなら、何だってする覚悟よ。#MeToo運動によって、女性にも変化が起きている。社会の文化が目を覚まし、変化に気づき始めているわ。
−−#MeToo運動を経て今回カバー曲が6曲リリースされましたが、これらを選んだ理由は何でしょうか?
ヴァネッサ:女性が書いた、もしくは歌った曲をカバーしたかったの。例外だけどニール・ヤングが入っているのは、それは彼が、私が愛するロマンチストの一人だから。私の仕事仲間も彼のことが大好きよ。
−−スティーヴィー・ニックスとは、プライべートでも付き合いがあるようですが、今回、彼女が歌う「Dreams」をカバーすると決めた時、彼女と何か話をしましたか?シンガーとして、そして女性として、スティーヴィーからどんなことを学びましたか?
ヴァネッサ:オリジナルが完璧で、何も加えるものはないと思っていたから、最初はこの曲をカバーする気はなかったの。この曲のプロデューサーで、友人のアダム・ランドリーが、この曲をカバーする勇気をくれたわ。そしたら、彼ったらスティーヴィーにこの曲を聴かせるようにと言ったの!彼女、気に入ってくれたわ。彼女が喜んでくれたなら、私はハッピー。スティーヴィーから学ぶことは絶えない。彼女は親友であり、私の良き指導者。彼女の優しさと、信頼できるところから、多大な影響を受けるわ。
▲Vanessa Carlton - Dreams (Fleetwood Mac Cover)
−−12月に控える来日公演では、あなたと旦那さんのジョン・マッコーリーを含む計3名がオンステージとのことですが、一体どんなショーを見せてくれるのでしょうか? 事前にチェックしておくべき作品はありますか?
ヴァネッサ:昔の曲ももちろん演奏するけれど、主に『Rabbits on the Run』と『Liberman』からの曲をプレイするわ。だから、このアルバム2枚は事前に聞いてきてほしいわね。『Liberman』はウォーキング・アルバムなの。散歩するときに聞いてほしいと思って作った作品なのよ。
−−最後に、日本のファンへメッセージをお願いします!
ヴァネッサ:幻想から抜け出し、やっと日本でライブをできる機会に恵まれてとてもワクワクしているわ。日本という国もそうだけど、人も文化も素晴らしい。リスナーと再び繋がりを感じたいし、歓迎してくれるのであれば、もっと頻繁に日本に戻ってきたい。個人的なことなんだけど、日本にいても自然と心休まる気持ちになるの。夫は、ずっと長い間、日本語を勉強していて、娘も日本語を覚えている。家の壁には日本語のポスターがびっしり張られているわ。
▲Vanessa Carlton Video Message for Billboard Live Tour 2018
公演情報
ヴァネッサ・カールトン
Vanessa Carlton
ビルボードライブ東京
2018年12月11日(火)- 12日(水)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
⇒詳細はこちら
ビルボードライブ大阪
2018年12月14日(金)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
⇒詳細はこちら
<メンバー>
ヴァネッサ・カールトン / Vanessa Carlton (Vocals, Piano)
ジョン・マッコーリー / John McCauley (Guitar)
スカイ・スティール / Skye Steele (Gutiar, Violin, Percussions)