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デイヴ・グルーシン来日記念特集



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 ジャズ・フュージョン界の巨匠、デイヴ・グルーシンが、2018年11月18日にミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川)にて、豪華ビッグバンドとともに『ウエストサイド物語』の名曲の数々を演奏する。今年は、名指揮者のレナード・バーンスタインの生誕100年である。バーンスタインの最高傑作である『ウエストサイド物語』は、1957年にニューヨークのブロードウェイで初演され、1961年に映画化された。「トゥナイト」「マリア」「サムウェア」「アイ・フィール・プリティ」など数々の名曲を生んだ。グルーシンは1997年にカバー・アルバム『デイヴ・グルーシン・プレゼンツ・ウエストサイド物語』を発表している。今回は、盟友の名ギタリスト、リー・リトナーなどアメリカの凄腕ミュージシャン+日本のトップ・ミュージシャンによる夢のセッションが実現するステージ。この夜、『ウエストサイド物語』の新たな伝説が生まれることになるだろう。このコンサートをより楽しむために、「デイヴ・グルーシン」、「ウエストサイド物語」と「レナード・バーンスタイン」について、ご案内しよう。

デイヴ・グルーシンの魅力

 デイヴ・グルーシンは、まるで「現代のジョージ・ガーシュウイン(1898.9.26-1937.7.11:享年38歳)」とも呼ぶべき稀有な才能の持ち主である。ふたりとも驚くべき数の作曲をこなして、ピアノの演奏も抜群に上手い。グルーシンは、映画音楽、TVの音楽、作曲、編曲、ピアノの演奏、バンド・リーダー、レコード会社の経営(GRPレコードの創設者で社長を務めていた)とマルチに活躍する。デイヴ・グルーシンの魅力とは、このマルチな活動にある。 デイヴ・グルーシンは「コロラド大学でピアノを学んでいたが、いきなりシンフォニー・オーケストラから作曲の依頼がきて生計を立てるなんて出来るわけない。それなら映画のほうが、チャンスがあると思った。映画音楽にジャズの要素を取り入れるなら、自分でもできると思って始めた」と語っている(注1)。キャリアの初めは、「アンディ・ウィリアムス・ショウ」の音楽監督を1959年から務めた。ここで、ショービジネスについて、学んだ。1967年12月には、グルーシンが音楽を担当した映画『卒業』(ダスティン・ホフマン主演)が公開され、その作曲でグラミー賞を初受賞した。以降、グラミー賞受賞10回&ノミネーション38回、アカデミー賞受賞1回&ノミネーション7回と、グルーシンは栄光の足跡を持つ。   グルーシンが作曲した映画音楽は、60本以上もある。有名な映画は、ヘンリー・フォンダ主演の『黄昏』、ダスティン・ホフマン主演の『トッツィー』、ロバート・デニーロ主演の『恋に落ちて』、フェイ・ダナウェイ主演の『チャンプ』、ロバート・レッドフォード主演の『コンドル』、トム・クルーズ主演の『ザ・ファーム 法律事務所』など数限りない。

CD
▲『マイ・ディア・ライフ』

 同時に、デイヴ・グルーシンは、ジャズを演奏することも大好きだったので、演奏活動も活発にした。1970年代に入るとクインシー・ジョーンズ、リー・リトナーと共に活動の幅を広げた。以上のような八面六臂の活躍で、デイヴ・グルーシンの名声は、世界で確立した。  日本で、デイヴ・グルーシンの名が一躍有名になったのは、日本を代表するサックス奏者、渡辺貞夫とのコラボレーションである。1970年代半ば、渡辺貞夫は、デイヴ・グルーシンに参加してもらって『マイ・ディア・ライフ』(1977年)を録音し、日本に一大フュージョン・ブームを巻き起こした。その音は、まだ誰も聴いたことがない、格好いい新鮮なサウンドだった。デイヴ・グルーシンの才能と存在(編曲、作曲、演奏、ミュージシャン集め)が、渡辺貞夫の新しい音楽の創造の原動力(トリガー)となったのである。

CD
▲『カリフォルニア・シャワー』

 次いで、渡辺は、再びデイヴ・グルーシンとリー・リトナーと組んで、『カリフォルニア・シャワー』(1978年)を録音。30万枚を超える大ヒットとなった。昨年9月に催された『第16回東京JAZZ』にて、渡辺貞夫は、デイヴ・グルーシンとリー・リトナーの参加を得て、『カリフォルニア・シャワー』を見事に再現し、聴衆は熱狂した。1980年7月、渡辺貞夫は、遂に3日間、日本武道館でコンサートを行った。日本人ジャズメンが武道館でコンサートを行ったのは初めてのことだった。100人に及ぶオーケストラが参加したが、編曲、指揮を取ったのは、デイヴ・グルーシンだった。『ハウズ・エブリシング』は、その成果を残したライブ盤である。

 また、デイヴ・グルーシンは、自ら多くの名盤アルバムを吹き込んでいる。『ワン・オブ・ア・カインド』(1977年)は、フュージョン・ムーブメントの先駆けとなった名盤。今日のグルーシンの原点がここにある。『ナイト・ラインズ』(1983年)は、GRPレーベルからの第1弾。『ハーレクイン』(1985年)は、リー・リトナーとの絶妙なコラボレ―ションをみせた美しい作品。『マイグレーション』(1989年)は、グラミー賞を受賞した傑作。『ガーシュウイン・コネクション』(1991年)は、ジョージ・ガーシュウインのソング・ブック集。『GRPオールスター・ビッグ・バンド・ライブ・イン・ジャパン』(1993年)は、日本でのライブ盤。そして、『デイヴ・グルーシン・プレゼンツ・ウエストサイド物語』(1997年)は、レナード・バーンスタインが作曲したミュージカルの音楽に、新たなアプローチで取り組んだ傑作である。また、今回のコンサートのベースになっている音源である。マイケル・ブレッカー(ts)やリー・リトナー(g)ら大物のミュージシャンを要所に配置している。『デイヴ・グルーシン・プレゼンツ・ウエストサイド物語』の雄大で緻密な構成、繊細なサウンド、素晴らしい歌と躍動する即興演奏は、まさに『ウエストサイド物語』の醍醐味そのものである。


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