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Darjeeling(Dr.kyOn×佐橋佳幸)『8芯二葉~月団扇Blend』インタビュー
さらなる作品を目指して毎日生きていこうと思っております(笑)
Dr.kyOnと佐橋佳幸によるユニット Darjeeling(ダージリン)の3rdアルバム『8芯二葉~月団扇Blend』がリリース。こちらを記念して、小田和正、山下達郎、佐野元春、渡辺美里……等々の大物から若手まで日本の音楽シーンを根底から支えてきた凄腕ミュージシャンである二人に、新作と大貫妙子、曽我部恵一、浜崎貴司、山崎まさよしといったゲストについて等語ってもらいました!
大貫妙子、曽我部恵一、浜崎貴司、山崎まさよし…超豪華ゲストを語る
--Darjeeling『8芯二葉』シリーズも早くも第三弾となります。このハイペースで制作/リリースを継続している中で、今、Darjeelingはお2人にとってどんな場所や存在になっていると感じますか?
Dr.kyOn:ありがたい話で、二人が長い間これまで貯金してきた楽曲が日の目を見まして、はじめはTV番組用に短いサイズで作っていたものが一曲一曲フルサイズで表現されていって、楽しめるサイズとして皆に聴いてもらえることになって、何よりそれがシンプルに嬉しいですし、感謝しながら、そしてこれまで培ってきた色んな人との出会いが、こうしてインスト4曲、歌もの4曲という形式の中に見事に活きているという、それが『8芯二葉』シリーズとして、しかも第三弾までやってこれて、なんと言うんでしょうか、本当に感慨無量と言いますか、そんな感じはしております(笑)。さらに精進してですね、さらなる作品を目指して毎日生きていこうと思っております(笑)。一同:(笑)
佐橋佳幸:kyOnさんがほとんどのことを話してくださったんですけど、これを始めてから日々の音楽人生がですね、Darjeelingの音楽作りに変化したなと。今までは仕事の合間を縫ってkyOnさんとスケジュールを合わせて一緒にセッションする機会を作って、今までの自分たちの音楽を少しずつ作っていったわけですけど、いよいよこれらが世に出るということで日常的に作品作りをしていくという感じが、とてつもなく気持ちがいいですね。本当にいい今日このごろです。--前作のインタビュー時に「これからどんどん「好きなこと、楽しそうなことばっかりやりやがって!」と言われたいですね(笑)」と仰っていましたが、実際に音楽仲間からそう言われる状況にはなってきていますか?
二人:アハハハ(笑)
佐橋佳幸:どうでしょうね、そもそも“GEAEG RECORDS”(ソミラミソ・レコーズ)というレーベルを僕たち二人が立ち上げたことに対しての方がよく言われるかな。ね? Dr.kyOn:まず僕らがやっているということはだいぶ広がって来て「なんかやってるらしいじゃん?」って(笑)。「ちょっと聴いてよ」って言って聴いてもらった人からは、8曲のバランスが良いだとか、聴きやすいだとかっていう、本当にいい反応は聞きますね。 佐橋佳幸:僕の身近な人で言いますと、今回のアルバム『8芯二葉~月団扇Blend』にも参加してくれているバイオリンの金原千恵子さんがですね、自分のライブのときに1stアルバム『8芯二葉~WinterBlend』(2017年11月8日発売)の一曲「Holiday In Columbo」をカバーしてくれていたりするんですよね。 Dr.kyOn:「これで合ってる?」ってね。 佐橋佳幸:そうそう、この間のレコーディングのときに「佐橋さん、これで合ってる?」って確認されちゃって、「この曲気に入っちゃって、最近自分のライブでもやってるのよ」とか言ってくれると、仕事仲間、音楽仲間に広がっているんだな、嬉しいなと思う次第です。 Dr.kyOn:意外とそういうことってないよね? 佐橋佳幸:珍しいですよね。--現在『8芯二葉』シリーズを携えたライブ活動は出来ているんでしょうか?出来ていたらとしたらどんなライブを繰り広げているのか、出来ていないとしたら今後どんなライブをやってみたいか教えてください。
佐橋佳幸:えー、正直ですね、ほとんど出来ておりません(笑)! お互い忙しいということもあるんですけど、最初のときですかね。 Dr.kyOn:『8芯二葉~WinterBlend』のとき、同時にプロデュースした川村結花さんの『ハレルヤ』だとかも含めて、参加してくれた方たちとのミニライブを一度やったくらいですね。 佐橋佳幸:だからそれ一回きりになっているので、まあそれこそBillboard LIVEなどで、参加してくださったアーティストさんと共にやっていけたらなとは思ってます。--『8芯二葉』シリーズは毎回コンセプチュアルなアルバムとなっていますが、今回の『8芯二葉~月団扇Blend』はどんなコンセプトのもとに制作された作品なんでしょうか?
佐橋佳幸:実はですね、『8芯二葉』というシリーズは、まず一年間のうちに4枚出そうと。これはどういうことかと言いますと、毎シーズンの四季、一作目は“冬”、二作目が“春”、そして今回が“夏”となっております。要するに季節ごとに『8芯二葉』はコンセプトがありまして、僕とDr.kyOnの曲の中からその季節に合ったものを選び収録している、というのがコンセプトでしょうかね。--今作にも大貫妙子、曽我部恵一、浜崎貴司、山崎まさよし、超豪華なゲストボーカルが参加していますが、各アーティストの関係性と今作に参加してもらいたいと思った経緯を教えてください。まずは大貫妙子さん。
佐橋佳幸:大貫さんとは古い付き合いになるんですけど、以前やってましたギターデュオの山弦(やまげん)で一緒にツアーを行ったりですとか、大貫さんの作品に参加させてもらったりですとか、もう80年代から色々とご一緒させて頂いてるんですけれども、今作で取り上げてみたかった「月光浴」は大貫さんに歌詞を書いていただいて歌ってもらえたらいいだろうなというイメージがあって、それでお声かけをしたらですね、喜んで引き受けて下さったという経緯です。--この「月光浴」はアルバムの中でも中核を担う楽曲という印象があります。
佐橋佳幸:アルバムにはインストの「Full Moon Harvest」があったりしますけど、夏をテーマにしているんですが、“月”が裏テーマになっていったので、結果的にそうなりましたね。インストゥルメンタルで僕らがやっていた曲に作詞と歌唱で参加して頂くというのが僕らのコラボのスタイルなんですけど、この「月光浴」に関してはインストゥルメンタルでやっていた頃から「月光浴」というタイトルで、大貫さんも「この「月光浴」というタイトルに即した歌詞を書くわよ」って仰ってくださってそれでこういう形になりました。- 散歩に連れ出して、そのまま区役所に連れ込んでハンコを押さそうと
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散歩に連れ出して、そのまま区役所に連れ込んでハンコを押さそうと
--続いて、曽我部恵一さん。
佐橋佳幸:曽我部くんは、たしかソロ活動する前のサニーデイ・サービスで活動していたときだったと思うんですけど、どこかのイベントでご一緒したのが最初だったかなと思います。実際にその後、色んな方が出演されるオムニバスみたいなイベントで僕とkyOnさんと共演する機会もあったんですけど、レコーディングは初めてでしたよね。 Dr.kyOn:そうだね、あと『共鳴野郎』のときもあったよね。 佐橋佳幸:元々Darjeelingがスタートしたとき、僕たち読売テレビの『共鳴野郎』という音楽番組のホストを務めておりまして、それから僕たちDarjeelingって名乗るようになったんですけど、その番組では毎回ゲストの方をお招きして色々とセッションしたりだとか、そういう番組だったんですけど、そこで曽我部くんがゲストで出てくれたんですよ。 Dr.kyOn:しかも下北沢でセッションしましたよね(笑)。 佐橋佳幸:そうでしたね! 曽我部恵一と言えばですね、下北沢を根城にしている男ですからね(笑)。一同:(笑)
佐橋佳幸:下北沢には伝説のバーがあるんですけど、そこを昼間お借りして、そこでセッションしましたよね、懐かしいですよね。 Dr.kyOn:LADY JANEでね。 佐橋佳幸:原田芳雄さん、松田優作さんといった銀幕のカリスマたちが足繁く通った老舗のジャズバーでやりましたね。--曽我部恵一さんに「ユーラシア万歳」へ参加してもらったのはなぜでしょう?
佐橋佳幸:たしかkyOnさんが曽我部くんにって発案したと思うんですけど、この曲はもともと「ティンゲルタンゲル」というタイトルでインストでやっていた曲で、曽我部くんが「なんでこの曲は「ティンゲルタンゲル」というタイトルなんですか?」って聞いてきたんで、実は串田和美さんという方の「ティンゲルタンゲル」という音楽劇があって、たしかフランスとかヨーロッパの何箇所か回る海外公演までしたんですけど、その模様を収めたドキュメント番組があったんですよ。その番組のビデオをたまたま僕が観てて思いついた曲なんですよって話したんですよね。みんな色んな楽器をもってガチャガチャ演奏していって、こういう曲になって……あーなんかユーラシア大陸みたいだなって、そんな話をしていたら、彼が突然「思いついた!」って紙と鉛筆を持って歌詞を徐ろに書き出して、「ちょっと試しに歌ってみてもいいですか?」って一行直し、また直しって言う形で作ってくれたのがこの歌詞ですね。--続いて、浜崎貴司さん。
佐橋佳幸:浜ちゃんはkyOnさんの方が先にお会いしてるのかな、BO GUMBOS(ボ・ガンボス)時代とかに? Dr.kyOn:そうですね、たしか。 佐橋佳幸:いずれにせよ、僕とkyOnさんは彼と古い付き合いなんですけど、この曲「ユビサッキ」はですね、もともと「黒蜥蜴(くろとかげ)」というインストゥルメンタルの曲だったんですけど、kyOnさんが思いついたある実験がありまして、僕たちのライブのときにkyOnさんがテンポはこのくらい、Aメロの8小節はこう、Bメロはこう、みたいに大まかな大枠だけを僕に送ってきて、このルールだけを守ってお互い勝手に曲を書いてくる。で、お互いの曲のメロディを知らずに演奏したらどうなるかって名付けて「同時多発メロ」というコーナーがあったんですけど、この曲をやった日、kyOnさんが「今日は美輪明宏さんの誕生日らしいね」って話をされてですね、それで「黒蜥蜴」というタイトルになったんですよね。それでちょっとR&Bというか、ちょっとファンキーな曲に仕上がったんで、「こういう曲なら浜ちゃんがいいんじゃない?」ってなって頼んだら、浜ちゃんが「ちょっとエロい詞にしてもいいですか?」って言ってこんな歌詞を書いてきてくれたんですね。ちなみに、浜崎くんは『共鳴野郎』という番組が終了した後にずっと都内で定期的にやっていたライブにもゲスト参加してくれていますね。 Dr.kyOn:「ユビサキ」じゃなくて「ユビサッキ」ってなってるのもポイントだよね。流石ですね、浜ちゃん。--この“サッキ”というのは?
Dr.kyOn:今さっきとかの“サッキ”とか色んな記憶だったり、その“サキ”を強調しているのかもしれないし、時間軸やら色々想像できるよね。名曲です(笑)。 佐橋佳幸:さすがですよね(笑)。--続いて、山崎まさよしさん。
佐橋佳幸:この「Picnic Tea Basket in the rain」ですが、僕らインストゥルメンタルの曲を作っていて、歌詞を書いているわけじゃないし、歌のある音楽をやってきてなかったので、やっぱり何かにインスパイアされて曲を書いてそれにタイトルを付けてきたわけですよ。この時期はですね、Darjeelingだけに紅茶にまつわるシリーズをやっていて、それでkyOnさんがこの曲をやろうっていってね。 Dr.kyOn:そうそう、ちょっと小芝居がかったところにまで辿り着いていた頃だよね。 佐橋佳幸:「バスケットを持ってピクニック来てみたら雨に降られちゃって…」みたいな曲なんですけど、山ちゃんの参加が決まった瞬間にkyOnさんは「これ絶対、山ちゃん」って思っていたらしいです。山ちゃんとはもともとデビュー当時のアルバムとかkyOnさんがキーボード弾いているし、僕も色んなイベントで一緒になってて飲み友達なんです。僕らの仕事場に山ちゃんがギター持ってやってきてくれて「なんで僕はこの曲なんですか?」って言うから、kyOnさんが「他にこの曲を歌える人はおらんやろ」って、色んな話をしていって、そしたら山ちゃんが「このタイトルのままで良いと思うんですよね」って。「でもピクニックというより散歩に近い歌にしようかなって思うんですけど、ちょっと聞いてくれます?」って、彼がイメージしたストーリーを僕らに話してくれたんですよ。なんかアラフォーの女性がいて、年下の彼氏がいると。こいつがどうもはっきりせんと、なんかどうもグズグズしていると。それでこの女性が考えたのは、とりあえず散歩に連れ出して、そのまま区役所に連れ込んでハンコを押さそうと。そういうストーリーはどうですか?と(笑)。それで、山ちゃんは歌とハーモニカ、kyOnさんはピアノ弾いて、僕はギター弾いて、せーの!で録って。で、山ちゃんがちょっとアコースティックのスライドをバーン!とかましてくれて。そんな感じで完成したんですけど、後で聞いたらですね、ハーモニカはその女性らしいんですよ、それでスライド・ギターが男の人。そういうイメージで演奏したと。 Dr.kyOn:それを聞いて、曲に深みが出たよね。箸でも、焼き鳥の串でも何か細いものを満月にすっと持ってくると、団扇に見える
--それを知った上で曲を聞いたらなんだかまた違う印象になりますね。
佐橋佳幸:なかなか面白いでしょ?(笑) Dr.kyOn:これがお芝居の感じなんですよ。--これだけ豪華な個性派ボーカリストたちとの制作/レコーディングは、実際にやってみてどんな印象や感想を持たれました?と言っても、すでにお二人は何方ともお知り合いなんですもんね?
佐橋佳幸:そうそう。『8芯二葉』シリーズをやる上でどうしても4曲は歌ものになっていて、kyOnさんや僕と古いお付き合いの方にお願いしているところもあるので、だから皆さんも引き受けてくださっているんだと思います。 Dr.kyOn:だからまあ、気楽にやれるよね。 佐橋佳幸:それと参加する面白さを感じてもらえたらいいですよね、歌詞を書いて歌で参加するっていう。今回も参加してくれた方は楽しんでくださったのかなとは思いますけどね。--そうして完成したアルバム『8芯二葉~月団扇Blend』の仕上がりを聴いたときには、どんな印象や感想を?
佐橋佳幸:この“月団扇Blend”というタイトルを考えたのはkyOnさんなんですけど、まさにタイトルどおりのアルバムになったなとマスタリングが終わった段階で感じまして、非常に大満足。 Dr.kyOn:これまでWinter、梅鶯と、季節の冬から始まって、桜よりちょっと前の春とやってきまして、今回は7月なので梅雨も過ぎている夏だろうと。もう野外という感じですね、というのは、月がタイトルに付いている曲が2曲もあるし、何かにつけて満月の晩とかに一献傾けたり、夕涼みとかしていたり、そういうときにピッタリ来るようなBlendじゃなかろうかと思いまして、まず月を使おうと色々と満月のことなんか思い巡らしておりましたら、団扇ってありますよね。満月を団扇に見立てているんですよ。箸でも、焼き鳥の串でも何か細いものを満月にすっと持ってくると、団扇に見える。満月を使った月団扇というタイトルですね。 佐橋佳幸:「ほら見てごらん」って箸かなんかを満月にかざして「団扇に見えるだろ」って、粋ですよね。 Dr.kyOn:このジャケットのデザインにもありますけど、そういった楽しみ方をされてみても楽しいんじゃないかと、なるほどって思っていただけたら幸いでありましてですね。 佐橋佳幸:まあ要するに“夏仕様Blend”なんですけど、裏テーマが“月”だったんですよね。--どんな人にどんなシチュエーションで聴いてもらいたいアルバムですか?
Dr.kyOn:まあ一年中聴いてもらえたらいいですよね(笑)。 佐橋佳幸:そうですね、夏だけ聴いたらもう聴かなくていいって作品じゃないですからね(笑)。 Dr.kyOn:もっとも大事なことがもう一個あって、これが第三作目であるということです。これを聴いたらですね、Winter、梅鶯の8曲の季節感を散歩していくような、そういう寛いだ時間がより深くなっていくんじゃないかと。この3作目が増えてより深くなったんじゃないかなと思います。 佐橋佳幸:そういうことですよ。もうあんまり部屋が暑いからって言って“WinterBlend”聴いたって良いじゃないっていうね。--このまま進むと『8芯二葉』シリーズ第4弾もリリースされると思うのですが、こちらの次回作はどんな作品にしたいと思っていますか?
佐橋佳幸:それがですね、今日このあと打ち合わせしようと思っているんですけど、次は“秋”ですよ、kyOnさん。 Dr.kyOn:そうですね。 佐橋佳幸:なので、秋をテーマにした楽曲が集まった作品になると思います。お楽しみにというところでございます。--これから話し合いをされるんですもんね。
佐橋佳幸:kyOnさんとは随分長い間一緒にやってきて、たくさんあるんですよ、自分たちの曲がね。それで今回この曲いいんじゃないかなってやっていって、きちんと聴いていただける形にまで持っていくというのがこの『8芯二葉』というシリーズでもあるんで、そういう曲が選ばれてくるんではないかと思っております。--では、最後に。Darjeelingで今後実現したい野望等ありましたら聞かせてください。
佐橋佳幸:二人で立ち上げたGEAEG RECORDSというレーベルをどうやってこれからやっていくかということですね。始まったときは川村結花さん、高野寛くん、いろんなプロデュース仕事をDarjeelingでやって、2つ作品を作らせてもらってますけど、今後もそういうことですね。だから僕とkyOnさんのプロデュースで、以前から付き合いのある方でも、まったく新しい方でもそういったプロデュース作品をリリースしていけたらなと。野望と言うより、GEAEG RECORDSの活性化ですかね。 Dr.kyOn:あとはライブなんかもね、ぼちぼち考えて行きたいなと思いますね。8芯二葉~月団扇Blend
2018/07/11 RELEASE
CRCP-40557 ¥ 2,547(税込)
Disc01
- 01.ユーラシア万歳
- 02.Drop by Drop
- 03.ユビサッキ
- 04.月光浴
- 05.Toy Train
- 06.Full Moon Harvest
- 07.Picnic Tea Basket in the rain
- 08.Gunpowder Green
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