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ポスト・マローン日本デビュー記念スペシャル対談: SKY-HI×渡辺志保

 「ロックスター」「サイコ」などのシングルが全米1位を獲得、日本発売に先立って4月にリリースされた2ndアルバム『ビアボングズ & ベントレーズ』でも全米1位を獲得した、現代の音楽シーンを代表するラッパー、ポスト・マローン。7月末には【フジロックフェスティバル ’18】で初来日公演をする彼が、6月27日、遂に日本国内でのCDデビューを果たす。Billboard JAPANでは、彼の日本デビューと初来日を記念して、AAAのメンバーでラッパーのSKY-HIと、音楽ライターの渡辺志保のポスト・マローンについての対談の模様をお届けする(→動画「HIP HOP DNA PANEL vol.10:SKY-HIが"規格ガイ"を語る!」はこちら)。彼のシーンでの立ち位置や魅力など、余すことなく語った、ボリューム満点の内容となっているので、ぜひ楽しんで欲しい。

「今のラッパーで何パーセントかしか持っていないものが、彼にはあると思います」(SKY-HI)

渡辺:まずポスト・マローンを知ったきっかけ、タイミングは?

SKY-HI:(デビュー・アルバムの)『ストーニー』(2016年)です。「デジャ・ヴ」「ホワイト・アイバーソン」とか、いわゆる彼が世間的に知られるようになったタイミングですね。ルックスを知らないで聴いてたので、“今っぽい”印象でした。

渡辺:私も 「ホワイト・アイバーソン」 のMVが出たタイミングで知りました。早耳な友達に、「こんな人がいるよ」って教えてもらって。たとえばロジックは白人と黒人のミックスだけど、ポストマローンは100%白人。でも単に“白人ラッパー”と言って片付けてしまうには勿体ぐらい、すごく突出した才能があるな、というのをまず感じました。


▲Post Malone - White Iverson

SKY-HI:それこそロジックやエミネムのように、ヒップホップ・カルチャーにおいてマイノリティーであることは、ドラマチックな部分もあって、それがリリックに反映されたりもするけれど、ポスト・マローンの“今っぽさ”は 「ホワイト・アイバーソン」 にように、あくまでも今のヒップホップのマナーでありつつ重くなくて、どこか娯楽的な感じというか。

渡辺:ちょっと “unapologetic”、「謝らないぜ」っていう堂々とした感じも良いですよね。

SKY-HI:そうそう。俺はあれで好きになったんですよね。彼は「泣きたい時にはヒップホップを聴かない」「(今のヒップホップは)昔のヒップホップに比べてクソだ」みたいなことを言って反感を買ったけど、後のインタビューで、あれは酒を飲み過ぎていただけで「俺はあんなことは思ってない、俺はヒップホップがスゲー好きだ」って、ちゃんと謝罪した。それでもまだ非難の声がおさまらなくて、それに対して「うるせー。俺の〇〇をしゃぶれ!」ってTwitterで返信していたのを見て、ちょっと好きになったんです(笑)。

渡辺:若さがそうさせるのかな、とも思いますよね(笑)。

SKY-HI:本当に今っぽい。歌心もそうだし、今のラッパーで何パーセントかしか持っていないものが、彼にはあると思います。

渡辺:やっぱり、彼が突出しているのは、メロディセンスかなって思います。元々ギター少年で、地元のロック・バンドに入りたくてオーディションを受けたり、父親も本職ではないけれど、ラジオDJをやっていて、色々なジャンルの曲を聴いて育った。そして、アニメがすごく好き。そういった、いまどきの若者のエッセンスを全部ギュッと詰めたら、「あ、こういう才能が出てきちゃうんだね」っていう。しかも、20歳そこそこであれだけのヒット曲を作って、世界的なスーパースターになっちゃうんだな、っていうのを目の当たりにしているっていう。

 すごくジャンルレスだし、今年の4月の【コーチェラ・フェスティバル】に彼が出演した時のパフォーマンスを、ストリーミングでリアルタイムで観ていたんですけど、パフォーマンスもロック・アーティストみたいな感じなんです。

SKY-HI:ちょっと前に、トラップが一世を風靡し始めたくらいから、「トラップが現代のグランジだ」っていうのも言われはじめましたよね。

渡辺:そうそう。今“エモ・ラップ”も流行っているし。

SKY-HI:そういうのを実際に体現している人もいる中で、彼はそれをさらに分かりやすく可視化した感じがします。

渡辺:そうですね。エモ・ラップと呼ばれる、リル・ウージー・ヴァートだったり、リル・ピープだったりがいる中で、ポスト・マローンがそれを一番わかりやすく、というか上手く、自分の音楽に落とし込んでいる印象です。本当に時代の寵児だと思う。

SKY-HI:しかも、それを分かっていて狙ってやったというよりは、本当にナチュラルに、彼を育んだものや時代背景から自然と出てきた気がしますね。多分、時代が違ったら、また違う形をとっていたと思う。逆に、ロジックはいつの時代に生まれてもラッパーだったはずで。

渡辺:彼は、いい意味であれしかない、っていう感じですもんね。

SKY-HI:エミネムもそう。でも、ポスト・マローンは今の時代ゆえに、ああいう風になったと思う。

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