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KIRINJI『愛をあるだけ、すべて』インタビュー ~現代のポップ・シーンを前にさらにモダンなプロダクションへと踏み込んだ最新作を語る
KIRINJIの新作13thアルバム『愛をあるだけ、すべて』が6月13日にリリースされた。バンドとしての再スタートを経てリリースされた前作『ネオ』(2016年)以降、“現行のシーンに投じて違和感のないアクチュアルなサウンド”であることを強く意識するようになったという彼ら。2017年末のコトリンゴの脱退以降、初のアルバムとなった本作は、バンドのそうした狙いが、もう一歩踏み込んだ地点で結実したアルバムとなっている。
その最大のポイントは、シンセサイザーやプログラミングなど、前作でも試みられていたエレクトロニックなプロダクションのさらなる導入。兄弟「キリンジ」時代から、スタジオでの緻密な作業を元にしながらも、あくまでアナログ的な音楽の良さを前面に伝えてきた彼らのパブリック・イメージからすれば、さらなる野心作と言える。とは言え、あくまでも万人に開かれた“いい曲・いい音楽”を作るという軸はブレていないことが彼ららしく、頼もしくもある。バンドの新たな傑作『愛をあるだけ、すべて』はどのように生まれたのか。メンバー全員へのインタビューで、まずはその着手の時期から話を聞いた。
「『ゆるい』とか『なごむ』とか思われたくない」
堀込:曲を作り始めたのは去年の春頃ですね。『ネオ』のツアーが(2016年末に)終わって、その後、Negicco(「愛は光」)とか、いくつか楽曲提供をしたんです。それと並行して曲を書いているうちに、なんだかんだ夏になって。そのタイミングで「AIの逃避行 feat. Charisma.com」を録音して、アルバムに入っている「明日こそは/It’s not over yet」のリズム・トラックも録ってました。でも、その段階では、どんなアルバムになるかは明確にはなっていなくて。11月に「AIの逃避行」のリリースがあって、その間も「良い曲ができたな」とか「ダメだな」とか、ポツポツと曲を書いてました。その後に東京と大阪でライブがあって、(12月末に)コトリンゴが抜けました。だから、本格的に、これだけの曲をこのラインナップで録ろうってなったのは、それ以降の1月とかからですね。
▲KIRINJI - 「AIの逃避行 feat. Charisma.com」
堀込:でも、いざレコーディングに入るタイミングで、テレビ番組のBGMの仕事を受けることになって、それが意外にボリュームがあったんです。実はこの間の3月のBillboard Liveのライブの時には、ある程度アルバムの作業が進行しているはずだったんですけど、実際には「時間がない」だけが出来ている状態でした。本格的にレコーディングに突入したのは、そのライブの後。どうにか乗り切った感じです。
――アルバムの全体像が見え始めたのは、どのくらいの時期だったのでしょうか?
堀込:曲を作っている時は、本当にぼんやりしたものしかないんです。曲を書いても「前にもこういうのがあったよな」と思ったら、なるべくアルバムには入れない。でも、またこの感じかと思っても、新しい局面が見せられるようなアプローチが思いつけば入れることもあります。
今回のアルバムでは、「時間がない」をレコーディングしている時に、全体のアプローチが定まった気がしました。前作の『ネオ』でもエレクトロニクスは増えていたけど、それでも生々しいグルーヴの曲が中心でした。今回は、それよりもさらにサウンドの精度が高くて、ダンス・トラックとかと並べて聴いた時にも、いなたく感じない音像にしたい気持ちがありました。最近のポップスって、ほとんどダンス・ミュージックかヒップホップの影響下にあるか、あるいはそれ自体じゃないですか? そういう中に放り込んだ時に、「ゆるい」とか「なごむ」とか思われたくないなと(笑)。
――(笑)。
堀込:そのためにどうしたら良いのか、ずっと考えていましたね。「時間がない」は、キック(ドラム)を先に録音して、それを(コンピューター上で)貼っていくという、いつもとは違うリズムの録り方をしたんです。そうすると、同じ音量で、同じタイミングでキックが鳴っていくんです。言ってしまえば、サンプリングして打ち込みをするのと同じなんだけど、そこに生演奏でハイハットとかスネアを重ねる。そうすると、生のドラムなんだけど、打ち込みっぽいスクエアさもあるサウンドが出来るんです。そういう録り方は、KIRINJIとしては初めてやりましたね。
それをきっかけに、打ち込みと生演奏をうまい具合に混ぜるという全体の方向性が見えてきて。実際に、そのテーマでいくつか曲を作って、それがアルバム全体の雰囲気を決定した気がします。
▲KIRINJI「時間がない」
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リリース情報
『愛をあるだけ、すべて』
▲KIRINJI『愛をあるだけ、すべて』アルバム・ダイジェスト映像
イベント情報
MY TUNE, MY TIME, MY TALK vol.1 KIRINJI
New Album「愛をあるだけ、すべて」リリース記念 全員集合トークライブ&サイン会
- 2018年6月24日(日)
- Open 18:00 / Start 18:30
- Entrance Fee: 2,160円 (tax in)
- 出演:KIRINJI
- MC:油納将志
- 詳細はこちら
KIRINJI TOUR 2018
- 7月14日(土) 福岡・スカラエスパシオ
- 7月19日(木) 大阪・梅田クラブクアトロ
- 7月20日(金) 愛知・名古屋クラブクアトロ
- 7月25日(水)、26日(木) 東京・渋谷クラブクアトロ(SOLD OUT)
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