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マンハッタン・ジャズ・オーケストラ来日記念特集~アメリカの歴史と共に変化していったジャズの姿
名アレンジャー、鬼才ピアニスト、デビッド・マシューズ率いるニューヨーク発の最強ビッグバンド=マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(MJO)が、2018年7月に待望の来日公演を行う。間もなく結成30周年を迎えようとするマンハッタン・ジャズ・オーケストラは結成以来、数々のヒットアルバムや話題作を生み出し、その人気は不動といえる。
様々な音楽が自由に気軽に聴ける現代にあって、若い世代からシニア世代までビッグバンドの人気は意外に根強い。マンハッタン・ジャズ・オーケストラは今やジャズ、特にビッグバンドの歴史において重要な存在となっており、今だからこそビッグバンドの魅力、マンハッタン・ジャズ・オーケストラの迫力に触れてもらいたい。
Text: The Walker’s 加瀬正之
アメリカの歴史と共に変化していったジャズの姿
昨年2017年はジャズ生誕100周年にあたり、各地で様々なイベントや企画が行われた。1917年にニューオーリンズ出身のオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドが初めて‟ジャズ“という単語を明記した商業用レコードをレコーディングしたことが起源とされているが、ジャズを語る上でビッグバンド/ジャズ・オーケストラの存在は欠かせない。
ニューオーリンズで発祥したジャズが転機を迎えたのは1917年。同地で有名な歓楽街だったストーリーヴィルが第一次世界大戦の影響で閉鎖され、仕事にあぶれてしまった多くのジャズ・ミュージシャンたちがミシシッピ川に沿って北上する形でシカゴに辿り着いた。あのルイ・アームストロングもその一人で、1920年代中期にシカゴでジャズが隆盛を極める頃、ルイはニューヨークに拠点を移した。当時禁酒法(1920~1933年)が施行されていた社会の中で、マフィアが経営するスピーク・イージーと称された違法酒場でもジャズは大人気となり、庶民にとっても不可欠な音楽となった。
▲Louis Armstrong - What a wonderful world ( 1967 )
ジャズはアメリカの歴史と共に変化していくことになるが、1929年には世界大恐慌が発生。人々が絶望感に沈む中で、ジャズは未来への希望が持てる明るい音楽として進化・発展を遂げ、また、ルイ・アームストロングによって刺激を受けたダンスバンドが成長・発展していく中で生まれたのが、自然と体が踊り出してしまうような陽気で軽快なスウィング・ジャズだった。この頃に登場したのが、大人数編成によるアンサンブル形態のビッグバンドで、ピアニストのデューク・エリントンやカウント・ベイシー、クラリネットのベニー・グッドマン、トロンボーンのグレン・ミラー率いるオーケストラだった。彼らが率いたビッグバンドは米国各地のダンスクラブを席巻した。
▲The Glenn Miller Orchestra -- (1941) In the Mood [High Quality Enhanced Sound]
ビッグバンド全盛時の様子は『グレン・ミラー物語』(1954 年)、『ベニー・グッドマン物語』(1956年)、『コットンクラブ』(1984年)等の映画作品でも垣間見ることができる。また、日本では女子高校生がビッグバンドを組んでジャズを演奏する青春映画『スウィングガールズ』(2004年)が話題になったのも記憶に新しい。デューク・エリントン、カウント・ベイシー、ベニー・グッドマン、グレン・ミラーのビッグバンド以外にも、ウディ・ハーマン、トミー・ドーシー、ハリー・ジェームス、ライオネル・ハンプトン、バディ・リッチ、サド・ジョーンズ&メル・ルイス、クインシー・ジョーンズ、ギル・エヴァンス等のビッグバンドも有名で、近年ではストレイ・キャッツで活躍したブライアン・セッツァーやジャズ・ベーシストのクリスチャン・マクブライド率いるビッグバンドがグラミー賞を受賞しており、ビッグバンドの歴史とその人気は現在まで受け継がれている。
公演情報
マンハッタン・ジャズ・オーケストラ
Japan Tour 2018
ビルボードライブ大阪:2018/7/20(金) & 7/25(水)>>公演詳細はこちら
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
ビルボードライブ東京:2018/7/22(日) - 7/23(月)
>>公演詳細はこちら
2018/7/22(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30
2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
2018/7/23(月)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00
2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
【BAND MEMBERS】
デビッド・マシューズ / David Matthews(Piano)
セネカ・ブラック / Seneca Black(Trumpet)
ターニャ・ダービー / Tanya Darby(Trumpet)
デビッド・スミス / David Smith(Trumpet)
マイケル・ロドリゲス / Michael Rodriguez(Trumpet)
ジョン・フェチョック / John Fedchock(Trombone)
トム・ギブソン / Tom Gibson(Trombone)
ジム・ピュー / Jim Pugh(Trombone)
レジナルド・チャップマン / Reginald Chapman(Bass Trombone)
クリス・ハンター / Chris Hunter(Alto Saxophone, Flute)
ボブ・マラック / Bob Malach (Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Flute)
スコット・ロビンソン / Scott Robinson(Bass Clarinet, Baritone Saxophone)
エリック・デイヴィス / Eric Davis(French Horn)
ビンセント・チャンシー / Vincent Chancey(French Horn)
マーカス・ロハス / Marcus Rojas(Tuba)
マイク・ホール / Mike Hall(Bass)
テリー・シルバーライト / Terry Silverlight(Drums)
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Text: The Walker’s 加瀬正之
ニューヨーク発の最強ビッグバンド=マンハッタン・ジャズ・オーケストラ
その中でも1989年に鬼才ピアニスト、デビッド・マシューズにより結成されたマンハッタン・ジャズ・オーケストラは特筆すべき存在だ。本場ニューヨークのトップ・プレイヤーたちが集結し、ジャズ、クラシック、ロック、ソウル・ナンバー等、幅広いジャンルの名曲をデビッド・マシューズの絶妙なアレンジとユニークな編成、厚みのあるワンアンドオンリーなサウンドで披露し高い人気を獲得し続けている。マンハッタン・ジャズ・オーケストラはこれまで15枚以上のアルバムをリリースしているが、その結成に際しては日本人プロデューサーとして初の快挙であるグラミー賞(ジャズ・ビッグバンド部門)を受賞した川島重行氏の存在も忘れてはならない。デビッド・マシューズと川島重行のコンビは、デビッド・マシューズ率いるマンハッタン・ジャズ・クインテット(MJQ)でも数々の名作・名演を残している。
▲Manhattan Jazz Orchestra - TAKE THE A TRAIN
リーダーのデビッド・マシューズは1942年3月4日米国ケンタッキー州ソノラ生まれ。シンシナティ大学で音楽を学んだ。20代の半ばだった1966年から1968年にかけて、ジャズダンスバンドを率いて、ドイツとイタリアにツアーに出るなど、早くもバンドリーダーとして頭角を表わしていた。その後2年間はシンシナティ近郊のジャズ・クラブで演奏していたが、やがて大きな転機が起こる。1970年にジェームス・ブラウン・バンドでのアレンジャーの仕事が舞い込んだのだ。1974年まで続けたこのジェームス・ブラウン・バンドでの音楽活動はその後の自身の編曲スタイルを形成することになる。これを機に1971年にニューヨークに進出するとフリーランスのアレンジャー兼作曲家として活動し、バディ・リッチ、ボニー・レイット、T-ボーン・ウォーカー、デイヴィッド・サンボーン、ポール・サイモン等、ジャンルを超えた名立たるアーティストのアルバムを手掛ける機会を得る。
1975年から1978年まではクリード・テイラーによって創設されたCTIレコードの専属アレンジャーとなり、ロン・カーターやジョージ・ベンソン等のアルバムの編曲を担当した。またた、1975年に自己のビッグバンドで初リーダーアルバムをレコーディングし、1970年代後半から1980年代初めにかけて、ニューヨークのジャズクラブで自己のビッグバンドを率いて、マンデイ・ナイト・オーケストラとして毎週出演し、その斬新なアレンジと迫力のあるサウンドで評判となった。アレンジャーとして際立つ才能のひとつとして、今や伝説として語られている1980年にニューヨークのセントラルパークで行われたサイモン&ガーファンクルのコンサートでのホーン・アレンジが有名だ。意外に知られていないが、デビッド・マシューズはフランク・シナトラ、ポール・マッカートニー、ビリー・ジョエル等のアレンジャーも担当し、アメリカ音楽界での地位と功績は計り知れない。日本でも2017年3月に、松田聖子が構想期間6年を経て発表した自身初のジャズ・アルバム「SEIKO JAZZ」が話題となったが、このアルバムはデビッド・マシューズがプロデュースを手掛けて大きな話題となり、第59回日本レコード大賞の企画賞も受賞している。
▲SEIKO MATSUDA 「Smile」Music Video from「SEIKO JAZZ」
マンハッタン・ジャズ・オーケストラが1989年に発表したデビューアルバム『モーニン』はビッグバンド・アルバムとして異例の大ヒットを記録。その後もブラスロックの名曲を取り上げた『黒い炎』(1995年)、ローリング・ストーンズの往年の名曲を取り上げた『黒くぬれ』(1996年)、サンタナのタイトル曲やマイルス・デイビスの「死刑台のエレベーター」を取り上げて話題となった『ブラック・マジック・ウーマン』(1997年)、デューク・エリントンの生誕100周年を記念した『ヘイ!デューク』(1999年)、バッハを世界で初めてビッグバンドにアレンジした『バッハ2000』(2000年)、デビッド・マシューズのプロ音楽生活40周年記念としてリリースされた大作『サム・スカンク・ファンク』(2002年)、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ結成15周年記念盤『バードランド』(2004年)、ベスト盤『ベスト・オブ・ベスト』(2007年)等、ヒットアルバムを連発。現時点での最新アルバムはチック・コリアの名曲を冠した来日公演メモリアル・アルバム『スペイン』(2008年)だ。
この鬼才ピアニスト、デビッド・マシューズ率いるNYの最強ビッグバンド、マンハッタン・ジャズ・オーケストラがこの7月に待望の来日を果たし、7月20日と25日にビルボードライブ大阪、7月22日と23日にビルボードライブ東京に登場する。音の魔術師デビッド・マシューズの才能、総勢17名に及ぶ本場ニューヨークのトップ・プレイヤーたちが繰り広げる迫力満点のビッグバンド・サウンドを間近で体感できるチャンスだ。ビッグバンドの歴史と魅力を感じながら、マンハッタン・ジャズ・オーケストラの迫力を存分に味わって欲しい。
▲Manhattan Jazz Orchestra - MY FAVOURITE THINGS
公演情報
マンハッタン・ジャズ・オーケストラ
Japan Tour 2018
ビルボードライブ大阪:2018/7/20(金) & 7/25(水) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
ビルボードライブ東京:2018/7/22(日) - 7/23(月)
>>公演詳細はこちら
2018/7/22(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30
2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
2018/7/23(月)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00
2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
【BAND MEMBERS】
デビッド・マシューズ / David Matthews(Piano)
セネカ・ブラック / Seneca Black(Trumpet)
ターニャ・ダービー / Tanya Darby(Trumpet)
デビッド・スミス / David Smith(Trumpet)
マイケル・ロドリゲス / Michael Rodriguez(Trumpet)
ジョン・フェチョック / John Fedchock(Trombone)
トム・ギブソン / Tom Gibson(Trombone)
ジム・ピュー / Jim Pugh(Trombone)
レジナルド・チャップマン / Reginald Chapman(Bass Trombone)
クリス・ハンター / Chris Hunter(Alto Saxophone, Flute)
ボブ・マラック / Bob Malach (Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Flute)
スコット・ロビンソン / Scott Robinson(Bass Clarinet, Baritone Saxophone)
エリック・デイヴィス / Eric Davis(French Horn)
ビンセント・チャンシー / Vincent Chancey(French Horn)
マーカス・ロハス / Marcus Rojas(Tuba)
マイク・ホール / Mike Hall(Bass)
テリー・シルバーライト / Terry Silverlight(Drums)
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Text: The Walker’s 加瀬正之
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