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ストリングフォニック・ギター・カンパニーpresentsチャボロ・シュミット来日記念特集

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 マヌーシュ・スウィングの最高峰ギタリスト、チャボロ・シュミットが、2018年7月に約10年ぶりの来日公演を行う。2003年、天才ジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトへのトリビュート映画『僕のスウィング』にジプシー・ギタリスト役として主演したチャボロ・シュミットは、ジャンゴ・ラインハルトの後継者として脚光を浴び、ここ日本にもマヌーシュ・スウィング・ブームを起こした。他のギタリストでは真似することの出来ない太く豪快な超絶ギター・テクニックを持つ彼について、日本でも数少ないジプシースイングジャズギターを専門的に取り扱う、ストリングフォニック・ギター・カンパニー 店主の竹本武治氏に語ってもらった。

(文:ストリングフォニック・ギター・カンパニー 竹本武治)

まるで本で読んだジャンゴそのままじゃないか…

 先日ジャンゴ・ラインハルトの映画を見た。その映画では稀代のギタリストであるジャンゴの音楽性とともに彼の破天荒な生き様や、お騒がせなキャラクターで常に周りを翻弄するシーンが印象に残る。また、彼の伝記ではもっとセンセーショナルな性格が赤裸々に語られる…。多くのジプシージャズを志すギタリストがそうであるように、今回来日する主人公、チャボロ・シュミットも間違いなくこのジャンゴがルーツである。

 ジャンゴが没した翌年の1954年にチャボロ・シュミットは誕生。両親が音楽家であるジプシーの家系に生まれ育った彼は6歳の頃にギターを始め、25歳でプロのギタリストとして活動を始める。一時期の活動休止状態を経て1993年にジプシージャズ界きってのコンポーザーであり従兄弟でもあるドラド・シュミットや、サウスポーのベテランギタリスト、パトリック・ソッソワらとGypsyReunionを結成、『Swing 93』というタイトルのアルバムを制作。

 日本でその名が知られるようになったのが、日本では2003年に公開された映画『Swing』(邦題:『僕のスウィング』)で、レストランで演奏することで糧を得るマヌーシュ・ギタリストを地で行く役で出演。それまでの日本では90年代に公開された映画『Latcho Drom』で一部のマニアの知る人ぞ知る存在だったギタリストが一躍脚光をあびることになった。


 折しもちょうどジャンゴの没後50周年ということで、世界的にジプシージャズというジャンルが盛り上がりを見せ始めた年だ。映画のプロモーションで来日した時のインタビューやミニライブの模様は日本版の『僕のスウィング』DVDに収録され、そのパワフルなプレイスタイルに度肝を抜かれた日本人ギタリストも多かったはずだ。実際この映像を見てジプシージャズギターにどっぷりとハマったという人を今までたくさん目にしてきた。

 映画『僕のスウィング』が公開されて以降、彼は毎年のように来日公演を果たし、次第に彼と関わりを持った日本人関係者(ギタリストやもちろんプロモーターの方々)から、彼の豪快なプレイスタイルとともにその豪快な彼自身の性格が僕の元にも漏れ伝わってくるようになってきた。その時の僕のチャボロに対する感想は、

「まるで本で読んだジャンゴそのままじゃないか…」

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  1. もはや現代ジプシージャズの象徴的存在
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もはや現代ジプシージャズの象徴的存在

 幸か不幸か僕自身チャボロとの直接的な関わり合いはなかったにせよ、僕の周りのギタリストたちの中には濃厚な接触を持つことになり、

「日本に移住するにはどうしたらいいのか?」と本気とも冗談ともつかない相談をされたり、ツアー中、言葉もままならない日本で彼から「ギターを持って俺のホテルへ来い」と電話で呼び出されたり。

 コンサート終了後、ホール近くの居酒屋でチャボロたち一行と遭遇、持ってきたギターで急遽ジャムセッション大会になり、一生忘れられない思い出になったと興奮しながら話してくれた者も。たまたま自宅にチャボロを招き、彼のあまりのお酒の飲みっぷりに呆れ返ったという話をしてくれたフランス在住の知り合いもいた。

 まさに豪快を地で行く性格やライブ中に見せる愛嬌たっぷりの笑顔とはまた違うキレのあるスリリングな演奏、繊細かつ流麗なメロディー。1フレーズ聞いただけですぐ彼だとわかる独特のアドリブワーク。あまりのピッキングの強さにステージでは何本も弦を切り、慌ててギターをチェンジするというのはもはや彼のパフォーマンスの一部だ(笑)。ツアー中いったい何本の弦を切るのかファンの間で面白可笑しく話題になることもあった。

今回の10年ぶりの日本でのステージ、気合が入らないワケがない。関係者の皆さん、ぜひ彼のためにたっぷりの替え弦とバックアップ用のギターの用意を…。

 おそらくジャンゴがそうであったように、チャボロも関係者たちをヤキモキさせる人なのだろう。でも、どこか憎めない性格と圧倒的な音楽センスでいつの間にか虜になっている、っていう人も多いのではないだろうか。彼のトラディショナルなジプシースタイルは、その後のニューウエーブスタイルとも言える新たなジプシージャズをプレイする現代の若手ミュージシャンとは違いどこか土埃の匂い立つような音楽で、実際日本でも熱狂的なファンが多い。オノマトペで表すなら、コッテコテのバッキバキなスタイル。ジプシージャズの入り口として彼のアルバムを手にする人もたくさんいる。もはや現代ジプシージャズの象徴的存在だ。彼の日本でのパフォーマンスに否が応でも期待が上がる。


”まるでピアノのようなサウンド”と言わしめた楽器

 さて、ジプシージャズで使うこのギター、見慣れないルックスというか、なんだか妙に小さい穴があいてたり、逆に異様にデカい穴があいていたりとちょっと独特のルックスをしているのがお分かりだろうか。これはフランスのセルマー社が戦前に作っていたものがそもそものオリジナル。巷ではサックスやクラリネットのメーカーとして有名だが、ジプシージャズ界ではジャンゴが生涯愛用した楽器としてあまりにも有名なギターなのだ。

 セルマー社が作ったギターの総生産本数はわずか1,000本あまり、構造的にかなり華奢なため現存する個体は極端に少なく、現在お目にかかることは滅多にない。また仮に販売されているものがあったとしても数百万円で取引されるプレミアムギターだ。そのため現代のジプシージャズギタリストはその後に作られているレプリカを使用するケースが殆どで、普段チャボロが使用しているのも現代のフランス人製作家が作る高級レプリカだ。

 ジプシージャズにおいて、このギターの果たす役割は大きい。構造的にはナイロン弦を張るクラシックギターとスティール弦を張るフォークギターの中間的な構造を持ち、スティール弦を張る楽器でありながらクラシックギターのようなサウンドを奏でることのできる唯一無二のギターと言っていい。ジャンゴを持ってして、”まるでピアノのようなサウンド”と言わしめた楽器。この楽器なくしてこの音楽は成立しないと言われるほど密接な関係を持った楽器。セルマー社の系譜は途絶えてしまったが、そのDNAは着実にその後のヨーロッパをはじめ北米やアジアのギター製作家に受け継がれてる。もちろんこの日本でもだ。未だニッチなジャンルであるとはいえ、今や世界各地で製作されるまでになったのはやはりジャンゴをはじめそのスタイルを純粋に受け継ぐチャボロらの功績があってのものなのは疑いようもない事実。

 情熱的でありながら甘く切ない哀愁のサウンドなどと言われることも多いけど、楽器の製作、販売に携わるものから言わせれば、これほど危なかしい構造でありながらチャボロのような強力なピッキングにも耐え、且つそれを全て受け止めて時に優しく、時に大きなサウンドで応えてくれるギターは他にはない。ギターまでもがチャボロと同じように豪快かつ繊細なのだ。

 彼の奏でるこのギターのサウンドにも是非注目しながらライブを楽しんでほしい。また、彼の日本でのパフォーマンスもいつでも見ることができる、などと思わないでほしい。今回はかなり貴重な機会になることだろう。幸運にも見ることのできる人はその熱いパフォーマンスを是非目に焼き付けていただきたい。

チャボロ・シュミット・カルテット チャヴォロ・シュミット Samy Daussat Claudius Dupont Marie-Christine Brambilla「夜のメランコリー」

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