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萩原健一インタビュー「新曲は自分にとっての原点回帰」 (追悼再掲)
ショーケンの愛称で親しまれ、歌手、俳優として唯一無二の存在感を放ってきた萩原健一さんが、2019年3月26日に都内の病院で逝去されました。2018年には、自身のレーベル「Shoken Records」を設立し、22年ぶりのシングル「Time Flies」をリリース、そしてビルボードライブ東京を皮切りにしたツアーを開催するなど、精力的に活動し続けた萩原健一さん。2018年5月のインタビューを再度掲載させていただき萩原さんの音楽活動への想いを振り返るとともに、ご冥福を心よりお祈りさせていただきます。
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2018年5月と6月、萩原健一が昨年に続いて再びビルボードライブに登場する。東京・大阪の後は、名古屋、横浜でも公演を行なう。公演タイトルは「Time Flies」。直訳すると「光陰矢の如し」となり、現在の萩原の心境がそこからうかがえるというものだ。
また今回の公演のために、シングルとしては22年ぶりとなる「Time Flies」を録音。収録された3曲は初めて自身が作詞作曲を手掛けたもので、その生々しいサウンドと迫力あるヴォーカルからは、いまも唯一無二のロッカーとして動き続けんとする意志がダイレクトに伝わってくる。因みにこのシングルは新たに立ち上げた〈Shoken Records〉からリリースされるものだ。
ザ・テンプターズ、PYG、DONJUAN ROCK’N ROLL BAND、ANDREE MARLRAU BANDなど、その時代その時代で常に強度の高いパフォーマンスを印象付けてきた萩原健一に、今回のシングルと公演への思いを聞いた。萩原が音楽活動についてここまでじっくり語ってくれる機会はそうそうないだろう。
今回の新曲は自分にとっての原点回帰なんです。光陰矢の如し。一瞬だったなってことで
――僕が初めて萩原さんのライブを観たのは1979年7月の渋谷公会堂。柳ジョージ&レイニーウッドがバックバンドを務め、後にライブアルバム『熱狂雷舞』になったあの公演だったんです。以来約40年近く、萩原さんのライブは毎回観に行ってました。
萩原健一:そうですか。ありがとうございます。
――その頃のこととかって覚えてらっしゃいますか?
萩原:そうですね。でも期待に応えられるような答えが出ないので(笑)。だからいまの話をするとね、今回の新曲は自分にとっての原点回帰なんです。光陰矢の如し。一瞬だったなってことで。それでタイトルを「Time Flies」とつけまして。ビルボードさんのほうにも許可を得て、シングルを出すんです。ライブで新曲発表をしたいなと。
――なるほど。
萩原:去年、(芸能生活50周年ということで)「50年祭り」をやりました。その3年前だったかな、僕はモルディブで脚本を書いていたんですよ。そのときに「あと3年で50年になるな、50年になったら50年祭りをやろうかな」とふと思ったんですが、まあ演歌歌手でもないし、自分から言い出すのはやめようと思って。それでシナリオに没頭していたら、プロモーターさんのほうからビルボードさんの話があり、「50年祭りをやろうじゃないか」と。
――それが昨年の「Last Dance」と題された公演だったわけですね。
萩原:そう。その50年祭りの後に「僕とやりたいメンバーはいないかな」ということで、いちおう面接をし、セッションをして、いまのメンバーが集まったんです。そして、シングルも同じメンバーでレコーディングしました。51年目の公演をするにあたって、前回の公演の恩返しのつもりでもあるんですけど。
――久しぶりにスタジオ・レコーディングをし、そのシングルを携えてツアーも行なう。昨年のライブ「Last Dance」に始まり、このところ音楽活動をかなり精力的にされてますよね。
萩原:いや、音楽だけじゃないですよ。このあいだもテレ朝でオンエアになりましたけど、ドラマ(*自ら原案を手掛けて主演した『明日への誓い』)のほうも。それから映画のほうもね。ただ、そういうのはライブのようにピッチが早くいかないだけで。仕込みが違うんですよ。時間がかかるんです。いつでもできるような感じに思われるでしょうけど、そうじゃない。例えばこういったレストランにしても、仕込みがあって、いいお食事が出せるわけじゃないですか。そこにはちょっと時間がかかるんですよ。
――ライブで言うと、やはりシンガーとして声を強く出せるように喉や身体を整えることであるとか、バンドと息を合わせるべく入念なリハーサルを行うとか、そういうことでしょうか。
萩原:いや、リハーサル自体は、バンド・リハーサルにしても芝居のリハーサルにしても、そんなに時間はかからないですよ。そうじゃなくて、何をもってリハーサルをするのか。そういうことのほうが時間かかるわけです。みなさんは本番を観て楽しんでくれればいいですけど、そこまでもっていくにはたいへんな辛抱と準備が必要なんです。
――ここにきてまたライブ活動を精力的にやられるようになったという印象がありますが、萩原さんのなかで、いままたライブをやるのが面白くなってきたとか、そういう気持ちの変化はありましたか。
萩原:面白いからやるってことはしないですね。仕事の準備ができ次第、ものごとをやってます。ただ、51年目にまたビルボード公演をやらせていただけることになって、じゃあどうやるかというところで、「Time Flies」というタイトルをつけた。「Time Flies」、光陰矢の如し。それはどこから来てるかというと、原点回帰ということです。原点回帰って言っても、あなたが知ってる柳ジョージとやってた頃ではないですよ。あのときはもう僕も熟していたからね。そうじゃなくて、もっと前。14才~15才の頃への原点回帰なんですよ。そのときにもう、ブルースが鳴っていたんです。そこに回帰してリリースしてみようというのが、この「Time Flies」というシングルです。
――すごくブルースの匂いのするロックナンバーで、力強く、そして生々しい。ライブ感の伝わる曲ですよね。機械で加工して作られる音楽ばかりが溢れる昨今、こんなにも生々しい曲はそうそうないと思いました。このシングルの3曲全てがそうですね。
萩原:ありがとうございます。
――そこはやはり意識されて作られたんですか?
萩原:ただこれはスタジオライブではなく、レコーディングですから。時間はかけてませんけど、丁寧に作ったんですよ。だから、実作業をやる際には時間はかからないんですけど、その前の作業に時間がかかりました。さらに言うと、インディーズでやるほうがビルボードさんにも応援してもらえるし、公演にも間に合う。だから自分のレーベルを立ち上げたわけです。
――それがご自身のレーベルを立ち上げた動機なんですね。
萩原:そうです。51年目の新しいチャレンジです。
――この〈Shoken Records〉は萩原さんの作品だけをリリースしていくレーベルなんですか? それとも萩原さんの気に入ったアーティストの作品をリリースしたりもするんですか?
萩原:いや、この先はまだわかりません。いまはとにかくビルボード公演に間に合わせるということでいろいろ準備しているわけでね。ただ、むやみやたらに作って出してもしょうがないですから(笑)。今回の公演をやるにあたって、お客さんたちに聴いてもらうのがいいだろうと思ったんです。初心に帰って、51年目に対しての新しい一歩としてリリースするのが、私はいいと思ったんですよ。
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公演情報
萩原健一
Time Flies
ビルボードライブ東京 ※CD付:2018/5/2(水) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
ビルボードライブ東京 ※CD付:2018/5/4(金) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
名古屋ブルーノート:2018/5/13(日) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
ビルボードライブ大阪 ※CD付:2018/5/30(水) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
ビルボードライブ大阪※CD付:2018/6/1(金)-2(土) >>公演詳細はこちら
6/1 1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
6/2 1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
モーション・ブルー・ヨコハマ:2018/6/9(土)-10(日) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 15:00 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:45 Start 20:00
【BAND MEMBERS】
萩原 健一 / Kenichi Hagiwara (Vocals)
Sin (Keyboards)
柳沢 二三男 / Fumio Yanagisawa (Guitar)
竹下 欣伸 / Yoshinobu Takeshita (Bass)
裕木 レオン / Leon Yuki (Drums)
阿部 剛 / Takeshi Abe (Saxophone)
中沢 ノブヨシ / Nobuyoshi Nakazawa (Background Vocals)
関連リンク
取材・文/内本順一
日比谷・ビルボードカフェ&ダイニングにて。
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