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BOOM BOOM SATELLITES『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』インタビュー
川島道行と中野雅之。音楽に人生のすべてを費やした2人のかけがえのない19年間について前回のインタビュー(http://bit.ly/2IgMLXf)では語ってもらったが、今回はいよいよBOOM BOOM SATELLITES最後のリリース作品『FRONT CHAPTER -THE FINAL SESSION-LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』について、そこに至るまでの真実のストーリー、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)として生きていく未来まで語ってもらった。
「あ、そうだ。俺はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之なんだな」
--前回が中野さんへのBOOM BOOM SATELLITESとして最後のインタビューになると思っていたので、またこうしてお話を聞けること嬉しく思います。アルバム『19972016』発売時のイベントで「今後もBOOM BOOM SATELLITESの名前を背負っていく」と仰っていましたよね。そう生きていこうと決意した経緯を教えてもらえますか?
BOOM BOOM SATELLITES BEST ALBUM『19972016』Teaser
--なるほど。
中野雅之:映画のエンディングテーマを担当したときに、エンドロールにクレジットが入るじゃないですか。東宝のアニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』の主題歌をプロデュースしたんですけど、そのときのクレジットは「中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)」だったんです。実写版『いぬやしき』はMAN WITH A MISSIONがエンディングテーマだったんですけど、僕の名前が編曲でクレジットされていて、そのときも「中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)」と書かれていて。それを見たときにすごくしっくり来るというか。僕は今ひとりで活動していて、ある楽曲とかあるアーティストに関わっている訳ですけど、そのクレジットを見たときになんとなく一人じゃないような……気がするんですよね。で、違和感がないし「ずっとこのクレジットで良いんじゃないかな」という風に思ったりもして。--これまで「BOOM BOOM SATELLITES」は川島道行と中野雅之の活動を表す記号だったと思うんですけど、今は中野さんの中で捉え方は変わっていたりするんですか? それとも変わらないまま?
中野雅之:変わらないです。自分の名刺とか屋号というよりも、川島くんと培ったもの。僕ひとりで作ったものではない、という感覚のままなんで。そのクレジットを見る度に一人じゃない感覚になるというのは、そこで川島道行が果たした役割は大きいですし、今もそれがちゃんと存在感を持っている感じが僕自身するから。だからなんかちょっとハッとさせられるんですよね。予想しないタイミングでソレを見たときに「あ、そうだ。俺はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之なんだな」って人に言われたみたいに感じて、想いが改まる。むしろ心地が良いというか……。今は新しく作ったスタジオで、やっぱり一人で過ごす時間というのが長くて。いろんな人が訪れて、一緒に作業している時間もあるんですけど、大概宿題になって僕がひとりで過ごす時間が多い訳で、ちょっと前だったら必ず川島くんが後ろのソファに居て……それが僕の日常だったんです。それが、今はそうではない。--日常が変わってしまったと。
BOOM BOOM SATELLITES 『LAY YOUR HANDS ON ME』Short Ver
--「今後もBOOM BOOM SATELLITESの名前を背負っていく」というお話をされたイベントで、初めて『19972016』に付属されるドキュメンタリー映像を鑑賞させて頂いたのですが、最後に「もう録れないかもしれないから、そのつもりで歌おう」と川島さんをレコーディングに向かわせる瞬間まで収録されていて、いまだにあのシーンを思い返すと言いようのない想いが駆け巡ります。中野さんとしては、どんな想いであのドキュメンタリーを世に発信しようと思ったんでしょうか?
中野雅之:うーん……あれでも見せられるギリギリの範囲だと思うんです。カメラを回しっぱなしにしていて、ファンでも観るのが厳しい……っていうものは実際にたくさんあったと思うんですよね。で、答えがないものだと思うんです。ああいうモノをすべて隠しておくということも、やり方としてはあると思いますし。でもあれは……あの時期、本当に大変だったんですけど。2016年の秋以降、川島くんが最後にスタジオに来たのは、僕の誕生日だったのでよく憶えているんですけど、12月27日だったんです。そのときに「FLARE」という曲の、川島くんの声だけをサンプルとして録音したんですね。なんかどこかアーカイヴ的に川島くんの声を録っておきたいと思ったんです。あのときは、例えばリズムがあるモノだったりとか、言葉を連なっているモノを歌うということがもうほぼ不可能になっていて。まず歌詞が覚えられなくなっていたし、カウントが取れなかったし、脳の様々な機能がだいぶ失われていた状態で……だから僕としては「あんた、ここまでよく来たね」っていう感じだったんですよ。でもその日の川島くんは楽しそうで。もう体力も全然なかったし、ヘトヘトなんだけど、ブースに入って僕のリクエストに応えて、その声を録音して残していくという作業をわりと楽しんでいた気がするんです。でも、ひとりだと危ないからとうとう奥さんが付き添いで送り迎えをするようになっていて……僕たちはそんな時間を過ごしていた訳ですよ。最後のシングルをリリースするにあたって。--その状況で『LAY YOUR HANDS ON ME』の4曲を制作されていた訳ですね。
中野雅之:川島くんの想いというモノを全部漏らさず録音しておこうとしていて、僕はもう川島くんが歌い出したら録音ボタンを押す係で。ああやって映像の記録がドキュメントとしてあるにはあるんですけど、録音する音楽の何かもドキュメントを記録している感覚。というのが当時の僕にはあって。だからすごく感傷的な、「これでもう録音するのは最後になってしまうかもしれない」とかそういう悲しみは当然すぐ隣に在る訳なんですけど、それはちょっと押し殺しておいてでも記録しておこうと。「この人生を記録しておこう」という、ちょっと俯瞰で見た、まぁ努めてそうしていたんですけど、そういう感覚で過ごしていて。そんな中で撮られた映像なので、冷静なドキュメントというか、あまり「こういう風に見てください」という強い意図があるモノではないと思う。「私たち、大変な中、頑張ったんですから、美しいモノですから観てください」みたいな感じではなくて、もっとドライに切り取っている。川島くんがいちばん大変な思いをしていた訳ですけど、その川島くん本人自体が同情されることをすごく嫌った人ですし、変な美談にされることをいちばん望んでいないタイプの人だから、僕はそのシングルのリリースにしても、川島くんが居ないライブをやるにしても、何をやるにしても、その川島くんの感じっていうのは汲み取ってるつもりなんです。僕はこの世を去っていった川島くんを「気持ちよく送り出してやりたい」と思っていたし、それが今回のパッケージのリリースまでずっと一貫して持っている気持ちです。- 川島くんにとっての音楽家としての最後の瞬間
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リリース情報
FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE
- 2018/03/14
- 通常盤[SRBL-1780(DVD)]
- 定価:4,860円(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE
2018/03/14 RELEASE
SRXL-151/2 ¥ 9,370(税込)
Disc01
- 01.LAY YOUR HANDS ON ME
- 02.NINE
- 03.DRESS LIKE AN ANGEL
- 04.BACK ON MY FEET
- 05.MORNING AFTER
- 06.KICK IT OUT
- 07.A HUNDRED SUNS
- 08.FOGBOUND
- 09.BLIND BIRD
- 10.STARS AND CLOUDS
- 11.STAY
- 12.FLARE
- 13.NARCOSIS
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