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山田姉妹『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』インタビュー
「誰かが残していかないともったいない曲がたくさんある」
“美人すぎる双子ソプラノデュオ”として話題の山田姉妹が、2ndアルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』をリリース。表題曲である工藤慎太郎「2つで1つ」カバーをはじめ、日本を代表するスタンダードソングの数々がふたりにしか表現し得ないハーモニーで生まれ変わっている。他に類を見ない活動で特異な存在感を放っている姉妹のルーツ、在り方、そして野望やヴィジョンについて語ってもらった。
クラシックポップスみたいなジャンルを私たちが作れたら面白い
--今回は山田姉妹のことをまだ知らない人にも向けたインタビューに出来ればと思っているのですが、まず自己紹介からお願いできますでしょうか。
山田姉妹 2ndアルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』ダイジェスト試聴
--おふたりが歌うことに目覚めたきっかけは何だったんでしょう?
山田華:物心ついたときからピアノを習っていたんですけど、ピアノを習ったあとにお歌の時間があったんです。先生が歌がご専門の方だったので、私たち姉妹用にアレンジしてくれて、4才のときからメロディーとハモりをつけてチェンジしたりしながら歌っていました。 山田麗:それでピアノよりもどんどん歌が大好きになっていって、学校の通学路でCMソングをハモって歌いながら帰る双子だったので(笑)、今もその延長線上に居るような感覚なんです。--幼いときからピアノを習っていたのは、親の勧めだったんですか?
山田華:母がクラリネットで音大を出ていて、父も趣味でクラリネットをやっていたので、音楽は結構身近で、常に音楽がそばにある環境だったので、それが私たちの基礎になっていると思います。 山田麗:先生は母と小学校からの友人で、一緒に音大へ行った方だったので、その流れでピアノと歌を習うようになっていったんです。その先生がジャンルの隔てなくいろんな歌をうたわせてくれたので、今回のアルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』に収録されているポップスだったり、ディズニーやジブリの曲だったり、音大で歌っていたクラシックだったり、今もどのジャンルも好きで歌えているんですよね。--クラシックの世界で声楽の勉強をしていたりすると、おふたりのようにどんな音楽でも好きで歌っている人たちはどういう見られ方をするんですか?
山田華:クラシックの中だけで言ったら、音大の仲間からは「華たちは歌謡曲だもんね」と言われるぐらい、ちょっと異色な感じにはなっていると思うんですけど、私たち自身としては小さい頃から歌っていた曲はクラシックじゃなくポップスでしたし、いろんなジャンルの歌をうたってきているので、全然その曲たちを別モノとして見てないんです。なので、音大に行くのにクラシックは必要だから一生懸命勉強はしたんですけど、それによって歌謡曲やJ-POPも歌いやすくなったので、私たちにとっては全部が延長線上にあったもので一直線なんですけど、周りからも「なんで音大行ったのに、歌謡曲やポップスをうたっているの?」とか言われることはありますね。 山田麗:でも私たちがついている先生は「音楽はみんな音楽よ」みたいな方なので、それこそ今回のアルバムの曲たちも、レッスンに行ったら丁寧に教えてくださるし、私たちが出ているテレビも観て応援してくださったりするんです。友達もアニソン好きだったりするので、私もアニソンも歌ったりしますし、ミュージカルが好きな子もポップスが好きな子も周りにはたくさんいて、私はそういう環境で育ったので、あんまり特殊とは思わなかったですね。 山田華:「ふたりいるから怖くない」というところもありますし(笑)。 山田麗:ポップスもクラシックもどっちも大事に歌っているので、逆に「こっちでも友達ができた」「あっちでも友達ができた」みたいなことになって、結構トクをしているんじゃないかなとも思います。 山田華:なので、そういう面であまりイヤな想いをしたことはないんですよね。 山田麗:「新しいジャンルを作れたらいいな」と昔から思っていて、今、クラシックを軸にポップスを歌っていて、ポップスの中にもクラシックの発声があったりするので、クラシックポップスみたいなジャンルを私たちが作れたら面白いかなって。--ちなみに、クラシックポップスの定義を説明するとしたら?
山田麗:基盤はクラシ……なんだろう(笑)? 難しいな! 山田華:今回のアルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』を聴いても、J-POPの歌手が歌っているポップスとはまたちょっと違うと思うんですよね。このクラシックの発声を活かしつつ、でもオペラみたいな歌い方じゃなく「あの声で歌えるのは、山田姉妹だからだよね」みたいなことを聴きながら思ってくれたら嬉しいなって。- 誰かが残していかないともったいない曲がたくさんある
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誰かが残していかないともったいない曲がたくさんある
--先程「とにかく歌が好きでうたっていて、今もその延長線上に居るような感覚」と仰っていましたが、プロやメジャーデビューを目指して活動しているところもあったんですか?
山田華:小学校5年生ぐらいのときに、横須賀で初めて歌ってお金を頂くお仕事をしたんです。大きい公園でのイベントで、1時間ガッツリ歌うみたいな。そのときに「絶対、将来は歌手になって歌えたらいいな」と言葉には出さずとも思っていて。小学校の卒業式のときに、人数が少ない学校だったんで、ひとりずつスピーチをするんですけど、私は「麗と一緒に歌手になりたいです」ってみんなの前で宣言をして、それでふたりで大会に出たりもしていて。ただ、高校は違う学校へ行って、それぞれ違う友達と違う生活をするようになるんですけど、結局ふたりとも音大を目指すことになって、卒業したら結局ふたりで歌っていたという。本当に自然な流れで歌手になれたのはすごくラッキーで「恵まれていたな」と思います。--素朴な疑問なんですが、それだけ歌が好きだったら、姉妹以外の人とも歌いたいと思ったりはしないんですか?
山田麗:それがないんですよ! 山田華:1回もないですね。歌手になるなら「このふたりで」と思っていて。 山田麗:小さい頃からふたりで歌っていることが楽しかったので、そもそもひとりだったら「歌手になる」という夢はなかったんですよ。「ふたりで一緒に歌手になる」というのが夢だったので。 山田華:大学出てからオペラの勉強をするんですけど、クラスも違ったので、ペアになる人が違ったりするんですけど、私は麗と組むことに馴れすぎちゃっていて、違う方と組むと歌っていて違和感を覚えるようになってしまって(笑)。で、ふたりで歌うと「あ、やっぱりこっちのほうがいい。家に帰ってきた」みたいな。なので、相性はこのふたりがいちばん良い。 山田麗:あまりにもこのふたりで歌うのが気持ち良過ぎて、それに馴れちゃうと他の人とは歌いづらくなっちゃうんですよ。私たち、声質とか声帯も似てるし、ビブラートも一緒だし、そうなると他の人だと「なんか違う」と違和感を覚えてしまう。 山田華:一般的には合っているんだろうけど、なんかやっぱり違うんですよね。 山田麗:このふたりで歌うと、今回のアルバムタイトルのように「ふたつでひとつ」と感じるんですけど、他の人だと「ふたつでふたつ」みたいな(笑)。合わさらない。でも私たちだと混じり合って、一緒に勢いをつけてどーん!と飛んでいく声になるような気がしていて、それはこのふたりじゃないと味わえないんですよね。--ひとりで歌っても成立しない感覚はあるんですか?
山田麗:ひとりだとちょっと心細いかも。 山田華:そうだね。 山田麗:ふたりで一緒に歌ってハモったりとか、がっちりハマって一緒に飛んでいく感じがいちばん気持ち良い瞬間ですね。--聴く音楽の趣味も一緒なんですか? それとも若干違ったりする?
山田麗:そこは違いますね。 山田華:聴くものはふたりとも全然違っていて、私はJ-POPが大好きで、秦 基博さん、ポルノグラフィティさん、あと、day after tomorrowさんも好きなんですけど、そういう曲をずっと常に聴きながら通学をしていたので、J-POPが大好き。--いずれも歌にインパクトのある方ですね。misonoさんも歌力は半端ないし。
山田華:そうですね。去年お会いすることが出来て嬉しかったんですけど、ハイトーンを出す歌手が好きみたいです。自分が地声で高い声を出せないので、そういう方の歌を聴いて楽しんでいるところはあります。自分が出来ない歌い方の方々です。--麗さんは?
山田麗:私は本当に全然違うんですけど、70年代に流行ったビー・ジーズが好きで、今でもずっと聴いているんですけど、通学と言えばビー・ジーズ、普段聴くのもビー・ジーズ、寝れないときに聴くのもビー・ジーズ、それぐらいビー・ジーズですね(笑)。--そんな山田姉妹によるカバーアルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』。このラインナップはどうやって決めていったんでしょうか?
アルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』収録曲
・野に咲く花のように
作詞:杉山政美
作曲:小林亜星(ダ・カーポ 1983年)
・2つで1つ
作詞・作曲:工藤慎太郎(工藤慎太郎2009年)
・どんなときも。
作詞・作曲:槇原敬之(槇原敬之1991年)
・いのちの歌
作詞:Miyabi
作曲:村松崇継(茉奈 佳奈2009年)
・少年時代
作詞・作曲:井上陽水(井上陽水1990年)
・たしかなこと
作詞・作曲:小田和正(小田和正2005年)
・あの素晴しい愛をもう一度
作詞:北山修
作曲:加藤和彦(加藤和彦&北山修1971年)
・心の瞳
作詞:荒木とよひさ
作曲:三木たかし(坂本九1985年)
・やさしさに包まれたなら
作詞・作曲:荒井由実(荒井由実1974年)
・部屋とYシャツと私
作詞・作曲:平松愛理(平松愛理1992年)
・涙くんさよなら
作詞・作曲:浜口庫之助(坂本九1965年)
スペシャルトラック(山田姉妹オリジナル)
・虹色の空
作詞:山田華
作曲:川﨑龍
・ただいま
作詞:山田麗
作曲:川﨑龍
「美しい日本語を歌に乗せて伝えていきたい」という目標がある
--そうした名曲たちを山田姉妹の歌にしていく仮定の中で、幼い頃に聴いていた歌と今改めて対峙して歌ったときに「こんなに泣ける歌詞だったっけ?」みたいな……
山田姉妹:あります、あります! 山田華:今回歌わせて頂いている「少年時代」は、小学生の頃に毎年地元の高校生と一緒に歌っていたりしたんですけど、夏休みの終わりの寂しさって、その当時も感じていたとは思うんですけど、今この曲を歌ってみると「あのとき、あの寂しさあったなぁ」って懐かしさとか愛おしさとかもプラスされて、当時とはまた全然違う感覚で歌えたり聴けたりするのは歌の良さだなと思って。そういう想いが1曲1曲に対してあります。 山田麗:カバーではあるんですけど、歌は巡り巡ってやってくるものだと思っているので、私たちがこうして新しく歌うことでまた違う感覚を得てもらったり、「あ、ここの歌詞、こういう意味なのかもしれない」と気付いてもらえたらすごく嬉しくて。何か心を動かすきっかけになったらいちばん嬉しいです。--そこにはふたりの経験や人生が乗っかっている訳ですからね。
山田麗:だから今から80歳になったときにこの曲たちを歌うのがすごく楽しみなんです。--たしかに気になりますね。80歳が歌う「少年時代」は凄いことになりそう(笑)。
山田華:孫を見ながら歌うかもしれないし(笑) 山田麗:5年後とか10年後でも絶対感覚は違うじゃないですか。例えば、結婚したりとか子供が生まれただけでも絶対変わると思うので、そのときどきに歌うそのときの気落ちを大事にして、ふたりで歌っていきたいなって思います。曲は変わらなくても気持ちは変わるので、いろんな想いを込めたいです。--今作には「部屋とYシャツと私」のカバーも収録されているじゃないですか。すごくポップだけど、愛の重さみたいなモノもしっかりとあって、その恋愛観だけでもいろんな解釈が出来る曲だと思うんです。ふたりはこの曲をどう解釈して歌われたんですか?
山田麗:この曲は解釈にいちばん悩んだんですよ! 山田華:今までは歌詞の意味をふたりで一緒に理解していたのに、この曲はそれが無理で。麗はこの歌詞の女性に対して「え、可愛い女の子じゃん」と言うんですけど、「え、私はちょっと怖い女の子だと思うよ」みたいな感じで、全然意見が一致しなくて。一緒に歌っていてもユニゾンが今までよりもちょっとバラバラ感があって、ふたりでヘッドフォンつけてお互いの声を聴いても違和感があって、それはどうしても表現したいモノがそれぞれ違っているからだと思うんです。だから「どうしようかな?」と思ったんですけど、スタッフさんが「ふたり、違ってていいじゃないか」と言ってくださって。「解釈が違うんだから、ふたりの女の子が歌っている感覚でもいいと思うよ」という言葉のおかげでドアが開いて、ふたりとも思い切って歌うことが出来ました。 山田麗:私はこの女の子が可愛いなと思ったんですよね(笑)。男性的にはどう想います?--「可愛いな」とはなかなかならないですね(笑)。
山田麗:それだけ受け取り方が違う状態のままふたりで歌っているので、山田姉妹のサウンドに聴き慣れている人はちょっと新鮮かもしれない。それぞれの声質も、他の曲と比べてちょっと明るかったりとか、ちょっと女の子ぽかったりとか、この曲だけちょっと異質かもしれないです。 山田華:「そういう曲があってもいい」という風に思えたのは、一歩進めたということなのかもしれない。挑戦させていただいた形です。--また、今作の表題曲「ふたつでひとつ」。工藤慎太郎さんの名曲ですが、こちらをカバーしようと思ったのは?
山田華:伯母が教えてくれた曲なんですけど、その伯母が大病を今患っていまして。それで「この曲をふたりに歌ってほしいな」と言われたことがあって、タイトルも私たちふたりみたいだし、その瞬間から「アルバムタイトルに良いなぁ」と妄想が膨らんだりとかして…… 山田麗:タイトルを聴いた瞬間にご縁を感じて、曲を聴いてドキッとして、「ぜひ歌いたい」と思って。それで叔母にも「歌うことになったよ。コンサートに聴きに来てね」と言ったらすごく喜んでくれたりしているので、カバーして良かったなって。 山田華:難しい言葉がひとつもないのにハッと気付かされるような歌詞だったので、「この曲をいろんな人に歌っていただきたいな」と第一印象で思ったんですよね。だからまず私たちが歌って、コンサートでもいっぱい歌って、いろんな方々の元気が出るソングみたいな1曲になったら嬉しいなと思って入れました。 山田麗:いつかコンサートで私たちの曲を皆さんと一緒に歌えたらいいなと思っていて、この曲はメロディーもそんなに難しくないし、内容もみんなが共感できるものだし、いつか会場の皆さんと一緒になって歌いたいと思っています。なんか優しい気持ちになれて……スーーってラクになれる感覚があったので、工藤さんから教えてもらったこの曲を歌い継いでいきたいなと思いました。「いつか3人でコラボとか出来たらすごく嬉しいな」って野望として思っています。--ぜひ実現してください。では、最後に、これから山田姉妹のファンになってほしい皆さんへメッセージをお願いします。
山田華:今回のアルバム『ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ』だけじゃなく山田姉妹は「美しい日本語を歌に乗せて伝えていきたい」という目標があるので、ぜひ私たちの歌を聴いて、心があたたまったり、何かいつもと違う気持ちを味わって頂いたり、心の助けになったら嬉しいなと思っています。皆様の土地にも歌いに行きたいなと思っているので、機会があったら私たちの歌を聴いてほしいなと思います。 山田麗:人それぞれ違ういろんな解釈があると思うんですけど、等身大の私たちの気持ちで「何か届けばいいな」と思って歌っているので、聴いて下さる方が自分の心に嘘をつかず、何か大事なものを感じて頂ければいいなと思います。ふたつでひとつ ~心を繋ぐ、歌を継ぐ
2018/03/07 RELEASE
COCQ-85416 ¥ 3,300(税込)
Disc01
- 01.野に咲く花のように
- 02.2つで1つ
- 03.どんなときも。
- 04.いのちの歌
- 05.少年時代
- 06.たしかなこと
- 07.あの素晴しい愛をもう一度
- 08.心の瞳
- 09.やさしさに包まれたなら
- 10.部屋とYシャツと私
- 11.涙くんさよなら
- 12.虹色の空 (スペシャルトラック)
- 13.ただいま (スペシャルトラック)
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