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BiS『WHOLE LOTTA LOVE / DiPROMiSE』プー・ルイ卒業&新体制初インタビュー
2011年のBiSデビューよりリーダー兼ヨゴレ担当として数多の伝説を残してきたプー・ルイが、3月4日の両国国技館ワンマンライブにて卒業。そして、BiSは完全なる新体制(キカ・フロント・フロンタール、ペリ・ウブ、アヤ・エイトプリンス、ゴ・ジーラ、パン・ルナリーフィ、ももらんど)での活動をスタートする。この歴史的瞬間にビルボードジャパンでは、プー・ルイ卒業インタビューと新体制初インタビューを敢行した。
BiS『WHOLE LOTTA LOVE / DiPROMiSE』
プー・ルイ卒業インタビュー
変わっていた世界「……私の知ってるBiSはもう無くなった」
--プー・ルイさんに初めて単独インタビューしたのは、2011年の『primal.』リリースタイミング(http://bit.ly/1tLvnfG)でした。「8割は使えないと思いますよ(笑)。」と言っていたのに120%掲載されるという……
--旧BiSのインタビューはどれも今読むと「よくこのまま載ったな」と僕も思いますし、今回もそのノリで行ければと思うんですけど、そもそもなんで卒業しようと思ったんですか?
プー・ルイ:そもそも?「なんで」って言うのがもう分かんなくて……でもいろいろ考えたんですよ、哲学的に。--プー・ルイが哲学?
プー・ルイ:いや、哲学じゃないかもしれない(笑)。プー・ルイなりの観察? 理由はないんです。「これだ!」っていう理由はたぶんない。なんか「これだ!」って言ったら嘘になるとどれも思うんですよ。自分でも「なんで辞めるんだろう?」って思うし……自分で決めたんですけどね! いや、理由はいっぱいあるんですよ。それを総じたもの。言うならば「時が経った」っていう感じですね。--哲学的というか、抽象的過ぎる。
プー・ルイ:ハハハハ! すべてのことには矛盾があるじゃないですか。本音と建前ってあるじゃないですか。でもどっちも本音じゃないですか。汚いほうと綺麗なほう、みたいなものがいつもある訳で。人間は。それのどっちを出すか、みたいなところがあるじゃないですか。でも出したほうが本音になるんですよ。だから私は綺麗なほうを出して辞めていきます。今回ばかりは! ということを決めました。--なんで「綺麗なほう」にしようと思ったんですか?
プー・ルイ:自分を良く見せるため。--(笑)。でもプー・ルイさんは卒業発表の際「後輩たちがなかなか越えられないようなBiSを作るっていう壮大な嫌がらせを最後にして、私は居なくなりたいと思います」と仰っていましたよね?
プー・ルイ:はい! それはします! やっぱりそれはしないとダメだと思うから。「プー・ルイがいないBiSはBiSじゃない」と言われないといけないと思うんですよ。いっぱい叩かれるべきだと思うから。これは嫌がらせというか、それを乗り越えてきたのがBiSなので。「ユケがいないBiSはBiSじゃない」「ユフちゃんがいないBiSはBiSじゃない」って私だって言われてきたじゃないですか。「こんな丸く収まってるのはBiSじゃない」とか。そういうのと戦ってきたのがBiSだと思うから、それは言われるべきだなと思う。あと、最終的に忘れるって私は分かってるんで。今言ってるだけなんで、オタクは(笑)。--「プー・ルイがいないBiSはBiSじゃない」という感覚も忘れていくと。
プー・ルイ:今は悲しいと思いますよ、本当に。まさか私が辞めるとは思っていなかったと思うし。だからそれは本音だと思うけど、どうせ変わっていくものだから、そこに対してのネガティブな感覚はない。ちゃんと活動していれば「今のBiSも良いよね」ってどうせ言われていくので……。そうじゃないですか?--「○○じゃなきゃBiSじゃない」と言われてきても結局BiSは続いてきた。それはそうなんですけど、でもプー・ルイはそのストーリーの真ん中を歩いてきた人じゃないですか。何があっても真ん中に居続けた。だから一概に「そうですね」とは言えないなって。
プー・ルイ:「BiSをもう一度始める」と言って始まったBiSHも、最初は「こんなの、BiSじゃない」って言われてきたと思うんですよ。常にそうやって何かと戦っているものなんで、アイドル自体が。だから「戦えるかどうか」ですよね。別にそこに対して心配はしてないし、戦地にいきなり放り込まれたら誰だって戦うじゃないですか。戦わないと死んじゃうから。--これからのBiSを背負っていく後輩たちは、その戦地でどう戦っていくんでしょうね。どんな風に立ち回れそう?
プー・ルイ:ちょっと予想はまだ出来ないですけど、今はBiSHもいてGANG PARADEもいて、そういった他のグループと戦わされることは経験しているし、そういう場面になったら頑張れたり……そもそも合宿もそうだし、そこで勝てた子が新メンバーとして入ってきているので。あと、今のBiSはBiSって名前だけど、違うBiSになっていくと思っているから。私が作ってきた、いつも戦ってるBiSは……本当に無駄に戦ってる部分があったんで(笑)。それは別にしなくてもいいのかなと思うところもあって。WACKが大きくなっていっていて、ちゃんとしたところでちゃんと戦えばいい状況になってると思うから。ちゃんと練習をして、ちゃんとしたものをライブでやって、今ってそれで良いじゃないですか。そういう流れもあるから……私の知ってるBiSはもう無くなった。--そうですね。
プー・ルイ:BiSを復活することになったけど、そのBiSはもうあのBiSじゃなかったんですよね。それは全然悪いことじゃなくて。--プー・ルイの根底には「あの頃のBiS」が当然ながらありますもんね。でも新しいBiSが始まるまでにBiSHのブレイクがあって、ギャンパレのBiSとは違うスタイルもあって、当時とはやり方も在り方も変わっていて。「あの世界に戻ろう」と思って戻ってきたんだけど、その世界はもう「あの世界」ではなかった。
プー・ルイ:そうですね。すごく大きくて、それが。サキちゃんはその変わっていく様を見ていたじゃないですか。POPとかギャンパレとかWACKの中にはいて、BiSHがどんどん大きくなっていって、今までといろいろ変わっていくところを感じていたと思うし、自分も変わらなきゃなと思ってやってきただろうし、変化していく過程を体感していたんですよ。でも私はバンドでデビューして、渡辺さん(※WACK社長/BiSプロデューサー)と松隈さん(※SCRAMBLES社長/BiSサウンドプロデューサー)とは不本意で離れた部分もあったので、あんまりWACKのことを見ないようにしていたんですよね。だから「もう1回やろう」と言われたときに始まると思っていたモノとはちょっと違うと感じてしまった。最初の合宿オーディションは旧BiSに寄ってましたけどね(笑)。--渡辺さんもそこにしっかり居て、嫌な役もちゃんとやって、それにプー・ルイがギャーギャー言って、他のメンバーが泣くみたいな感じは、以前のBiSっぽかったですよね。
プー・ルイ:だからそのときは「始まったな!」って感じだったんですけど、オーディションが終わっていざ動き出したら「あれ?」みたいなところは正直ありましたね。でも1年半やってて「なんか違うな」とは思っていながらも分からなかったんですよ。100キロマラソンやってても「なんか違う。なんでみんなあんなに速く走る? クソ速ぇ!」みたいな(笑)。車中泊ツアーやっても「なんか違う。もっとヤバい空気が流れて、メンバー全員狂って、スタッフさんたちも全員狂う企画だったのになぁ。狂ったの、私だけ!」みたいな。あの辺までは渡辺さんも旧BiSのノリでやってくれていたと思うんですけどね、それらの企画が終わったあとに「違ったね」ってメールが来て。「新しいBiSを作らなきゃね」みたいな……。--でもプー・ルイだけがダイエット企画も含め「あの頃のBiS」をひとりでやり続けている印象はありました。
プー・ルイ:独りで戦っている感は半端なかったですね(笑)。--あの頃のBiSは殺伐としていましたし、メンバー間の仲が悪い時期もあったんで、それこそ全員が独りで戦っている感覚だったと思うんですけど、でもみんなその孤独を共有していたじゃないですか。嫌い合っていても、同じように孤独な戦いをしていたから、いざ誰かが辞めることになったら何とも言えない気持ちになって……
プー・ルイ:最後は肩を抱き合って「辞めないで!」みたいな。それは最初にりなはむが辞めていく時点であったじゃないですか(笑)。あの感じとはやっぱり違いますね。--それは、BiSやWACKが変わったところもあると思うんですけど、その前に時代が変わったんでしょうね。
プー・ルイ:アイドルシーンが変わってて、BiSが復活してからアイドルイベントに出たら知らない子ばっかりで。そもそも昔から対バン相手のアイドルに興味はないんですけど、なんか肌感で「あ、みんな居なくなってるな」というのは分かって。あと、BiSは新生アイドル研究会じゃないですか。で、これは研究した結果なんですけど、BiSが解散する2014年まではハチャメチャなのが良かったし、ダンスの振りが揃ってなくても頑張ってアイドルやってる姿に惹かれていたりとか、BiS以外にも王道じゃないアイドルが流行ってた。でも2016年に戻ってきてみたらその反動で正反対になっていたんですよ。モーニング娘。がもう1回流行ったりとか、AKB48ではなくて坂道(乃木坂46/欅坂46)が前に出てきていたりとか、ちゃんと綺麗な正統派が評価されていたりとか……だからビックリしました。「やべぇ! 私たち、綺麗じゃねぇな」って(笑)。--当時はそういった王道に対するカウンターが面白がられて、BiSはその代表格でしたからね。でも今はそのカウンターが成立しづらくなってきた。
プー・ルイ:でもきっとそうなるべきだったし、BiSが2014年に解散せずに続いていたんだったらそこに行くべきだったと思うし、ウチらは当時から「ロックだ、パンクだ」って言われていたじゃないですか。あれは全裸で走ったからそう言われていた訳ではなくて、曲だったりライブだったり……--その在り方ですよね。
プー・ルイ:うん。そこから上手く推移していれば、たぶんついていけたんですけど。--とも捉えられるし、その文脈で言うと、あのBiSはやっぱり2014年7月8日で……
プー・ルイ:終わった!- あの頃のプー・ルイ「……格好良い。あんなにひとつのことを楽しいと思って」
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リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:内山直也
WHOLE LOTTA LOVE/DiPROMiSE
2018/03/07 RELEASE
CRCP-10392 ¥ 4,180(税込)
Disc01
- 01.WHOLE LOTTA LOVE
- 02.DiPROMiSE
- 03.WHOLE LOTTA LOVE (instrumental)
- 04.DiPROMiSE (instrumental)
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