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ジュリア・フォーダム来日記念特集 本人セレクトのプレイリストも掲載
ほのかにジャジーでアンニュイながら、ポップな印象を持つ唯一無二の歌声。ジュリア・フォーダムは、他のアーティストには変えられない不思議な魅力がある。1980年代後半にデビューしたが、この当時に並び称されていたシャーデー、バーシア、スウィング・アウト・シスターなどと比べても、その実力は申し分なく、そして今もなお彼女にしか表現できない世界を持ち続けている。ここでは来日公演を控えたジュリア・フォーダムの足跡を追ってみたい。
また昨今、性差別や性的嫌がらせの撲滅を訴える「Time's Up」運動やウィメンズマーチにより、世界中で女性たちの勢いが加速中。社会での女性の地位を問われている今、ジュリア本人に女性が聞いていて元気が出るような「Female Empowerment Anthems」をピップアップしてもらい、各楽曲に対するコメントをもらった。プレイリストはApple Musicで配信中なので、一度チェックして欲しい。また来日前にビデオメッセージも到着!
ジュリア・フォーダムは1962年生まれ。英国南部の港町ポーツマスの出身。幼い頃から歌っていたが、12歳から本格的に楽曲作りをスタート。14歳のときには地元のクラブに出演するほどの才能を見せていた。その後、英国のナショナル・ユース・ジャズ・オーケストラにゲスト・シンガーとして招かれるようになり、ロンドンに進出。プロとしての歌手活動を1980年代初頭よりスタートし、マリ・ウィルソンやキム・ワイルドなどのバッキング・ヴォーカルを担当した。
こうして下積みを積んだジュリアは、30代半ばにしてデビューにこぎつけた。1988年に発表したデビュー・アルバム『Julia Fordham / ときめきの光の中で』は、彼女の落ち着いたヴォーカルと、グラント・ミッチェルがアレンジを施したポップでメロディアスな楽曲のバランスが非常に高く評価され、UKのアルバム・チャートでは20位にまで上昇する結果となった。なかでも、冒頭のロマンティックな「Happy Ever After / ハッピー・エバー・アフター」はUKシングル・チャートでも27位を記録。日本では、翌年に放映された浅野ゆう子主演のテレビドラマ『ハートに火をつけて!』の主題歌に抜擢され、お茶の間にも彼女の声が流れた。
▲ 「Happy Ever After」
当時の日本はいわゆるバブル期ということもあり、音楽シーンにおいても、シンセを多用した派手なサウンドが好まれた時期でもある。また、グラウンド・ビートやニュー・ジャック・スウィングといった刺激的なダンス・ミュージックが席巻した時代でもあった。しかし、彼女の音楽はこういった世相を反映しながらも、独自の浮遊感に溢れたサウンドを追求し、持ち前のハスキー・ヴォイスを活かした楽曲を多数生み出していった。そこが唯一無二の存在になり得た理由だろう。
その最良の結果といえるのが、翌1989年に発表したセカンド・アルバム『Porcelain / 微笑にふれて』だ。シングル・カットされた「Lock And Key」や、切ないメロディの「Girlfriend」、彼女のキャリアにおける屈指のバラード「Towerblock」など名曲が揃っているだけでなく、全体を包む独特の空気感こそがジュリア・フォーダムの世界といってもいいだろう。ピノ・パラディーノ、マヌ・カチェ、ドミニク・ミラーといった名うてのミュージシャンが参加しているのも納得だ。結果的に、UKアルバム・チャートでは現在に至るまでの最高位13位を記録し、USビルボード・チャートでも74位にまで上昇し、名実ともに彼女の最高傑作として評価されることも多い。
▲ 「Girlfriend」
その後も、本国では大ヒットとなった「(Love Moves in) Mysterious Ways」を含むサード・アルバム『Swept / 哀しみの色彩』(1991年)、ラリー・クラインをプロデューサーに迎えてLA録音を行った『Falling Forward / 明日を夢見て』(1994年)、アンビエントやワールドのシーンにおける鬼才マイケル・ブルックを起用した『East West / 風の道標』(1997年)、再びラリー・クラインと組んでインディア・アリーも参加した『Concrete Love / 揺るがぬ愛』(2002年)と、定期的に素晴らしい作品を作り出していった。いずれも彼女らしい滋味深いアルバムで、長く聴き続けられる名盤ばかりといってもいいだろう。
▲ 「(Love Moves in) Mysterious Ways」
ここ近年の傑作といえば、2014年に発表したアルバム『The Language Of Love / ザ・ランゲージ・オブ・ラヴ』ではないだろうか。この作品は彼女がジャズ・アレンジで名曲を歌うという企画作で、ブロンディ「Call Me」、10cc「I'm Not In Love」、スティーヴィー・ワンダー「Sir Duke」など、時代やジャンルにとらわれず選曲されている。また、新曲も披露してくれた他、出世曲でもある「Happy Ever After」のセルフ・カヴァーも収められており、デビュー当時からの盟友でもあるグラント・ミッチェルがアレンジを手掛けたのもファンには嬉しい。シンプルなバッキングに乗せて歌う彼女の声は、以前よりもさらにふくよかになり、聴く者を心地良い空間に包み込んでくれるのだ。
日本では「Happy Ever After」のヒットもあって、あの当時のシンガーという認識なのかもしれないが、彼女はいつの時代にも一貫して自身の音楽世界を作り続けてきた。包容力に満ちた歌声は変わらず、その魅力はますます磨きがかかっている。そして、その声はライヴで体感することで、さらに素晴らしさを理解することができるのは、今もなお世界中をツアーしていることからもよくわかる。間もなく行われるビルボードライブ公演で、ぜひジュリア・フォーダムという稀有なヴォーカリストの世界に酔いしれてもらいたい。
公演情報
ジュリア・フォーダム
ビルボードライブ東京:2018/2/19(月)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2018/2/21(水)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
【BAND MEMBERS】
ジュリア・フォーダム / Julia Fordham (Guitar / Vocals)
グラント・ミッチェル / Grant Mitchell (Piano / Vocals)
コリン・ライアン / Colin Ryan (Guitar)
マーク・ゴールマン / Mark Gorman (Bass)
デイヴ・アレン / Dave Allen (Drums)
関連リンク
Text: 栗本斉
ジュリア・フォーダムが選ぶ「女性に元気を与えるエンパワーメント・ソング」プレイリスト
01. India.Arie - Video
私がどれだけシンガーでありライターでもある彼女と、この曲を愛しているか。私がここまで最上級に愛せる作品は本当に少ないの。この曲は私にとって現代女性のエンパワーメントを象徴するNo.1ソング。インディアは草分け的な存在で、凝り固まった魂をほぐしてくれるような歌姫よ。彼女は深く広く入り込み、自分の悪い部分を見せつけることになんの躊躇もない。特にこの曲で、彼女は輝く才能を難なく実証してしまう。これでもまだ彼女の才能を掴みきれないというのであれば、私の「揺るがぬ愛~コンクリート・ラヴ」を聞いてみて。彼女の美声でこの曲が輝いているわ。
02. Joni Mitchell - Coyote
この曲は並外れた1曲で、ジョニとジャコ・パストリアスの素晴らしい才能とプレイが感じられる特別な曲。14歳の頃にこの目もくらむような素晴らしい曲を聴いて、人生が変わったわ。こんな知性豊かな女性でも気持ちを抑えることができない野良犬のような男性って、いったいどんな人なのかしら?彼女の過去の作品やそれ以降の作品全てに夢中になったわ。強くももろい部分を備えているジョニが大好き。彼女の作品は骨に滲みこみ、皮膚の下で生き続ける。彼女が作り上げた自信に満ち溢れた力強い女性像は何とも純正で、情熱的よね。この吟遊詩人からはインスピレーションを受けるばかりよ。
03. Janis Ian - At Seventeen
彼女はなんてこのビロードのように滑らかなポンチの中に、感情に訴える知性と品位を詰め込んだのでしょう。強い女性が取り残された醜いアヒルの子のような気分を、ここまでソフトに、そして素直に歌っているわ。この歌が本当に大好きで、アルバム『ザ・ランゲージ・オブ・ラヴ』でカバーをしたくらい。このビデオでは、ナイチンゲールのような歌声で歌い、美しい白鳥のようなジャニスが観られるわ。
04. TLC - No Scrubs
ガールズ、その調子よ。独創的なアイデアよね。
05. Meghan Trainor - All About That Bass
年頃の娘を持つ身として、メーガンが歌うこの曲を聴いた時は嬉しく思ったわ。クールでキャッチーで、それに彼女がとても愛くるしいわ。何年か前に、LA LAランド(ロサンゼルス)で彼女に会ったことがあるのよね。
06. Katy Perry - Roar
ミュージックビデオでケイティが何もないゼロの状態からヒーローに変わっていく様がとっても好き。才気煥発なワンダーウーマン。とても面白くてファビュラスだわ。
07. Beverley Craven - Woman to Woman
華麗な天使の歌声を持つブリット・シンガーによる機敏な曲。この曲で彼女は、女性の中には新しい男性が現れると、仲良くつるんでいた友達のことなんか後回しにする人もいるってことを暴いているわ。
08. Alanis Morissette - You Oughta Know
本当に素晴らしい曲。アラニスがズバッと思いのまま歌っているわ。辛辣な事実でもある。心の内を解放するがむしゃらな姿と、このフェミニン主義者の壮観なデモンストレーションに強く共感したわ。今でも、彼女がこの歌を見事に歌いこなすのを聞く度に鳥肌が立つの。ワオ!この曲のミュージックビデオの1カットごとに滲み出る彼女のアーティスティックな才能は、動いている詩を見ているよう。
09. Beyoncé - Love Drought & Sandcastles
息を呑むほど美しい。茫然としちゃう。官能的でセクシーで、グラミー授賞式でこの2曲を披露した妊娠姿の彼女は神々しく、女神のようだった。自立した強い女性像の中でも、彼女は断トツ。とても感銘を受けたわ。(※こちらの2曲はApple Musicで配信されていないため、プレイリストに含まれておりません)
10. Gloria Gaynor - I Will Survive
この曲はアンセムと呼ばないわけにはいかない。私達女性がこれまでのように力強く賢い女性として、いつまでも生き続け、繁栄していきますように。ありがとう、グロリア。Xxxx
ジュリア・フォーダムからビデオ・メッセージが到着!
公演情報
ジュリア・フォーダム
ビルボードライブ東京:2018/2/19(月)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2018/2/21(水)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
【BAND MEMBERS】
ジュリア・フォーダム / Julia Fordham (Guitar / Vocals)
グラント・ミッチェル / Grant Mitchell (Piano / Vocals)
コリン・ライアン / Colin Ryan (Guitar)
マーク・ゴールマン / Mark Gorman (Bass)
デイヴ・アレン / Dave Allen (Drums)
関連リンク
フォーリング・フォワード
2017/05/17 RELEASE
CDSOL-70084 ¥ 2,618(税込)
Disc01
- 01.I Can’t Help Myself
- 02.Caged Bird
- 03.Falling Forward
- 04.River
- 05.Blue Sky
- 06.Different Time, Different Place
- 07.Threadbare
- 08.Love & Forgiveness
- 09.Honeymoon
- 10.Hope, Prayer & Time
- 11.Safe
- 12.I Can’t Help Myself (Stent Edit) (BONUS TRACKS - SINGLE VERSIONS AND NON-ALBUM B-SIDES)
- 13.Please Forgive Me (BONUS TRACKS - SINGLE VERSIONS AND NON-ALBUM B-SIDES)
- 14.Promises Promises (BONUS TRACKS - SINGLE VERSIONS AND NON-ALBUM B-SIDES)
- 15.Only Human (BONUS TRACKS - SINGLE VERSIONS AND NON-ALBUM B-SIDES)
- 16.Chaos (BONUS TRACKS - SINGLE VERSIONS AND NON-ALBUM B-SIDES)
- 17.Pocket Days (BONUS TRACKS - SINGLE VERSIONS AND NON-ALBUM B-SIDES)
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