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TOC『SHOWCASE』特集



TOC 『SHOWCASE』 特集

 2016年8月リリースのシングル『過呼吸』より、ソロとしてユニバーサル ミュージックとディールを交わし、メジャー進出を果たしたTOC。自身が立ち上げたレーベル「DRESS RECORDS」のヘッドとして弘jr.「月」のリリースを手がけるなど、アーティストとして、そしてレーベル・プロデューサーとしてなど、その動きの幅を更に広げてきた。

 その彼が2018年1月31日に、初のメジャー・オリジナル・アルバムとなる『SHOWCASE』をリリースした。

“これはあなたの為の一枚ですよ”

 今作の制作に関して「ラップだけのアルバムでは無い、というのは一つのテーマでした」と話すTOC。それはソロ前作となる「SAFARI PARK」が、ヒップホップ・プロデューサー:ZETTONのプロデュースのもと、ラップに特化した、ストレート・ヒップホップな作品になっていた事の、カウンターとも言えるだろう。

「『SAFARI PARK』を作った事は自分の血肉になってると思いますね。でも、今作からメジャーでのリリースを展開するなら、ラップだけじゃなくて、もっと“歌”をメインにした作品づくりをしたかったんです」

 事実、今作はTOCのメロディ・メイクのセンスや、メロディアスな歌フロウが作品の大きなキーとなっている。

「それが自分のオリジナリティだと思うし、最大の武器だと思うんですよね。だから、今回はそれをより大切にした作品にしようと思いました。Hilcrhymeとしてメジャーで8年間活動してきて、ソロや客演も含めると、今までで200曲ぐらい曲を作ってるんですが、その中でもセールスが良かったものは、やはりメロディの強い楽曲なんです。その意味でも自分に求められてるのはメロディだと思うし、自分でもソロとして、その部分を改めて研ぎ澄ましたいと思ったんですよね」

 トラックに関しても大きな変化を感じられた。「武器と勇気」のファンキーな展開や、ディスコティックな「START UP feat.チアキ」などから受けるファンクネスを感じるトラックは、これまでのTOC作品にはあまり見られなかったタイプの楽曲であり、USの現行の音楽シーンとの親和性も感じさせる、彼にとって新しいアプローチであるだろう。また、EDM的な感触もある「NEW RULE feat.LITTLE」や、ドラマティックな「I’ll Light You」、センチメンタルな「SAD DAY」、そして王道のヒップホップ「1999」など、9曲というタイトな曲数にあっても、そのバラエティは非常にカラフルだ。


「曲数に関しては、極端に言えば7曲ぐらいでも良いかなとも思ってたんです。要は、サッと聴けるモノにしたかった。それが最近の自分の好みでもあるし、今の自分の作品としても、それぐらいの長さがぴったりかなって。そして、その中でもバラエティを持たせる自信はありましたね」

 展開としてもライヴを想定したという本作は、流れとして聴きやすく、構成としても非常にリスナー・フレンドリーと言えよう。

「この9曲は1欠片たりとも、ネガティヴな事を言いたく無かったんですよね。とにかくポジティヴでありたかった」

 その言葉通り、アルバムのオープニングを飾る「武器と勇気」から、このアルバムはポジティヴなメッセージに貫かれている。

「インディではネガティヴな事だったりも歌ってきたし、自分の為に歌った部分もありました。特に『SAFARI PARK』は、“自分の為のアート”を作るという修練の場だったと思うんです。でも今回は、誰かの為に、誰かに聴かせる為に、“この曲は私の事を歌ってるんだ”って思って貰えるような曲が作りたかった。“これはあなたの為の一枚ですよ”と言えるアルバムにしたかった。正直、昨年末の出来事によって、当たり前に来る明日なんて無かったって事を身に沁みて感じたんですよね。だからこそ、自分で立て、自分で動け、お前が動けば周りがついてくる、恐れるな、っていうポジティブでタフなメッセージを形にしたかった。そういう“強さ”をリスナーが自分の事として感じてくれるような、キャッチーだけど、人間臭いアルバムになったと思いますね」

 2月からは全国5都市5公演で行われるライヴ・ツアー【TOC TOUR 2018“SHOWCASE”】が開催される。

「昨年の【TOC LIVE TOUR 2017 過呼吸~アンコール~】は、リリースから時間が少し空いてからのツアーだったのと、DJ AGETETSUがLIVE DJになったという新しい動きも含めて、完全に思い通りに出来たツアーかと言われれば、正直そうではなかった。数字(集客)的にもしんどいツアーではあった。だけど、ツアーのルーティンを崩さなくて良かったって今は思ってますね。次のツアーはほぼ完売してるんですけど、それは前回のツアーで、しっかりオーディエンスの前でライヴをするっていう筋を通したからこそ、またリスナーが僕のライヴにきてくれるんだと思います。次のツアーは、内容のギュッと詰まった、メチャクチャ濃い内容になると思いますね。新規のお客さんも含めて、絶対に楽しませる自信があります。このライヴを通して、TOCとは何ぞや、っていうのを、しっかりと提示したいと思いますね」

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TOC「SHOWCASE」(iTunes)


TOC『SHOWCASE』全9曲 本人解説!
「僕は僕しか作れない道を作ろうと思ってます」

01. 武器と勇気

アルバムのオープニングを飾るこの曲の、Chase「Get It On」を思わせるようなファンキーなオープニングにまず驚かされる。TOCのリリックも“自尊自立”といったタフでポジティヴなメッセージに貫かれている。

「僕自身、こういったファンキーなトラックでラップした事がほぼ無かったんで、新しい自分を引き出して貰えた、新しい自分を表現出来た曲になったと思いますね。例えばブルーノ・マーズが表現してるような、ポップなブラック・ミュージック・テイストのスゴく洒落たトラックだから、そういったトラックに自分が乗ることは、最初は想像もしてなかった。だけど新しい可能性を探る、チャレンジする、刺激を与える為にも興味があったし、実際に自分が乗ることでただ真似るんじゃなくて、“J-POP”のフィールドにグッと持って行くことが出来たと思う。今回のアルバムは“ポジティヴ”が大命題だったんで、それを象徴する曲になったと思うし、小難しい事を言うんじゃなくて、ストレートに、シンプルに、“当たって砕けろ!”っていうイメージが伝わると嬉しいですね」

02. リスキーダイス

曲中に数々のギャンブル/ゲームが登場し、それを人生になぞらえた一曲。派手なビート感でライヴで盛り上がる曲になりそうだ。

「この曲のトラックを作ってくれたCHIVA(BUZZER BEATS)がプロデュースした、DJ下拓の“DISOBEY feat.TOC”が、ライヴでとにかく盛り上がる曲になっていて。それで、ライヴでバンバン跳ねられる曲を自分の音源でも作りたいって所から始まった曲ですね。だから完全にライヴ・チューンとして意識して書きました。ミュージシャンという道を選んだ事自体も、ギャンブルだなって。その意味でも、僕は自分の人生にBET(賭け)したと思うし、そういうメッセージも込めて書いた曲です」

03. START UP feat.チアキ

G-FUNK的な感触も感じるディスコティックなトラックに乗せて、“新たな始まり”をメッセージする。客演に参加したチアキは、元赤い公園のヴォーカル、佐藤千明。

「チアキにとって、この曲がソロに転向して最初の曲になるんですね。だから、『START UP』だし、そういった“新しい日々を作る”というメッセージで一曲作りたいというイメージは、彼女の方から投げかけられて。僕もソロとして新しく動く事を考えなければいけないと思ってた時だったんで、そのアイディアに乗って、そのメッセージで一曲作ってみようと。しかもこの曲では“第一章が終わりさ/二章はない”ってリリックで書いてるんですけど、続きじゃなくて、新たなスタートを表現したかった。彼女のメロディ・ラインも僕が考えたんですが、僕の音程のレンジよりも、彼女の持ってる音階のレンジが1.5倍ぐらい広くて、生粋のヴォーカリストはやっぱりスゴいなって勉強になりました。それにとにかく声がビックリするほどいい。地声に独特の“歪”があって、それが本当に素晴らしい声を生み出してると思いましたね」

04. 高嶺の花

メロディアスかつバウンシーなビートに、高嶺の花への“届かぬ想い”を丁寧にしたためたラヴ・ソング。男女共に共感できる曲だろう。

「今まで僕が書いてきたラヴ・ソングは、“俺についてこい!”みたいなタイプの内容が多かったんで、『高嶺の花』で書いたような、手が届かない女性に対する気持ち、恋い焦がれるような内容はあまり書いた事が無かったし、そういう設定で書いたらどうなるだろうって思ってチャレンジした一曲です。ちょっとキャラじゃないリリックでもあるから、書きながら怖い部分もあったんですけど、出来てみたらこれも自分の一側面だと感じましたね。自分の中にはこういったちょっと弱気な部分もあるから、それが出たのかなって。結果、スゴく面白い曲になったと思います。ライヴでも今までと違った演出が出来そうな気がしますね。曲を作った時に、舞台演出だったり、ステージングのイメージが浮かぶ曲は絶対いい曲になるから、この曲もライヴで楽しんで貰える自信が既にありますね」

05. 1999

これまでのTOCのキャリアや地元である新潟を振り返りつつ、そこからいかに現在に辿り着いたかをセルフ・ボーストした一曲。

「こういったゴリッとしたヒップホップの感覚も自分の中の特性だと思うし、アルバムの中で一曲は、そういった部分を書きたかったんです。『1999』は、僕が人前でラップを始めた年で、そこからの歴史がこの曲のテーマです。その上でのストーリー形成上、昔の恨みつらみみたいな事も書いてるけどそこに重きは無くて、それよりも今の自分を100%誇るっていう気持ちを聴いて欲しいですね。“新潟”っていうワードは今まであまり使って来なかったんですけど、それをリフレインさせる事で強烈なパンチラインに出来たと思います。未だに僕は新潟に住んでるし、地場であり、新潟が僕の起点。それは表現したかったですね。リリックに出てくる新潟出身の元首相である田中角栄さんは、日本中に道を作ったけど、僕は僕しか作れない道を作ろうと思ってます」

06. 過呼吸 (メジャーデビューシングル 読売テレビ「脚本家と女刑事」主題歌)

メジャー・デビュー曲。歌、歌フロウ、ラップと、TOCの様々なヴォーカル・パターンが展開する部分も聴きどころだ。

「もう1年以上前のリリースになります。YouTubeで、この曲に自作のアニメーションを合わせた作品をアップした人がいて、その映像の方がオフィシャルのMVよりも再生数が多かったりしたんですよね。その動きやバズり方は、スゴく今っぽい感じを受けました。この曲は僕の得意とするような、“恋愛に溺れがちな依存型のダメ女、ダメ男の話”として読み取れるし、そこにフィールしてくれる人もやっぱり多いんだなって。すごく気に入ってる曲だし、ようやくアルバムに入れられて嬉しかったですね」

07. SAD DAY

タイトル通り、失恋や別れをテーマにした、すれ違っていく2人の感情が情緒的に丁寧に描かれた別れ歌。

「『過呼吸』に続く曲として考えた曲ですね。ただ、『過呼吸』がインパクトの強い、振り回されるタイプの失恋の曲だとしたら、この曲は愛し合ってたはずの2人がすれ違っていくタイプの別れの曲にしようって。この曲のビートはヒップホップの名曲を下敷きにして作った曲なんですが、そういった誰もが知る曲をベースに、思い切り未練たらたらな失恋ソングを書こうと思ったんですよね。そうしたら『過呼吸』とのコントラストも含めて、最高の並びになりました。こういう未練を感じる恋愛ソングはTOCならではだと思うし、オリジナリティだと思ってます。それに、改めて振り返ると僕は明るい恋愛ってほとんどした事がない(笑)。この曲のエピソードになったようなホントに悪い思い出の方が多いし、それが今の作詞の糧にもなってますね。だから、そういう女性たちにも今では感謝ですね(笑)」

08. I’ll Light You (読売テレビ・日本テレビ系 木曜ドラマF クリスマス スペシャル「眠れぬ真珠~まだ恋してもいいですか?~」主題歌)

流麗なメロディに乗ったポジティヴな恋愛ソング。恋人だけではなく、誰しもがもつ“大切な人”を思い描くようなメッセージにもなっている。

「ドラマの主題歌として、ドラマの台本を読んで描き下ろした曲です。ただ、完全にそこに寄せた訳では無いので、TOCの曲になってると思います。ドラマは陰にこもりがちな女性が、年下のイケメンに恋をするってる内容だったんですが、その女性はいつも黒い服ばっかり着てて、ネガティヴで、自分に自信も無いタイプなんですね。だけど、その闇の部分に光を当てようって部分から、この曲の“LIGHT”っていうテーマが浮かびました。闇に光を指してくれるのは、自分の周りの人だったり、関わってくれる人だと思うんですね。そうやって支えてくれる人がいるから前を向けると思うし、それは自分でもそうだった。だからこのアルバムは、聴いてくれた人が輝けるように、元気になれるように、美しくなれように、そんな作品にしたかったんですよね。闇を照らす為の光に俺がなるよ、っていうのがこの曲のメッセージでもあるし、その気持ちが、このアルバムを通してリスナーに届いて欲しいです」

09.NEW RULE feat.LITTLE

KICK THE CAN CREWのLITTLEを迎え、韻やフロウなど、お互いのラップ・スキルを見せつけるようなド派手な一曲。

「LITTLEさんとは2013年ぐらいに初めて知り合って、ずっと“何か一緒にやりたい”っていう話はしてたんですね。それが今回やっと実現する運びになって。ライヴにLITTLEさんに登場してもらったとしたら、渋く始まるより派手に盛り上がって、お互いにロング・ヴァースでバチバチに踏むまくるような、ラップ・スキルでぶつかるようなイメージが浮かんだので、そういう曲にしたかったんですよね。それで、3rd Productionに、EDM感のある、BPMもかなり速いタイプのトラックを作って貰いました。テーマとしては、タイトルにもある通り“新しいルール”ですね。時代のルールを作るのは俺達で、自分自身なんだって事を表現したかったし、もっと言えば“ルールとはなんだ”って深い部分まで、LITTLEさんと一緒に書きたかった。そうしたら、LITTLEさんは更にそこから、僕やリスナーへのメッセージや愛を込めたリリックを書いてくれたんですよね。時事や状況を折り込みながら、アートとして完成させるというのは、これぞヒップホップだと思ったし、本当に一緒に出来て嬉しかったですね」

TOC「SHOWCASE」

SHOWCASE

2018/01/31 RELEASE
UPCH-7368 ¥ 3,616(税込)

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