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もしもビルボードジャパンチャートが30年前からあったら?~KUWATA KEISUKE~
桑田佳祐が、ソロ・デビューして30周年を迎えた。2017年は6年半ぶりのオリジナル・アルバム『がらくた』を発表し、6週連続でTOP3をキープするという快挙はもちろんだが、ビルボードライブにおけるプレミアム・ライブや大規模なツアーなど、精力的な活動を行ってきた。そして、2018年1月3日はソロ30周年を記念したベスト・ミュージックビデオ集『MVP』をリリースするなど、その勢いはまだまだ止まらない。リリースの度にチャートを席巻してきた彼の音楽は、単にCDの売上だけでは語りきれない実績があることは、いうまでもないだろう。
そこで今回は、「もしもビルボードジャパンチャートが30年前からあったら」という設定で、架空のチャート動向の記事をお届けしたい。もちろん、一部の楽曲を除いてまだツイッターもYouTubeもない時代ではあるが、“今と同じリスニング環境”であることを前提に書かれてあり、順位やデータもあくまでも想像であることをご了承の上でお楽しみいただければ幸いだ。
というわけで、時計の針を30年前に戻してから、ビルボードジャパンチャートの分析記事を進めてみよう。
1988年の4/11付のチャートを賑わせたのは、桑田佳祐のセカンド・ソロ・シングル「いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)」。セールスはもちろん、ダウンロードやストリーミングでも順調にポイントを伸ばし、Hot100で3週連続のチャートインとロングヒット中だ。そして、カップリングの「SHE'S A BIG TEASER」も、トップ10内をキープ。この曲は、昨年の飲料メーカーのキャンペーンソングとしてリリース前からチャートインしており、ホール&オーツとの共演ということもあって、すでに昨年末からSNSで話題となり、ツイッターのポイントが最高位3位まで上昇していた。さらに、今週はニューオーリンズ郊外で収録されたというミュージックビデオが、このタイミングでYouTubeなどの動画サイトにアップされて再び話題になっており動画再生数も1週間で300万回を突破。この秋にはホール&オーツの来日公演も予定されているため、その盛り上がり次第ではさらに上位に滑り込む可能性もあるだろう。
1993年の10/18付のHot100を制したのは、桑田佳祐の5年ぶりのソロとなるサード・シングル「真夜中のダンディー」だ。自身が出演した缶コーヒーのCMソングとしてすでにテレビでは相当量の露出があったため、ここしばらくはツイッターのポイントでは12週に渡ってベスト10内をキープ。ラジオのオンエア解禁後の勢いも大きく、オンエア回数ではリリース週まで4週連続1位を獲得している。そして、スタジオで収録されたミュージックビデオであるが、「ヴォーカル音源はCDとは違うのではないか?」ということが話題を呼び、動画再生数のポイントも急上昇し、一気に先週の15位から今週はトップ3入り。こういった要素を加味し、Hot100では2位に大差をつけて圧倒的なポイント数で首位を獲得した。来年にはアルバム・リリースも噂されており、しばらくは上位をキープしそうだ。
▲桑田佳祐 - 真夜中のダンディー
2001年の7/16付のHot100は波乱気味ではあったが、圧倒的な強さを見せたのが桑田佳祐の7年ぶりのソロ・シングル「波乗りジョニー」だ。セールス、ダウンロード、ストリーミングに加えて、ルックアップ(CDのPC読み取り数)も大幅にポイントを稼ぎ、2位以下を大きく引き離して1位を獲得した。なかでも目立つのが、ラジオのオンエア回数と、YouTubeなどの動画再生数だろう。ラジオでは、FM、AM問わず日夜耳にしないことがないほどで、こちらも3週連続1位を獲得しもはや敵なしの状態。また、桑田本人がスーツ姿でサーフィンをするという設定のミュージックビデオは、実際に波乗りをしているのが本人かどうかで大きな波紋を呼んだことや、奇しくも閉園が決まったワイルドブルーヨコハマでロケしたことなどから公開直後より膨大な再生数を稼ぎ、これまた1位まで上昇。SNSでも多数拡散されたことで、ツイッターのポイントも3週連続でベスト5をキープしている。加えて、本作のリリースに合わせて、過去のシングルがリマスタリングされて再発されたため、「祭りのあと」やKUWATA BANDの「BAN BAN BAN」など10曲以上がHot100にランクインしており、まさに波に乗っている状態。この夏はチャートが桑田色に染まりそうだ。
▲桑田佳祐 - 波乗りジョニー
2001年11/5付のHot100を制したのは、桑田佳祐の「白い恋人達」だ。この曲は、飲料メーカーのCMソングということで、すでにラジオのオンエア解禁後は、オンエア回数のポイントが4週連続1位をキープ。今週のセールスポイントが加算されたことで、敵なしの首位獲得となった。注目すべき点は、YouTubeなどの動画再生数が初登場にして1位となったことだ。ドラマ仕立ての映像はアイドル系の派手な作品とは違ってシリアスな内容だが、ユースケ・サンタマリアや内村光良なども出演したことで話題を呼んでの評価となった。その結果ツイッターポイントも右肩上がりで上昇している他、ストリーミングチャートとダウンロードチャートでも首位に。これから本格的なクリスマス・シーズンに突入するが、まもなく毎年のように上位にチャートインしてくる山下達郎の「クリスマス・イブ」やマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」と並ぶ新定番となって、この季節を盛り上げてくれるに違いない。まだまだ今夏にリリースした「波乗りジョニー」のミリオン・ヒットの余韻も残っており、あらためて桑田佳祐の活躍ぶりに圧倒された1年だったのではないだろうか。
▲桑田佳祐 - 白い恋人達
2007年の12/17付で、Hot100の首位を獲得したのは、桑田佳祐の「ダーリン」だ。ソロとしては11枚目となるシングルだが、今年は5月に「明日晴れるかな」、8月に「風の詩を聴かせて」と異例のリリース・スケジュールとなっており、その過去2作もHot100内に残っているなかでチャートを制することとなった。缶コーヒーのCMソングということもあって、すでにラジオのオンエアポイントは3週連続1位。そして、横浜でロケを行ったミュージックビデオも話題性が高く、YouTubeなどの動画再生数が先週の15位から3位にまで上昇した。さらに特筆すべきなのは、ツイッターのつぶやき数のポイントだ。ミュージックビデオ公開前は発表されていなかったが、AV女優を引退したばかりの夏目ナナを起用したことが桑田ファン以外にも波及し、一週間で5万以上ツイートされ一気に首位にまで上昇している。エロ×桑田サウンドの相乗効果はしばらく続きそうだ。
▲桑田佳祐 - ダーリン
さて、再び時間を2017年に戻そう。今回このような“もしも”記事を書いたことで何を言いたいかというと、いま現在作品をリリースすればチャートを賑わすアーティストもいるが、桑田佳祐も30年前のソロデビュー当時はもちろん、リリースする度に大きな話題とムーブメントを作り出していた。つまりは、もしもビルボードジャパンチャートがあったなら、間違いなく上述したような内容になっていたはずだ。その上で、30周年を迎えた今もなお、新作をリリースすればその状況が生まれるということは前人未到の偉業なのだ。冒頭に書いた通り、今年はアルバム『がらくた』のリリースがありHot Albumsで首位を獲得したが、それだけでなくシングル・カットされていない収録曲の「若い広場」が2017年7/24付けチャートから10週連続でチャートイン。また「オアシスと果樹園」もダウンロード数の高さに、ラジオが後押しとなり4週連続チャートインという実績を残すことができた。活動30年経ってもなお、アルバムをリリースすれば当然のごとくアルバムチャートであるHot Albumsを制してぶっちぎりの1位になるだけでなく、フィジカルのCDリリースがない状況でも単曲チャートであるHot100の上位に2曲も入るというのは異例のことであり、桑田の揺るぎない実力を物語っているといえる。また、この季節ならではだが、16年前のシングル曲「白い恋人達」がHot100にチャートインしてきているのも、彼の実績があってこそ。折しも、30周年を記念してミュージックビデオの集大成である『MVP』もリリースされる。この映像を見ながら、桑田佳祐というモンスターの軌跡を辿り、その素晴らしさと偉大さを感じていただききたいと思う。
▲桑田佳祐 - オアシスと果樹園
▲ベスト・ミュージックビデオ集『MVP』トレーラー
Text:栗本 斉
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