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ホイットニー・ヒューストン 最新の、そして最後の歌声。
今年2月、48歳の若さで突然この世を去った、世紀の歌姫ホイットニー・ヒューストン。
彼女の生前に制作された出演映画『SPARKLE』(全米公開中/2013年日本公開予定)のオリジナル・サウンドトラックが映画の公開に先駆け日本上陸。ホイットニー最後の歌声を収録した珠玉のR&B集とともに、改めて世紀の歌姫に思いを馳せたい。
1960年代モータウン全盛期、歌手を志す三姉妹を描いた映画『Sparkle』
ホイットニーにとって約16年ぶりのスクリーン復帰であり、そして悲しくも遺作となってしまった映画『Sparkle』はアイリーン・キャラ主演で1976年に公開された同名映画のリメイク作品だ。
オリジナル版の主演であるアイリーン・キャラといえば映画『フェーム』や、『フラッシュダンス』の主題歌「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」で80年代に一世を風靡した女性シンガー。実際、劇中ではブレイクの予感を匂わせる歌声を披露しているが、カーティス・メイフィールドをプロデューサーに迎えて制作されたサウンドトラックはアレサ・フランクリンによって歌われている。このアルバムは全米ゴールドディスクに輝き、アレサのキャリアを代表する曲のひとつ「Something He Can Feel」もここから誕生している。
ストーリーの舞台は、1960年代モータウン全盛期。歌手を目指す若き3人姉妹の末っ子のスパークルは飛びぬけた才能を持っているが、彼女たちがスターへの道を歩もうとする時、あらゆる困難が彼女たちの前に立ちふさがり、家族をも引き裂きさこうとする…。新たな人生を前に予想もしていかなった壁にぶつかりながらも、芽生えたばかりの恋や家族を守ろうとする娘たちと母の姿を描いた物語である。
主役のスパークルを演じるのは、2007年『アメリカン・アイドル』シーズン6を史上最年少の17歳で制したシンデレラ・ガールのジョーダン・スパークス。そして、ホイットニーは三姉妹を支える元シンガーのシングル・マザーの役で出演している。
ホイットニー最後のレコーディング楽曲2曲を含む珠玉のR&B集
『Sparkle: Original Motion Picture Soundtrack』
2012/09/05発売 購入はこちらから→ 9月5日リリースのサウンドトラック『SPARKLE』には、ホイットニーが生前レコーディングした楽曲2曲のほか、主演のジョーダン・スパークスはもちろん、ジャンルの壁を縦横無尽に飛び越える音楽界の“異才”シーロー・グリーン、カルメン・エホゴなどの出演者が見事な歌声を披露。“キング・オブ・R&B”=R.ケリーによる書き下ろし3曲、カーティス・メイフィールドによるナンバーなども収録された珠玉のR&B集となっている。
ホイットニーが参加したのはこの2曲
「Celebrate」Whitney Houston & Jordin Sparks
「セレブレート」は、主演ジョーダン・スパークスとホイットニーによる軽快なデュエット・ナンバーで、R.ケリーが作詞・作曲・プロデュース・アレンジを手掛けている。R.ケリーらしいダンサブルでアップビートなサウンドに乗せて、“つらいこともあるけれど、いいことだってきっとある…そんな人生を今こそ祝福(セレブレート)しよう”と歌うこのナンバーのラストには“We love you Whitney”という彼女へのオマージュがしっかりと刻まれている。
「His Eye Is On The Sparrow」 Whitney Houston
そしてもう1曲はゴスペル・スタンダード「主は雀を見守り給う(His Eye Is On The Sparrow)」。劇中でクワイアを従え力強く歌うシーンは本当に感動的と各メディアがこぞって大絶賛。NYタイムズ紙も「この曲を歌うホイットニーが映画に命を吹き込んでいる」などと称賛している。また、同曲は『天使にラブ・ソングを2』でローリン・ヒルが歌ったことでも知られている。
Photo: Sparkle the motion picture
私たちは、ホイットニーを忘れない。
Photo: Sparkle the motion picture
約16年ぶりのスクリーン復帰、新曲の発表と近年のネガティブなスキャンダルを払拭し、再びショー・ビジネスの世界に華々しく返り咲こうとしていた矢先の悲報。復帰作となるはずだった映画『Sparkle』が、彼女の“最後の作品”として私たちの元に届けられるのは未だに信じがたい事実であるが、その歌声は決して色褪せることなく、これからも世界中の人々に愛され続けるだろう。
出演映画で振り返る、ホイットニーの歌声
『ボディガード』(原題:The Bodyguard)1992年
ホイットニーにとってこれが映画初出演・初主演であり、キャリア史上最大のヒット作。ホイットニー扮する魔の手に狙われた女性シンガーと、ケヴィン・コスナー演じる敏腕ボディガードによるサスペンス・タッチのラブストーリーは同年の世界興行収入2位を獲得し、主題歌の「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は米ビルボード14週連続No.1に輝いた。
「オールウェイズ・ラヴ・ユー」はもちろん、ホイットニーによる新曲6曲が収録されたデイヴィッド・フォスター編曲のサウンドトラックは全世界で4000万枚以上を売り上げ、グラミー賞最優秀アルバム賞を受賞。日本でも280万枚のセールスを記録している。
当時ホイットニーは29歳で、後に彼女の人生に数々の波乱と絶大な影響を及ぼすことになるボビー・ブラウンと結婚したのもこの年。どちらも今をときめくトップスター、世紀のビッグ・カップルの結婚式は、本人たち曰く“内輪”ながら600人以上が参列したといわれている。公私にわたり、まさに絶頂期のホイットニー。翌1993年には、ボビーとの間に一人娘ボビー・クリスティーナを出産している。
『ため息つかせて』(原題:Waiting to Exhale)1995年
女流作家テリー・マクミランの同名ベストセラー小説を映画化した作品で、4人の黒人女性の友情や生き様を等身大に描いたヒューマン・ドラマ。ホイットニーはTVプロデューサーとしての成功と理想の男性を追い求める女性を演じている。様々なトラブルを抱え、時に挫折を味わいながらも強く生きる彼女たちの姿は同じ女性なら特に共感できる内容である。
この作品の音楽を手掛けたのは、泣く子も黙るR&B界屈指のヒットメーカー、ベイビーフェイス。ホイットニーはもちろん、アレサ・フランクリン、チャカ・カーン、TLC、トニ・ブラクストン、メアリー・J.ブライジ、SWVなど、ブラック・ミュージック界を彩る豪華女性アーティストが世代を超えて参加したサウンドトラックは米ビルボードチャートでも当然ながらNo.1をマーク。そして、ホイットニーが歌う主題歌の「Exhale (Shoop Shoop)」(邦題:「ため息つかせて」)も、シングルチャート8週連続首位の座に君臨していたマライア・キャリーの「ファンタジー」を破ってチャート初登場首位を獲得している。
なお、ホイットニーの生前から、オリジナルキャストによる同映画の続編のプロジェクトが進められていた。彼女の急死により一時は実現が危ぶまれたが、先日、制作続行の姿勢が表明された。
『天使の贈り物』(原題:The Preacher's Wife)1996年
世界中で驚異的なヒットとなった『ボディガード』には遠く及ばずとも、興行的にも音楽的にも成功を収めた前作の約1年後に公開された『天使の贈り物』は、1947年の映画『きまぐれ天使』のリメイク作品。12月公開に相応しい心温まるクリスマス・ムービーで、ホイットニーは教会の存続に奮闘する牧師の妻役で圧倒的なゴスペル・パフォーマンスを披露している。地上に舞い降りた不思議な男(=天使)役を務めたデンゼル・ワシントンとホイットニーによる異色の共演が話題となり、こちらも興行的な成功を収めている。
作品の中で披露されるゴスペルを収録したサウンドトラックは、ゴスペル・アルバムとしては異例となる600万枚を全世界で売り上げ、ビルボードのゴスペル・アルバム・チャート26週連続首位という驚異的な記録を残している。
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