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Ovall『In TRANSIT』インタビュー ~再始動を果たした3人に柳樂光隆が訊く。
まさに“待望の復活”という表現が相応しいバンドだ。Shingo Suzuki(ベース)、mabanua(ドラム)、関口シンゴ(ギター)によるバンド・プロジェクト、Ovallが、先日リリースされた『In TRANSIT』、そしてライブ活動を通してシーンに戻ってきた。それぞれが腕利きのプレイヤーであり、ソロ・ミュージシャンでもあり、さらに近年は、メインストリームからアンダーグラウンドまで広くその手腕を提供するプロデューサーでもあるという彼ら。ドメスティックな音楽表現におもねらないそのスタイルを支持するファンも多く、活動休止後はその復活を望む声も絶えなかった。特に、彼らもそのルーツとしているブラック・ミュージックの影響が色濃い、ここ1~2年のJ-POPのシーンでは、なおさら待ち遠しく感じられた再始動であろう。
再始動後のリリース第一弾となった『In TRANSIT : Deluxe Edition』は、所属レーベルである〈origami PRODUCTIONS〉のファンサイトで2012年にリリースされたミニアルバムに加え、同作品のRemixアルバム『Re: Ovall』、さらに再始動後、初の新曲「Winter Lights」を収録したデラックス盤。今回はそのリリースを機に、同作のライナーノーツを執筆した柳樂光隆氏をインタビュアーに迎え、3人へのインタビューを実施。改めて2010年頃の結成の経緯からライブとレコーディングの関係、4年前の活動休止についても話を訊いた。
マイルス・カフェ・シーンと「ファンク・セッション」
--ちょうど再始動のタイミングということもあるので、今回は改めて昔の話も聞ければと思います。皆さんはOvallの前は何をやっていたんですか?
関口:僕はソロの“vusik”をやっていて、そのCDを出したくらいですね。2008年に自主で出して、2009年にトイズ・ファクトリーのレーベルからアルバムを出しました。で、Ovallが2010年ですね。
Suzuki:そもそも、この3人になる前も2000年くらいにOvallというバンドをやってたんです。その頃のメンバーには、もうミュージシャンをやってない人も、やってる人もいるんですけど。で、それがバラバラになって、僕がフランスに渡って、そこでもOvallっていうバンドを現地の人たちと組んだんですよ。その後、帰国して、二人に会ってOvallになって。
関口:文字にするとワケが分からなそう(笑)。
--(笑)。めちゃくちゃ思い入れがある名前なんですね。
Suzuki:Ovallって“楕円のグルーヴ”っていう意味で、それはずっと継承してるんです。要する三度目の正直みたいな感じで、やっと良いメンバーに巡り会えたなっていう感じで、音も新しくなりましたね。
--mabanuaさんはどうですか?
mabanua:僕はひたすら世の「ブラック・ミュージックをやりたい」ミュージシャンを集めて、バンドを組んでは解散して…っていうのを延々とやってました。マイルス・カフェにもよく行っていて、でも、すぐにメンバーと知り合えたわけじゃないので、Shingoさんじゃない日のセッションとかにも行ったりして、定まったもののない状態で日々を送ってましたね。
Suzuki:機材とかを集め始めてビートを作り始めたのが2000年くらいだったんですけど、ちょうど同じ頃にマイルス・カフェが出来ました。出来てすぐに通ってたんですけど、フランスに行ったこともあって一回ブランクがあって。帰国後にまた行ったらセッキー(関口)たちがいて「これはすごいミュージシャンだ」と思って声を掛けたんです。
当時からジェームス・ポイザーやソウルクエリアンズに憧れて、勝手にライバル視…と言ったら変ですけど、そういうシーンが作りたいなと思ってました。ミュージシャンだけの人、トラックだけの人がいる中で、彼らには新しい感覚もあって、一緒にやったら絶対に楽しいだろうなって思いましたね。そんなこんなで一緒にやるようになって、今に至る感じです。
--マイルス・カフェでは3人一緒に?
mabanua:そうですね。僕は最初は客だったんですよ。お金を払ってセッションに参加させて貰う身で。ある日、ドラマーが辞めて初めて「ホストバンドを一緒にやらないか?」って誘われて、週に一回参加するようになりました。
Suzuki:“ファンク・セッション”っていう土曜日のイベントですね。
mabanua:あのイベントは、すごい人が入ってましたよね。
Suzuki:皆ああいうビートを求めてたからね。いわゆるジャズの4ビートではない、ビートの効いた、何か新しいブラック・ミュージックっていうのに、特にミュージシャンの連中が気づきはじめていた頃ですね。
mabanua:ファンク・セッションなので、ジャズ・スタンダードみたいな決まりごとが少ないんですよ。だから真っさらなところから、みんなで「何しましょう?」みたいな。どこのジャズ・クラブに行ってもやってるセッションじゃなかったんですよね。
Suzuki:どうやって名前をつけたら良いのか分からなかったから“ファンク・セッション”になってたけど、コンセプトとしては「ビートの効いたジャム・セッションで、その場で一曲を作る」というものでした。スティービー・ワンダーとかマーヴィン・ゲイの曲を演奏するファンク・セッションやソウル・セッションは定番で、今も昔もあるんですけど、それはちょっとレトロに感じちゃってたんですよね。
--もうちょっとヒップホップ寄りのイメージ?
Suzuki:そうですね。例えば、ジル・スコットのライブ盤『Experience: Jill Scott 826+』の感じとか。
関口:あとは、レデシーもすごかったですよね。
▲Jill Scott - It's Love
--なるほど。それってBIGYUKIが演奏してたボストンにあるウォーリーズ・カフェとかと同じ感覚ですね。そういう場所は他にもあったんですか?
Suzuki:THE ROOMとかですね。でも、THE ROOMはもう少し「相手を打ち負かしてやろう」みたいな緊張感が強かったかも。そのシーンに出入りしてたメンバーとは今でも交流があって、類家(心平)くんとか、さかいゆうくんとか。SOIL & "PIMP" SESSIONSのメンバーもそうでしたね。
--さかいさんもそこにいたんですね。
Suzuki:ゆうくんはダニー・ハザウェイの曲や彼のオリジナルをやってました。彼は鍵盤がめちゃくちゃうまいんですよ。
mabanua:あの中でソロでメジャーに行ったのはゆうさんが最初だったよね。バンドではSoilとかurb、groovelineとかも「おお!メジャーに行った!」って思ったのを覚えてますね。
Ovallの「ライブとレコーディング」のバランスと成り立ち
--Ovallは、最初から「ボーカリストはゲストで行こう」って感じだったんですか?
Suzuki:はじめはインストが多かったんですけど、山ちゃん(mabanua)の歌がやっぱりすごく良かったので。
mabanua:(笑)。最初はフィーチャリングで行く予定でしたよね?
Suzuki:はじめはそうだったんですよ。あと、実はこの3人以外にもボーカリストとかラッパーの人がいた時期もあって。7人くらいの時もあったし。
--へぇ~。
関口:色々試してたよね。それで、なんかスタジオ入った時に、たまたま山ちゃんが歌ったんだよね。そしたらめちゃくちゃ上手くて。
Suzuki:すぐに「これは入れた方が良い!」ってなりました。元々ギターを持って歌ってた人だからね。
mabanua:弾き語りブームの時に、ギターで地下道とかで歌ってたんですよね。その後、かなりブランクもあったんですけど、予算も無いし、歌モノもやりたいよねとなって、じゃあ歌うしかないか、となりました。
Suzuki:1stアルバムを作る時は、山ちゃんにも歌って貰いつつ、フィーチャリングでラップとかも入れて。でも、全部を歌っちゃうとライブが出来なくなっちゃうかも、っていうのもあって、そのバランスを見極めつつっていう感じでしたね。
▲Ovall "Supalover" @ APPI JAZZY SPORT MUSIC MARATHON 2011
--やっぱりライブバンドっていう意識は強いんですか?
mabanua:そこはいつも悩んでます。レコーディングでしかできないミックス・バランスってあるじゃないですか。小さい声やウィスパーで歌った時に、レコーディングでは成立するんだけど、ライブでは難しかったりする。しかも、ドラムを叩きながらだと余計に。もちろん、歌のキーを上げればライブでも出来るんだけど、それだとお客さんが違和感を感じるかも知れないし。だから、レコーディングの良いところを表現しつつ、ライブでしか出来ないことを同時に追求していくというバランスはいつも悩んでますね。
--Ovallってイメージ的には“プレイヤー集団”って感じじゃないですか? でも、音源はプロダクション感もある。どういうコンセプトで、どういう方向でやったらこうなったんですか? 他のジャム・バンドやジャジー・ヒップホップの人たちは、もう少し分かりやすく方向性が定まってますよね。
関口:やっぱり(Suzukiとmabanuaの)二人がトラック・メイカーだからっていうのが大きいんじゃないですかね。もちろん楽器もやってたけど、ソロはトラック・メイカーとして一枚ずつ出したんだよね?
Suzuki:そうだね。
関口:その感覚というか影響は大きいんじゃないかな。ただジャムって録音しました、じゃなくて、プロダクションも追求する。でも、ミュージシャンでもあるから、生演奏感は絶対に入れたい、みたいな。
mabanua:あと、後々に生に差し替える想定で曲を作り始められないんですよね。デモだから適当で良いのに、打ち込みのドラムの音色からこだわりはじめちゃう。気づいたらトラックが出来てて。あんまりライブを想定して曲を作りはじめてないんです。
関口:「ライブでやりましょう」ってなってからが、いつも大変だよね。「この音どうやって出すの?」とか。
mabanua:「ドラム叩きながらじゃ歌えないじゃん!」とかね(笑)。
Suzuki:レコーディングの手法も、ほぼデモ音源で完成されてるから、そこから「せーの!」で録ることはほとんどなくて、トラック毎に録って行くことが多いですね。ジャズのグループだったら、クリック無しで一緒にやるのが基本じゃないですか。でも、僕らはインテンポのクリックがある状態で「生に差し替えたらどうなの?」っていう感じで、少しずつバンドのテイストを入れていく。残ってる上モノとか、サンプリングしてるものとかは、デモのままだったりすることも多いですね。そうやって境界線なくミックスされていくんです。
--各々のソロでも生演奏と打ち込みが混ざってる感じですけど、ソロとOvallはやっぱり違うんですか?
Suzuki:ちょっと違うかも知れないですね。ソロはもうちょっと打ち込み然としてるのかな?
mabanua:俺はソロの方がちょっとオルタナ的というか。この間はフォーク的と言われました。ギター一本でも演奏出来るし。
--割とインディ・ロック感もありますよね。
mabanua:そうですね。ジャジーなのはOvallでやれば良いかと。
▲mabanua / drawing
--関口さんは?
関口:逆にソロだとジャズが強くなるのかな。今やったらどうなるか分からないですけど。あとOvallでは、あまりアコギは使わないので、ソロはもう少しアコースティックな方向ですね。
--Ovallだとプレイもカッティングとかが中心ですよね。
関口:そうですね。ちょっとしたアクセントの部分とかが多くなりますね。
▲関口シンゴ - Who You Gonna Hold Tight feat. Wouter Hamel
活動休止期間について
--Ovallとしてはしばらくやってなかった時期もあるじゃないですか? それって何でだったんですか?
mabanua:そうですね……俺の考えだと、4年前は活動が適当になりかけていた実感があって。ちょうどEDMが全盛か、終わりかけてる時期で、2・4でストイックにビートを刻んでても「オシャレですね」で終わっちゃうような頃で。フェスに出ても「拳が上がらないなぁ…」みたいな。そういう世の中の空気もあって、メンバーの中でも、心の置き所が分からない時期だったというか。その間にメジャーの仕事とかもやっていて、「どうする?」みたいな感じ。ライブでも気付くと適当に叩きそうになっている自分とかもいて、それも嫌で。それだったら「止めたほうが良いんじゃない」みたいな感じだったんですよね。
関口:ちょっと迷走は…したよね。
Suzuki:気持ちが煮詰まった感もあって。今思うと「なんでそんなことで苛立ってたのかなぁ」みたいなことで、気持ちがグツグツしてしまって。そうなると一つ一つのライブも雑になるし、新しい曲も出てこなくて…っていうのは個人的にもありましたね。
mabanua:ライブのオファーとかも、どういうイベントなのか自分たちで精査せず出ちゃってたりもしていて。今だったら、オファーが来ても「今やるべきイベントなのか?」ってところを考えて結論を出すんですけど、当時はそういう部分を全くしてなかったので。
関口:「何となく」感が出てたのかもね…。
Suzuki:やっぱり、ビートの効いた音楽をやりたいっていう気持ちもあったし、そもそもそれがバンドのアイデンティティでもあったんだけど、自分たちが求めているような音が出ないような会場でも「一人でも多くの人に知って欲しい」っていうところで無理して出ちゃってた。でも、そういうことを続けていると、はじめにあった「こういう音楽をやりたい!」っていう気持ちもぼんやりしてきてしまうんです。属しているシーンもないから、どこに出て良いかということでも結構困りつつ、言われたら「じゃあ、出るか…」っていうのも続いてたから。そういう中でEDMとかアイドル全盛期とかもあって、それはそれで良いと思うんですけど、ジレンマでしたね。
--たしかに、ハマるシーンはなかったですよね。
mabanua:なかったですね。
--自分たちでも自覚があったんですね(笑)。
Suzuki:ありましたね(笑)。もちろんヒップホップのフィルターは通ってるんだけど、ゴリゴリのヒップホップでもないし、かと言ってど真ん中のジャズでもない。もちろん、そういうところから呼んで貰えるのは嬉しかったですけどね。
関口:でも、むちゃくちゃロックなハコとか、アコースティックなカフェでやってても、どう受け入れられてるのかが分からなかったよね。「今日、大丈夫だったのかな?」みたいな感じは、いつもあった気がしますね。
mabanua:それで色々あって、「じゃあ、休もうか」となりました。
Suzuki:実際、他の仕事も増えてきてたっていうのもありました。
--ライナーノーツを書いている時も、今はOvallのハマるシーンがあるけど、その前だと、どこに置いて良いのか分からないな…っていうのがありました。ジャジー・ヒップホップのイベントにすごく出てたわけでもないし、もちろんクラブ・ジャズや、『ロッキンオン』みたいなところでもないし。
mabanua:アウトドア系のフェスとかも、ちょっと違ったんですよね。みんながテントを張って気持ち良くしてるところで、こっちが渋い顔でドラムを叩いてても「イエーイ!」とはならない(笑)。
--Ovallってドメスティックな感じが全くないじゃないですか? あれはそういうコンセプトだったんですか?
Suzuki:それはありましたね。そこは全然、迎合してないし、日本のマーケットにどうしたら入り込めるかってことも、そこまで考えてなかったですね。
関口:そもそも、そういうのが苦手な人たちの集まりかも。
Suzuki:そうですね。あとはレーベルのスタッフみんなが「好きなことをやって良いよ」って背中を押してくれるのも大きかったですね。
--逆に、ここ数年は求められている感があったんじゃないですか?
mabanua:そうですね。最近は取材が終わると挨拶より前に「Ovallの復活をお待ちしています」みたいな〆になることが多かったですね(笑)。
Suzuki:スタジオとかでも、以前はそういうことはなかったんですけど、明らかにOvallを意識したであろうデモ音源を渡されて「良かったら聴いてください」みたいに言われることは増えたかな。
mabanua:メジャーの仕事でも、レコード会社の中の人たちに「実は好きでした」って言って貰える機会が増えましたね。
やりたいことしかやらない。っていうゾーン
--これからは、どんな感じでやるんですか?
mabanua:個人的には今、世の中に媚びない気持ちがMAXに高まってますね。ここ数年、身の回りで、どのバンドがキテるかとかがよく分かんなくなって来ちゃって。自分なりに注目してたバンドが一年後には解散してたり、あんまり話題にならなくなってたりすることが増えて、ちょっとついて行けなくなっちゃって。だから、あんまり周りを意識せずに、やりたいことをやるっていう感じがはち切れんばかりです。
Suzuki:僕もマイペースでやれたらっていうのはあります。そもそも、そんなに器用な方でも無いですし、その時その時で色んなものを吸収して昇華しつつ、周りの風潮を意識せずにやれたら良いかなと思います。
関口:僕も器用じゃないです。休止中に色んな仕事をさせて貰って「自分に出来ることって限られてるな…」っていう実感が今はあります。好きなものは新しいのも古いのもあるんですけど、自分が出来ることっていうのも、やっぱりあるので。それをアップデートしつつ、Ovallとしても、できることをやって行けたら良いのかなと思います。
--最近の<Stones Throw>とかを聴いてると、Ovallに寄って来ている、そう遠くないことをやっていると感じることが多いんです。ブラック・ミュージックっぽいけど色んな要素が入ってもいるっていう人たちが、世界中に点々といますよね。
mabanua:たしかにそうですね。シーン的にも、R&Bのビートにそうじゃない歌が乗っていることも増えたし、ジャンルと人種の壁もさらに無くなってきたなと思います。Ovallのよりやり易い感じになってるのかなと。
--『In TRANSIT』は過去の作品を中心にコンパイルしたものでしたが、新作はまだこれから?
Suzuki:そうですね。年明けからやっていくと思います。
--プランはあるんですか?
mabanua:漠然とはありますね。『DAWN』とはまた違う、新しいOvallの音のイメージというか。まだ具体的なことは言えないのですが、今回の「Winter Lights」は、その移り変わる途中の音という感じだと思います。
▲Ovall "In TRANSIT"(トレーラー音源)
--『In TRANSIT』には、ボビー・コールドウェル「Open Your Eyes」のカヴァーも収録されていますね。この曲はやっぱりコモン経由ですか?
Suzuki:オリジナル曲から、コモンのトラックにつながりましたが、一番好きなのはドゥエレのバージョンですね。
▲Dwele - Open your Eyes
Suzuki:ジョン・レジェンドのバージョンも良いけど、ちょっと熱すぎるかな。でも、今回の『In TRANSIT』のバージョンは、よりボビー・コールドウェルのマナーでカバーしてます。ドゥエレのバージョンを初めて聴いたのは、ウチの代表(=Yoshi Tsushima)が作った『Liquid Souls』(2008年)というコンピでした。このコンピの、特に前半の流れは、僕にとっての神選曲で、ぶっちゃけOvallの1stアルバムは、かなり影響を受けてます。
--なるほど。
Suzuki:もちろんコモンの「The Light」も好きで、昔からコピーしてました。あの曲って、「Open Your Eyes」をサンプリングする時にちょっとだけ音程を上げてるんですよね。ライブでカバーする時、「何か音が合わないね」っていうこともありましたね(笑)。セッションでも鉄板ネタで、色んな人がカバーしてました。それくらい影響を与えている人だと思います。以前、何かのインタビューで読んだんですけど、本人もそうやってサンプリングされたりカバーされたりしているのは嬉しいみたいですね。
▲Common - The Light
--ちなみに皆さんOvall以外にもメジャーなものを含めて色んな仕事をしてますけど、その辺ってOvallにも還元されるものなんですか?
mabanua:プロダクションの構築の仕方みたいなところはすごく勉強になりますね。バンドやソロだけだと勉強できる場が少ないので。RHYMESTERのMummy-Dさんに「もっとここをこうして欲しい」って言われたり、Charaさんから「もっと音楽の神様を集めて」とか言われると「集めるにはどうしたら良いだろう?」ってなるじゃないですか(笑)。そういうのが“試練”みたいなものは、一人で家で篭ってると得られないことですから。
--むちゃくちゃ良いスタジオで録れたり、ミックスに時間を掛けられたり、そういう経験も大きいですよね。
Suzuki:そうですね。良いスタジオで良い環境でレコーディングをすると、料理とかと同じで「上質な音とは何か?」っていうのが経験できるんです。それが必ずしも音楽の良し悪しとは直結しないんですけど、経験としてはすごく大きいですよね。
関口:僕も仕事の中で得たものは大きいですね。自分のソロと離れているようでも、勉強になる部分は絶対にあるから。自分で弦の譜面を作れるようになるとは思ってなかったですね(笑)。
Suzuki:そうだよねぇ。
mabanua:あとは「色んなことをやっている」っていうことの見え方も大事ですよね。ファレルみたいに、マドンナとやりつつ、自分のソロやN*E*R*Dもやって、色んな現場でやってるんだけど、自分のカラーも出せるみたいなのは、すごく羨ましいですね。
--でも、origamiの人たちはスタジオ・ミュージシャン感があんまりないですよね。それはTushimaさんの見せ方も良いのかも知れないですけど。バックで演奏する仕事でも、サポートバンドというよりはフィーチャリングっぽく見える。
mabanua:それはすごく嬉しいですね。すごく危惧してたところなので。ちゃんとフックアップしてくれる人とは、今後もどんどんやりたいです。でも、現場によってはコマとしてしか見てくれない場所もあって(苦笑)、そういうところでは、やっぱりあんまりやりたくないかな。
Suzuki:もちろん嫌々だったらやらないし、良い悪いも含めて経験にはなるんだけど「他に適任がいるな」っていうところも見えましたね。食わず嫌いではなく。それに、自分のカラーが何もなくて「何でもやります!」ばっかりだと5年後が怖いかな、とも思いますね。自分よりフレッシュで器用な若手が出てきた時にどうしよう?とか(笑)。
関口:実際には器用じゃないからねぇ。
mabanua:乗り気じゃないけど、やったら勉強になったっていうことも経験して、今後は、やりたいことしかやらない。っていうゾーンに入って行きたいですね。
IN TRANSIT DELUXE EDITION
2017/12/13 RELEASE
OPCA-1035/6 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.In TRANSIT
- 02.Someday Somewhere
- 03.Mr.Smith
- 04.Liquid Mental
- 05.Open Your Eyes
- 06.Giraffe
- 07.PLANET feat.Akhenaton from IAM
- 08.Un Digicode
- 09.STAR
- 10.Winter Lights
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