アイドルで注目する点は“小節の使い方”

－－まず、なついろとしてデビューすることになった経緯を教えてください。

森川七月：16歳からずっとジャズをやっていたんですけど、新しい音楽に挑戦してみたい気持ちと色々なタイミングが合いまして。プロデューサーに山崎好詩未（Lyrics,Key）ちゃんと北川加奈（Piano）ちゃんを紹介して、なついろを結成することになりました。

－－森川さんはソロとして3枚のアルバムをリリースするなど経歴も長いですが、なぜ今新しいことに挑戦しようと思ったんでしょう？

森川七月：年齢も関係しているのかもしれないですけど、今しか出来ないことがあると思ったんです。ジャズも並行してやっていくつもりですけど、違う表現の仕方で新しい森川七月を発信してみたかった。あとは、幅広い年代の方に響く音楽を届けたいと思って。ジャズを歌っているときもJ-POPやロックと同じようにジャズを聴いてもらえる“きっかけ作り”を目指して歌っていたので、なついろでも同じ想いでいます。

－－確かに若い世代でジャズを聴く人は少ないですよね。

森川七月：でも、音楽は全部一緒だと思うんです。ジャンル関係なく良いものは良いから、もう少しリスナーが気軽に入って来られるような入り口作りをしたいっていうのが、私の基本的なコンセプトなんです。だから、なついろの曲もどこか懐かしさを入れてみたり、若い世代の方に好んで頂けるようなアレンジにしてみたり。ジャズを歌っている時となついろの森川七月、それぞれ別物ですけど根本的にある想いは全く一緒です。

－－因みに、森川さんが思うジャズの良さってどこですか？

森川七月：ジャズってライブでも必ずリハーサルと違うことが起きるんですよ。盛り上がってくると誰かがアドリブを入れたりとか。元々フリーな部分が多いというか、決められたことがないというか。その場の空気感で作り上げていくところが魅力の一つだなって思います。

－－ジャズは幼少期から聴いていたんですか？

森川七月：ジャズをジャズだと思わず普通に聴いていましたね。他にもラテンとか童謡とか、そのとき流行っていた曲とか色々聴いてましたよ。特に「異邦人」を初めて聴いたときはビックリしましたね。子どもだから歌詞の意味も分からないんですけど、聴いた瞬間「良い曲や！」と思って。あとはNHK『お母さんといっしょ』の曲が好きでした。凄くロマンチックな曲とか流れるじゃないですか!? 「大人になったらあの着ぐるみの横で歌うんだろうなぁ」って思っていました（笑）。

－－アイドルは聴かないんですか？

森川七月：松田聖子さんとか好きです。昔のアイドルが使ってた小節ってあるじゃないですか？ それって今のアイドルの人たちと全然違うんですよ。だから、どうしてあの時代はその小節だったのかが凄く不思議で。AKB48さんとか今のアイドルは今のアイドルで独特の小節があるので、何でだろう？っていう疑問から好きになっていきますね。

－－やっぱり注目する点は歌い方なんですね。

森川七月：曲自体も好きですけどね。ただ、凄く個性的に歌われる方がいるじゃないですか。そういう人を見ると「ちょっと真似してみようかな」とか「この歌い方ええなぁ」って思ったりします。どうやって歌っているんだろう？って歌い方を練習したり。モノマネじゃないですけど、興味のある歌い方される人の曲は、家とか誰にも聴かれないところで練習したりしますね。

－－森川さんが歌うAKB48とか聴いてみたいです。

森川七月：アハハハハ！ 可愛らしさが無いですけど大丈夫ですかね？

新たな森川七月が誕生？

－－また、デビュー曲「君の涙にこんなに恋してる」が大人気アニメ『名探偵コナン』オープニングテーマに決定したときはどんな気持ちでした？

森川七月：凄く嬉しかったです！ 幅広い年代の方に愛されているアニメじゃないですか。私の周りでも毎週欠かさず観ている方とかいますし。子どもよりも熱く『名探偵コナン』を愛している大人の方がいるので、そこでなついろを聴いて頂けるっていうのは嬉しいし期待していますね。もう録画の準備はバッチリです！（このインタビューは7月中旬に実施）

－－この曲、タイトルのインパクトが強いですよね。

森川七月：頭に浮かんできますよね、新一くんと蘭ちゃんが。季節でいうと真夏をイメージさせる曲だと思うんですけど、「君の涙にこんなに恋してる」っていうくらいですから、歌詞の内容は本当に純粋なんですよね。「君の涙にこんなに恋してる」って中々言えないですよね？　相手の男性がポロっと涙を流したことがきっかけで「あ、私この人にこんなに恋してるわ」って気付いて心を開いていくストーリーだと私は解釈しているんですけど、甘酸っぱい感じが大好きです。ザ・ビーチ・ボーイズっぽいコーラスも気持ち良いですし、曲調も爽やかで『名探偵コナン』にマッチしていると思います。

－－ジャズを歌っているときの声と全く違う点に驚きました。

森川七月：ジャズを歌うときは中低音の声を出す曲を主に選んでいたんですけど、この曲は夏らしいキーというか、フレッシュ感が伝わりやすいように歌ったというか。ビートやグルーヴ感はもちろん、発声の仕方がジャズとは全く違うんですよね。ただ、無理矢理変えているわけでもなく、曲に合わせて自然に出た声だったので自分でも驚きました。こういう曲を歌うとこんな声が出るんだなって。また新しい自分を見つけることができましたね。多分この曲に一番“新しい森川七月”が出ていると思います。この前ライブで披露したときに、驚いていたお客さんもいらっしゃいましたし。

－－森川さんの声は本当に表情豊かだなって改めて感じさせられました。あと、疲れたときに聴きたくなる声だなぁと。

森川七月：いやん！ 疲れてるんですか!?　元気を与えられるっていうのは嬉しいです！ ありがとうございます!!!（両手を望遠鏡のようにして目に当てながら）

－－そのポーズは何ですか（笑）？

森川七月：だいたい照れたらこうなるんです。

－－先ほど「自然に出た声」と仰いましたけど、歌う上で心掛けたことはないんですか？

森川七月：作曲家や作詞家の方の想いを大事にしたいって気持ちはあります。ジャズを歌っているときからそこは崩したくないと思っている。作曲家や作詞家さんがイメージしているものからかけ離れたくないんですよね。だからジャズを歌うときも、なるべく原曲を忠実に再現していて、なついろでもそこは大事にしています。

－－それはまさに森川さんが“歌い手”だからですよね。

森川七月：そうなんですかね？ 曲を作って頂いた方の想いとは全く違うものを入れたくないんですよね。これからもそこを大事にしていきたいし、ジャンル関係なくどんな曲も歌っていきたいです。

『名探偵コナン』をきっかけに世界進出!?

－－また、2曲目「「思い出は…」」はメンバーの山崎さんが作詞を手掛けていますけど、山崎さんが書く詞の魅力はどこだと思いますか？

森川七月：切なさとか恋愛のワクワク感とか、繊細な女心を絶妙に描くところですね。この曲に関していうと、別れてしまったけど強がって、大丈夫って言いながらも弱い部分がポロっと出てしまうような。最後は前向きに生きていこうって流れになるんですけど、女子特有の感情表現が絶妙なんですよね。

－－じゃあ、森川さん自身も共感できる部分がある？

森川七月：負けたくない気持ちとか、強がらないといけないときとか、女の子って色々と複雑じゃないですか？ だから私も共感できる部分があるし、歌っていて気持ちがいいです。切なかったり明るかったり、強がってみたり寂しいって言ってみたり、好詩未ちゃんは1曲の中に女性の色々な表情を描いてくれましたね。切ないけどこの曲を聴くと前向きな気持ちになれると思います。

－－今回のシングルで新しいスタートをきるわけですけど、なついろとして何を伝えていきたいですか？

森川七月：ジャズは英語詞が多いですけど、なついろは日本語詞なのでそこを大事にしたいです。日本人として日本語で歌うってことは、色々なことを伝えたり表現することが出来ると思うんですよ。サウンドはもちろんですけど日本語詞の魅力もあると思うし、ジャズよりもストレートに届くんじゃないかなと。あと、偉そうに大きく言いますけど、世界中の方々に聴いてもらいたいですね。『名探偵コナン』をきっかけに幅広い世代に聴いて頂いて、そこから全国を廻ってライブをして、っていうのが今の目標です。

－－ジャズからJ-POPまで幅広く歌えますし、その歌唱力なら世界も夢じゃないと思います。

森川七月：ホントですか!?（先ほどの“照れのポーズ”で）頑張ります！

－－では、なついろをどんなグループにしたいですか？

森川七月：“夏”がコンセプトのグループですけど、夏といっても秋の夕暮れに感じる夏の思い出とか、春に夏を待ち遠しく思う感じとか、色々な夏があると思うんです。その中で生まれる色々な想いを伝えていきたいです。音楽に対して熱い想いを持っている人たちの集まりなので、夏だけじゃなくて年中無休で活動していきたいですね。

－－因みに、森川さんから見て他2人のメンバーはどんなキャラクターですか？

森川七月：好詩未ちゃんはジャケット写真だとクールに見えますけど、ちょっとお茶目で親しみやすい人ですね。で、加奈ちゃんは熱い人。演奏も含めて。

－－森川さん自身は？

森川七月：私は元気しか取り柄がないので（笑）……どうですか？（スタッフに訪ねる）

スタッフ：夏に相応しい女性かと…。

森川七月：アハハハハハ！ 夏生まれですしね！ とにかく元気です！ お祭りとかも大好きですし（笑）。 いつか盆踊りのやぐらの上で歌ってみたいんです、『Dr.スランプ アラレちゃん』の歌を。