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カケハシ・レコード presents PFM来日記念特集~ユーロ・プログレの最初の道標となったレジェンド・バンド~

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 2018年1月、イタリアン・プログレの雄PFMが、新作『Emotional Tattoos』を引っさげ6度目の来日を果たす。活動停止期間は挟むが来年で結成48年目に突入する、正真正銘イタリアを代表する大ベテラン・バンドである彼ら。時代の変化に合わせ音楽性を変遷させながらも、彼らにしか出し得ないサウンドを追求してきたPFMというバンドに改めて迫ってみたい。
(文:カケハシ・レコード 佐藤健太郎)

イタリアン・プログレを世界に知らしめた立役者

 イギリスにおける、いわゆる5大バンドを中心とするプログレッシヴ・ロックの台頭に呼応するように、ヨーロッパ各国で次々とプログレ・バンドが登場した70年代初頭。とりわけイギリスに次ぐ規模のシーンが形成され隆盛を誇ったのがイタリアだった。そんなイタリアン・プログレを代表するバンドとして君臨したのがPFMである。




CD
▲『幻の映像』

 彼らの最大の功績と言えるのが、世界的な成功によってイタリアン・プログレの存在を世界のプログレ・ファンに知らしめたことだろう。その成功をもたらした作品こそ73年発表の『幻の映像 Photos of Ghosts』である。ELPのイタリア公演前座に起用された際にPFMの音楽性の高さに目を留めたグレッグ・レイクが、キング・クリムゾンの作詞家ピート・シンフィールドにバンドを紹介。ELPが運営するマンティコア・レーベルよりシンフィールド英語作詞によって送り出されたのがこの作品だった。

中世の時代より西洋音楽のメッカとして栄えたイタリアならではと言える、バロック音楽の遺伝子を受け継いだ重厚さとドラマ性。そして地中海沿岸の伝統音楽と結びついた芳醇なエキゾチズム。これらが息づいた本作を聴けばイタリアン・プログレの魅力を存分に味わうことができるのだ。

イタリアのプログレとしての強固なアイデンティティを聴く者に実感させ、多くのプログレ・ファンにとって、本作が未知の領域だったイタリアン・プログレに足を踏み入れるきっかけとなったことは間違いない。そしてイタリアン・プログレの一作品という位置づけすらも越えて、<ユーロ・プログレの大海原へと漕ぎ出す際の最初の道標>として世界中のプログレ・ファンに愛されてきたのである。

勿論その後の彼らの活躍も特筆すべきものだが、本作の存在こそが現在に至るまでPFMがイタリアン・プログレ史上最高のバンドである所以と言っていいだろう。PFMの世界的成功により、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ、ニュートロルス、ゴブリン、フォルムラ・トレ、レ・オルメ、アレアといった実力派バンド達も脚光を浴び、百花繚乱のイタリアン・プログレ黄金時代が到来したのである。

PFMというバンドがいなければ、イタリアン・プログレ・シーンは優れたバンドを多く抱えながらもその音楽がプログレ・ファンの耳に届くことのないまま人知れず終わりを迎えていたかも知れないのだ。いかに彼らの果たした役割が大きかったかが窺い知れる。

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PFM、その歴史と変遷

CD
▲『幻想物語』

 48年という歴史の中で、PFMの音楽性は大きく変化してきた。

 クラシックの豊かな素養がダイナミックなロックの中にごく自然に息づいた、イタリア時代の『幻想物語 Storia di un minuto』(1972)、『友よ Per un amico』(1972)。英語詞で再録された1stと2ndからの楽曲を中心とする前述の『幻の映像 Photos of Ghosts』(1973)。そして壮大にして華麗なシンフォニック・ロックとなった『甦る世界 The World Became The World』(1974)。特に人気の高いのはこれら70年代前半のクラシカル・プログレ期だろう。イタリアン・プログレという音楽を味わうにはこれ以上ない4作品だ。

ノリの良さが加わった楽曲とテクニカルに突き抜ける演奏が痛快な『Chocorate King』(1975)。ジャズ・ロック/フュージョン色が強まった『Jet lag』(1977)。初期のクラシカルな幻想性は薄まったものの、この時期の作品も見事な構築性と抜群に演奏力を駆使したプログレ・バンドとしての魅力が十分に発揮されている。

ここで世界デビュー以降の英語詞からイタリア語詞へと回帰。サウンドにも地中海音楽的エキゾチズムを強く帯びたアコースティカルな『Passpartu』(1978)、ハートフルなメロディが印象的な洗練された作風の『Suonare Suonare』(1980)と、プログレ時代の技巧的な演奏は残しつつも、親しみやすいポップ・ミュージックへと変化。とは言えイタリアらしい豊かな叙情性は健在で、愛聴している方も多いのではないだろうか。

CD
▲『パスパルトゥ』

続く80年代の3作品『Come Ti Va In Riva Alla Citta』(1981)『PFM? PFM!』(1984)『Miss Baker』(1987)は、いかにも80年代的なニューウェーブ・ポップスとなっていて、この時期に元来のPFMらしさを求めるには厳しいものがあるのは確かだ。バンド自身にも方向性に迷いがあったのか、87年に活動を停止する。

そして、10年の休止期間を経て97年に活動を再開。『Ulisse』(1997)は、イタリアらしい叙情美を取り戻し力強く張りのあるメロディアス・ロックを聴かせる会心作。モダンなサウンドメイクとイタリアらしさを巧みに融合した『Serendipity』(2000)も力作だった。さらにオーケストラを従えドラマチックに迫る『Dracula』(2005)、持ち前の技巧が冴えるインストゥルメンタル作品『Stati Di Immaginazione』(2006)と、00年代も充実の活動を展開したのは記憶に新しい。

また全プログレ・ファンにとって極上の贈り物となった初期プログレ期4作品の再現ライヴツアーも、2010年代の活動として特筆しておきたい。




 こうしておよそ半世紀に及ぶ歴史を紡いできたPFM。その多くの作品で、スタイルは変われど彼ら以外に鳴らすことのできないサウンドを生み出してきたことがわかる。時代の変化を見据えつつ常に自らの新たな音楽の創造を目指してきた姿勢も、また彼らの凄みと言えるだろう。

現在のPFMとライヴの見どころ

CD
▲『エモーショナル・タトゥーズ』

 ここからは現在のPFMに目を向けていこう。現メンバーはバンド史上最大の7人。唯一のオリジナル・メンバーとなったフランツ・ディ・チョッチョ(Dr/Vo)に、ルーチョ・ファッブリ(Vln)、パトリック・ジヴァス(b)という70年代からの3人、ギタリスト、2人のキーボーディスト、セカンドドラマーの若手メンバー4人を加えた、ダブル・キーボードとダブル・ドラムスを擁する編成となっている。

前身バンド時代より不動のギタリストだったフランコ・ムッシーダの脱退は近年の大きな動きだったが、その影響を気にしつつも新作『Emotional Tattoos』を聴くと、97年の復活時を思わせる、骨太でダイナミックな現代ロックの逞しさとイタリアらしい伸びやかな叙情性が一つになった、相変わらずの溌剌としたサウンドを楽しませてくれていて、安心するとともにその出来栄えに舌を巻いた。新ギタリストは若手らしいヘヴィなタッチも交えるが、今作のエネルギッシュでモダンなサウンドにはハマっている。




 そんな現在のPFMがこの度ライヴを行うビルボードライブ東京。その最大の特徴がステージと客席の近さである。往年の名バンドがわずか数メートルの距離でパフォーマンスを披露してくれるのだから、ファンにとってはこれ以上ない感動だろう。ダブル・キーボードとダブル・ドラムスを含むかつてない編成のPFMが、文字通り目の前でどんな演奏を聴かせてくれるのかと考えると今からワクワクしてくる。圧倒的なテクニックを誇るバンドなだけに、その精緻で流麗なプレイが間近で見られるまたとないチャンスでもある。

 また2014年に彼らの来日公演を観た際は、セカンドドラマーに演奏を任せたチョッチョが、フロントに立ちシアトリカルなジェスチャーを交え初期ナンバーを歌う感動的なステージを見せてくれた。今回はおそらく新作ナンバーが中心となるだろうが、そこは初期プログレ時代の人気がとりわけ高い日本での公演、往年の楽曲も披露してくれるはずである。そういった部分にも期待したいところだ。

新作を聴きながら、イタリアン・プログレのレジェンドの来日を心躍らせて待ちたい。

Text:カケハシ・レコード 佐藤健太郎

プレミアータ・フォルネリーア・マルコーニ「エモーショナル・タトゥーズ」

エモーショナル・タトゥーズ

2017/11/22 RELEASE
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