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川村結花『ハレルヤ』インタビュー
SMAP「夜空ノムコウ」やファンキーモンキーベイビーズ「あとひとつ」などトップアーティストへ提供した名曲の数々を持つ川村結花。そんな彼女のシンガーソングライターとしての才を、新レーベル GEAEG RECORDS(ソミラミソ レコーズ)を立ち上げたDr.kyOnと佐橋佳幸によるユニット Darjeeling(ダージリン)がプロデュース。音の愉しみを知る大人達に“良質で豊かな新しい音楽”を届ける同レーベルの設立第1弾作品として、アルバム『ハレルヤ』をリリースした。
身の回りに起きた不幸から自らをさらけ出した2枚の名盤を経た先で奏でる、今を満たしていく歌とは。本人に訊いた。
その地方にいるからこその空気感、テンポ感、温度感
--川村さんは大阪市で生まれ、河内長野市にて育ち、18歳の時に大学進学で上京、 以来東京を中心に活動されてきました。今回のアルバム『ハレルヤ』には「カワムラ鉄工所」なる楽曲も収録されていますが、生活する土地や風土がご自身の作品や音楽に影響を与えるところはありますか?
川村結花:今、地方在住のアーティストが増えてきたじゃないですか。その地方にいるからこその空気感、テンポ感、温度感……。それは意識して出そうとするものとは明らかに違う。その人の生育歴が、年を取れば取るほど出てくるように思うんです。そういうところを感じられる音楽が最近は好きで、以前ある地方に在住している方が作ってらっしゃるような曲を作りたいと思ったんですけど、どうしても歌えない。上手くいかなくて、「やっぱりそういうことなんだな」って、「そうじゃないと嘘だな」って痛感したんです。
--同じ都会でも、東京と大阪では違いはありますか?
川村結花:テンポ感は違いますよね。ただ、同じ東京でも都心部とそうではない所とでは、人の歩く速度も違いますし、地方だと車移動が多かったりとか、海辺の音楽なども違います。--大阪出身ながら、東京で暮らす時間の方が長くなった今の川村さんの音楽はどうでしょう?
川村結花:今は回帰しつつあるような気がしてます。元々、大阪でももの凄く田舎の生まれで、手を挙げたらバスが停まるような山の上で(笑)。小学校に行くにも30分以上かかるような郊外のテンポ感で育ったんです。そこから東京に出て、「音楽で食っていけるようにがんばらなあかんで!」みたいなテンポ感できましたけど、ここ何年かはかつてのテンポに帰ろうとしているのかなって。ホロッとくる涙の方が良い。だって音楽なんだもん
▲YouTube「川村結花 「private exhibition」trailer」
--オフィシャルサイトには能地祐子さんによるインタビューが掲載されていますが、その中で2008年3月にお父様と上田現さんが立て続けに他界され、音楽がまったく聴けなくなった時期があったと。
川村結花:はい。--そうした時期を経て作り上げたアルバム『private exhibition』(2013年リリース)は、全編がピアノと歌のみで構成され、音を重ねることもほとんどない。タイトル通り、ご自身をさらけ出した内容となっていました。続くミニアルバム『small wardrobe』も弾き語りLIVEアルバムとなっていましたが、この2作は今振り返るとどのような作品だったといえますか?
川村結花:2008年の時は、音楽を書くことはできるんですけど、深層まで掘り下げることができない中で、抗ってもしょうがないことを今さらながらに知ったというか。“努力すれば何でも超えられる”と思っていた自分が如何に傲慢だったかを思い知らされたんです。 “そういうことやないやろ!”という自分に対する怒りとか、私の音楽が何の役に立つんだろうっていうところからの、“とはいえ、やっぱり歌だよね”に帰ってきたことを出したかった。“私はこう見せたい”、“こういう音楽家であるように見られたい”っていうメッキみたいなものは、あってもしょうがないと思うようになってきたんです。 もちろん、まったく無くなるわけではないんですけど、色んなものが削げ落ちた時に、重たいことを全部歌い倒した。その上での今回なんです。『private exhibition』からしたら、今回の『ハレルヤ』はものすごく音楽的であって心地よくて、和やかで楽しくて気持ちいい。グサッときて泣くのではなく、ホロッとくる涙の方が良いなって。だって音楽なんだもん。--『private exhibition』に収録の「歌なんて」と『small wardrobe』収録の「五線紙とペン」は、ある意味シンガーとして“ここまで歌えたらあがり”っていう言い方もできるじゃないですか。
川村結花:そうですそうです。あれは自叙伝ですからね。「五線紙とペン」は20周年だから書けた楽曲です。--川村さんのパブリックイメージは、やっぱりSMAPに提供した「夜空ノムコウ」やファンキーモンキーベイビーズの「あとひとつ」だと思うのですが、「歌なんて」と「五線紙とペン」こそが川村結花を象徴する楽曲なんですよね。世間ではいまだに、努力が必ず報われると歌われ続けている中で、それを覆していく音楽というのは、芸術作品としてあるべき姿だとすら思います。
川村結花:ありがとうございます。--そこを経た上で、Dr.kyOnさんと佐橋佳幸さんが新たに立ち上げたレーベル GEAEG RECORDSからアルバム『ハレルヤ』をリリースするに到った経緯というのは?
川村結花:いや、だってあのおふたりからお声をかけていただいて、断る人なんています?(笑)おふたりから名前を思い出していただいて、“結花ちゃんで行こう”って言っていただけるだけで幸せですから、レコーディングが終わるまで、ずーっとドッキリカメラだと思ってました(笑)。- 大人としての暮らしの歌。今の暮らしの歌
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ツアー情報
【川村結花 ツアー2018「独奏」 -ハレルヤ-】
・1月19日(金)大阪・Music Club JANUS
・1月20日(土)京都・SOLE CAFE
・1月26日(金)札幌・KRAPS HALL
・1月27日(土)札幌・くう -20丁目で逢いましょうアゲイン-
・2月04日(日)横浜・モーション・ブルー・ヨコハマ Guest:田中邦和(sax,vo), 柴草玲(vo,pf)
チケットは、11月8日よりHP2次先行受付スタート。公演の詳細はHPにて。
川村結花 HP2次先行受付
期間:2017年11月8日(水)10時~11月19日(日)23時59分
URL:http://eplus.jp/yk-hp/
イベント情報
【GEAEG RECORDS設立記念 Darjeeling&川村結花 スペシャル・トーク&ミニライブ】
日時:11月18日(土)15:00スタート
会場:タワーレコード新宿店7F イベントスペース(観覧フリー)
内容:トーク&ミニライブ、CD購入者サイン会
関連リンク
Interviewer&Photo:杉岡祐樹
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