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<インタビュー>桑原あいが語る、同士・石若駿との真っ向コラボ「ジャズを大きな視点で見る」



<インタビュー>桑原あいが語る、同士・石若駿との真っ向コラボ「ジャズを大きな視点で見る」

 桑原あいと石若駿、新世代の音楽シーンを先導する気鋭の若手プレイヤーたちだ。そんな二人による、同世代だからこそ実現できたコラボ・アルバム『Dear Family』。本作のリリースを記念し、桑原あいにインタビューを行った。トリオ・プロジェクトを主幸する彼女が、デュオという形で挑む意欲作。その発端から制作経緯、現在の音楽シーンに感じること、さらには自身の幼少期の思い出まで、話を訊いた。

石若くんありきのデュオ

――石若駿さんとは“桑原あい トリオ・プロジェクト”でもご一緒されてますが、馴れ初めをお訊きしてもよろしいでしょうか?

桑原あい:2013年頃に私が2ndアルバムを出したタイミングで、彼が青山BODY&SOULのライブ・レコーディングのCDを出したんです。それと同じ時期に、ものんくるのスタジオ・アルバムも出て、3組でイベントをしたら盛り上がるんじゃないかってタワーレコードさんが企画してくださって、渋谷店のCUTUP STUDIOでスリーマンをしたんですよ。そこが初めての出会いでしたね。

――そこで意気投合して?

桑原あい:本番中はほとんど喋らなかったんですけど、打ち上げですっごい喋りましたね(笑)。

――同世代ですもんね。

桑原あい:彼が1コ下ですね。

――打ち上げで意気投合したとのことですが、そこからトリオ・プロジェクトに勧誘するまでの過程を教えてください。

桑原あい:トリオ・プロジェクトをやるまでは会ったりスタジオに入ったりとかは特になかったんですけど、なんとなく一緒にやったら面白いことが起きるんじゃないかなぁと思って。「3曲だけ入ってくれない?」って3rdアルバムのレコーディングに誘って初めて一緒にやりました。

――今回のコラボはそのトリオ・プロジェクトの感触が良かったから?

桑原あい:いや、違うんです。1曲目に入ってる「ディア・ファミリー」が、テレビ朝日系の『サタデーステーション』と『サンデーステーション』のオープニング・テーマなんですけど、それありきだったんですよ。テレ朝ミュージックの方から「編成は何でもいいから石若くんと桑原さんのタッグでオープニング・テーマをやってくれないか」ってオファーがあったんです。

――白羽の矢が立ったわけですね。

桑原あい:私が石若くんのすごいところだと思ってるのは、ドラムの中で一人オーケストラをイメージさせるところなんですよね。石若くんは、ピアノみたいな感覚でドラムを叩いてるんじゃないかなぁとか思ったりするんですよ。色彩がすごく豊か。グルーヴ以外のこともしっかり考えてるだろうし、音楽をすごく大きく捉えてる人なので、そんな人と一緒にやるなら対等に向き合って、ガチンコ・バトルみたいなデュオにしたほうがいいんじゃないかって私が言ったんです。

――桑原さんの提案で。

桑原あい:で、まずはオープニング・テーマを作ったんですよ。でも一発OKを貰えるとは思ってなかったので、プリプロを3回くらいやって、毎回お互いが5曲くらいずつ持って行ってたんです。なのでボツになった候補曲が溜まってたんですけど、お蔵入りになるところで「良い曲がたくさんあるからCDにしたらどう?」って上の方に言っていただいたんです。つまりオープニング・テーマをレコーディングした後に「アルバム作りませんか?」っていう別の話をいただいて、是非是非みたいな感じ。

――以前、トリオにこだわりを持っているとおっしゃってましたが、今回はデュオということでどんな心境でしょうか?

桑原あい:でも、トリオのライブでもデュオのコーナーを設けたりソロをやったりはしてるんですよね。ピアノ・トリオの軸は私の中で一番ど真ん中にありますけど、やっぱり色んな形で音楽をやりたい。石若くんとユニットをやるならデュオのほうが面白いんじゃないかっていう、石若くんありきのデュオです。

――彼の多彩なドラムがあってこそですね。

桑原あい:そうです。


桑原あい×石若駿「ディア・ファミリー」

――プロジェクトの発端となった「ディア・ファミリー」ですが、アルバムの1曲目にTVサイズ、そしてラストにフルサイズが収録されてます。

桑原あい:1曲目だけ別レコーディングなんですよ。テレビ朝日のスタジオで録音したので音も違うし、間に入れるとちょっと違和感がある。なので1曲目に入れちゃって、その次の「アイデア・フォー・クリーンナップ」が14秒くらいの曲なんですけど、それをイントロダクションとして入れてからの本編スタート、みたいなイメージですね。

――レコーディングはセッションのような形?

桑原あい:わりとそうですね。CDを作るにあたってはリハーサルを1回だけやって、あとは「何の曲やる?」みたいな。ボツになってた曲もちゃんとリメイクしたし、新しい曲も入れましたけど、アイディアのバランス確認をするために1回だけリハーサルに入って、あとはもう全部スタジオでやりました。

――ボーナス・トラックとしてマッシヴ・アタック「サタデー・カム・スロウ」とマルーン5「サンデー・モーニング」のカヴァーが入ってますが、曲名からして…。

桑原あい:そうそう、わざと。タイトルありきです。“サタデイ”と“サンデイ”から探しました。

――そうでしたか(笑)。今作で特にお気に入りの曲は?

桑原あい:わりと全部好きですね。石若くんが書いてくる曲って、実はインサイドな曲が多くて、私が攻める系の曲を担当したんですけど、比率は半分です。

――お互いの意見がぶつかり合うことはありましたか?

桑原あい:特にないですね(笑)。石若くんも結構ポジティブというか、「いいよいいよ」「あいちゃんのやりたいようにやっていいよ」みたいな人なので。

――彼自身も色んなフィールドで活躍してらっしゃいますもんね。

桑原あい:アイディアをすごく持ってる人なので、私も勉強させてもらってます。

――桑原さんも様々な方とコラボしてきたかと思いますが、石若さんならではの、同世代の感覚みたいなものはありますか?

桑原あい:やっぱりジャンルというものがないですよね。音楽家としてドラムを叩いている方と、ドラマーとしてドラムを叩いている方っているじゃないですか。ピアニストもですけど、視野を広げたうえで一部の表現として楽器を弾いている方と、「この楽器がないと生きていけないんだ!」って良い意味で固執してる方。

――色んなタイプの方がいらっしゃいますね。

桑原あい:石若くんはものすごい広い視野で音楽を捉えている。特にクラシック、ジャズ、ヒップホップ、ワールド・ミュージックとかに関しては全部取り入れてるし、それを自分のフィルターに通してやってる。だから彼にしかできないドラミングがあるだろうし。音が繊細なんですけど、それはクラシックで学んだ技術なんだと思うし、たぶん彼にとって強みになってるはず。「芸大卒業した後もクラシックをやっていくの?」って訊いたら、「ずっとやっていきたいです」って言ってたし、現代音楽とかクラシックは彼の中にずっとあるものなんだと思います。

――その一方で今回のようなジャズのフィールドでも果敢に挑戦している。それだけの方と一緒にやるのであれば、たしかにデュオが最適な編成かもしれませんね。

桑原あい:そう、もったいないんですよね。音が多くなることで、実は制約が増えたりもしますし。だからリズムは彼に任せて、グルーヴの一致だけちゃんとやる。私のほうはハーモニーの制約がないので、制約がない同士がぶつかるっていう感じ。

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変化を認めることほど大事なことはない

<インタビュー>桑原あいが語る、同士・石若駿との真っ向コラボ「ジャズを大きな視点で見る」

――桑原さんは海外でも活躍されてらっしゃいますが、今の日本のジャズ・シーンに対してどんな印象を持っていますか?

桑原あい:あまり考えないようにしてるんですよね。考えると捉われちゃう気がして。同世代にも素晴らしいアーティストは当然いるし、そういう人たちは自分の意見をしっかり持ってやってる。その一方で、流行りの音楽っていうのもあるな、とは正直思ってます。メロディー要素が強くなくてノリやすいのが流行ってるのかな、とか思ったりしますけど、やっぱり自分はメロディーが歌えることってすごく大事にしていきたいと思ってるし、時代の流れによって自分の音楽が変化するってことはあまりないかもしれないですね。

――他アーティストから受ける刺激については?

桑原あい:ありますよ。そういうのは一つの出会いから貰いますね。

――一期一会な感じで。

桑原あい:本当にそうだと思います。

――最近気になってるアーティストさんとかいらっしゃいます?

桑原あい:私あまりハマるとかないんですよね。コンスタントに色んな音楽を聴いているので。

――ライブは観に行かれますか?

桑原あい:行きます行きます。逆に行き過ぎてて分からない。最近は毎晩YouTubeでマイケル・ジャクソンばかり見てますけどね。30周年のアニバーサリー・ライブでマイケル・ジャクソンと兄弟たちが全員勢ぞろいするところがあるんです。そのメドレーがやばいんですよ。

――桑原さんが音楽に目覚めたきっかけは?

桑原あい:音楽を始めたのは4歳くらいの時なのであまり覚えてないですけど、ジャズ/フュージョンに目覚めたのは、小学4年生の時にアンソニー・ジャクソンを聴いたことがきっかけですね。

――ご家族の影響ですか?

桑原あい:うちの両親は普通にサラリーマンと主婦です。姉が二人いて二人とも音楽教室に通っていたので、その成り行きで私も。「あいちゃんは、たぶんリズム感が良いだろうから、ジャズ/フュージョンやったら?」って当時の先生に言われて、まず聴いて惚れたのがリー・リトナーの「キャプテン・フィンガーズ」。アンソニー・ジャクソンのベースを聴いてこの曲やばいってなったんです。

――6月にビルボードライブ大阪でトリオ公演を行っていただきましたが、いかがでしたか?

桑原あい:超楽しかったですよ。ツアー初日だったので震えすぎててあまり覚えてないところもありますけど。音響も素晴らしかった。

――スティーヴ・ガッドとウィル・リーとの初ライブでしたね。

桑原あい:自分の音のここを聴いてほしいってスティーヴが私のモニターをチェックするんですよ。だから常にクリアな状態で二人の音が聴けてたし、全部で8公演あったんですけど、徐々に徐々に「こうくるか」「そうくるか」がお互いにあって、最終的にはなんか爆発しそうでしたね。すっごいアツかったし、すっごい楽しかった。身を委ねて音楽の中に、グルーヴの中に潜るっていうのはこういうことなのかって。やっぱり同世代のミュージシャンと一緒にやる時とは違う部分もありますけど、それはどっちが良いってわけじゃなくて、貴重な経験として捉えてましたね。

――それはそうですよね。

桑原あい:そりゃ生きてる年数が違うし、見てきたものが違うんだから。二人の人生がこんなに素晴らしいものだったんだ、っていうのも音から分かったし、音楽って生きることとまさに繋がっているものなので、すごい温かくもあり刺激的だった。

――一緒にやって支えられている実感があった?

桑原あい:常にありましたね。


Ai Kuwabara - Somehow, Someday, Somewhere MV

――そんなトリオ編成とはある意味正反対とも言えそうな石若さんとのデュオ編成ですが、このプロジェクトで行うライブの予定は?

桑原あい:決まってはいないですけど、たぶんあると思います。やったほうがいいですよね?

――ぜひやっていただきたいですね。

桑原あい:いまのところは未定ですね(笑)。

――現時点で次作の構想はありますか?

桑原あい:一緒に録っていきたいメンバーを探しているところです。

――それぞれのコラボで受けた刺激が次の作品に反映されてたりは?

桑原あい:絶対あると思いますよ。何が具体的にどう変わったかとかは分からないかもしれないけど、自分のピアノへの向き合い方とかもすでに変わってたりするので。

――昨年は【かわさきジャズ】でものんくると共演してらっしゃいましたが、日本でもこういった、世代もジャンルも越境するジャズフェスが増えてきました。

桑原あい:私の同世代はジャズをすごく大きな視点で見るようになってますよね。ものんくるだってジャズ発だけどポップスのような域に達していると思うし、WONKにも芸大卒の子がいたりするし、色んなジャンルになってきてますよ。それがたくさんの方に理解してもらえるといいなって思います。いまだにジャズ・ドラムをこうあるべきだとか、グルーヴはこうあるべきだ、みたいな意見も多い。それがその人の一つのこだわりだとしたら別にいいことだと思いますけど、私の音楽とか石若くんの音楽を聴いた時に、「1960年代のあのグルーヴじゃないから駄目だ」とかは言わないでほしいなって思います。私たちもそこは責任を持って音楽を作っていかなきゃいけないし、ショーアップする時はちゃんとエンターテインメントにしていくべきだと思う。変化を認めることほど大事なことはないと思うので。

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音楽家とかスターとか以前に、人としてちゃんとありたい

――話は少し変わりますが、桑原さんの幼少期ってどんなものでしたか?

桑原あい:めちゃくちゃ覚えていることが2コありますね。まずは幼稚園でお母さんから離れたくなくて、うちのお母さんだけ部屋に残ってたんですよ。いてくれって泣き叫んで。超甘えんぼうだったんですよね。三姉妹の末っ子だったってこともあるけど、お母さんから離れられない子だったんです。でも写真とかを見ると毎回センターにいて謎のポーズをドヤ顔で披露しているんですよ。たぶん、お母さんとか好きな人がそばにいればはっちゃけられるのに、いなくなった瞬間シュンってなるみたいな。

――典型的な末っ子体質だったわけですね。

桑原あい:今でもそうだと思いますよ。

――お姉さんお二人も音楽家ですよね。やはり背中を見て育ってきた?

桑原あい:トイレまでついていってましたもん。

――今でも姉妹で音楽トークとかします?

桑原あい:しますね。ジャンルがみんな違うんですよ。だから変な風に喧嘩にならないんですよね。クラシックをやっているお姉ちゃんの視点で私の演奏を聴いたら思うところもあるだろうし。彼女らはインプロヴィゼーションとかは分からないので、そういうことについて訊かれたら私が答えたり。和音の作り方とかはクラシックのほうが進んでいるので、テンションとは違う角度で教えてもらったり。

――お互いが第三者的な視点から意見を交換し合っているんですね。

桑原あい:そうですね。しかも結構厳しいので、姉は。すごいですよ。泣かせようとしてるのかよ、ってくらい。一番厳しいオーディエンスだと思います。でも一番信頼しているというのもある。

――学生時代はずっと音楽に打ち込んできたのですか?

桑原あい:そうですね。結局音楽でした。予備校行くか練習室行くかみたいな。中学の頃は学校でのことをほとんど覚えてないです。たぶんエレクトーンとかやってたんだろうなと思いますけど。あ、体育祭の応援団長やってたかな。

――いきなりアウトドア!

桑原あい:部活とかはやったことないんですよ。

――だからこそ憧れがあったかもしれないですね。

桑原あい:あったんだと思います。部活とかやってないし体育祭でやってみるか、みたいな。それ以外は下校したらすぐ帰ってすぐヤマハみたいな。全然遊びに行かなかったですよ。

――趣味もインドアなものが多かった?

桑原あい:私、今でこそ趣味はあるんですけれど、当時は全くなかったんですよ。もう何が好きだったとか覚えてないです。レッスンに行きまくってましたね。

――今は?

桑原あい:料理です。あと家事全般。インドア!(笑)。あと英語、映画、洋服…釣り!釣り好きです!

――お、アウトドア。

桑原あい:釣りが好きな人と一緒に行ったら超楽しくて。

――海とか?

桑原あい:海釣りも川釣りも。ただ釣りたいだけの時は釣り堀に行きます。アウトドアも全然しますよ。散歩とか大好きだし、体力はあります。筋トレしてますからね。体力ない人みたいに見えますけど。

――ピアニストって体力必要ですもんね。

桑原あい:めっちゃ。私、体脂肪率はほぼアスリートですよ。ヨガとかやってましたから。

――作曲する時って、よし作ろうってモードに移るのか、散歩中とかに降ってくるのか、どっちのほうが多いですか?

桑原あい:2014年まではよし作ろう派でした。けど、それをしすぎたせいで作れなくなっちゃったんです。スランプ入っちゃって。だから2015年8月の【モントルー・ジャズ・フェスティバル】以降はふと日常で思いついたものをやるようにしてますね。

――それこそ散歩中に?

桑原あい:とか、イラっとした瞬間に出てきたリズムとか(笑)。スランプ以前は日常と切り離してた時期だったんですよね。例えばマイケル・ジャクソンとかレディ・ガガとかジャスティン・ビーバーみたいな人たちってキラキラして見えるじゃないですか。何食べてるんだろう、どうやって生活しているんだろう、みたいな。そういう人になるためには、普通にしてたらなれないって思ってた。私の場合は追い込まないと絶対そこまでいけないと思ってたし、変に人と違うものになりたかったので。そうすると人と違うことをしなきゃと思って、2週間くらい引きこもってずっと曲書いていたり。

――なるほど。

桑原あい:でも、そういう風にすると、日常からはどんどん離れていくので、音楽自体もどんどん離れていく。ふとした時に音楽って聴きたくなるじゃないですか。そういう時に自分の音楽が聴けなくなっちゃったのが始まりですね。自分の演奏が聴けなくなっちゃったんですよ。追い込んでやるからこそ生まれるものもあるんだろうなとは思いますけど。それでプツンと糸が切れたかのように曲が書けなくなっちゃって…。

――典型的なスランプですね…。

桑原あい:それから、日常に寄り添える音楽を書きたいなと思うようになった。今は、普通に生活している時に普通に鳴る音楽でずっと残るような音楽を書き留めるようにしています。

――想像してたスターの生活に囚われていた、と。

桑原あい:実際、スティーヴもウィルもジャズ/フュージョン界のスターじゃないですか。でも人間なんですよ。普通にヒトだし、音楽家である前に本当に素晴らしい人たちなんですよね。温かいし、変にプライドを押し付けたりとかしない。プライド自体は彼らの中に絶対あるはずなのに。音からそれが伝わってきたし、一番リラックスしている時じゃないと良い音楽って出てこないから、ってずっと言われていたんです。そういう人たちを見て、私も音楽家とかスターとか以前に、人としてちゃんとありたいと思うようになったんですよね。それもあって、曲作りから生活までがどんどん変わってきて、今は普通に生活することを大事にしています。

――幼少期は音楽のことしか記憶に残っていないとのことでしたが、実はその状態がずっと続いていたわけですね。

桑原あい:どんどんどんどん憧れとか理想像が膨らみ固まり、みたいなのが続いていた感じですかね。今はそうなるくらいなら音楽は趣味でやって、人としてちゃんと生きたいなって思います。逆に言うとそれくらい音楽が好きなので。音楽によって人が変わってしまうってすごく嫌だし、大好きなものを大嫌いなものになりたくない。音楽は自分の一部だし、あって当たり前だけど、すごく大切にしていきたいとも思います。

――石若さんとライブをやるとしたら、どんなものになりそうですか?

桑原あい:ほとんどリハーサルしないんじゃないですかね。どうしたってインプロヴァイズが多くなると思います。その場で火花を散らす感じ。同世代なので見てきたものが近いし、お互いがなんとなく分かるじゃないですか、同世代って。もしかしたら誤解かもしれないけど、そのなんとなく分かる気がするってことで意気投合することもあるし。でも、ウィルとかスティーヴは未知なんですよ。こういう大人になりたいっていう憧れなんですよね。言い方は悪いですけど、私は石若くんに憧れはないんです。どちらかというと、同じ時代を生きている音楽家の仲間って印象。リスペクトはしているけど、憧れっていう感じではないですよね。なので同世代とやる時は、インプロとかその場で出す音とか、戦う感じになりますよね。

――そういう意味で両コラボはある意味対極的なものですが、先ほど次作に向けて探している、とおっしゃっていたメンバーについては?

桑原あい:まぁピアノ・トリオを基準に、ゲストも呼ぼうかなとは思ってます。9月27日に新しいトリオ・メンバーでお披露目ライブをやったんですよ。なのでそのメンバーを軸に考えようかなって感じです。

――それは同世代?

桑原あい:いや、二人とも40歳くらいですね。イイ塩梅のところで。

――イイ塩梅(笑)。

桑原あい:ちょうど石若くんとウィルたちの間とったなぁと思って(笑)。でも二人とも安定感がありますよね。同世代にも安定感がある人はもちろんいますけど、私にとってその二人ってお兄さんなので、そういう安定感とか安心感とかも絶対あるんですよ。年齢的な意味で。石若くんは年下なので、どこかで私がちゃんとしなきゃって思っているところがあるかもしれない。今度一緒にやる鳥越啓介さんと千住宗臣さんは経験も豊富だし知識もありますし、良い意味で委ねられる。でも年が遠すぎないから、「あいちゃんは最近なにが好きなの?」みたいな話もいっぱいするし、ぶつかれるところはすごいぶつかれる、けど委ねるところは委ねられるみたいな。本当にイイ感じの塩梅。

――作品を出すとしたらまた違った質感のものになりそうですね。

桑原あい:新曲もちょっとずつ出来てきています。

――早くも楽しみにしております。

<インタビュー>桑原あいが語る、同士・石若駿との真っ向コラボ「ジャズを大きな視点で見る」


Interview by Takuto Ueda

桑原あい×石若駿「ディア・ファミリー」

ディア・ファミリー

2017/11/08 RELEASE
UCCJ-2148 ¥ 2,750(税込)

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Disc01
  1. 01.ディア・ファミリー (TV Version)
  2. 02.アイデア・フォー・クリーンナップ
  3. 03.ザ・グレート・ユーズ・トレイン
  4. 04.インプロヴィゼーション #1
  5. 05.ファミリー・ツリー
  6. 06.チューンナップ
  7. 07.アンディ・アンド・パール・カムホーム
  8. 08.グランパズ・サングラス
  9. 09.インプロヴィゼーション #2
  10. 10.ドッグ・ダズント・イート・ドッグ・ワールド
  11. 11.ディア・ファミリー
  12. 12.サタデイ・カム・スロウ (Bonus Tracks)
  13. 13.サンデイ・モーニング (Bonus Tracks)

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