Special
ソウライヴ来日記念特集~ジャム・バンド・シーンを牽引する名バンドのヒストリーに辿る
タイトに叩き出されるビートと、グルーヴ感に満ちたハモンドの響き、そしてソウルフルに揺らめくいぶし銀のギター・フレーズ。ソウライヴのパフォーマンスを一度でも観たことがあるのなら、彼ら3人が組み立てていくファンキーな世界に魅了されたはずだ。結成当初から現在に至るまで、ジャム・バンド・シーンの最先端を突っ走り、牽引していくだけあって、誰もがホットでアッパーな気分になれるはず。間もなく来日公演を行うソウライヴとはどんなバンドなのか。ここではそのヒストリーを辿ってみよう。
ソウライヴは、1999年にニューヨーク州ウッドストックで結成されている。メンバーは、ドラムスのアラン・エヴァンス、ハモンド・オルガンのニール・エヴァンス、ギターのエリック・クラズノの3人で、この構成は結成以来不動である。
もともとエリックは、90年代初頭よりファンク・バンドのレタスとして活躍。ノース・ハンプトンを拠点に人気を博していた。一方、アランとニールのエヴァンス兄弟は、ピーター・プリンス率いるジャム・バンド、ムーン・ブート・ラヴァーで活動した後、ビリー・ドリーズ・ウィリアムズがMCを努めたヒップ・ホップ・バンドのエレメンツにも参加しながら、オルガン・トリオの構想を練った。そこで、ハイスクール時代からの友人でもあったエリックを自宅に呼んで、セッションを試みることになる。何の決め事もせずに自由に演奏することを試してみたが、その時のジャム・セッションがそのまま『Get Down!』(1999年)というアルバムになり、エリックの兄ジェフリーが運営するヴェロア・レコーディングスからリリースされた。このフリーなセッションこそ、ソウライヴの原点ともいえるだろう。
▲ 「Give It Up Or Turn It Loose」(Live)
ファースト・セッションで手応えを掴んだ彼らは、続いてセカンド・アルバム『Turn It Out』(2000年)を制作。ジャム・シーンの巨匠ジョン・スコフィールドや、オールマン・ブラザーズ・バンドに在籍していたオテイル・バーブリッジ、レタスのファンキー・サックス奏者サム・キニンジャーらがゲスト参加したこともあって話題となり、インディー作品としては異例の大ヒットを記録。それがきっかけで、メジャー各社より声がかかるようになる。ヴァーヴからも熱烈なプローチを受けていたが、結局はブルーノート・レーベルと契約した。
2001年にメジャー第1作となる『Doin' Something』をリリース。これまでライヴで鍛えてきたオルガン・トリオとしての実力ぶりは言うまでもなく、フレッド・ウェズリー率いるホーン・セクションを3曲でフィーチャーし、さらにファンク色が濃厚な一作に仕上がった。翌2002年にはメジャー2作目となる『Next』を発表。デイヴ・マシューズ・バンドのデイヴや、アメール・ラリューといったヴォーカリストを交えて新機軸を打ち出した。また、本作ではサックスのサム・キニンジャーがメンバーに正式加入していたが、本作のみで脱退した。
かねてよりライヴに定評があった彼らは、満を持してライヴ・レコーディングを敢行。タイトルに自らの名を関した『Soulive』(2003年)を発表した。また、そのライヴ・レコーディングは彼らのライフワークとなり、その後もいくつかの正式リリースを行っていくだけでなく、2004年からはインスタント・ライヴ・シリーズとしてライヴ会場で音源をCD-Rにパッケージするという新しいやり方も行っている。
▲ 「El Ron」(Live)
2005年にはコンコードに移籍し、アルバム『Break Out』を発表。チャカ・カーンやロバート・ランドルフ、イヴァン・ネヴィルといったゲストを迎え、これまでの作品の中でもっとも華やかな印象の作品で、ジミ・ヘンドリックスのカヴァーも交えるなど親しみやすさもポイントだった。しかし、コンコードからのリリースは本作のみで、翌2007年にはソウルの名門スタックス・レコードに移籍。ロックから映画音楽までを手がけるスチュワート・ラーマンがプロデュースを担当し、『No Place Like Soul』を発表。ヴォーカルにトゥーサンを加えた4人編成でレコーディングされており、これまでのソウルやファンクからレゲエやダブまでを取り込んだ意欲作となった。
しかし、この頃はいわゆる試行錯誤機期だったのだろう。結局スタックスからも1枚のみのリリースとなり、2008年には『Up Here』を自主レーベルであるロイヤル・ファミリー・レコードより発表。サックスにライアン・ザイディスとサム・キニンジャーが参加し、ソリッドなホーン・セクションとのコンビネーションを聴かせてくれた。そして、2010年にはあらためて3人編成に戻って全編ビートルズのカヴァーに挑戦した『Rubber Soulive』を発表し、大いに話題になった。
2012年には、ジャム・バンド・シーンにおける気鋭のフルート奏者カール・デンソンを迎え、アルバム『Spark』をリリース。これまでにないジャズ色が濃厚で長尺のナンバーを披露し、ファンクやソウルだけではないインプロヴィゼーションの面白さを提示して新鮮な作品となった。また、2010年よりブルックリン・ボウルで行われる企画イベント「Bowlive」がスタートし、様々なセッションを行っていく。テデスキ・トラックス・バンドのメンバーや、メイシオ・パーカーにバーニー・ウォーレルといったPファンク勢、タリブ・クウェリのようなヒップ・ホップ・アーティストまでを巻き込んだ一大イベントとして成長。2017年現在も継続しており、本年ではミーターズのジョージ・ポーター・ジュニアから、エレクトロニカの鬼才GRiZまでが参戦して盛り上げてくれた。
ソウライヴは、様々なアーティストとのコラボレーションも多く、非常に器用なバンドという印象もあるが、実際には3人の阿吽の呼吸でプレイされるファンキーでソウルフルな演奏こそ彼らの真髄。一方では、数多いるジャム・バンド・シーンのトップランナーとしても評価が高い。彼ら3人による黄金のトライアングルが不動である限り、ソウライヴ流ジャズ・ファンクでリスナーを揺らし続けてくれることだろう。
▲ 「Soul Serenade」(Live)
公演情報
SOULIVE
ビルボードライブ大阪:2017/10/24(火)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2017/10/26(木)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
Peter Barakan’s “Live Magic!” 2017
東京:2017/10/21(土)~10/22(日)
恵比寿ガーデンホール / ガーデンルーム
OPEN 12:00 / START 13:00
※SOULIVEの出演は22(日)
>>公演詳細はこちら
BAND MEMBERS
Neal Evans / ニール・エヴァンス(Hammond B-3)
Eric Krasno / エリック・クラズノー(Guitar)
Alan Evans / アラン・エヴァンス(Drums)
関連リンク
Text: 栗本斉
ボウライヴ~ライヴ・アット・ザ・ブルックリン・ボウル
2011/04/06 RELEASE
PVDV-58 ¥ 3,300(税込)
Disc01
- 01.INTRODUCTION (WITH INTERVIEWS)
- 02.WHAT IS BOWLIVE? (WITH INTERVIEWS)
- 03.HAT TRICK feat.The Shady Horns & Danny Sedownik (WITH INTERVIEWS)
- 04.NIGEL HALL (WITH INTERVIEWS)
- 05.TOO MUCH feat.Nigel Hall, Ivan Neville, Danny Sedownik & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 06.THE SHADY HORNS (WITH INTERVIEWS)
- 07.EL RON feat.The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 08.QUESTLOVE (WITH INTERVIEWS)
- 09.GIVE IT UP OR TURNIT A LOOSE feat.Questlove, Nigel Hall & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 10.IVAN NEVILLE (WITH INTERVIEWS)
- 11.JESUS CHILDREN OF AMERICA/IF YOU WANT ME TO STAY feat.Ivan Neville & Nigel Hall (WITH INTERVIEWS)
- 12.KOFI & OTEIL BURBRIDGE (WITH INTERVIEWS)
- 13.BUTTER BISCUIT feat.Oteil Burbridge, Kofi Burbridge & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 14.ROBERT RANDOPLH (WITH INTERVIEWS)
- 15.MADE YOU LOOK feat.Rahzel, Questlove & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 16.THE LONDON SOULS (WITH INTERVIEWS)
- 17.LUCILLE feat.Tash Neal & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 18.SUNSHINE feat.Raul Midon, Nigel Hall & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 19.SUSAN TEDESCHI & DEREK TRUCKS (WITH INTERVIEWS)
- 20.SOUL SERENADE feat.Susan Tedeschi, Derek Trucks, Kofi Burbridge & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS
- 21.WARREN HAYNES (WITH INTERVIEWS)
- 22.BORN UNDER A BAD SIGN feat.Warren Haynes, DJ Logic, Nigel Hall & The Shady Horns (WITH INTERVIEWS)
- 23.BOWLIVE (WITH INTERVIEWS)
- 24.CREDITS (WITH INTERVIEWS)
- 25.UP RIGHT (WITHOUT INTERVIEWS)
- 26.HAT TRICK (WITHOUT INTERVIEWS)
- 27.TUESDAY NIGHT SQUAD (WITHOUT INTERVIEWS)
- 28.TOO MUCH (WITHOUT INTERVIEWS)
- 29.CANNONBALL (WITHOUT INTERVIEWS)
- 30.EL RON (WITHOUT INTERVIEWS)
- 31.SOUL POWER (WITHOUT INTERVIEWS)
- 32.GIVE IT UP OR TURNIT A LOOSE (WITHOUT INTERVIEWS)
- 33.JESUS CHILDREN OF AMERICA/IF YOU WANT ME TO STAY (WITHOUT INTERVIEWS)
- 34.BUTTER BISCUIT (WITHOUT INTERVIEWS)
- 35.MADE YOU LOOK (WITHOUT INTERVIEWS)
- 36.LUCILLE (WITHOUT INTERVIEWS)
- 37.SOUL SERENADE (WITHOUT INTERVIEWS)
- 38.BORN UNDER A BAD SIGN (WITHOUT INTERVIEWS)
- 39.EVERYBODY WANTS TO RULE THE WORLD (WITHOUT INTERVIEWS)
- 40.CREDITS (WITHOUT INTERVIEWS)
関連商品