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J-POPと世界をつなぐ歌姫が見据える未来とは?―シェネル インタビュー



シェネル インタビュー

 2011年に「ベイビーアイラブユー」で大ブレイクし、その後も「ビリーヴ」をはじめとする映画・TVなど数々の大型タイアップ・シングルを立て続けにヒットさせてきた、マレーシアとオーストラリアの血を引く、米在住のシンガー・ソングライター、シェネル。今年デビュー10周年を迎える彼女が、『デスティニー』と全編英語アルバム『メタモルフォーゼ』の2枚の作品を届けてくれた。11月にはアルバムを引っさげた来日ツアーを、かわさきジャズ、ビルボードライブ大阪、そして名古屋ブルーノートで行う彼女が、最新作はもちろん、来日ツアー、“ヒット”とは何か、今後の活動など多岐にわたって話を聞かせてくれた。

自分のことをきちんと表現していて、真摯なメッセージが詰まっている作品

――今年5月にシングル「Destiny」で再始動する前に2年ほどオフを取っていましたが、その理由は?

シェネル:自分がより繋がりを感じることができる音楽を探求する時期だと思っていて、そのサウンドがどんなものかを理解するために必要な時間だった。そこから出来上がった作品が、日本のレーベルからリリースされるかすらわからなかった。これまでも何度か新しいサウンドを見つけたい、と言ったことがあるけれど、誰も興味を持ってくれなかったから。

『シェネル・ワールド』をリリースした後、もうこの路線ばかりは止めたいと分かっていて、みんなに本当のシェネルに会って欲しかった。曲が独り歩きして、自分自身よりもビッグになっている、と感じていたのね。たとえば、インタビュー映像を通じてだったり、ライブに足を運んでくれれば、私の性格や個性について知ってもらえるけれど、そういう姿はあまりメディアに登場していない。それが悪いことは言わない。8年前、この路線でいく、と決めたのは自分だから。それを変える時期だと感じ、すべてオープンにしたかったの。



▲ 「Destiny」


――特に、『メタモルフォーゼ』のオープニング曲「Home」と「Space and Time」からは、オフを取ったことの直接的な影響が伺えます。

シェネル:そう、アルバムのトラックリストは、熟考したし、曲順にも意味がある。私は様々なスタイルの音楽に影響を受けているから、懸念していたのは曲ごとのサウンドがバラバラすぎて、一貫性のある作品に仕上がらないのでは、ということ。でも、アルバムに収録したい曲を聴いたら、そんなことはないと強く思った。自分のことをきちんと表現していて、真摯なメッセージが詰まっている作品だと思う。私の声と音楽は、生々しいという特性があって、収録曲はどれもそれをハイライトするものになっている。

――中でも「Scared of Heights」は、ミニマルなプロダクションとクラシカルなR&Bの雰囲気がシェネルの生々しいヴォーカルを際立てる、これまでとは異なるタイプの楽曲です。

シェネル:そう、それが理由でこういう曲がやってみたかったの。自分のストーリーを語って、想いをシェアできることができる、チルな曲をね。

――音源を持ちよったり、アイディアを投げ合ってゼロから作り上げていくなど、どのようにプロデューサーとともに曲を構築していくのですか?

シェネル:特に決めていないんだけれど、アルバムに収録されている曲のほとんど…「Home」、「Space and Time」、「Kiss」、「Shadow」などは、ゼロからプロデューサーと作り上げていったもの。彼らが何らかのパートを演奏して、そこからアイディアが生まれたり…そういうやり方が好き。でも、「Remember My Name」のように相手が持ち込んだインストゥルメンタルやトラックから作ったものある。

――その「Remember My Name」では、ギタリストのMIYAVIとコラボしてますが、どんな経緯で実現したのですか?

シェネル:彼は本当に素晴らしいギタリスト。「Remember My Name」を聴いた時、曲作りのパートナーのCJにこの曲には絶対イケてるギタリストに参加してもらわないと言ったのを覚えてる。実は以前も、自分の作品に参加してもらいたくてオファーしたけれど、スケジュールが合わなかった。だからまたオファーしてみたら、実現することになった。彼が参加してくれて本当にクールな曲に仕上がったと思う。

――他にもKonshensなどが参加していますが、コラボレーターには何を求めますか?

シェネル:私は元々レゲエやダンスホールが好きで、彼のシングル「Bruk Off Yuh Back」も大好き。彼とは、とあるLAのパーティーで会って意気投合して、「私の曲に参加しない?」って聞いたら、「もちろん」って言ってくれた。ものすごいスピードで進んだのよ!本当はスタジオに来てくれるはずで、ずっと来るのを待ってたんだけど、一向に来なくて…そしたら「行けなくてゴメン!でもヴァ―スを作ったよ」ってメールが来たの(笑)。内容も良かったから、そのまま採用したわ。

――全編英語のアルバムを制作したのは久しぶりだと思うのですが、今作の制作を通じて自分自身について学んだことはありましたか?

シェネル:多分10年ぶりぐらいだと思う。私はとてもオープンで…チャンスが巡ってきたら自分のものにするし、実験することにも意欲的。けれど、すぐに自分が楽な居場所を見つけ、そこから動きたくなくなる一面もあるから、その状況を打破しなければいけなかったことが、今作の制作を経て学んだこと。毎日、何か新しいことに挑戦するように自分を駆り立てている。

――『メタモルフォーゼ』は、シェネルにとって大きな転機となる作品となりましたが、自身のキャリアにおいて位置づけるとしたら?

シェネル:とてもクリアな出発地点にある。自分が何を求めているのかがはっきりと分かる場所にやっと到達することができて、何にも屈せず堂々と振舞えるようになった。これが自分のやりたいことで…それを認めることができる。好きなものを得ることに問題はないし、そうすることに値する。この感情が、今最も私を駆り立てている。

――今までその感情に歯止めをかけていたのは、何だったのですか?

シェネル:私が何か行動を起こすのに時間がかかるのは、恐れや…ほとんどの場合、恐れが一番大きいわね。みんなに何と思われるか、間違っているのではないのか、などよくある人間的な理由。よく女友達にも言われるわ。たまに少しでも弱みを吐いたりすると、「本当?あなたってとても強く見えるのに」なんてビックリされるんだけど、仕事の環境上、自分を強く見せなければならない。殻は堅いかもしれないけれど、中身は傷つきやすいんだ。



▲ 『メタモルフォーゼ』ダイジェスト映像


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シェネル「メタモルフォーゼ」

メタモルフォーゼ

2017/09/06 RELEASE
UICV-1087 ¥ 2,420(税込)

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Disc01
  1. 01.ホーム
  2. 02.リカー・ストーリー
  3. 03.ラブ・ユー・ライク・ミー feat.コンシェンス (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン)
  4. 04.ライ・トゥ・ミー
  5. 05.スペース・アンド・タイム
  6. 06.アフターライフ
  7. 07.シャドー
  8. 08.スケアード・オブ・ハイツ
  9. 09.ハンド・イット・オーヴァー
  10. 10.キス
  11. 11.F.U.N.
  12. 12.リメンバー・マイ・ネーム feat.MIYAVI (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン)
  13. 13.ミラクル (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン) [Japan Only Bonus Tracks]
  14. 14.ラブ・シック (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン) [Japan Only Bonus Tracks]
  15. 15.ハートバーン (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン) [Japan Only Bonus Tracks]
  16. 16.アウタ・ラブ (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン) [Japan Only Bonus Tracks]
  17. 17.ライク・ア・ラブ・ソング (アルバム『Destiny』収録曲の英語詞ヴァージョン) [Japan Only Bonus Tracks]

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