Special
Nao Yoshioka インタビュー ~エリック・ロバーソンとの初共演ライブに向けて
2015年に全米デビューを果たし、2016年には【Capital Jazz Fest】のメインステージに出演、3rdアルバム『The Truth』ではアリシア・キーズらを支えた名プロデューサー/ライターと共作するなど、国内外で活躍する現在進行形ソウルシンガーNao Yoshioka。2017年11月18日には、10年ぶりの来日を果たすエリック・ロバーソンとの共演ライブを開催する。エリック・ロバーソンとの出会いやエリックの魅力、そして今回出演するステージで伝えたいことについてインタビューを行った。
>>>エリック・ロバーソン来日記念特集 ~R&B界のレジェンドが放つ新たな魅力について、柳樂光隆氏が解説~
エリックが「どこまで連れていってくれるんだろう」って思うとワクワクします
−−11月18日に行われる【かわさきジャズ2017】で、エリック・ロバーソンと共演されます。エリックとの出会いはいつですか?
Nao Yoshioka:2014年に、アルバム制作のために訪れたニューヨークからセントルイスに移動する飛行機の中で出会いました。楽器を持った人達が数人入ってきたんですが、よく見たらその中にエリックがいて。
――偶然の出会いだったのですね。
Nao Yoshioka:そうなんです。飛行機を降りて声を掛けたら、とても気さくに応じていただけて。そして私が所属するSWEET SOUL RECORDS代表の山内さんが、エリックに「彼女はシンガーで、レコーディングのためにアメリカに来たんです」って紹介してくださって、彼にその場で「Make the Change」を聞いてもらったんです。そうしたらエリックがすごく気に入ってくれて。その日の夜、セントルイスでライブをするから遊びにおいでよって誘ってくれたんです。
−−ライブはいかがでしたか?
Nao Yoshioka:素晴らしかったですね。観客に3つキーワードを言ってもらって、それを使った曲を即興で演奏したり、MC部分も全部歌になっていたり。エンタテインメントとしてすごく確立していましたし、音楽と自分の言葉がすごく近い人なんだなって思いました。なので、その日も客席で「すごいなあ」って感動していたら、エリックが「実は、今日 日本から素晴らしいゲストが来ているんだ」って言ったんです。「そうなんだ。日本人のゲストもいるんだ」って思っていたら、彼が指したのが私で。
−−出会った日の夜に、いきなり共演されたんですね。
Nao Yoshioka:すごく驚きました。その時彼はレイラ・ハサウェイとデュエットした「ディーリング」を演奏していたんですが、私その曲を知らなくて…(笑)。なので、ハミング程度でしか一緒に歌えなかったんですが、お客様もすごく盛り上がってくださったのを覚えています。そのあと、すぐに共演する企画が立ち上がったわけではなく、SNSで連絡したり、【capital Jazz Fest2016】で再会する程度でしたが、今回やっと共演の夢が叶いました。
▲Eric Roberson invites a singer from Tokyo on stage
−−海外で突然出会った人と一緒に、一つのものを作ることができるというのは音楽ならではの体験ですね。
Nao Yoshioka:空港で音楽を聴いただけの知らないヴォーカリストを、自分のステージに上げるなんて、普通は考えられないですよね。エリックは、新しい事や人に対してすごくオープンな人なのだそうです。素晴らしい経験をさせていただいたと、今も思っています。
−−改めて、エリックの魅力はなんでしょうか。
Nao Yoshioka:低くてディープな歌声も素敵ですが、その場で感じたことをすぐに表現できるアドリブ力が特に素晴らしいと思います。色んな歌手とデュエットしている映像を見ても、毎回アレンジが違うんです。相手の表現にあわせて、自分の表現を柔軟に変えていて。彼は、ジル・スコットやミュージック・ソウルチャイルドなど多くのアーティストに楽曲を提供していて、ライターとしても素晴らしいキャリアを持っています。なので、そういう力がライブにもすごく活かされているなと感じますし、その場で生み出されるライブの醍醐味を感じさせてくれる人ですね。
−−Naoさんとのステージでは、どんな姿を見せてくれるのか楽しみです。
Nao Yoshioka:私も、すごく楽しみです。ライブで演奏するときに、曲をオリジナルから変化させて、どこまで脱線するかはアーティストによって違います。なので、一緒に演奏すると相手の懐の深さがすごく伝わってくるんです。ものすごく遠くまで脱線できる人というのは、どこまで行っても戻ってこれる自信がある人っていう意味ですから。エリックの懐は相当深いので「どこまで連れていってくれるんだろう」、「私はどこまで行って良いんだろう」って考えると、今からワクワクしますね。
公演情報
【かわさきジャズ2017 NAO YOSHIOKA with Special guest Eric Roberson】
日時:2017年11月18日(土) START16:00
出演:【第1部】(フロント・アクト) m.s.t.[持山翔子(p)、小山尚希(b)
【第2部】Nao Yoshioka(vo)、 Eric Roberson(vo) D Maurice Macklin (BV)、ミズキ・カマタ(BV)、
Aaron Hardin (Key)、Dai Miyazaki (Gt)、James Bratten (Ba)、Brandon Maclin (Dr)
関連リンク
予想していないことが起きたときのライブの方が良い演奏になる
−−今まで、ネイザン・イーストやキャンディ・ダルファー、ブライアン・オウエンズなど様々なアーティストと共演されてきましたが、共演する際に意識することはありますか。
Nao Yoshioka:幸せなことに、デビュー前から自分よりキャリアのある方と演奏させていただく機会が多くて。でも、同じステージに立つと自分の器の小ささや才能の差を痛感させられるんですよ。それに事前に練習してきたことを、ただ歌ったステージってすごくつまらないんです。いくら周りの人から褒められても、殻を破れなかったこと自分が悔しくて、昔はライブの後いつも悔しくて泣いていました。でも、少しずつ自分をオープンにして流れに身を任せるかということを楽しめるようになりました。もちろん事前に練習しますし、予想できることは準備します。でも、ステージでは予想していないこともたくさん起こります。でも、自分の演奏をあとで聞いてみると予想していないことが起きたときのライブの方が、良い演奏なんです。音楽に限らず、人って頭で考えて行動している時よりも、動物的に動いている瞬間の方が魅力的ですもんね。なので、そういう予想外の事を怖がるのではなく、リラックスして楽しもうと思えるようになりました。
−−殻を破れなかった自分を、どのように乗り越えられたのですか。
Nao Yoshioka:今まで、悔しくて泣いていると「歌えているんだから、もっと自信を持った方が良い」って言われていました。でも、自信って「持とう」と思って持てるものではないですよね。自分が今までできなかったことができるようになるには、どうすれば良いかを自分の頭で考えて、悔しい思いを何度もすることの繰り返しです。そういう経験を何度も何度も積み重ねないと、自分を信じることはできません。
−−ステージで共演するには、流れに身を任せられる柔軟さに加えて、瞬発力も必要です。
Nao Yoshioka:そうですね。なので私は、共演する相手の目をすごく見るようにしています。目を見ると、その人が何を感じているのかが感覚的に伝わってきます。ハモったまま、長いフレーズを一緒に歌い続けられる瞬間ってありますよね。あれだって、頭でカウントしていたって絶対に合いません。体の動きや息遣いを、相手の目を見て感じ取ることで、相手が何を表現したいのかを理解し、即座に反応できるように心がけています。
−−エリックの来日公演は10年ぶりですよね。
Nao Yoshioka:エリックも、日本に来るのをすごく楽しみにしているようです。10年ぶりってどんな気持ちなんだろう…。エリックは日頃からたくさんライブをしているので、この10年間で彼が経験してきたことを考えると、10年前とは全然違う演奏を見ることができると思います。
−−今回は、エリックのバンドメンバーもフィラデルフィアから来日しますね。
Nao Yoshioka:キーボードのアーロン・ハーディンは、セントルイスのライブにもいましたし、今年オープニングアクトで出演させていただいたラサーン・パターソンのライブでも共演しました。ジェイムス・ブラッテンは、昨年出演した【capital Jazz Fest2016】でも共演したベーシストで、ジル・スコットなどのライブにも参加しているフィラデルフィアではとても有名な方です。フィラデルフィアには、とても優秀なミュージシャンが多いんです。ジャムセッションでドラムを叩いている人が、実はジョン・レジェンドやローリン・ヒルの作品に参加している人だったり。そんなフィラデルフィアの中でも、選りすぐりのメンバーと演奏できるので、最高ですね。
−−Nao Yoshiokaさんは、日頃から国内外の様々なライブやイベントに出演されているので、一緒に演奏するバンドメンバーも様々です。意識されていることはありますか。
Nao Yoshioka:アメリカで演奏する時は、今回の【かわさきジャズ】でも出演していただくDai Miyazakiさん(Gt.)に、ミュージックディレクターを務めていただいていて、ある程度メンバーも固定されつつありますが、やはりスケジュールの都合でドラマーやベースが変わることもあります。でも、初めての人と演奏する時は、長々と自己紹介したりせず、まず音を出すんです。国籍が違っていても、学んできたことや聴いてきた音楽は同じなので、言葉で説明しなくても分かりあえますから。なので、初めての人と演奏するのは、すごく楽しいですね。「そんな風に叩いちゃうの?! じゃあ、こんな風に歌ってみよう」という感じで。演奏をしている中で信頼関係が生まれるので、知らないミュージシャンとの出会いは楽しいですし、いつも良い刺激をもらっています。
−−どんなセットリストになりそうですか。
Nao Yoshioka:9月24日からスタートするクルーズツアー【Capital Jazz presents The SuperCruise X】に出演するのですが、エリックも出演するんです。なので、船の上で打ち合わせをする予定です。私とエリックのソロはもちろんですが、やはり私とエリックの2人でしか作れないものを演奏したいので、その日限りのコラボレーションをしたいなと思っています。
−−今回は【かわさきジャズ】というジャズフェスに出演されますが、今まで【GREENROOM】や【JOIN ALIVE】など様々なフェスにも出演されてきました。
Nao Yoshioka:音楽って演奏する人や曲が同じでも、音楽を聴く環境によって感じ方がすごく変わりますよね。野外なのかホールなのか、昼なのか、夜なのか…。海と夕陽が見える中で大好きな曲が流れたら、そういう瞬間って一生忘れられないと思います。そんな体験を私も客席でしてきたので、自分が届ける立場に立てるのであれば、その時の環境にあった音楽を届けたいと、いつも思っています。
−−様々なフェスの中でも、昨年出演された【Capital Jazz 2016】は特に印象的なステージだったのではないでしょうか。
Nao Yoshioka:それまでにも、アメリカでライブをしたことはありましたが、【Capital Jazz 2016】は特に客席の皆さんに受け入れてもらえたことを感じられたステージでした。スタンディングオベーションが起こった曲も何曲もありましたし、ライブの後は歩くたびに色んな方が声を掛けてくださって。今まで、「人種や国境を越えて、音楽は人の心を繋げてくれる」と信じてきたことが、目の前に広がっていたので、「こうやって音楽って伝わっていくんだな」と思うと、ステージ上で涙をこらえるのに必死でした。自分のオリジナル曲を、自分のスタイルで演奏して本当に伝わるのかなって、毎回ステージの前は怖くなりますが、【Capital Jazz 2016】では、自分の熱量と同じだけの熱量を返していただけて、大きなブレイクスルーになりました。
公演情報
【かわさきジャズ2017 NAO YOSHIOKA with Special guest Eric Roberson】
日時:2017年11月18日(土) START16:00
出演:【第1部】(フロント・アクト) m.s.t.[持山翔子(p)、小山尚希(b)
【第2部】Nao Yoshioka(vo)、 Eric Roberson(vo) 、D Maurice Macklin (BV)、ミズキ・カマタ(BV)、
Aaron Hardin (Key)、Dai Miyazaki (Gt)、James Bratten (Ba)、Brandon Maclin (Dr)
関連リンク
テーマを知った時に「待ってました!」って思いました
−−【かわさきジャズ】のテーマは「ジャズは橋を架ける」です。Naoさんの最新アルバム『THE TRUTH』のテーマである「最高の芸術(リアルミュージック)は垣根を越えて人々を繋ぐ」と、通じるものがありますね。
Nao Yoshioka:実は、私もオファーをいただいてテーマを知った時に「待ってました!」って思いました(笑)自分が今まで言い続けてきたことと、同じテーマで開催されているフェスがあって、すごく嬉しかったです。今回、2014年に初めて会って、待ち望んでいたエリックとの共演が実現するのはもちろん嬉しいんですが、それが日本で実現したということが本当に嬉しくて。いつも私が海外で感じている、国境を越えて心が繋がる瞬間や、音楽で一つになる空気を皆さんと一緒にシェアできるのはすごく嬉しいです。
−−今後の目標について、教えてください。
Nao Yoshioka:私の夢は、日本と世界の両方で活躍できるアーティストになることです。これは活動を始めた時から、ずっと変わっていません。特に今年は、デビュー前からずっと取り組んできた海外での活動がどんどん花開いていて。海外からのオファーも増えてきたので、今まで以上に海外での活動が増えていくと思います。
−−いつか立ちたいステージはどこですか?
Nao Yoshioka:自分が音楽を聴いて感動した場所が、世界中にあるので迷いますね。挙げるとしたら…、1つはアポロシアターです。アポロシアターの【アマチュアナイト】に出演したとき、エネルギーの強さをすごく感じました。場所自体にすごく力があって、平常心を保つのが難しいくらい。なので、いつかアポロシアターで自分のライブをしてみたいですね。あとは、オランダで開催されている【North Sea Jazz Festival】もすごく素敵なフェスなので、いつか出演してみたいです。ずっと憧れていた会場の一つに、ディアンジェロのライブ盤でも有名な【The Jazz Café London】があるんですが、今月ゲスト出演させていただくんです。こうやって、ツアーアーティストとして世界中でライブを続けていきたいと思っています。
−−世界中でライブを続けていきたいと思えるモチベーションの源は何ですか?
Nao Yoshioka:そもそも、ずっと前に進んでいないと不安になるんです。自分のレベルが変わらないということが、なによりも怖いというか。自分がやらなくてはいけないこと、自分が求めている演奏に少しでも早く追いつきたいと常に思っています。私は、歌を一度辞めてきたときも、いままで何度も音楽に助けられてきました。以前、共演した方に「音楽というのは言葉で伝えたいことを増幅させるためのものだ。だから、結局大切なのは何を伝えたいかだけなんだ」と言われたことがあります。なので、これからも音楽を通して自分の信じるメッセージを届けていきたいです。
▲Nao Yoshioka - I Love When (Official Video)
公演情報
【かわさきジャズ2017 NAO YOSHIOKA with Special guest Eric Roberson】
日時:2017年11月18日(土) START16:00
出演:【第1部】(フロント・アクト) m.s.t.[持山翔子(p)、小山尚希(b)
【第2部】Nao Yoshioka(vo)、 Eric Roberson(vo) 、D Maurice Macklin (BV)、ミズキ・カマタ(BV)、
Aaron Hardin (Key)、Dai Miyazaki (Gt)、James Bratten (Ba)、Brandon Maclin (Dr)
関連リンク
関連商品