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フェニックス 来日インタビュー~トマ&クリスチャンが語るライブ体験と尽きないチャレンジ精神



フェニックス インタビュー

洒脱なポップ・サウンドとエヴァ―グリーンな楽曲の数々で、ここ日本でも絶大な人気を誇るフランス・ヴェルサイユ出身のバンド、フェニックス。昔ながらの親友4人によって結成され、1999年のデビュー以降計7枚のスタジオ・アルバムを発表し、2009年の『ヴォルフガング・アマデウス・フェニックス』では【グラミー賞】を受賞した。そんな彼らの最新作は“夏とイタリアン・ディスコ”にインスパイアされた、煌びやかでレトロ感満載なシンセ・サウンドと抜群のソングライティング・センスが見事に昇華された『ティ・アーモ』。今作を引っさげ、【SUMMER SONIC】に出演するために来日を果たしたバンドのフロントマン、トーマ・マースとギタリストのクリスチャン・マザライに、ライブ前に話を訊くことができた。

>>>【SUMMER SONIC】のライブ・レポートはこちらから!

TOP Photo: (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

音楽においては、フィジカルという形態が年々減っていっている

――まず、新作『ティ・アーモ』に伴うライブのプロダクションについて伺いたいのですが、何年にもおよぶ構想を経て生まれたものなんですよね。

2人:イエス!

トマ・マース:今回はアルバムを制作している段階で、プロダクションをすでに思い描いていた。そこを考えるのが楽しくて、曲と同時にアイディアが生まれていった感じなんだ。曲をどのようにプレゼンテーションするか、というヴィジョンがあった。今回のプロダクションは、アルバム制作中に見つけた1920年代のフレンチ・カンカンの写真にインスパイアされていて、ステージ上に向けられた角度45度の鏡が捉えられている。そのアイディアをモダンにするという試みから生まれたものなんだ。今回の日本でのライブには海外でやっているプロダクションをすべて持ってくることができなかったんだけどね。

クリスチャン・マザライ:この日本公演のために従来のステージを変えているんだ。だから、今話したものとは違う内容に仕上がっているけれど、スペシャルなものになっているよ。


――ウェブ上でライブやフェスの生中継が行われたり、その日のライブ動画が翌日にはYouTubeで視聴可能な時代となりましたが、そんな中でライブ体験について思うことは?

トマ:とても重要だと感じているし、ライブ体験についてよく考えるよ。

クリスチャン:これから約1年間ずっとツアーをしていくから、特にね。常に進化したいと思っているーサウンド、ヴィジュアル…すべての面において。どんどん上達していきたい。それが可能でなくなったら潮時で、ツアーを止めなければならないと思ってる。でも、今は毎日のように新しいアイディアが浮かんでいるから、とてもエキサイティングだね。

――加えて、ライブ体験をさらに拡張させ、会場に自動販売機を設置しグッズを売るというユニークな試みも行っています。

トマ:ああいう試みを実現できると、モノづくりの喜びが直に感じられる。たとえば曲を書いても、作品が完成してヴァイナルを手にしないと実感がわかない。特に音楽においては、フィジカルという形態が年々減っていっているしね。自動販売機で売っていたものは、大量生産しても10人中1人しか買わないようなヘンテコなものばかりで、僕たちにとって、ちょっとした楽しみという感じだったんだ。


――ちなみに、2人にとって一番思い出深いライブ体験は?

クリスチャン:15歳ぐらいの時に、パリで友人たちと観たマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。

――『ラヴレス』がリリースされた頃ですか?

クリスチャン:うん。ダフト・パンクのメンバーや、パリで活動していたミュージシャンが沢山観に来ていて、僕らの友人も大勢いた。彼らの“ウォール・オブ・サウンド”にはド肝を抜かれたね。会場はパリで一番のヴェニュー、オランピア。あんな凄まじいライブを目撃することができたのは、僕にとって大きな瞬間だったな。

――トマはどうでしょう?

トマ:僕もその時いたんだけど、最後に「You Made Me Realise」をプレイした時、ラウドすぎて観客全員が後ずさりしたんだけど、一人だけスピーカーの前から動かなかったクレイジーなやつがいた。そいつは僕らの友人で…今は日本人の奥さんと日本に住んでるんだけど、彼だけ一歩も動かなかったことを鮮明に覚えてるよ。彼に会うたびにその時の話をするんだ(笑)。



▲ 「Ti Amo」(Live)


――では、ライブ・バンドとしてターニング・ポイントとなった時期ってありますか?個人的には、サポート・ドラマーのトーマス・ヘドランドが加わった『イッツ・ネヴァー・ビーン・ライク・ザット』(2006年)頃かなと。

クリスチャン:そう思う?

トマ:3rdアルバムのツアーを始めた直後、ライブがすごく楽しいと感じたのは確かだね。それが僕たち自身の内面の変化によるものなのかはわからないけれど、一番最初のショーからすごくエキサイティングなものだった。通常、アルバム・サイクルの最初の頃のショーはつまらないものなんだ。演奏面にいてもまだ恐い部分があるし。でもこの時ばかりは、楽しくて、満足感が得られるものだった。

――なるほど。その後は、演奏する会場が徐々に大きくなり、2013年には【コーチェラ・フェスティバル】のヘッドライナーを務めるまでになりました。

トマ:うん。とはいえ、今でも小さい会場でプレイするように心がけている。だから決して飽きることはないね。大きい会場と小さな会場、そのコントラストから学ぶこともあるしね。

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僕らにとっての大敵は、同じことを繰り返すこと

――そして過去の楽曲が新曲とリンクし、アップデートされていくのは、フェニックスのライブの魅力の一つだと感じます。

トマ:新曲が過去の曲を超越し、変えていく。もし昔から少しも変わらないと感じた曲はプレイしない。なぜかわからないけれど、過去の曲を新曲と隣り合わせに演奏することで、過去の曲の何かが変わる。もしかしたら自分たちがそう思っているだけかもしれないけれど、そう感じるんだ。まるで2008年に戻ったようとか、全くそんなノスタルジックな感覚にはならない。頭では考えず、ごく自然にプレイすることで、モダンに仕上がっていく気がする。新曲を沢山プレイすることは、僕らのライブに不可欠。有名な曲ばかり演奏するグレイテスト・ヒッツ的なバンドには絶対になりたくないから(笑)。それって、本当に最悪なフィーリングだと思うんだよね。

クリスチャン:とはいえ、すごく時間がかかるプロセスで、たとえば「If I Ever Feel Better」は18年位前に書いた曲だけど、様々な進化を経て、現在のマッシュアップという形に至っている。曲は野生の動物のようで、中には手なずけるのが難しいものもあるということだね。

――今の話を訊いて思ったのですが、新作とデビュー作の『ユナイテッド』は親和性が高いようが気がします。

トマ:僕もそう思う。ナイーヴさ、純粋さだったり、曲が様々なジャンルやスタイルから織りなされている部分が共通していて、選ぶとしたら僕も『ユナイテッド』だと感じるね。



▲ 「If I Ever Feel Better」


――ストリーミングの普及により、ドレイクの最新作のように近年プレイリストやミックステープという形のアルバム・リリースが顕著ですが、『ユナイテッド』はまさにその先駆け的な存在でもあったのかなと。

トマ:むしろ、そうならざるを得なかったんだ。僕らが若い頃、故郷ヴェルサイユの音楽シーンに対してずっと抱いていたフラストレーションというのが、人々が一つのジャンルしか聞かないということだった。僕らは様々なスタイルの音楽が大好きだったし、レコード屋に行ってジャケ買いをすることもあった…閉鎖的なコミュニティだったから、音楽についての知識が少なかった部分もあってね。クラフトワーク、アイザック・ヘイズ、イギー・ポップなど、一見ミスマッチなセレクションに思えるかもしれないけれど、そういった音楽から感じたものすべてを自分たちの音楽に反映させたかったし、そうしなければならないという信念があった。だから雑然としていて、ミックステープのような作品になったんだよね。

それに、テープからテープへ録音できる…多分そういったテクノロジーが生まれた初期の頃に作られた機械がフランスにはあって、僕はそれを使ってラジオで流れていた曲を録音して、昔クリスにミックステープを作ってあげていたんだよ。

――内容はきちんとテーマ別にキュレーションされていたんですか?

トマ:もちろん。ちゃんとキュレートされていたけど、いつも録音する時、最初の数秒をミスしちゃって(笑)。

――全曲最初の3秒が録れてない的な(笑)。

トマ:そうそう、でもそれはそれでチャーミングでいいよね。



▲ 「Goodbye Soleil」


――話は変わって、『ティ・アーモ』でトマはエフェクトなどを多用し、自身のヴォーカルの可能性を押し広げていますが、これはどんな理由があったのですか?

トマ:アルバムは空想上の世界を描いていて、ヴォーカルにおいても空想上の自分のイメージしているんだ。僕が自分の声に飽きてしまうように、クリスも自分の演奏スタイルに飽きてしまうことがある。メンバー全員、お互いにいいところを見せれるような新しい技や方法をとどまることなく探している。だから、他のメンバーがまだ知らない自分の新たな面をエフェクトなどによって、見せることができればと考えていた。たとえば、ブランコが僕らが聞き慣れていないことをやって…それがアイディアに発展していったり。目新しさというのが、一番の理由だね。

――バンド結成から20年近く経ちますが、常に新しいことに挑戦することに意識的なんですね。

トマ:アルバム制作を始める時、意識していることはただ一つで、前作でやったことはやらないということ。マイナス地点から作業を始めて、だんだんプラスへと変えていくんだ。そこから今まで聴いたことがなかったり、試したことがない未知のサウンドが生まれれば、それはアルバムに収録される。とはいえ、聞き慣れないものや見知らぬものに初めて接する時は不安もあって、それが面白いものだ、って思えるまで時間がかかることもある。それもあって、クリスが僕らが作るものをすべて聞き返し、「これはいいんじゃないか?」ってジャッジすることもある。たとえば「Love Life」は、作った1年後ぐらいにデックが掘り出してきたもの。曲のメロディを気に入るまで1年かかったけれど、結果的にアルバムに収録されることになったんだ。

――マンネリ化や自分が安心できる環境から抜け出すのが時に困難な場合もあります。

トマ:うん、もちろん難しいけれど、不可欠だと思う。それが僕らの仕事だと思ってる。僕らにとっての大敵は、同じことを繰り返すことだから。




――では究極の選択です。優れたアイディアが一つあるのと、まあまあなアイディアがたくさんあるのでは、どちらを好みますか?

トマ:え~、すごく難しいな。政治とかにおいては、優れたアイディアが一つあった方がいいんじゃないかな。たとえば、ニュー・ディール政策とかはラディカルで、たくさんの小さなアイディアよりも有効だと思うし。だから、優れたアイディア一つを選ぶかな。

クリスチャン:僕も同感だね。

――最後に2人にとって最強の夏の1曲を教えてください。

クリスチャン:ルチオ・バッティスティの「Ancora Tu」!

トマ:その選曲すごくいいね。僕は、カーティス・メイフィールドの「There's No Place Like America Today」が大好きなんだけど、これは冬に聴いてもいい曲だね。それとスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Hot Fun in the Summertime」。まさに夏にピッタリな曲だよね。


フェニックス「ティ・アーモ」

ティ・アーモ

2017/06/09 RELEASE
WPCR-17642 ¥ 2,178(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.J-ボーイ
  2. 02.ティ・アーモ
  3. 03.トゥッティフルッティ
  4. 04.フィオール・ディ・ラッテ
  5. 05.ラヴライフ
  6. 06.グッバイ・ソレイユ
  7. 07.フルール・ド・リス
  8. 08.ロール・モデル
  9. 09.ヴィア・ヴェネト
  10. 10.テレーフォノ

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