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BBL 10th Anniversary Premium Stage エリカ・バドゥ来日記念特集&著名人からのコメント到着

ErykahBadu

  ヒップホップ世代によるオーガニックなソウル・ミュージックの歌い手としてディアンジェロとともに先陣を切ったエリカ・バドゥ。“ネオ・ソウルの女王”とまで呼ばれるようになった彼女は間違いなくそのジャンルの第一人者だが、R&Bを軸としながら今やフィールドを越えて活躍する世界的スターであり、様々なジャンルや幅広い世代のアーティストに影響を与え続けている。今年5月からスタートした【Badu Vs. Everythang Tour】ではアメリカやヨーロッパの各都市をまわり、その一環としてビルボードライブ東京/大阪、および【Soul Camp 2017】での来日公演も決定。2017年はデビュー・アルバム『Baduizm』(97年)のリリースから20年の節目にあたる年でもあり、新しい世代のリスナーたちからも改めてその革新性に目が向けられている。そんな記念碑的なアルバムの誕生や同作がシーンに与えた影響を中心に、R&Bのカリスマが成し遂げてきた偉業を振り返ってみたい。

蛹が蝶へ―ネオ・ソウルの女王として君臨―

 1998年2月、『Baduizm』の発売から1年後に行われたエリカ・バドゥの初来日公演のことは鮮明に覚えている。マイルス・デイヴィス「So What」を使ったイントロで幕を開けたステージにはお香やキャンドルを乗せたテーブルが置かれ、ヘッドラップを纏ったエリカがアンク(エジプト十字)を示したりしながら『Baduizm』のアフロセントリックでスピリチュアルな世界を程よい緊張感を持って再現していった。そんな妖しげな装飾は、生まれ故郷のテキサス州ダラスからNYブルックリンのフォート・グリーン地区に移った後に考案したとされるが、女優だった母親の影響で演劇を学び、地元ダラスの文化センターで子供たちに演技やダンス、ヨガを教えていたエリカの自己演出には、音楽同様タダモノではないという気配が漂っていた。人によっては、そのアーティスト然とした立ち居振る舞いがあざとく映ったようだが、しかし彼女は唯一無二の“イズム”をゆっくりと浸透させながら世界中にシンパを増やし続けている。

CD
▲『バドゥイズム』

 『Baduizm』制作当時、同じNYのスタジオで録音していたという久保田利伸氏は、たびたび氏の部屋にやってきては大人しく座っているだけのエリカを見て、後の大ブレイクが信じられないほど地味な女の子だったと回想していた。ベジタリアンで痩せ型。いわゆるショウビズの世界とは程遠いイメージだったようだが、しかし、だからこそ一部の人々には“リアル”な存在として映ったのだろう。来日時には、アウトキャストのアンドレ3000との間に生まれた息子セヴンに渋谷の街中で胸をはだけて母乳を授けていたそうで、こんなエピソードからも飾り気のない人柄が伝わってくる(ちなみにエリカはコモンと一時期恋人関係にあったが、子供を儲けたのは、アンドレ3000、The D.O.C.、ジェイ・エレクトロニカの3人)。そんな素朴なエリカに“イズム”を持つべきだと提言し、ネオ・ソウルというサブ・ジャンルで囲い込んだのがディアンジェロを世に送り出したキダー・マッセンバーグであり、そうしたブランディングのもとで誕生したのが『Baduzim』であった。蛹が蝶になるように、エリカ・アビー・ライト(本名)がエリカ・バドゥとして飛び立った瞬間だ。

  Buddhism(仏教)の語感も意識したというタイトルからして独創的だった『Baduizm』は97年2月11日の発売で、2017年で20周年を迎えた。エリカは71年2月26日生まれだから26歳になる直前でのリリース。アルバムはエリカ・フリーというユニットを組んでいた従兄弟のロバート“フリー”ブラッドフォードと95年頃に録音していた『Country Cousins』という19曲入りのデモ・アルバムがベースになっている。そのデモ集が、19歳の頃から参加していたという〈SXSW〉でモブ・ディープの女性マネージャーに手渡され、キダー・マッセンバーグの耳に届いた。結局キダーとはユニットのエリカ・フリーとしてではなくエリカとのソロ契約となり、サントラ『High School High』(96年)にてディアンジェロとデュエットしたマーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「Your Precious Love」で全国進出。それに続いたのが、ソロ・デビュー曲の「On & On」であった。


 現在RC&ザ・グリッツの一員としてMPCを操るジャボーン・ジャマルとエリカ・フリー時代に共作した「On & On」は、最終的にボブ・パワーによってブラッシュアップされ、映画『カラー・パープル』を意識したミュージック・ビデオが賛否を呼ぶ中でR&Bチャート1位を記録。第40回グラミー賞では“最優秀女性R&Bヴォーカル・パフォーマンス”も獲得した。同曲は旧知のマドゥク・チンワーが制作した「Certainly」やロン・カーターのベースをフィーチャーした「Drama」などとともにジャズを引き合いに出して語られたものだ。近年もロバート・グラスパー・エクスペリメントの『Black Radio』(2012年)にてモンゴ・サンタマリア曲のリメイク「Afro Blue」を歌ったり、グラスパーによるマイルス・デイヴィス音源の再構築アルバム『Everything's Beautiful』(2016年)に参加するなど、ジャズはエリカの音楽におけるキーワードのひとつと言っていい。だが、ロイ・ハーグローヴと一緒に籍を置いた地元のブッカー・T.ワシントン高校では、舞台芸術を学ぶもジャズを学んだことはなく、ジャズはあくまでフィーリングとして湧き上がってくるものだとデビュー当時の彼女は話していた。


 「On & On」はジャズと言うより、低音のきいたミニマルなトラックが実にヒップホップ(・ソウル)的。なにしろイントロからオーディオ・トゥーの「Top Billin’」を思わせるビートが登場するわけで、これは同じく「Top Billin’」のビートを組み込んだメアリー・J・ブライジの「Real Love」にインスパイアされたのだという。地元では14歳頃からTLCのようなバギーパンツを履いてラップを披露していたという彼女だけに、ジャズっぽいソウルを歌っても根幹にヒップホップがあるという姿勢は現在まで一貫。『Baduizm』では「Next Lifetime」がダ・ビートマイナーズ一派のトーン・ザ・バックボーン、「Otherside Of The Game」がザ・ルーツとリチャード・ニコルズの制作であったこともその証左となろう。特にジェイムズ・ポイザーも関与したザ・ルーツ一派とのフィラデルフィア録音曲は、後にグラミー受賞の栄誉に浴したザ・ルーツ「You Got Me」での客演へと繋がり、そのデモ版を歌っていたジル・スコットを中心とする新しいフィラデルフィアのムーヴメント(ネオ・フィリー)の種を蒔いていたと言えなくもない。ゆえに『Baduizm』はネオ・ソウルの名盤と呼ばれ、エリカはネオ・ソウルの女王と呼ばれることになるのだ(この呼び名を当初本人は嫌悪していたが、現在は半ば公認)。フォロワーというには出自も個性もバラバラで乱暴な括り方だが、ジル・スコットやインディア.アリーが登場し、アンジー・ストーンやローリン・ヒルがソロとしてデビューできたのもエリカが道を開いたからだと言えそうだし、後にメイシー・グレイ「Sweet Baby」(2001年)にエリカを招いたこともそんな影響の大きさあってこそだろう。


CD
▲『Mama’s Gun』

 しかし、ムーヴメントの牽引者は同じスタイルを繰り返したりせず、常に周囲より一歩先を行く。キダー・マッセンバーグのモータウン社長就任により同社に移籍したエリカは、ディアンジェロとともにソウルクエリアンズを名乗ったクエストラヴ、ジェイムズ・ポイザー、ジェイ・ディー(J.ディラ)らを制作陣に迎えた『Mama’s Gun』を2000年に発表。『Baduizm』との連続性を感じさせつつ70年前後のサイケデリックなソウルや前衛ジャズを官能的なグルーヴで再現し、ベティ・ライトやロイ・エアーズを招き、スティーヴン・マーリーとも共演するなどして時代やジャンルを超越するソウル・ボヘミアンとして異彩を放っていく。先行曲「Bag Lady」のミュージック・ヴィデオに登場したエンダンビやヤーザラー、チャイナ・ブラックといったヴォーカリストたちが広く知られていくのもこのアルバムからで、そのアルバム・タイトルを冠したママズ・ガンというバンドがUKから出てきたことも影響の大きさを物語る。また、ロイ・ハーグローヴ、ジーノ・ヤング、ジーノ・アイグルハートのほか、現在RC&ザ・グリッツを率いるRCウィリアムズ、スナーキー・パピーで活躍するショーン・マーティンら地元ダラス周辺の仲間がオーガニックなサウンドの醸成に貢献していたことも今なら特筆すべきだろう。



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デビュー・アルバム『Baduizm』リリースから20年、解けない魔法

CD
▲『Worldwide Underground』

 ジェイムズ・ポイザー、RCウィリアムズ、そしてバスタ・ライムスなどを手掛けていたラシャッド・スミスとともにフリークエンシーという制作チームを立ち上げ、さらに新たな次元へと向かったのが、2003年リリースの『Worldwide Underground』だ。以前コモンと共演した曲をアンジー・ストーン、クイーン・ラティファ、バハマディアとの共演版としてシークエンスのオールドスクール曲引用で再編した「Love Of My Life Worldwide」にてピュアなヒップホップ愛を見せ、レニー・クラヴィッツやザップ・ママ、キャロン・ウィーラーらを招いてデッド・プレズと共演もするという開放的にしてエッジのある内容は、その表題よろしくワールドワイドでアンダーグラウンド。この後のエリカは、同じくヘッドラップを纏ったMISIAと日本のステージで共演したり(エリカはMISIA「Everything」のカヴァーも録音)、ウィル・アイ・アムが手掛けたセルジオ・メンデス『Timeless』(2006年)への参加などでボーダーレスな存在となり、世界と手を繋いでいく。


CD
▲『New Amerykah Part One
(4th World War)』

 ジェイ・エレクトロニカを第一号アーティストとした自身のレーベル、コントロール・フリークを立ち上げたのも同じ頃だ。その後リリースした『New Amerykah Part One (4th World War)』(2007年)と『New Amerykah Part Two (Return Of The Ankh)』(2010年)は、マッドリブやカリーム・リギンズのビートを聴いては曲を書き、ジョージア・アン・マルドロウらと共同作業した結果、曲のストックが膨大になったことから二部作となったメッセージ色の強い姉妹アルバム。特にサー・ラーのシャフィーク・フセインも関与した、エリカいわく“ネオ・ファンク”な前者は、今思えば現在のLAシーンの盛り上がりを予言していたような内容だった。と同時に、故J.ディラ(2006年沒)への追悼曲としてクエストラヴやポイザーと制作した「Telephone」にはソウルクエリアンズ再結集的な意味合いも持たせ、後者での「Window Seat」とともにネオ・ソウル復権の道筋をオリジネイター自ら示していたようにも思えたし、「Turn Me Away(Get Munny)」ではシルヴィア・ストリップリン曲のリメイクを通じてジュニア・マフィアにオマージュを捧げるというヒップホップ愛を再び示していた。

 かくして米音楽界のアイコンとなったエリカは、2011年以降、フライング・ロータス、ロケット・ジュース&ザ・ムーン、ロバート・グラスパー・エクスペリメント、タイラー・ザ・クリエイター、ボノボ、ジャネル・モネイ、ダニー・トランペット&ザ・ソーシャル・エクスペリメント、そしてD.R.A.M.まで、時代を牽引するアーティストの作品に客演。自身も2015年に電話をコンセプトにしたアルバム『But You Caint Use My Phone』を配信リリース(翌年にアナログを限定発売)し、ドレイク「Hotline Bling」への回答的な楽曲や元恋人アンドレ3000との共演でも話題を集めることになる。

CD
▲『New Amerykah Part Two
(Return Of The Ankh)』

 むろん、この間にはライヴも定期的に行ってきた。デビュー当時のエリカは、そのシアトリカルなパフォーマンスもあってか、歌が弱い、声量がないという指摘をされていたが、「Tyrone」を新曲として披露した97年のライヴ(盤)でルーファスの「Stay」を歌う彼女は原曲のチャカ・カーンばりに力強い歌を聴かせており、一度でもライヴを観れば、その熱量の高いソウル・シンギングに圧倒されるに違いない。サンダーキャットらを引き連れて2014年に千葉・幕張で行った【StarFes.】以来3年ぶりとなる今秋の来日公演は、5月にスタートした最新ツアー【Badu Vs. Everythang Tour】(欧州公演含む)の一環となるもの。現時点で来日メンバーは未定ながら本国ではRCウィリアムス(key)やラシャッド・スミス(DJ)も名を連ねるステージは、セットリストを見る限り『Baduizm』的なメロウネスを感じさせる曲を各アルバムから選んだ印象で、少なからず『Baduizm』20周年を意識したものになるのだろう。

 今、ブラック・ミュージックから派生した音楽でエリカ・バドゥの影響を感じない方が難しい。映画『ブルース・ブラザーズ2000』(98年)では魔女に扮していたエリカだが、今もファンを増やし続ける彼女の魔法はまだ解けそうもない。

Text:林 剛

写真

Photo: FYF 2017 Goldenvoice Media(2017.7.22 【FYF Fest 2017】@米カリフォルニア州エクスポジション・パーク)

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来日公演に向けて著名人からコメントが続々と到着!

bird

初めてエリカ・バドゥの音楽に触れたのは、1998年。大沢伸一さんと出会って色々な音楽を聴かせてもらっていた頃だと思います。学生時代はバンド活動をしていましたが、主に70年代の音楽を聴いては歌っていた私にとって、彼女の音楽は衝撃でした。なんて新しくてかっこいいんだろう。特にミディアムテンポの曲でレイドバックして歌う彼女の歌い方は私にとって新鮮で、何回も聴いて自分でもトライしていました。
彼女の音楽活動も魅力的で、色んな方達とのコラボレーションも多く、どんな曲でも聴くと「エリカ・バドゥだ」とすぐにわかる声というのは、憧れです。
2005年に来日されていた時にライブを観に行きました。ものすごい存在感、そしてあの歌声。今回のビルボードライブはフルバンド編成とのことで、ますます期待感が高まります。私もぜひ体感してみたいです!



福原美穂

MAMA'S GUNで衝撃を受けてからまもなく17年。
当時、中学生だった私も、気づけばいつしか大人になり。
今もなお第一線で、誰にも真似できない道を行くエリカ様。
この人の背中は追うしかないでしょう。

日本での公演は3年ぶり?
私も実は生で拝んだことがないエリカ様。
フルバンドということで、今から来日公演が楽しみです。



Monday満ちる

初めてErykah Baduを聞いたときとってもびっくりしました。あんまりその当時のアメリカのソウルシンガーに興味はなかったのですが彼女は別の空気とアプローチがあった。ちょっとビリーホリデー的なエリスレジーナ風もありつつ、すごくスピリチュアルな感じと逆にちょっと自分をあまりシリアスにとってない感じも魅力的だった。プロダクションセンスも抜群。
あの当時からもう20年は経って今のErykah Baduは昔より強い存在になって、ちょっとカルト的な音楽とfashionの存在になってきた。恥ずかしいことに私はライブを見に行った事は無い!でもいつか見たいなと思ってます。東京と大阪のお客さんはラッキーですね!この機会を是非見逃さないでください!



Ms.OOJA

はじめて聞いた時のあの声とグルーブ感の衝撃!
ネオソウルの女王が日本にやって来る!!
先日私もライブをしたビルボードライブにやって来る!!
女王のライブがあの空間であの距離感で見られるなんてすごく贅沢な話ですね!!!
ビルボードライブならでは一体感が生まれるんだろうな~かっこいいんだろうな~
といろいろと妄想が広がっていきますw
そんな妄想だけでは気がすまないので、もちろん私も観に行きます!
チケット握りしめてワクワクがとまらない!
きっとたくさんの影響をくれることでしょう!!楽しみ!!



IMALU

Erykah Baduを初めて聴いた時、一つ大人になった気分になったのを覚えてる。
洗練された決してブレない、同時に母性もあって包み込んでくれるような歌声。
そんな彼女の声に私たちはずっと導かれている気がする。
今回はフルバンドで観れるなんて、贅沢な時間になること間違いなし!
行ける方達が羨ましいです!





エリカ・バドゥ「バドゥイズム」

バドゥイズム

2015/11/11 RELEASE
UICY-77596 ¥ 1,540(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.リムショット (イントロ)
  2. 02.オン&オン
  3. 03.アップルツリー
  4. 04.アザーサイド・オブ・ザ・ゲーム
  5. 05.サムタイムズ(ミックス#9)
  6. 06.ネクスト・ライフタイム
  7. 07.アフロ(フリースタイル・スキット)
  8. 08.サートゥンリー
  9. 09.フォー・リーフ・クローヴァー
  10. 10.ノー・ラヴ
  11. 11.ドラマ
  12. 12.サムタイムズ
  13. 13.サートゥンリー(フリップト・イット)
  14. 14.リムショット (アウトロ)

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