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中島美嘉 『ALWAYS』 インタビュー
人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと 愛したことを思い出すヒトにわかれる。君はどちらを思い出す?―――、そんな究極のテーマを生々しくも鮮やかに描いた、辻仁成の名作「サヨナライツカ」。それが映画化され、主演を中山美穂が務めるだけでもビッグニュースであったが、これまで様々な愛の歌を繊細に歌い上げてきた中島美嘉が主題歌を担当する。ということで、劇場公開に向けて注目度は一気に高まっている。今回のインタビューでは、その新曲『ALWAYS』についてはもちろん、映画「サヨナライツカ」の話を通じて彼女の恋愛観を赤裸々に語ってもらった。果たして中島美嘉は“愛されたこと”と“愛したこと”どちらを思い出すのだろうか?
“自分の全部”以上を出していました
--本日は映画「サヨナライツカ」とその主題歌『ALWAYS』についてはもちろんなんですが、2009年にあった大きなトピックについても触れさせてください。まず春夏と全国を駆け巡った大規模なツアーがありましたが、自分の中ではどんなツアーになりましたか?
中島美嘉:すごく楽しかったですよ。
--中島さんは体力的にも喉的にも絶対にペース配分しないっていうポリシーを持って毎回ライブに臨んでいて、前回の『YES』を引っ提げたツアーでは見えないエネルギーが前に向かっている実感、自分の全部をちゃんと使えた気がすると仰っていましたが、今回はいかがでしたか?
中島美嘉:前回のツアーは“自分の全部”、今回のツアーは“自分の全部”以上をどの公演も出していました。次の日大変みたいな(笑)ことがずっと続いてる感じでしたね。あと前回もそうでしたけど、スタッフやバンドメンバーみんながすごく仲良いんですよ。メンバーはちょこちょこ変わったりするんですけど、それでもすぐに馴染んでくれて仲良くなっていく感じで。そこは助けられましたね。おかげで全体的に納得のいくツアーになりました。
--12月2日にはそのツアーの模様を収録したDVD『MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2009 TRUST OUR VOICE』がリリースされましたが、今作に対する自身の印象や感想を聞かせてください。
中島美嘉:自分のライブを観るのは、まだ緊張しますね。
--こちらには森三中と中島美嘉による伝説のバンド“MICA 3 CHU”のパフォーマンスも収録されています。彼女たちのステージはいかがでした?
中島美嘉:それまで2時間歌って演奏してきた私たちのすべてをぶっ潰すくらい凄かったです(笑)。できれば全部の公演に出て欲しかったぐらいです。
--今後も“MICA 3 CHU”の活動はあるんでしょうか?
中島美嘉:できればやりたいですけどね。でも3人ともすごく忙しい人たちなんで、なかなか時間を取るのが難しくて。
--その“MICA 3 CHU”の活動もそうなんですが、最近の中島美嘉からは“何でもやってやる”感をすごく感じます。
中島美嘉:そうですね(笑)。何も怖くないので。
--それはアルバム『YES』以降の変化のひとつだったりするのかな?
中島美嘉:うん、そこも変わりましたね。曲の好き嫌いが減ってきました。それはトレーニングのおかげじゃないですかね。
--トレーニング?
中島美嘉:ちょっと長い休みをもらって海外に行って、毎日トレーニングだけをする日々っていうのを体験してみようと思って。少し前の話なんですけど、体力作りを兼ねて行ったんですよ。そしたらいろんなことへの自信が付いた状態で日本に帰ってこれたので、何も怖がらないようになったんだと思います。
--また、DVDには、こちらも東京国際フォーラムだけでの披露となった『A MIRACLE FOR YOU』が収録されています。あの曲を歌おうと思った理由などあったら聞かせてもらえますか?
中島美嘉:ファンの間で何故か人気があるんですよ。シングルの曲じゃないんですけど「『A MIRACLE FOR YOU』を歌ってほしい」って言ってくれるファンが多くて。でも今回のツアーではセットリストに入れなかったので「どこかでやれたらいいな」と思って、東京国際フォーラムで歌うことにしたんです。
Interviewer:平賀哲雄
愛の形については何でもアリだと思う
--あの瞬間の中島美嘉を観ていて、自分の気持ちを出してしまうことへの恐れが全くなくなったなと感じました。
中島美嘉:そうですね。以前は感情が前に出れば出るほど歌えなくなってしまったんですけど、今回はトレーニングしたっていうのもあって、感情に声が負けなくなったんですね。だからより感情を前に前に出していけるようになって。
--そんな感動的なツアーを終えた後も『CANDY GIRL』『流れ星』のリリースと精力的な活動が続いてますが、映画「サヨナライツカ」主題歌を担当するというこれまたビッグニュースがありました。このお話を頂いたときはどんな気持ちになりました?
中島美嘉:もう本当に有り難かったです。
--映画をご覧になられてどんな印象や感想を?
中島美嘉:中山美穂さんの演じた沓子 について「すごいな」と思ったのは、大人の遊びみたいなところから始まってどんどん好きになっていく訳じゃないですか。でもそれをしっかり伝えるわけでもなく、いろいろ喚き散らしたりすることもなく、ああいう選択をするのが格好良いなと思って。それはすごいなと思いました。
--中島さんもこれまで様々な形の愛の歌を表現してきましたが、この映画の中でも様々な愛の形が描かれています。で、それぞれの愛の形について中島さんがどんなことを感じたのか覗いたいのですが、まず西島秀俊さんが演じた“好青年”こと豊。彼の生き方や愛の形にはどんな印象を持たれました?
中島美嘉:「勿体ないな」とは思いましたけどね~。あそこまでの大恋愛なんて一生の中でそうそうあるモノじゃないですからね。
--女性からすると最低の男と思われても仕方ない部分もあると思うんですが。
中島美嘉:私は愛の形については、毎回いろんなところで聞かれる度に言ってるんですけど、何でもアリだと思うんです。人を騙す以外は。だから間違いとか「これはないな」っていうのは自分の中であんまりない。そういう意味では、彼は騙していないので、彼なりに頑張ったのかなぁって思う。
--では、そんな豊を支えていく光子(石田ゆり子)にはどんな印象を?
中島美嘉:いや、もう「すごい」としか思いませんでした。「何でそこまで出来るんだろう?」って思いました。本当に愛しているようには見えなかったんですよ、私には。それが彼女の家系に代々伝わる愛し方なのかもしれないんですけど。私的には「悲しいな」って。
--ちなみに中島さんは沓子と光子、どっちの気持ちで映画をご覧になられていました?
中島美嘉:どっちもですね。女性としてはどっちもつらいというか、どっちも悲しいじゃないですか。ただ、光子の心の強さは凄いなと思ったんですけど、あのシーンでちゃんと切ない顔をする沓子も好きです。
--個人的には、あの中山美穂さんの妖艶ぶりには神懸かり的なモノを感じました。原作における沓子が完全に降りてきていたと言っても過言ではないと思うんですが。
中島美嘉:私も凄いなと思いました。女性から見て嫌みが全くないんです。ただエロいだけじゃないから。あれは女の人でも「これだけ綺麗だったら仕方ない」と思っちゃいますよ(笑)。
--そんな三者三様の愛の形が描かれる「サヨナライツカ」ですが、この映画のテーマでもある「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと 愛したことを思い出すヒトにわかれる」。中島さんは自分ではどちらだと思いますか?
中島美嘉:分かんない!考えれば考えるほどどんどん分かんなくなってきてますね。あの、死ぬ前に聞いてください(笑)。
--分かりました(笑)。そんな映画「サヨナライツカ」の最後に響き渡る主題歌『ALWAYS』にまた、豊や沓子の想いが重なって泣けるんですが、自身では今作の仕上がりにどんな印象を持たれていますか?
中島美嘉:私も本当に大好きです。イントロから好き。そういうことって思ってもなかなか自分から言わないタイプなんですけど、この曲は「本当に良い歌がうたえたな」と思って。だからいっぱい聴いてほしいですね。
--かつてのインタビューで中島さんは「私はどちらかと言うと、すごく男性っぽい恋愛をする」と仰っていたんですが、そういう意味では「過ちだとしてかまわないから」「迷わず駆け出して今すぐ会いに行くよ」などのフレーズが出てくる今作は気持ちを入れやすい歌ではありましたか?
中島美嘉:そうですね!
Interviewer:平賀哲雄
人生1回だから、行っちゃった方が良い
--歌入れにはどんな想いやイメージを膨らませながら臨んだの?
中島美嘉:メロディに率直に向き合って歌いました。考えすぎると計算高い歌になっちゃうんですよね。それが私はすごく苦手だし、もう十分曲を覚える為に聴いているから、何も構えずに歌う。その瞬間に“自分が一体何になるのか”をすごく楽しみに最近は歌ってます。
--今回の自分の声にはどんな印象を?
中島美嘉:「良い声出たな」って本当に思いましたよ!
--いつも言わないですよね、そういうこと?
中島美嘉:そうですね(笑)。
--それぐらい気持ち良く曲に声がハマったんだと思うんですが、今作は『ORION』同様、百田留衣さんのペンによるナンバーで。百田さんって中島美嘉の気持ちを引っ張り出すメロディや言葉をよく知ってるなってと感じたんですが、自分ではどう?
中島美嘉:歌ってて本当に気持ち良い。難しくはあるんですけど(笑)。直接お会いしてじっくり会話したことはないんですけど、相性が良いんだろうなとは思いますね。
--ちなみに今作のミュージックビデオはもう撮影されたんでしょうか?
中島美嘉:はい。切なくて美しいっていう感じですかね。
--アートワークを見る限り、とても女性的な、それこそ沓子的な彩りを持った内容になってるのかなと想像したりしてるんですが。
中島美嘉:それがですね、ジャケットやアーティスト写真とは全く違う感じなんですよ(笑)。白!黒!みたいな。すごくシンプルに撮ったんですけど、やってることがゴージャスなので、ミュージックビデオはミュージックビデオでまた「すごく良いなぁ」って思いましたね。
--そんな渾身のニューシングル『ALWAYS』と共に始まっていく2010年はどんな年になればいいなと思っていますか?
中島美嘉:出来るだけ自分磨きの1年にしたい。表に出ていっぱい歌うというよりは、これからもいっぱい歌いたいので、その為に自分を磨く。そして自信を持ってまた表に出て行きたいですね。
--なるほど。ちなみに2009年は自分にとってどんな1年だったの?
中島美嘉:オンオフがハッキリした1年というか、すっごい楽しくてキラキラ輝いていたのがツアーのときで、でもそこで全部抜けたというか。もう疲れ切っちゃって何もしたくないと思う日々がその後は続いた(笑)。毎回ツアーの度にそれはあるんですけど、こんなに引きずることは今までなかった。なので、2010年は自分磨きの1年にしたいなぁって。
--では、最後に『ALWAYS』リリースタイミングということで、世の中の様々な愛に迷ったり立ち向かったりしている人々へ、メッセージをひとつお願いします。
中島美嘉:……人生1回だから、行っちゃった方が良いと思います。
--凄く重い一言、ありがとうございます(笑)!
中島美嘉:(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
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