Special
織田哲郎『CAFE BROKEN HEART』インタビュー
約40年にわたり音楽と対峙してきた天才音楽家の絶望と再生のストーリー。
葛藤の日々をロックンロールに費やした時代~「おどるポンポコリン」「想い出の九十九里浜」の想定外過ぎる大ヒット~改めて歌を届け続けたいという想いを乗せた「いつまでも変わらぬ愛を」~相川七瀬との出逢い~責任に押し潰されそうになりながら半ばアル中状態となっていた日々~スペインでの強盗事件によって失われた歌声~そこから再び音楽を取り戻していく日々。そして今ここに生まれた新作『CAFE BROKEN HEART』や今再び馳せるロックンロールへの想いについて語ってもらった。全音楽ファン必読のドキュメンタリー、ここに公開する。
「このまま音楽辞めようかな」と思った時期も何回かあるんですよ
--織田さんは、音楽プロデューサーであり、シンガーソングライターであり、作曲家であり、あらゆる楽器を演奏するミュージシャンでもあり、約40年間にわたって音楽活動を続けています。これだけ音楽と長く対峙し続けられた要因は何だと思いますか?
織田哲郎:音楽やってるのがいちばん楽しいからでしょうね。他のことは「楽しい」と思ってもだんだんしんどくなるかもしれないですけど、なんだかんだで音楽がやっぱりいちばん楽しいからなぁ。--では、もう音楽やりたくないなと思ったりすることはない?
織田哲郎:そういう瞬間はありますよ。そのときは音楽と離れちゃったりしてるから。--あ、一度休んだりはしているんですね。
織田哲郎:休憩というか、本人としては「このまま音楽辞めようかな」と思った時期も何回かあるんですよ。曲の作り方が分からなくなったりね。「曲ってどうやって作ってたっけな?」みたいな(笑)。そういうことで「休まなきゃ」と思うときもあれば、音楽がイヤになってくるときもあるんですよね。それでも長く続けられたひとつの要因としては、俺の場合は音楽に関するいろんなことが好きで、それを全部仕事にしているからだと思います。端から見ると“音楽をやっている人”だけど、具体的に何をやっている人かよく分からないじゃないですか(笑)?--“音楽をやっている人”とひとえに言っても、いろんなことをやってますからね。
織田哲郎:いろいろと俺がそのときそのときで「楽しい」と思うことをやってるんだけど、これが“ひとつの暖簾だけを守る”ってことをやっていたら厳しかっただろうなと思う。だから何かひとつのことがしんどくなったら、違うものを楽しみにする時期にする。そうすると、それが結果的に他のことに返って来きたりもするから。例えば、自分のアーティスト活動があって、誰かのプロデュースがあったりする。自分の曲を物凄く真剣に掘り下げていく中で疲れたときに、誰かが「バカバカしいぐらいポップな曲がほしい」と言ってくれると「良いよ!」ってなって、そこで何かが発散できたり、正常化できたりするんですよね。あとは、楽器をイジっているのが好きだから、ピアノの練習してたり、ギターの練習していたりする中で新たな曲が生まれることもあるし、そうやって自分の中で結果的にローテーションできている。それが良かったんじゃないですかね。--Aに息詰まったら、BやCやDに取り掛かって、すべて音楽ではあるんだけれども、それがリフレッシュになっていたりもするという。
織田哲郎:リフレッシュになってるんでしょうね。ただ、それはすべて音楽の中だから結果的にそれぞれに返ってくる。「今度はこれをこっちに生かす」みたいなことが生まれてくるんですよね。--先程「何をやっている人かよく分からないじゃないですか?」と仰っていましたが、ご自身では織田哲郎をどんなアーティストだと思いますか?
織田哲郎:織田哲郎というシンガーがどういうアーティストか。ということで言うと、無駄に生真面目なところがありますね。でも本来エンターテインメント性と両立させないといけないわけです。で、例えば「君がこれを歌いたくても、今の時代にそれをやるんだったらこういう風にしないとね」という話は人には言えるんですよ。「スーパーマーケットになっちゃダメだ。きちんと『良い靴を売ってます』という靴屋になろう。もしくは草履屋でもいい。そこで草履屋としてのアイデンティティが出来たら君はやっていけるよ。要するに君はどんな暖簾を出して、何屋としてやっていくのかが大事なんだ」みたいな話は人には言えるんです。でも自分がそれを圧倒的に出来ないタチなんで。自分の曲を作るときもプロデューサーとしての織田哲郎はいるんですよ? でも「だって、俺はこれを歌いたいんだもん!」と言うシンガーの織田哲郎にプロデューサーがサジ投げているところがあるので(笑)。--「もう何を言ってもしょうがない」と(笑)。
織田哲郎:例えば、プロデューサーに「エレキギターの音がキライなの? 今まで“エレキギターを抱えてる織田哲郎が良い”って言ってくれた人のこと、どう思ってんだよ?」と言われても、シンガーの織田哲郎が「俺は今、エレキギター弾きたくないんだもん!」ってなるから「分かったよ。じゃあ、アコギだけでやれば!」とサジを投げざるを得ない、という風に。--プロデューサーが折れるんですね。
織田哲郎:なので、無駄に生真面目。そのときそのとき「こうしたい」と思ったことに忠実だし、「今やりたくない!」と思ったら辞めちゃうし、そういう意味では“仕事として出来ない”というのかな。だからね、これが本当に困ったもんで、若いときはそれにすごく悩んでいたんですけど、結果的に見ると自分なりの在り方として「これもこれでナシじゃないよね?」って今は思います。--80年代後半~90年代、音楽プロデューサーとして織田さんを知った人も世間的には多いと思うんですけど、元々はバンドマンから始まってますよね。最初の頃の織田哲郎はどんなミュージシャンだったんですか?
織田哲郎:ライブばっかりやってましたね。ひたすらライブをやる中で客を増やしていって、シングルヒットもない中で中野サンプラザぐらいは埋められるようになって。でもそのときに全然やることを変えちゃったんですよね。あそこで本当にね……あーあ(笑)。--分かりやすいため息が出てきましたが(笑)、そこでどう変えちゃったんですか?
織田哲郎:イケイケなロックンロールが多かったんですよ。非常に葛藤の多い10代、20代だったんで……いろんな葛藤からの現実逃避。それにはロックンロールが最高なんですね。だからロックンロール的要素がある曲ばっかりやっていて。でもその頃からちょくちょく人のプロデュースだったり、作曲だったりもやっていたんです。当時はもう自分の事務所を構えていたので、誰も給料くれないんですよ。- そしたら「おどるポンポコリン」が訳の分からない売れ方をした
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LIVE情報
織田哲郎
9月9日(土)久留米市田主丸複合文化施設 そよ風ホール
『織田哲郎アコースティックライブ in そよ風ホール』
9月24日(日)調布グリーンホール(大ホール)
『織田哲郎コンサート in 調布』
ROLL-B DINOSAUR
8月19日(土)横浜 BAY HALL
『YOKOHAMA SUMMER ROCK FES.』
8月26日(土)川崎 CLUB CITTA’
『CHAIN THE ROCK FESTIVAL 2017』
※すべてチケット発売中。詳しくはHPをご覧ください。
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:Jumpei Yamada
CAFE BROKEN HEART
2017/07/05 RELEASE
KICM-1768 ¥ 1,324(税込)
Disc01
- 01.CAFE BROKEN HEART
- 02.八月の蒼い影 2017
- 03.CAFE BROKEN HEART [off vocal ver.]
- 04.八月の蒼い影 2017 [off vocal ver.]
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