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Cornelius『Mellow Waves』インタビュー 「今回は匂いとか、クセとかがある感じっていうのは意識しました」



 小山田圭吾によるソロ・プロジェクト、コーネリアスの新作アルバム『Mellow Waves』が6月28日にリリースされる。近年はMETAFIVEの一員としての活動に加え、『攻殻機動隊』シリーズのサウンドトラックなど様々なプロジェクトで活躍していた彼だが、自身の名義でのスタジオ・アルバムは2006年の『SENSUOS』以来11年ぶり。まさに待望の新作となった。そして、リリースそのものと同様に、その素晴らしい内容も驚くべきもの。現代的なギター・ロックに始まり、ミニマル・ミュージックやブラジル音楽といった、これまでのコーネリアス・サウンドの特徴も残しつつ、これまで以上にエモーショナルなムードも纏った、新境地の作品となった。その制作背景を知るべく、コーネリアス本人に話を聞いた。

なんかうっかりしてると経つなあ、みたいな(笑)

――私たちはBillboard JAPANチャートというのを毎週発表していまして、CDの売上に加えて、ダウンロード、ストリーミング、Youtube等の国内動画再生回数、あとTwitterやルックアップ、ラジオのポイントを合算して、一つのチャートとして発表するということをやっています。

小山田:Twitterも入ってるんですね。

――そうですね。オープンな掲示板でファンの方が投票する感覚で呟くという。

小山田:リクエスト的なことだよね。

――まさにそうですね。昔の『ザ・ベストテン』のリクエスト・ハガキのような。

小山田:なるほどね。

――小山田さんは普段チャートはご覧になりますか?

小山田:全く見ないですね。子供の頃は大好きで、それこそ『ザ・ベストテン』とかは毎週観てたけど、今は興味なくなっちゃったね。リスナーも細分化してるし。

――私達のチャートも、リスナーの聴き方からして細分化している中で、一つのチャートとして見せることが出来るのか、という命題を持ちながらやっています。普段、音楽を聴く時は、どうやって聴くことが多いですか?

小山田:基本、Spotifyですね。

――使ってみての感想は?

小山田:めっちゃ便利。あとインターフェイスが使いやすいね。プレイリストを作るのも検索するのも。反応も良いし。最近は、どんどんプレイリストに入れてループして、そこから連鎖で探すことも多いですね。昔のから今のから、本当にランダムに聴いて、その中から気に入ったのが、さらに別のプレイリストに入る。いくつかのプレイリストがあって、とりあえず気になったのを入れるところと、夜っぽいのと昼っぽいの。で、自分の中のヘビロテが決まっていく、という感じです。

――その前はどうやって聴くことが多かったですか?

小山田:CD盤で聴いてたのは90年代後半くらいまでかな。そこからはデータに移行して。アナログは今でもたまに聴くけどね。

――今はリリースの方法も、ストリーミングからアナログからカセット・テープから、色々とあると思うのですが、小山田さんは制作の段階でリリースの形態を意識することはありますか?今回のアルバム『Mellow Waves』も、A面とB面で区切れて、アナログ盤や46分カセット・テープにちょうど入る長さですよね。

小山田:うん。割とここ最近そんな気分で。90年代のCD中心の頃は、たくさん曲を入れたり、隠しトラックを入れたり、曲も全部シームレスで繋がってたりして、CDっぽい作りでアルバムも作ってたんだけど、ここ数年というか、30歳を超えた辺りから“46分”っていうのは何となく自分の中にありますね。アナログ時代からの刷り込みもあって、集中するのにちょうど良い時間というか。あと、曲があんまりシームレスにつながってると、データに変換した時に聴きづらいなとか。

――リスナーもプレイリストで聴くかも知れないですしね。

小山田:そうそう。自分もそういう聴き方をするしね。46分以内で、曲が繋がってなくて、世界観があって、A面/B面の区切りがあって…っていうのは、曲順を考える時に意識するかも知れないですね。

――最近は、アルバムのフォーマットや流れにこだわって作品を作るアーティストもいる一方、プレイリストで聴かれることを前提に20曲くらいアルバムに詰め込むアーティストもいて二極化している印象もあります。ラッパーのドレイクのように最初から“プレイリスト”と打ち出す人もいたり。そういう動きについては、どう思いますか?

小山田:ありかもね。逆にCDやレコードの頃は絶対出来なかったけど、一曲120分とか、5時間とか24時間の曲とかも作れるし。色んなメディアによって発表の仕方もあって、それによって表現の仕方も変わるのかなと思います。

――そんな中、さっきも言ったように『Mellow Waves』は、アルバム全体の流れから、アルバムという括りやアナログ盤といった形式が意識されていて印象的でした。ここ数年のインタビューの中で、アルバムに着手しているということは何度か仰っていたと思うのですが、実際に作業に取り掛かったのはいつ頃なのでしょうか?

小山田:ずっと断片的にはやっていたんです。収録曲で一番古いのが「Mellow Yellow Feel」で、ファイルには“2012年”って書いてありましたけど、実際には、その前から時間を見つけて作業してましたね。その間に(『攻殻機動隊』、METAFIVEなど)他のプロジェクトに集中する時期があって、また戻って、ということを繰り返しているうちに、曲が揃ってきて。それらをまとめに入ったのが、去年の年末ですね。


▲METAFIVE - Don’t Move -Studio Live Version-

――『SENSUOUS』から実に11年ぶりのスタジオ・アルバムということになりました。

小山田:いや、なんかうっかりしてると経つなあ、みたいな(笑)。

――その11年の間に、ストリーミングの定着やアナログの再ブームなどもあり、音楽シーンもだいぶ変わりましたね。

小山田:そう言えば、一時期カセットで音楽を聴いてたこともありました。免許を取って、車を買ったんだけど、納品までの代車として借りた車がカセットしか聴けなくて(笑)。それで、昔聴いていたカセットとか、中学の頃に友だちとやってたバンドのライブ音源とか、そういうのを聴いて、3か月くらいのカセット大ブームがありました。今も地味に継続してます。

――へぇ~!(笑)。今後、カセットで何か出すというのも面白いかも知れないですね。

小山田:うん。カセット出したいなぁ。

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    そういう要素が欲しいなと思って
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Cornelius「Mellow Waves」

Mellow Waves

2017/06/28 RELEASE
WPCL-12660 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.あなたがいるなら
  2. 02.いつか / どこか
  3. 03.未来の人へ
  4. 04.Surfing on Mind Wave pt 2
  5. 05.夢の中で
  6. 06.Helix / Spiral
  7. 07.Mellow Yellow Feel
  8. 08.The Spell of a Vanishing Loveliness
  9. 09.The Rain Song
  10. 10.Crepuscule

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