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泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー



泉谷しげる 『泉谷しげるの新世界―アートオブライブ!』 インタビュー

パンク親父が毒を吐きに吐きまくる2万字インタビュー!

 泉谷しげる、69歳にしてデビュー45周年。自身発起人の【阿蘇ロックフェスティバル2017】開催に『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』(CD9枚と完全ニューアルバム1枚、140ページもの豪華カラーアートブックに全曲の歌詞集、その楽曲セレクトや執筆、ジャケット絵画など何から何まで泉谷しげる完全プロデュース)のリリースと、精力的かつ自由に暴れ回る最強のパンク親父が毒を吐きに吐きまくる2万字インタビュー! めちゃくちゃ刺激的です。面白いです。なので、最後まで読んで、大いにその毒に侵されて下さい。

「芸術は“無理”でしょ? 度を越えてやるところがみんな見たい訳で」

--泉谷しげる、45周年。このタイミングで『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』がリリースされました。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:豪華なベスト盤と言ってしまえばベスト盤だし、集大成と言ってしまえばそれまでなのかもしんないけど、まぁ平たく言やぁ……ベスト盤なんぞアーティストのお墓みたいなもんだからね。新しいアルバムでも付けない限りね、今感出ませんよ。アーティストがベスト盤に頼るときというのは大体危ないですね。「もう曲作れねぇんだな、こいつ」みたいな。

--創作意欲が失われたか、もしくは財政的な問題か(笑)。

泉谷しげる:はっきり言えばそうだね! 財政的な問題か創作欠如。

--でも泉谷さんは完全ニューアルバム『舞い降りる鷹のように』も制作されていますから、創作欠如ではないですよね?

泉谷しげる:もちろんニューアルバムなんてそう簡単に作れるもんじゃないんですけど、意地ですよね。やっぱりただの集大成にしちゃったらそれはお墓なんで。葬儀屋みたいに「お別れが温かい」とか言う訳にもいかないからね。さよならが温かい? ふざけんな!っていう。そういう訳にもいかないんで、やっぱり現役感を出したい。ということですよね。

--現役感、出しすぎですよね(笑)。この作品を丸々完成させるのにどれだけの労力がかかってるんだっていう話じゃないですか。

泉谷しげる:1年ぐらいかかりましたね。デザイナーと相談しながら「ああしろ、こうしろ、ああしろ、こうしろ!」とやり取りしつつ、原稿も全部自分で書いて。人に頼むと大体お為ごかしでしか書かねぇしな。ただ「泉谷しげるは素晴らしい」そんなもん誰が読みてぇんだ? それだとつまんないんで自分で「ああでもない、こうでもない」って書いたほうがいいし。結局デザインも「俺が描いたようになんで出来ねぇんだ!」と怒っているうちに「俺が描いたように出来ないんなら、俺が作ればいいのか」って(笑)。そうやって怒った分だけ自分でやらなきゃいけないハメになっちゃったから、大変と言えば大変でしたね。ジャケットも全部描かなきゃいけなかったし。

--その結果、泉谷しげる完全プロデュースというか完全制作になった訳ですね。

泉谷しげる:結局、人に頼むということは、人に気を遣わなきゃいけなくなるじゃないですか。面倒くさいですよね。それで自分を曝け出せないんだったら、こんなもん作んないほうがいいんで。

--「自分を曝け出せないんだったら、そんなもん意味がねぇ」というのは、泉谷しげるの一貫したイメージとして強くあります。

泉谷しげる:実際に意味ねぇだろと思う。でも自分中心というよりは……さっき言ったように、才能の枯渇。これは年齢と共にそうなっちゃうのは分かるんだけど、生活習慣病なんじゃねぇかなと思うんだよ。結局はアーティストも怠けてんじゃねぇかと思うんだよな。俺のテーマは常にプロ意識だから、アーティストとして、或いは表現者として表に出ちゃった以上はどんな見方をされようが気にしないで、プロに徹する。プロへの追求ですよね。例えば年齢で体力が衰えてきたとしよう。それで声が出なくなったとしよう。そしたらタバコをやめるとか、密かに鍛えるとか……鍛えてる姿は見せたくないけど! こういうことを言うのもイヤだけど! すげぇイヤ!

--ハチャメチャでぶっきら棒に生きているイメージですからね(笑)。

泉谷しげる:でもしょうがないよ! どこかが破損してるんだから作戦を立てないと。「プロとしてどうなのか」という意思をちゃんと持たないと。だから酒もタバコも宴会もなるべくやめて……やっぱりイヤだな、こんな話(笑)。

--酒もタバコも宴会も全くやめなかったのはいつ頃ですか?

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:やっぱり30代、40代ですよね。酒は元々あんまり呑めなかったんだけど、タバコは凄い吸ってましたね。でも今はもう気持ち悪い。憎悪ですね。吸ってる奴に対しては憎悪ですよ。「殺すぞ、コノヤロウ!」みたいな感じですよ。

--喫煙家に牙を向く泉谷しげるは脅威ですよね。「今まで喫煙家の象徴みたいなイメージだったのに!」っていう。

泉谷しげる:でもプロ意識を取るんだったらね、そんなもん裏切るぐらいのことしないとダメよ。そいつらの為に生きてる訳じゃないから。ファンの期待には応えますよ? その為には無理が出来るような体作りもしなきゃいけない。無理が出来ないとやっていけないんで。ファンの人は「無理しないで」と気遣ってくれるけど、「じゃあ、無理しなくてもいいの? じゃあ、休んでいいんだな?」っていう話になっちゃうじゃん。“無理”をおまえらは見てるくせにさ。

--そうですね。“無理”してる泉谷しげるが好きだし、どのアーティストも“無理”を求められているところはあると思います。

泉谷しげる:芸術は“無理”でしょ? 度を越えてやるところがみんな見たい訳で、そうじゃなかったら世界競技なんて有り得ない。体に悪いことばっかりやってるじゃない?

--“無理”の境地ですよね(笑)。

泉谷しげる:“無理”の境地じゃん、あんなの! 誰がいちばん無理できたかの結果を見てるだけでしょ? それで「よくやった」とか「感動した」とか……よく考えてみたら「ふざけんな!」って話だよね?

--「おまえら見てただけじゃねぇか!」っていう(笑)。

泉谷しげる:俺たちもそういうことなんですよ。だから同世代と話しているとイライラするんだよ。「疲れたらどうするんだ?」とか「そんなことやってて疲れないか?」とか……こっちからしたら「バカ言ってんじゃないよ、おまえ」ですよ。“どれだけ疲れられるか”でしょ。だから「俺はここまでは疲れられるぞ!」っていうところまで行かないと。どうせ外出りゃ疲れんだからさ。

--どうせ疲れるなら行けるところまで行こうと。

泉谷しげる:それが同世代の奴らは分かんないからさ、話してもあんまり楽しくないね。老けたことなんか気にもしてねぇクセにさ、まぁ「衰えた」と思い込んじゃってんじゃないの。そりゃ衰えますよ? 長年使ってきたんだから。だけど、他の細胞でカバーするとか、他の鍛え方をしないと……それで他の才能が出てくるかもしれないじゃないですか。だから「使ってない筋肉を使ったらどうだ?」ってことなんですよ。

--実際に泉谷さんは音楽以外にも画家や俳優、映画監督、バラエティなど表現は多岐にわたっています。

泉谷しげる:あれは全部違う筋肉使ってんですよ。なんて言ったらいいのかな……ま、得意なことばっかりやってたらダメよ。不得意なこともやらないと違う筋肉が分からないし、そういう好奇心がすべての若さを貫けるんじゃないかな。やっぱり落ち着いちゃったり、丸くなったりするっていうことは……負けですね。本来、人間なんて丸くなれる訳がないんだから。そもそも「丸くなったね」という言葉がおかしいかもな。そんなもん優しくなっただけで、人間は丸くならない。性格が広がっただけで、尖ってるところは尖りっぱなしなんだよ。だから何もしないジジイも何かしてるジジイも結構揉めるじゃん? つまらねぇ頑固さを押し付けてきやがってさ、面倒くせぇじゃん。要するに「俺をちゃんと扱え」ってことを言ってんだろ? でも老けて枯れていったら粗末に扱われるもんなんだよ。粗末に扱われたくないんだったらね、ちょっとは無理してみろ!

--泉谷さんの場合は、自分で自分をある意味粗末に扱うというか、ぶっ倒れるまで駆使し続けるじゃないですか。年齢と共に無理の度合いが高まっている気がします。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:やらなくていい腕立て伏せやったり、倒れるまでジャンプし続たり、客席突っ込んでいったり。でもあれは1回ノリでやったらさ、別に毎回やりたい訳じゃなかったんだけどさ、このあいだの阿蘇ロック(泉谷しげる発起人の熊本野外フェス【阿蘇ロックフェスティバル2017】)もそうなんだけど、ステージ高いし、降りるところもちょっと怖いんで「今回はそういうこと一切やんないよ」って言ったら、「なんで?」って顔されて。スタッフ全員がだよ? 「なんでしないの? やってあたりまえだろ」みたいな顔してるんだよ。それで結局やったんだけど……ま、やっぱり自分もやりたいんだろうね。

--「おまえら、やらせんじゃねぇ」と言いながらやりたい(笑)。

泉谷しげる:おそらくスタッフに言わせたいんだろうね。「やっぱりやってよ」って。それがプロ意識よ。それで期待以上に応えるのがプロ。やっぱりイヤイヤやっても出来ちゃうパワーがプロなのよ。イヤイヤでいいんですよ。イヤイヤのほうが力は出るんで。「面倒くせぇなぁ!」って言いながら出来ちゃってるほうが格好良いわけよ。だからこのあいだの阿蘇ロックもさ「なんで年寄りがいちばん最後にやんなきゃいけねぇんだよ?」って文句言って。「もう客は帰り始めてるしよ、山だから夕方になると冷えてくるしよ、もう終わろうよ!」って。

--ライブせずに帰ろうと(笑)。

泉谷しげる:「ロックフェスっていうのは若い奴で終わるんだよ、普通。なんで69にもなってさ、トリをやんなきゃいけねぇんだよ。ロックフェスらしくねぇだろ!」って散々文句言って。それで「今日はもうさっさと終わりたいから、7曲ノンストップでやる!」っ言ってやったら、これが大変でさ。やんなきゃよかったって思ったね。もう死にそうになったよ! おそらく自分の体力自慢をしたかったんだろうな。その結果、最後客席に降りていってさ「もう疲れた。早く終わろう。おまえら、帰れ!」って(笑)。もうそれぐらいバテましたね。で、若いスタッフ連中が騎馬戦の馬を作ってさ「僕たちが支えますから!」って言ってたんだけど、最近の若い奴らは騎馬戦なんかやってないから簡単に崩れやがってさ!「格好悪ぃな! 出来ねぇんじゃねーかよ!」って怒って。上に乗ってる俺がいちばん危ないんだよ。それで靴も脱げるしさ、いちばん格好付けなきゃいけないときに「靴! 靴!」って靴探してる様子がヴィジョンに映ってんだよ! 大マヌケでした。だけど、最後に笑えたのは良かったなぁって。

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