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少女から大人の女性へ…ミシェル・ブランチ 来日記念特集&最新インタビュー

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 少女から大人の女性へ。そんなキャッチフレーズが似合う女性アーティストが誰かと考えると、真っ先に思い浮かぶのがミシェル・ブランチだ。10代後半でブレイクした彼女も、今や30代半ばとなり、先頃年齢に似合った新作アルバム『Hopeless Romantic』を発表したばかり。そして間もなく待望の来日公演も行われる。彼女がどのようにして大人のシンガー・ソングライターへと成長したのか。その軌跡を追ってみよう。
 2ページ目では、来日を間近に控えるミシェルの最新インタビューをお届け。新作制作の裏側や自身の恋愛観、そして来日公演への想いを語ってくれた。

CD
▲『ザ・スピリット・
ルーム』

 ミシェル・ブランチは、1983年生まれ。アリゾナ州フラッグスタッフ出身。8歳の頃にセドナに引っ越し、その頃からボイストレーニングを受ける。14歳の誕生日にギターをプレゼントされて弾き始め、高校生になるとバンド活動を精力的に行った。高校を中退してさらに音楽に熱を入れるようになった頃の2000年、インディーズでアルバム『Broken Bracelet』をリリース。まだ幼さが残るというものの、自作曲が充実しているだけでなく、リッキー・リー・ジョーンズの「Stewart's Coat」をカヴァーするなどアーティスティックな一面が垣間見られる一枚だった。

 その後、彼女はマドンナが主宰するレーベルのマーヴェリックと契約。早くも2001年にはメジャー・デビュー・アルバム『The Spirit Room』を発表する。本作は、メリッサ・エスリッジやスティーヴィー・ニックスとの仕事で知られるギタリスト兼プロデューサーのジョン・シャンクスが全面的にサポート。まだ若いミシェルの才能を最大限に生かすことに成功した。結果的には先行シングルの「Everywhere」がビルボードのHot 100で12位、カットされた「All You Wanted」が同じくHot 100で6位というスマッシュヒットを記録。アルバムも50万枚を超えるロングセラーとなり、フレッシュな才能として脚光を浴びることとなった。



▲ 「Everywhere」MV


 さらに大きなチャンスが巡ってきたのが、2002年のサンタナからのオファーだった。彼のアルバム『Shaman』の先行シングル「The Game Of Love」がビルボードのHot 100で5位という大ヒットを記録。おまけに、グラミー賞の最優秀ポップ・コラボレーション賞ヴォーカル部門を獲得する。この曲でミシェルのことを知ったというファンもかなり多いはずだ。



▲ 「The Game Of Love ft. Michelle Branch」Santana


CD
▲『ホテル・ペイパー』

 勢いに乗った彼女は、2003年に2作目のアルバム『Hotel Paper』を発表。こちらはジョン・シャンクスに加え、ケリー・クラークソンやシャキーラなどを手がけたジョシュ・エイブラハムなどもサポート。シングル・カットされた「Are You Happy Now?」や「Breathe」などがヒットし、アルバム自体もビルボードのアルバム・チャートでは最高2位を記録するベストセラーとなった。この作品でミシェルはトップスターの仲間入りを果たしたといえるだろう。



▲ 「Are You Happy Now? 」MV


CD
▲『スタンド・スティル~
ルック・プリティ』

 しかし、彼女はそこにとどまる気はなかった。2作目発表後にベーシストのテディ・ランドーと結婚し出産も経験した彼女は、2005年になるとバック・コーラスを担当していたジェシカ・ハープと組んで、カントリー・デュオのザ・レッカーズを結成。翌2006年にアルバム『Stand Still, Look Pretty』でデビューを果たした。本作はいわゆるカントリー・ロック・サウンドで、これまでのミシェルとは毛色の違う作品だったが、ビルボードのアルバム・チャートで14位、トップ・カントリー・アルバムでも4位という成績を収めた。2007年にはライヴ・アルバム『Way Back Home: Live At New York City』も発表したが、その後はそれぞれが再びソロへと戻ることになる。

 ソロに戻ったとはいえ、ミシェルの活動はスロー・ペースとなった。基本的には他のアーティストとのコラボレーションや楽曲提供などが増え、自身が前面に立つことが少なくなった。何度かアルバム・リリースのアナウンスはされたが、結局次作は2010年まで待つことになり、しかもフル・アルバムではなく6曲入りのEP『Everything Comes And Goes』で、クオリティは高かったが少し地味なカントリー・ポップ作品だった。そして、コンサートのゲストなどに出演することはあったが、活動自体が大幅に縮小していった。

 そんな彼女の周辺が再び騒がしくなり始めたのが、2016年末のこと。アルバム発表の予定が告げられたのだ。そして、年をまたいだ2017年4月に、ソロとしては13年ぶりとなるアルバム『Hopeless Romantic』が届けられる。この作品の裏には、プライベートでの変化による影響も大きかった。ミシェルはテディ・ランドーと2015年に離婚していたが、その後ザ・ブラック・キーズのパトリック・カーニーと知り合い意気投合。新作を作るにあたって彼女はパトリックの協力を得て制作をスタートする。



▲ 「Hopeless Romantic」MV


 これまでは、多少のコラボレーションはあったとはいえ、基本的に自身で詞曲を作ってきたミシェルだが、この新作ではパトリックとがっつりと組んで共作。失恋をテーマにした歌が多いということもあり、比較的ダークなトーンの楽曲が増えた。しかし、内面を映し出したかのような表現力豊かなヴォーカルは、以前よりもパワーアップ。大人の女性が似合うロック・アルバムに仕上がっている。しかも、この制作を通じてミシェルとパトリックは公私に渡るパートナーとなったそうだ。

 一時期はブランクといわれても仕方がない時期があったが、新作を発表したばかりの今は充実しているはず。第2期ミシェル・ブランチのスタートといってもいいタイミングだ。それだけに、今回の来日公演にも期待が高まる。折しも、パトリック・カーニーがサポートとして参加することも追加で発表された。新たなる傑作『Hopeless Romantic』が、どのようにステージで再現されるのか。大いに期待したいと思う。



▲ 「Best You Ever」 (Live On Seth Meyers)



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ライブは間違いなくラウドロック・ショーになるわ

―14年ぶりの新作リリース、おめでとうございます!ニュー・アルバム 『Hopeless Romantic』はとてもブルージーでエッジが効いたラブソング・コレクションに仕上がっていますが、本作のコンセプトを教えてください。

ミシェル・ブランチ:実は『Hopeless Romantic』にコンセプトはないの。私の人生で起こった出来事について書いた曲が溜まっていて、それらが自然とアルバムの方向性を決めていった感じなの。

―本作の1曲目「Best You Ever」は“Dearest lover, read this letter(親愛なるあなたへ、この手紙を読んでください)”という歌詞からスタートしますが、このアルバムはこれまであなたが愛した人や、現在の恋人に宛てたラブレターなのでしょうか?

ミシェル:このアルバムは11年寄り添ったパートナーと別れた後に作り始めたから、みんなも想像できると思うけど、解決するべきことや曲にするべきことがいっぱいあったの。離婚してから初めて、また誰かと付き合うことにもなったし、このアルバムを制作中に、プロデューサーであるパトリック・カーニーと恋に落ちたわ。このアルバムは愛の終わりを迎え、再び愛を見つけることを表した作品なの。

―パトリックの影響はこの作品から大いに感じることが出来ますが、優れたミュージシャン同士ということもあり、彼とすぐに打ち解けることができたのでしょうか?

ミシェル:音楽のテイストもキャリアも似ていたから、私たちはすぐに打ち解けたわ。彼は私が再び自信を取り戻すのに本当に手助けになってくれて。彼はいつも私のアイデアを引き出してそれをシェアするよう後押しをしてくれるのよ。

―現在のパートナーであるパトリックに失恋や恋に落ちた時の曲を聴かせた時、彼はどんな反応は見せましたか?

ミシェル:制作当初、私たちは恋仲ではなかったのよ。「Living A Lie」や「You’re Good」、「Last Night」の曲以外の曲はほとんど完成していたの。

―この作品から、あなたが恋をしている時、失恋をしている時、相手をすごく嫌っている時など様々な表情が伺えます。ミシェルにとって今作の中でどの曲が最もパーソナルな曲でしょうか?

ミシェル:一番パーソナルな曲は「City」ね。今では元夫となった彼と別居を望んでいると気がついた時に書いた曲なの。時々曲を書いていると、自分でも気づいていなかった意識に気づくことがあるのよ。この曲を書いて、今の生活に区切りをつけなければって気づいたわ。

―「City」を聴いていると、あなたが何かに踏ん切りをつけるような、そういった決意を感じました。この曲でアルバムを終えることに特別な理由はありますか? ちなみに、バックコーラスで美しい歌声を披露している男性は誰なのでしょうか?

ミシェル:「City」は私がこのアルバムのために書いた最初の曲でもある。この曲から変化を起こそうって後押しをもらったわ。この曲によって私の中で区切りをつけることが出来たから、このアルバムもこの曲で終えるのが一番ふさわしいと思ったのよ。私の友人でアトラス・ジーニアスのヴォーカルも務めるキース・ジェフリーがコーラス参加しているの。彼の歌声は大好きよ。

―ウディ・アレン監督の言葉に「ハートはハートが望むものを望むんだ。そこにロジックなどない。誰かと出会って恋に落ちる、それだけだ。(The heart wants what it wants. There’s no logic to these things. You meet someone and you fall in love and that’s that.)」なんて格言があります。恋に落ちるのは簡単ですが、どうして恋はこんなにも複雑なものだとミシェルは思いますか?

ミシェル:誰もがこの質問に対する答えを持ってないんじゃないかしら?もしかしたら、人は成長するにつれて内面も変わっていくから?私たちは誰しも最初からこうと決められた“モノ”じゃない。常に進化しているわ。だから、誰かに対して持っていたある感情も、その内変化してしまうんじゃない? うーん、分からないわ。

―今後、パトリックと制作した新しい作品をリリースする予定はありますか?

ミシェル:ええ!ナッシュビルの自宅にスタジオが併設されていて、いつもそこで音楽を作っているわ。既に次の作品に向けて話を進めているし、アイデアもいくつか書き溜めているところなの。

―ジャーニーの歌にも「歌手との恋は上手くいかない」とか「ツアーは家族を作る場所ではない」とありますが、ミュージシャンと恋愛関係を持続させることは難しいと思いますか?

ミシェル:もし主人がツアーに出ている間じゅう、私は家にこもって家事や子供の面倒を見る主婦なのであれば、話は別だろうけど、私はそういう風に思ったことはないわ。元夫は私のベースプレイヤーだったから、一緒にツアーを回ることができて幸せだったわ。自分もミュージシャンだから、ミュージシャンの生活をお互いに理解できると思うの。

―前作のソロ・アルバムから14年もかかった理由にレーベルとのトラブルが関係していると報道されています。皮肉にも、それらの問題が無ければ、このアルバムも生まれていなかったことになるのですが、今となってはそのトラブルがあってよかったと感じていますか?

ミシェル:すごく感謝しているわ。何事も理由があって起こるのだと私は心の底から信じている。このアルバムを誇りに思うし、今の私にも満足しているわ。

―ただ音楽を作りたいだけなのに、レーベルから断られ続け、まともに音楽活動ができない時期はかなりストレスが溜まっていたはずですが、レーベルに対するリベンジソングを収録しようと思いませんでしたか?

ミシェル:はぁ、あれは本当にストレスだった!ただ自分というアイデンティティーを保つことに疲れていたのだと思うわ。長い間、一種のドラマに巻き込まれていることにうんざりしていたのよ。もっと前向きになりたかった。そう言われてみると、無意識にそういう感情が曲に表れていると思うわ。「Best You Ever」は特にそうね。

―最近はどんな音楽を聴いていますか? また、このアルバムの制作期間に聴いていた音楽も教えてください。

ミシェル:このアルバムを作っている時は、女性がフロントマンのバンドをかなり聴いていたわ。ビーチ・ハウスやハイム、ジェニー・ルイス、スカイ・フェレイラとかザ・キルズ、ヤー・ヤー・ヤーズやフリートウッド・マックらがそうよ。あとはスプーンやヴァンパイア・ウィークエンド、テーム・インパラ、ザ・ナショナルなんかも、よく聴いていたわね。最近はヴェルヴェット・アンダーグラウンドにすごくハマっている。彼らの有名な曲を何曲か知っているくらいで、昔はなぜか彼らの音楽を聴かずに育った。パトリックが彼らの曲を聴かせてくれてから、もうたまらなく好きになった。ティーンネイジャーが初めてバンドに恋に落ちた感覚ね。

―来日公演までもう少しです! ビルボードライブでのライブは今回で2度目になりますが、今回の公演ではどのようなショーを見せてくれますか? パトリックもドラマーとして参加しますが、ザ・ブラック・キーズのカバーや、「The Game Of Love」が聴けるチャンスはありますか?

ミシェル:「The Game Of Love」は披露するけど、ザ・ブラック・キーズのカバーはしないわ。プレイしたい自分の曲がたくさんあるから、公演時間内にカバーを歌う余裕がないのよ。ライブは間違いなくラウドロック・ショーになるわ。普段のショーは薄汚いロック・クラブで見るようなショーなの。前回のビルボードライブ公演では、観客の応援にすごく感動したし、とっても楽しかった。アコースティック・ギターだったから、歌詞の世界が伝わりやすかったし、親密な雰囲気を作ることもできたわ。フルバンドでの公演を1日に2回もしたことがないから、バンドに合わせて歌ったせいで、声が枯れちゃうことがないよう、ただ祈っているわ。楽しい時間になることは間違いないわね。


―日本のファンも久しぶりのアルバムを引っ提げたライブを楽しみにしています。彼らにメッセージをお願いします。

ミシェル:日本は大好きな国よ。人も文化も食事も素晴らしくて、日本の全てが大好き。早くみんなに会いたいわ。

―ありがとうございます。最後にこの質問をさせてください。今幸せですか?(Are you happy now?)

ミシェル:ものすごく幸せよ:)

ミシェル・ブランチ「ホープレス・ロマンティック」

ホープレス・ロマンティック

2017/04/07 RELEASE
UCCV-1161 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ベスト・ユー・エヴァー
  2. 02.ユーアー・グッド
  3. 03.フォルト・ライン
  4. 04.ハートブレイク・ナウ
  5. 05.ホープレス・ロマンティック
  6. 06.リヴィング・ア・ライ
  7. 07.ノック・ユアセルフ・アウト
  8. 08.テンポラリー・フィーリング
  9. 09.キャリー・ミー・ホーム
  10. 10.ノット・ア・ラヴ・ソング
  11. 11.ラスト・ナイト
  12. 12.バッド・サイド
  13. 13.シャドウ
  14. 14.シティ
  15. 15.ノック・ユアセルフ・アウト ~アコースティック・ヴァージョン (日本盤ボーナス・トラック)

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