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山崎ゆかり(空気公団)×曽我部恵一 対談インタビュー

 今年、結成20周年を迎えた音楽ユニット、空気公団。4月には周年イヤーを彩るベスト盤『Anthology Vol.0』をリリースした彼らが、6月に東阪ビルボードライブにて、曽我部恵一との共演ライブを繰り広げる。活動初期から互いにシンパシーを感じ、交流を深めてきたという二者の共演。その公演を目前に、空気公団の山崎ゆかりと曽我部恵一の対談インタビューをお届けする。まずは、両者の交友がいつ頃から始まったのかから話を聞いてみた。

空気公団に「ライブは絶対に出来ない」

山崎:最初は、曽我部さんは忘れちゃったかも知れないですけど、映像を作って貰ったことがあるんです。

曽我部:覚えてるよ。それ忘れてたらヤバイでしょう(笑)。あと、zineのための対談もその頃だよね。

山崎:そうですね。97年に結成して、99年か2000年辺りだったと思います。ライブ用の映像を作って貰いましたよね。当時、空気公団はライブをしてなかったんです。空気公団を結成する時、毎日のように下北沢で色んな人のライブを観て「私達は何を守っていって、どういう風にアピールしていくのが良いのかな?」って考えていた時期があって。その時に、極力「私が空気公団です」って出ていくやり方じゃなくて、“音”を前に出すやり方にしようって思ったんです。

 その後、初めてのライブをスパイラル・ホールでやる時――もっと遡って言えば、(新宿)ANTIKNOCKでもライブをしたことがあったんですけど――ステージの前のスクリーンを全部下げて、その中で演奏するっていう方法をとったんです。それで、そこに流す映像を曽我部さんに作って貰いました。

曽我部:ライブ自体は仕事があって行けなかったけどね。自分の作品以外では監督したこともほぼ無かったし、面白かったです。空気公団の存在が、自分の中で割とハッキリあったんですよね。今、話だけを聞くと、突拍子もないことのようにも聞こえるんだけどね。お友達でも無いし、知り合ったばっかりの頃で、対バンしてきたわけでも無いし、世代もちょっと違うけど、割と無理なくスッと受け入れて。みんなと一日、色んなところを歩いて撮影したよね。楽しかった。すごくよく覚えてる。

山崎:私たちは本当にサニーデイが大好きで。よく“影響を受けたバンド”っていう言い方がありますけど、私たちはすごく“触発された”と思ってます。私の中に何かがあって、それをどう表現して良いか分からない時に、サニーデイがツンとそこを押してくれたというか。それで自分が「あ、こういうことをやりたいんだ」っていうのが、ハッキリ見えてきたんです。それで曽我部さんに、何が何でも接触したいと思ってたんだと思います。

曽我部:その当時の空気公団っていうのは、すごく良い意味で閉鎖的で、立ち入るスキが全くないバンドだったよね。メンバーの空気感も本当にあり得ないくらい統一されていて、日本でここまで閉鎖的なバンドは過去にいなかったんじゃないか? と思うくらい潔癖症なバンド。自分たちがやりたかったことでもあるし、すごくよく分かりましたね。純粋さというか、純潔さがすごくあって、カッコイイなと思ってました。

山崎:(当時は)“幕の後ろで演奏する”っていうことが、誰も理解出来なかったみたいで。最初の方だけで、後半は幕が上がって演奏するんだろうって思ってた人もいて。1日に3公演やったんですけど、二回目までに「本当は空気公団はいないんじゃないか」っていう雰囲気になっちゃって、それで三回目だけ、少しだけ前に出たんですよね。

曽我部:「いますよ」っていう(笑)。

山崎:そうです。そのライブに山下達郎さんが来てくれたんですけど「これは日本じゃ通用しないから、ニューヨークに行った方が良いよ」って言われて、不思議に思いました。

 達郎さんとは、その前に雑誌で対談もしてました。その時に「ライブとかしないんだってね」って言われたんですよ。当時は“音を伝えたい”っていうのが頭の中にあって、自分たちの顔が出ていくことで、空気公団っていう組織が崩壊して行くような気がしていて。

曽我部:理念自体もね。すっごい分かる。

山崎:そういう時に達郎さんに「君たちにライブは絶対に出来ない」って言われて。

曽我部:ライブのバランスじゃないっていうことですよね。

山崎:そうです。ギターも一曲で2音弾いて終わり、みたいな。ギターが常に定位置にいるようなバンドとしての作り方というよりは、貼り絵のような感覚の音作りをしていました。達郎さんに「これは再現不可能だ。君たちはライブを一生できない」と言われて、すごくずっしり来ました。

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