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木村カエラ『HOLIDAYS』インタビュー
みんなに優しいし、自分にも優しいし、地球に優しい(笑)!
JRAの新CMソングに起用された新作『HOLIDAYS』についてはもちろん、自由を取り戻したアルバム『PUNKY』を携えたツアーや、東京国際フォーラムでのライブを夢見たきっかけでもあるYUKIについて。そして各方面に振り切る(やりたいことを全部やる)未来構想についても語ってもらった。全カエラファン、必読!
号泣必至の全国ツアー~「わたしらしくありたい」という言葉しか出てこなかった
--アルバム『PUNKY』以来(http://bit.ly/2f9GtMt)約半年ぶりのインタビューになるので、今回はまずその『PUNKY』を携えたツアーの話から伺わせてください。ライブハウスツアー【STUDS TOUR】とホールツアー【DIAMOND TOUR】それぞれ自分の中ではどんなツアーになったなと感じていますか?
木村カエラ 2017 DIAMOND TOUR ダイジェスト映像
--前回のインタビューで「現在、木村カエラはどんなアーティストになっているなと自身では感じていますか?」という問いに「自由を取り戻したアーティスト、みたいな?」と答えていたのですが、その言葉通りの木村カエラがステージ上にいるなと感じました。自分ではどう思いますか?
木村カエラ:変に周りに振り回されない自分がちゃんといましたね。良い意味で耳を塞いでいる状態でライブが出来たんです。お客さんの雰囲気とか「ここはこうしたらもっと盛り上げられるな」みたいな判断はもちろんするんだけど、余計なこと、自分にとって必要のないことは自分の中に入れない状態。自分のありたいままの状態でライブが出来たなと思っていて、それがすごく心地良かったです。--ノイズが入ってきてしまうことも今まではあった?
木村カエラ:あった。視野を広げすぎちゃって見なくていいところまで見ちゃったり、誰かの「こうしたほうがいい、ああしたほうがいい」という言葉を全部真に受けてしまったりして、そうなると自分を見失ってしまって、楽しくなくなってきちゃう。だからとにかく自分を取り戻す作業を今回のツアーではしようと思って、その結果として自分にも目を向けられるし、お客さんにもちゃんと向き合える状態でステージに立てたなと感じています。だから自分がやりたいことは全部出来た。もちろんまだまだ課題はあるんですけど。--具体的に「自分がやりたいこと」とは何だったんでしょう?
木村カエラ:まずセット。私、硬いものがあんまり好きじゃなくて、LEDとかすごく綺麗に映像を見せられるんですけど、どうしてもギラギラしちゃって硬い印象になってしまったりするから苦手なんです。でもその硬さを感じさせずにやりたいことをセットで上手く形にするのが難しくて。で、今回はすごくシンプルでいいから「本物のリボンを使ったセットが作れないかな」と思って、そこにLEDを仕込むにしても硬い印象を与えないようにして、リボンの円を描くのにもちゃんと針金を入れたりして、上から見ても下から見てもリボンが優しく包み込んでくれるようなものを目指したんです。あとは、バンドメンバーや私がブラックライトで光る。分かりやすく光るんじゃなくて、ところどころ世界を変えながら光る。そういうことも上手く出来たし、音に関しても外のお客さんに私の声がちゃんと聴こえて、私自身にも歌の抑揚がちゃんと聴こえるようにして、音に振り回されない強い自分でいられるようにしたり、とにかくいろんなことを試したんですよね。--僕も赤坂BLITZ(STUDS TOUR)と東京国際フォーラム ホールA(DIAMOND TOUR)でそれぞれの公演を観させて頂いたのですが、まず印象的だったのは「TODAY IS A NEW DAY」。その歌詞もサウンドも声もすべてが木村カエラの生き様そのもの、再び自由を取り戻すまでのドキュメンタリーのように感じられ、カメラマンと2人で大号泣していたんですが、明らかに気持ちが乗っかっていましたよね?
木村カエラ - 「TODAY IS A NEW DAY」Music Video
--また【STUDS TOUR】(http://bit.ly/2q593T8)では、その「TODAY IS A NEW DAY」からの流れで歌われた「BOX」。「こんな日も あんな日も わたしらしくありたい 思い切り笑えるってきもちいいな!」「これからも この先も わたしらしくありたい キラキラワクワクいつもしていたいから!」と聴きながら……この曲でも泣かされました。
木村カエラ - 「BOX」ミュージックビデオ short ver.
--え、本当ですか?
木村カエラ:「すげぇ冷たいな」って(笑)。--冷たくないですよ! たくさん人がいたから気遣ったんです!
木村カエラ:アハハハ!--次回からハイテンションで挨拶します(笑)。話を戻しますが、あの曲は木村カエラの今の想いそのものですよね?
木村カエラ:そうですね。今回いちばん大事な曲でしたね。あの曲があって今回のツアーは全体的に出来上がっているイメージだし、あの曲に向けてすべて歌っているから、ひとつの物語の最後という感じもするし、歌っていると込み上げてくるものがあるというか、上手く言えないけど「うわぁー」ってなる(笑)。--「私らしくありたい」って歌の世界でも幾度となく使われてきたフレーズだと思うんですけど、あの曲の中で歌われる「私らしくありたい」は物凄い力を持っていますよね。
木村カエラ:うん、そう思う。本当に自分がそういう気持ちでいたから。だからこの曲を聴いた瞬間「わたしらしくありたい」という言葉しか出てこなかったんですよ。- 悔しい。でもすごく素敵。YUKIさんのライブを観ると今でも思い出すんです
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リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:古川泰佑
悔しい。でもすごく素敵。YUKIさんのライブを観ると今でも思い出すんです
--今「わたしらしくありたい」と思い、歌にして発信したのは何故なんでしょうね?
木村カエラ「僕たちのうた」(MTVアンプラグド short ver.)
--なるほど。
木村カエラ:やっぱりバンドメンバーを変えたら変えたで、バンドとして木村カエラを見ていた人もいっぱいいるからイヤがられるし、それは私も分かっているから苦しい。でもあのまま何も変えずに続けていたら、みんなにとっての木村カエラも良くなくなる。それは自分自身もイヤだし、応援してくれている人に対しても失礼だから、そこは「黙って見てて!」みたいな(笑)。今でもしのっぴ(渡邊忍/ASPARAGUS)の曲は相性がいちばん良いと思っているし、「しのっぴに弾いてもらいたいな」とも毎日のように思っているし、いずれまた一緒にやることもあるだろうし、だから「その時はその時!」と思っていろいろやっていったらだんだん自由を取り戻せたんです。そうなるといろんなことに挑戦することがツラくないし、疲れない。楽しいから。だから今は「すごく良いな」と感じながら日々過ごせてる。--また、初の東京国際フォーラム ホールAでのライブ。YUKIさんの公演を2010年に観て以来、あそこで歌うのが夢だったと仰ってましたよね。僕も同じYUKIさんのライブ(http://bit.ly/2q2w62C)を観ていて忘れられない夜になっているのですが、カエラさんはどんな印象や感想を持たれたのでしょう?
木村カエラ:あの日のYUKIさんのライブは、最初から最後まで涙が本当に止まらなかったんですよ。それで「想いがすごく伝わってくる場所だな。私もいつかここでやりたいなぁ」と思ったんです。場所も綺麗だし、国際フォーラムという名前も良いし(笑)。でもやっぱり大人な感じがしていたから、自分があそこに立てるイメージが湧かなかったんです。もっと自分の歌が上手くならないと出来ない場所だし、だから何年か前の私では国際フォーラムでのライブは決まらなかったと思う。いろんなことをクリアーしないと立てない場所。子供っぽいままじゃダメだし、あそこに立てる人格じゃないと実現は出来ないと思っていたので、今回ようやく実現できたのは嬉しかったです。--そもそも木村カエラにとってYUKIはどんな存在なんでしょう?
木村カエラ:JUDY AND MARY、ずっと聴いてましたからね。だから昔からすごく好きだったし、私はいろんなライブを観に行くんですけど、その中でもYUKIさんのライブはすごく好きなんです。私がまだ全然デビューも決まってなかった新人の頃、YUKIさんがまだソロになったばっかりで、Zepp Tokyoでのライブがあったので観に行ったんですけど、そのとき「悔しい」と思ったんですよ。素敵過ぎて。私は個性的な人とか物体とか好きだから「悔しい! 私もあそこに立ちたい!」と思ったんですよね。その気持ちのまんまデビューを迎えたから、YUKIさんのライブは脳裏にずっと残ってるの。別にYUKIさんをライバル視している訳ではなくて、自分はあのとき新人でしかなくて、自分もあのステージに立ちたいけど立てないし、そこへ連れてきてくれたマネージャーは別の新人の子のアテンドをしてて、だから私はひとりぼっちで、ひとりで過ごすのが本当にキライなのに……それですごく寂しかったの。で、まだ若いから「何? この扱い!」みたいな(笑)。しかもすごく悔しい。でもすごく素敵。YUKIさんのライブを観ると今でもそのときのことを思い出すんです。--そのときの「悔しい」は、自分がやりたいことを思いっきりやっている存在がそこにいたからですよね。きっと。
木村カエラ:そう! 女性ひとりで、個性的で、凄くて……。私は人と同じことがイヤだから、あそこまで個性的で、それで人気もあって、素敵なライブを見せられちゃったから、元々負けず嫌いだから、私なんて超新人で誰も知らない感じなのにそんな風になっていました。でもYUKIさんの東京国際フォーラムでの公演を観に行ったときは、純粋にライブの素晴らしさにグサッ!と刺されて、それでスウィッチ押されちゃってそのままずっと号泣。終演後にYUKIさんに挨拶しに行ったときもずっと泣いてて「大丈夫!?」「だ、大丈夫じゃありません……」みたいな(笑)。泣き疲れて家に帰っていった記憶があります。何か溢れちゃったんでしょうね。--そんなYUKIと同じ東京国際フォーラムでライブを実際してみていかがでした?
木村カエラ:YUKIさんのライブに敵うとか敵わないとか全然分かんないんだけど、後から映像を見るともちろん「あそこ、こうすれば良かったかな?」とかは思うけど、でも今出来ることはやり切れたのかなって。あの時はあの時で。--その公演でも披露していた「HOLIDAYS」がシングルリリース。アルバム『PUNKY』とそれを携えたツアーの先にこの曲を発信したいと思った理由は?
木村カエラ:CMが決まったからです。一同:(笑)
--JRAの新CMソングになりましたね。
木村カエラ:他の候補曲もあったんですよ。でもテンポ感が馬の走る感じと合わなくて(笑)、それで「みんなが一緒に歌える感じにしてほしい」というリクエストもあったりして「HOLIDAYS」に決まったんです。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:古川泰佑
カエラの未来構想「木村カエラを何人も作っちゃえばいいんじゃないの?」
--ライブではまさにみんなと歌い踊るパーティーチューンと化していましたが、またひとつみんなと楽しめる曲が完成した手応えもあったんじゃないですか?
木村カエラ:すごく楽しかったです! 歌ってても楽しいし、何よりみんなと一緒に歌うことが出来て、みんながすごく楽しそうな表情をするから、それがたまらなくって。AxSxE(NATSUMEN)さんの曲は元々好きだし、今後もライブで重要な曲になっていくんじゃないかなって感じてます。ライブで歌うとその場がまさに「HOLIDAYS」になるというか、みんなと息抜きできる感じで歌えるんですよ。だからJRAの新CMソングとして作ったんですけど、そういう面でも良かったなって。あと、私もJRAのCMに出るんですよ!
木村カエラ - 「HOLIDAYS」ミュージックビデオ short ver.
--どんな役どころで?
木村カエラ:神。一同:(笑)
木村カエラ:神的な存在として(笑)。だから楽しみにしてて下さい!--今作の生産限定盤には、木村カエラ「HOLIDAYS」レジャーシート(900mm×600mm)も付属されるんですよね。
木村カエラ:今回、アートワークの絵が良過ぎたのと、ジャケットを開いたらレジャーシートの形だったんですよ。それで「「HOLIDAYS」と言えばピクニックじゃね?」みたいな。あと、以前、グッズでレジャーシートを作ったら全然売れなかったトラウマがあったんですけど、それのリベンジ的な(笑)。--意地でもレジャーシートを使ってもらいたいんですね(笑)。
木村カエラ:ひなたぼっことかピクニックとか、みんなにとって楽しい休日に使ってもらえるように作りました。そう書いておいてください(笑)。--分かりました(笑)。「HOLIDAYS」にかけてベタな質問をひとつ。木村カエラの理想の休日の過ごし方を教えてください。
木村カエラ:1日中出かけていたいですね。家で朝ごはんだけ食べて、出かけて、お昼ごはんは外で食べて、また遊んで、温泉入って、夕ごはん食べて、帰ってきたら寝るだけ。それがいちばん理想です。先週もそうやって過ごしました。朝ごはん食べて、買い物行って、水族館行って、温泉行って、ごはん食べて、帰って寝ました(笑)。あと、映画を観るのが大好きなんで、休みの日はよく観に行ってます。--そんな休日にもピッタリの「HOLIDAYS」、どんな風に楽しんでもらいたいですか?
木村カエラ:月曜日から金曜日までみんな毎日一生懸命頑張っている訳ですけど、いろんな感情=色をもってそれぞれの曜日を過ごしていて、その色が七色揃って虹になるのが日曜日みたいな。そんな風に思えたら休みの楽しみ方も変わるんじゃないかなと思って歌詞を書いたので、「休みの日は楽しまないとね。頑張ったからそのご褒美だね!」って思えるようになってもらえたらなって。この曲を聴いて楽しくなってもらえたらいいなって思います。--象徴的なツアーを終え、またひとつ木村カエラ節全開の新曲も生まれ、この先はどんなヴィジョンを描いていたりするんでしょう?
木村カエラ:明るくてポップなことをいっぱいやったなと思っていて、だからちょっと暗めなこともしたくなってます(笑)。そこも出したい感じになってる。あとは、歌が上手くなりたい。だからアコースティックライブで自分の歌をもっと勉強して磨けたらいいなとも思うし、アコースティックライブだとみんな席に座ってゆっくりお酒を飲めたりする形も考えられるから、そこの空間的なデザイン。飲み物もコースターも全部コーディネイトしてみたいなと思ったり。好きなことがいっぱいあるから、そういう大人っぽいこともやりたいし、子供っぽいこともやりたいし、打ち込みもやりたいし……だから「木村カエラを何人も作っちゃえばいいんじゃないの?」みたいな。で、ホールとか大きいところでライブをするときにはそれらをひとつにしちゃう。--面白い発想ですね。
木村カエラ:今まではひとりの木村カエラでいろんなことをしてきたけど、もう別の木村カエラを作っちゃう。分身しちゃう。そうすると、いろんなことがもっと思い切って出来ると思うんです。「ちょっとこれだとバランス悪いよね」みたいに悩むことが無くなるから。結局どこでも行けるのに、ひとりの木村カエラで考えるから難しさが出てきちゃうから、いろんな木村カエラを作りたいんですよね。--これはカエラレッド、それはカエラブルー、あれはカエラピンクみたいな?
木村カエラ:そうそう(笑)。そういう風に考えてやっていくのも良いかなって。それが出来ると「今日は大人っぽい木村カエラがいいから」「今日は子供っぽい感じ」っていろんな服も着れるじゃないですか。木村カエラがひとりだと「でもカラフルなイメージがあるから、そんな大人っぽい格好は木村カエラっぽくない」とか言われちゃうし、それだとつまらないから、もう分けちゃう。私のことを応援し続けてくれている世代は今ちょうど子供を生んだりしている人がすごく多いから、ライブに来れなかったりもするんですよね。でも子供と一緒であれば来れるんだったら、子供も居やすい場所を作ればいいし、そういうことも含めていろんな木村カエラでいろんなことをやりたい。でもそこまでいろいろやると大変なことになっちゃうかもしれないから、どこまで出来るかはまだ分からないんですけど、発想としてはそれがいちばん良いのかなと思ってます。--そっちのほうが何事も振り切れた形で出来ますもんね。最終的に各カエラが全員揃ったときに何が出来るのかも楽しみですし。
木村カエラ:そうなると全員集合してごっちゃになってても、いろんなお客さんがいても文句は出ないだろうし、みんな楽しいし、みんなに優しいし、自分にも優しいし、地球に優しい(笑)!--完璧ですね(笑)。
木村カエラ:それが理想です。Interviewer:平賀哲雄
Photo:古川泰佑
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:古川泰佑
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