Special
ACIDMAN 『ALMA』インタビュー
ACIDMAN、約1年4ヶ月ぶりにhotexpressインタビューへ登場。この間、より危険な状態に突入した音楽シーンへの率直な想いや考え。オオキ ノブオ(vo,g)の「俺の感覚は正しかった」という実感から“心”や“愛”にフォーカスすることとなったアルバム『ALMA』。そしてウラヤマ イチゴ(dr)の前に突然現れたピンチ(!?)について、強く深く面白く語ってもらった。
音楽の神様はやっぱりいて、いつかしっぺ返しを喰らう
--今の音楽シーン、1年前に比べてかなり危険な状態にあると思うんですが、どう映ってますか?
オオキ:エンターテインメントというものがフィーチャリングされ過ぎてる。音楽は元々芸術として始まっていて、その枝葉のひとつがエンターテインメントだと思うんだけど、最近はそこばかりが強くなってしまって、もはやエンターテインメントを超えて単純な使い捨て。音楽の使い捨てになってしまっているのは、大問題だなと思う。
--そうですね。
オオキ:使い捨ての音楽もあっていいんだけど、音楽をあまり知らない世代がそれを良いと思ってしまっている現状はとても怖いなと思いますね。吉井(和哉)さんの言葉を借りれば、真っ赤なジャムを塗って食べようとする奴がいて(THE YELLOW MONKEY『JAM』のフレーズ)その中で生まれた音楽ばかりが良いと思われてしまっている。それは危険なことだと思ってますね。
--CDを買わない人が増えている、というか、世代が出来てしまっていることにはどんなことを思いますか?
オオキ:それはね、いいと思っている。分かっていたことだと思うし。音楽というもので誰かがビジネスをしようと思った時点で、こうなることは決まっていた訳で。あと、レコード会社が「CDを売らなきゃダメ」と言っているのはおかしな考えで。ミュージシャンの気持ちとミュージシャンが作り出す音楽を1人でも多く届けることが仕事なのに、CDを売ることが仕事になってる。それは崩壊するだろうなと思うし、崩壊してくれた方がいい。
--ただ、その変化に対して一番厳しい状況に立たされているのって、ロックバンドだと思っていて。例えば、まずロックファンってケータイで音楽を聴かないじゃないですか。で、バンドはケータイで聴いてもらえばOKな曲を作らないじゃないですか。これからの新世代との親和性が実に弱いんじゃないかなって。
オオキ:ケータイ世代との親和性ということに関しては、本当に難しい。でもいつか気付くと思うんですよね。音楽っていうものはケータイでそんな簡単に聴くものではないし、それに気付けばもっと音質の良いものを求めていく。言い方悪いですけど、今ってチープな音楽がチープな音楽として受け止められてない。俺らもきっと昔は地元で買ったよく分かんない服を着て、それが「格好良い」と思ってた。でも街に出てみたら「あ、これって実はチープだったんだ」って気付いて本物を知っていったように、音楽もそうなっていくものだから。時間が経てばその親和性の問題は解消できると思う。
--イチゴさんはどう思いますか?
イチゴ:難しい話ですね。もうついていけないです(笑)。ただ、ケータイで音楽を聴く感覚は全く分かんないです。僕はCD屋が好きで。試聴機でいろいろ聴いて、そこに行かなかったら見つけられなかった音楽に出逢えたりするのが嬉しい。ネットだと自分で聴きたいものだけ探すようになるから、どうしてもフィールドが狭まっちゃう。
オオキ:と思うでしょ? 今は違うんですよ。俺も「本屋に行かなきゃ出逢えない本がある」とか思っていたんだけど、ネットでも本屋の中を歩いている感覚でいろんなものを知れる。本屋の何倍も。使い方ひとつでどうにでもなるから「便利だわぁ~」と思うし、俺は最近本屋に行ってない。
イチゴ:ですって!
--(笑)。ただ、その変化の途中だからなのか、今は何かとバランスが悪くなってますよね。例えば、ヒットチャートはアイドルの独占地帯になってます。ロック勢も健闘していますが、数字的には桁がひとつふたつ変わってくる。これは一過性のものなんですかね?
オオキ:俺はそう思ってますね。これはおかしいと思うし、淘汰されていくと思う。裏側に大人の影があることに気付いていない人が今はまだたくさんいるだけで。例えば、このインタビューを読んだAくんという10代の子にその想像力が宿ったら、音楽を聴いて「これはビジネスライク過ぎる」みたいなことを思ったりするようになる。例えば、最近流行りのアイドルグループを「芸術だ!」と思っている子がたくさんいるとして、そこに「ちょっと待て、これに芸術性はない。単なる性的欲求だけだ。何故なら」っていうのを語れる奴が1人でもいることが大事だと思うんですよ。俺らもそういうことを言い続けるべきだし、ライブをやり続けるべきだし、絶対に芸術を作り続けるべき。そうすれば今の状況が淘汰されたとき、生き残るなと思ってる。
--今の状況の中で、ACIDMANはどうあるべきだと思っているか。もう少し具体的に聞かせてもらえますか?
オオキ:自分が感動できる音と言葉を紡いでいって、感動できるライブをしていく。それだけをやり続ける。じゃないと、音楽の神様っていうのはやっぱりいて、いつかしっぺ返しを喰らうんですよ。ちゃんとやってないと。
--これからの音楽業界に期待することは?
オオキ:俺はレコード会社が事務所的な役割を持つようになるべきだと思っている。事務所がアーティストを抱えてレコード会社と契約っていうよりは、レコード会社がアーティストを抱えてすべてを担う。プロモーションもケアもやって、CDも何もかも全部自分たちで作っていく。そういう価値観になっていく時代だと思ってますね。大きな金は稼げないかもしれないけど、より音楽が強くなっていくような気がしています。
--では、リスナーに期待することは?
オオキ:本当は期待しちゃいけないし、そのまま良いと思うものを聴いてくれと思うだけ……、音楽っていうのは“楽しいから良い”“歌えるから良い”だけじゃないし“愛や恋だから良い”訳でもないし、もちろん俺たちみたいに“命のことを歌っているから良い”訳でもない。答えはないから、自分が本当に感動するものを見つけて聴いてほしいですね。誰かが「良い」って言ってるからじゃなく、本当に自分の心が動くものを聴いていく。そういう部分を求めたいですね。
--今回のアルバム『ALMA』がそうした変化のきっかけになることを期待したいんですが、仕上がりにはどんな印象や感想を?
オオキ:もちろん100%満足はしていないけど、今までで一番映画的な作品を作れたと思ってますね。それがずっと目標だったんですよ。映画っぽい感じで音楽を聴いてほしくて。もちろんケータイじゃなくて、1曲だけじゃなくて、全部を通して「さぁ聴くぞ」と思って、ひとつの作品として聴いてほしい。その想いに一番近付けたアルバムになったと思いますね。
イチゴ:入り込める作品だと思うんですよ。歌詩を見ながら、その世界を想像しながら。その中でいろんな感情と出逢えるアルバムだと思います。
- < Prev
- おこがましいけど「俺の感覚は正しかった」と
- Next >
Interviewer:平賀哲雄
4