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HIROインタビュー「感動や熱狂が積み重なってこそマスに訴えることができる」
EXILEのパフォーマーとして、そしてプロデューサーとして数多くのヒットを世に送り出し、ムーブメントを発信し続けてきたHIRO。2017年からはLDH WORLDのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したHIROが考える、今の時代におけるヒットとは?音楽の聴き方の変化とともに変化してきたヒットの定義、そしてヒットを生みだすために重要なことについてインタビューを行った。
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ヒットの定義が難しい時代になってきましたよね
−−日本版ビルボードチャートは、2008年からラジオとCDのセールス数の複合チャートからスタートし、現在はダウンロード、ストリーミング、Twitter、YouTubeなど8種類のデータを合算してチャートを制作しています。HIROさんが、子供の頃から現在に至るまで音楽の聴き方は大きく変わりましたが、昔はどのように音楽を聴いてらっしゃったのでしょうか。
HIRO:小学生の頃から洋楽が好きだったので、テレビ神奈川の『Billboard TOP 40』は、欠かさず見ていました。テレビで気に入った曲があればレコードを買って聴いていましたね。
−−小学生の時に、自分で洋楽のレコードを買ってらっしゃったんですか?
HIRO:そうですね。マセた子どもだったので(笑)。学校でも『Billboard TOP 40』がすごく流行っていて、中学校の頃は友達と一緒に、カルチャー・クラブや、シンディ・ローパーとかデュラン・デュラン、マイケル・ジャクソンなどBillboardのチャートを賑わすアーティストにハマっていましたね。それからミュージック・ビデオが流行りだして、ディスコに通うようになり、ターンテーブルを買って友達とアナログレコードを集めるようになって…。ビジネスの面でも音楽の聴き方の変化はとても感じていますが、僕個人としても時代の流れにあわせて、音楽の聴き方は変化してきているなと実感しています。
−−今は、新しい曲をどのように知ることが多いですか?
HIRO:今は、昔のようにゆっくり音楽を聴く時間が減ってしまったので、仕事絡みで新しい音楽などは知ることが多いかもしれません。仕事柄、新しい楽曲は必ずチェックします。ビルボードライブの会場も大好きです。たまに遊びに行かせていただきますが、昔を思い出して懐かしい気持ちになります。
−−ありがとうございます。音楽の購入方法がレコードからCD、そしてダウンロードへと変化し、今は10代を中心に、YouTubeなどの無料のメディアで聴く人が多くなりました。
HIRO:正直なところ、YouTubeが日本で流行し始めたころは、違和感を覚えていました。自分たちが作った曲が、こんなにも手軽に無料で聴けてしまうのだなって。でも、今はYouTubeで音楽を聴くことは主流ですし、音楽や映像を広めるための良いプロモーションツールになったと思っています。それに、僕たちの活動の中心はライブです。ライブは最も自分らしく表現できる場所ですし、年々動員数も増えています。なので、CDを多く売るために何をするかということよりも、ライブを中心に置きながら、CDの売り方や配信方法を考えています。例えば、「どんなCDであればファンの方たちが集めたくなるのか」とかですね。昔は、CDの売上げでヒットを達成にするにはどうすれば良いかというのが一番のテーマでした。でも、今は様々な場所に音楽が流れるようになったのでCDの売上げだけを考えていては、広がりません。なので、時代にあわせて僕らも様々な聴き方を提案し、そのアーティストを好きになってもらって、ライブに来てもらえればと思っています。そしてライブを見ていただければ、絶対に楽しんでもらえる自信がありますし、よりアーティストとファンの方の距離が近くなって、一層好きになってもらえると信じていますから。なので、ライブに来てもらうために、とにかくまずは楽曲を聴いてもらう機会を増やすことが重要だと思っています。
−−音楽の聴き方の変化によってヒットの仕方が、すごく変わったなと感じたきっかけの1つが三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」ではないでしょうか。2014年6月にリリースされた後、メディア露出のたびに動画とTwitterを中心に話題となり、幅広い世代に楽曲が浸透しました。そして、その結果さらにCDの売上げを押し上げ、2015年の年間チャートで首位を獲得しました。前年にリリースした曲が、年間で1位を獲得するというのは、ビルボードジャパンチャート史上初めてのことで新たなヒット曲の生まれ方を実感した曲となりました。
HIRO:ありがとうございます。楽曲を知ったきっかけがYouTubeだったとしても、本当に好きになってもらえれば、CDを買ったり、ダウンロードしたり、ライブに来てくれたりと、繋がっていくのかなと。今は、音楽の聴き方が増えたことで、ヒットの定義が難しい時代になってきましたよね。でも、ダウンロードやストリーミングなど、様々な聴き方でのヒットを反映しているビルボードのチャートは、とても面白いですし、アーティストにとっても、この結果は大きな励みになっています。
−−聴き方が変化してきたように、ヒットの定義もこの数年間で大きく変化しました。ちなみにHIROさんが、パフォーマーとしてデビューされて「ヒットしたな」と感じられた瞬間は、いつだったのでしょうか?
HIRO:何か大きなきっかけがあったというより、武道館ライブ、アリーナツアー、紅白歌合戦、ミリオン達成という様々な積み重ねによって、少しずつ実感していった…という感じですね。常に「やっと認めてもらえるようになった」と思うことの連続でした。今と違って僕たちが活動し始めた頃は、音楽の聴き方はCDが主流でミリオン達成というのは、僕らにとってとても大きな目標でした。なので、ミリオンを達成した瞬間は、とても嬉しかったことを覚えています。
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- LDH オフィシャル・サイト
取材:高嶋直子
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