Special
ACIDMAN 『Second line & Acoustic collection』インタビュー
終焉と再生を幾度となく表現してきた彼らが、3.11以降の世界に何を感じ、生きてきたのか。時に涙を零しながら、真剣に語ってくれた。また、ロックもアイドルもあらゆる音楽を肯定した先にあるシーン、某ドラマーの未来についても。
「復興しました。バンザイ」で終わるものでもない
--ACIDMANは終焉と再生を様々な作品で表現してきましたが、今年は3.11に未曾有の大震災、津波が発生。更には原発のメルトダウンも認められ、ダメージはこれからもどんどん表面化されていきそうです。ずばり、この状況にどんなことを感じていますか?
オオキ ノブオ(vo,g):震災当時は亡くなってしまった人の悲しみに同調することしか出来なかったんだけど、ツアー中だったので悲しんでばかりもいられないし、自粛している場合ではないなと思っていました。もちろん被災地でのライブは、電力や物資も不足していたし、出来なかったんですけど。だけどそれ以外の場所でやらない理由はないし、多分みんな不安でどうしていいか分からないだろうから、ひとつの筋をツアーを続けることで伝えなきゃいけないと思って。それを実践したことによって、みんながすごくエモーショナルになったんですね。「瞬間を生きるってこういうことか」「オオキが今まで言っていたのはこういうことか」って分かってくれたような気がして。
--なるほど。
オオキ:それで世界が変わった実感は全くない。俺らがやることは本当にそれしかないんだなと思ったので、ツアーを続けたんです。それで、今思うことは、悲しみはきっとほとんどの人が乗り越えられていないんだけど、受け容れかけているとは思うんですね。でも原発の周辺に住んでいた人たちは今一番しんどいと思っていて。そこに住めないし、戻れない現状っていうのは、あまりにも残酷。俺はブログでも原発反対の意志を示してるんですけど、それは「絶対に今すぐやめろ」という訳じゃなくて、これから何十年も住めない場所がある。その悲しみを生む原因が世界にいっぱいあって、日本にも50個以上あって。無知でそこに依存してしまった自分たちの責任もあるから、少しずつでも何とか変えていかなきゃいけないことと思っているんです。いきなり長くて申し訳ないです。
--いえいえ。
オオキ:実はいろんなエネルギーってあるのに、それをテレビではあんまり報道しないで、まるで核が一番であるかのように報道したり。今度は「地下なら安全だ」って言い出したチームがいて、ああいう発想が俺には信じられない。原発推進派の人は「原発を反対すると日本経済が落ち込む」って言うけど、それって本末転倒で。その土地に住めなかったら経済もクソもないのに、未だにそういう方たちがいるのは非常に残念。でも決して諦めたくないし、そういう方々を悪だとは言いたくないので、ミュージシャンだけど、なるべく俺たちも発言して、みんなの価値観とか感覚を変えたい。再生可能エネルギーはあるし、メタンハイドレートだってあるし、石油を作る微生物だって発見されているし、人間はポジティブに世界を変えていく力があるはずなので。
--今は日本のみならず、世界中で異常気象や自然災害が活発化しています。その要因はいくらでも挙げられると思うんですけど、人間はこれからどう生きていくべきかと思いますか?
オオキ:俺はもっとシンプルに生きるべきだと思っている。頭をもっと子供のように使うというか、右脳を大事にして「やっちゃいけないことはやっちゃいけない」みたいな。お金に依存しないで、物質的な豊かさじゃなくて精神的な豊かさにみんな気付かないと、どんどんダメになっていくと思うんですよね。確かに美味しいものを食べたらもっと美味しいものを食べたくなるんだけど、本当に味わいながら食べたらシンプルな素材のままが美味しかったりするし、そこに気付いてくればそのまんまで良いと思うはず。それは原始的な生活に戻れと言っている訳じゃなくて、人間の知恵をもっと有効的に使っていけば、心を豊かにする世界に絶対なると思っています。
--オオキさん個人として、具体的にどう生きていきたいと思います?
オオキ:昔から言ってるんですけど、田舎に住みたい(笑)。トトロの家みたいなところに住むのが夢なんですよ。
--サトウさんは?
サトウ マサトシ(b):いろいろ思うこともあるし、報道とか観ていると感情的になったりもするんですけど、俺の立場からすると「改めてACIDMANの音楽を届けたいな」って。これは震災当初から思ってます。ACIDMANはデビュー10周年ですけど、そう思える音楽をやってきたことに誇りを持ちつつ、一生懸命にやっていくことが大切だなって思っています。
--個人的には今回の一件で、単純にこの人生はいつ終わってもおかしくないことを再認識しました。故に3.11以前なら地団駄を踏んでいたこともガンガンやっていこうと思うようになったんですが、こうした発想についてはどう思われますか?
オオキ:とっても良いと思いますね。俺はこういう詩を書いている人間だから、常に“死”は意識していて。本当に死んじゃうんだなって思うと、何でもないときでも泣きたくなるぐらい悲しくなる。そういう気持ちをいつも味わっているんだけど、今は“死”がとても身近になってきていて。個人的にはもっと酷いことが起きるような気はしているから、その為の準備はしておかないといけないなと思っているし。だからこそ、それで震えているんではなくて、思ったことはどんどん行動に移していくのがとっても大事なことだなと思うし。人を殺すとか傷付けるとかはもちろんダメだよ。でも「寝たい」でもいい。「のんびりって最高だ!」って感じられればいいんだから。何が大事かと言えば、常に自分で選択していくことで。誰かに選択させられていたら、その人生は本当に勿体ないなと思う。自分を表現して、自分のフラッグを掲げることは大事だし、それで誰かにブーブー言われたからってフラッグを掲げなくなるのは勿体ない。自分で生きてるんだから、自分で選択して、失敗しようが何だろうが自己責任。そういう生き方をするべきだと思うんですね。
--でも、実際にはそう生きられない人も多くいますよね。
オオキ:何故か「命はずっと続く」と思っていて、怯えながら「この先、こうなったらこうなっちゃうんじゃないかな?」って人の気持ちの裏側を考えようとしちゃうんだろうけど、もっと真っ直ぐでいい。本当に真っ直ぐ真っ直ぐ考えることがこれからの生き方として正解だと俺は思いますね。
--ただ、3.11からもう半年以上の歳月が経ち、被災地に住んでいない人々の世界は一見正常化しているように映っています。それに伴って多くの人々の意識や生へのエネルギーみたいなものも元に戻っているんじゃないかと感じるんですが、いかがでしょう?
オオキ:絶対そうなっていると思うし、どんどん風化していくし。でも誰かを亡くしてしまった人の悲しみは一生消えないから、そういう人たちも訴え続けるべきだと思うし、俺たちもここからちゃんとやらないといけないと思う。ずっとやり続けることも大事だし。人が不条理に死んでしまったことに解決はもうないと思うんですね。そこは「復興しました。バンザイ」ってことで終わるものでもない。だから悲しみは刻んでおくべきだし。人間は忘れてしまう生き物だからそれをいけないことと言うんじゃなくて、時には誰かが思い出させてあげる。時には誰かが忘れさせてあげることも必要だろうし。とにかくそういう人の心もこもった行動ですべてが繋がり合えばいいんじゃないかなと思います。
--話の規模をACIDMANへとシフトしていきたいのですが、実際にあの状況で全国ツアーを続行して、何を感じましたか?
オオキ:震災直後が福岡でのライブだったんですけど、ステージに出て行ったときの感じが一番印象的で、誰もがどうしていいか分からなくて「来ちゃったけど、すごく不安だな」みたいな空気が充満していて。そりゃそうなると思ったんだけど、MCでひとこと言っただけでみんなの意識がひとつになったから、言葉ってこんなにも大事なんだなと思って。マイクを使ってだけど1000人以上の人へ「不安だ、不安だって1時間を過ごすより、ポジティブなことを考えながら1時間を過ごしたら、それはめちゃくちゃ有意義な1時間になる」って、常にMCで言っていることなんだけど「悲しんでる場合じゃなくて、最高の瞬間をいっぱい作っていこう」と話した瞬間にいつもとは違う盛り上がりが生まれて。だからこれはずっと続けていこうと思いました。電力不足の問題もあったので「大丈夫だ」っていう会場に限って進めていったんですけど。でもやれて良かった。
サトウ:ステージに上がって自分の感情に気付くこともあるし、その福岡のときはオオキの言葉で俺も一緒になってベクトルがハッキリしたんですよ。武道館とか東北でのライブもそうだけど、最初のオオキのMCによって動けた部分はある。やっぱりコントロールできない感情もあったし、オーディエンスの反応も様々だったから。でもあのタイミングで『ALMA』っていうアルバムを持ってツアーを廻れたことは、忘れられそうにないですね。
ウラヤマ イチゴ(dr):僕は人間界きっての鈍感ボーイなので……。
オオキ:人間界じゃないから。
Interviewer:平賀哲雄
人が死ぬということ。何も出来ないことを痛感。
--(笑)。
イチゴ:あ、人間じゃなかった? まぁとにかく鈍感ボーイなので……。実感するのがワンテンポ遅かったんですけど、でもツアーファイナルで仙台公演とかやったときに……。
サトウ:ワンテンポがツアーファイナルだったの?
--ワンじゃないですね(笑)。
イチゴ:遅くてごめんなさい! でも来るのも大変な人がいる中、最後に仙台でやることが出来てよかった。待っていた人もすごく多かっただろうし。
--東北の公演に集まってくるオーディエンスは、元気ではあったんですか?
オオキ:行けたのが6月だったんですよね。震災発生から3ヶ月経ってから行ったのですごく元気だったんですけど……、これは本当に個人的な話になっちゃうんだけど、いつもキャンペーンとかで仙台へ行ったときにも来てくれるファンの子がいて。で、その子がライブの日も、あと前日に仙台入りしたときにも来てくれたから「久しぶり」って言ったら「私、家も流されちゃって、お父さんも亡くなっちゃったんです」って本当に涙を堪えながら話していて……。そのときに「あ、こういうことなんだな。こういう人が本当に何万人もいるんだな」って思って。何万人も亡くなったっていうことは………………、ちょっと待ってください。申し訳ない………。
--大丈夫です。
オオキ:その5倍とか10倍のね、悲しい人がいっぱい生まれているんだなということに………「これか」と思って。もちろん想像はしていたんだけど、その人に何も出来ない結果がある……。それはすごく悩んだし、仙台の当日のライブも……………、来た人の中にもそういう人がいて、それは書き込みで知ったんですけど。人が死ぬっていうのは本当にそういうことなんだなって実感して。何も出来ないんだなっていうことを痛感してしまったんです。とは言え、音楽を信じてやるしかないんだなっていう覚悟は逆に強まったというか。だから一種の切なさもあり、迎えたライブだったなと。逆に「来てくれてありがとう」というか。こんなただの音楽、ライブというものを頼りにしてくれる人がいるっていうことにすごく感謝できたかな、その日は。
--そのツアーから4ヶ月。どんなモードで、どんなことを考えながら音楽と対峙していたんでしょう?
オオキ:ずっとやってきたことは間違っていないし、震災前も今も同じことを考えているんですけど。ただ、何にも出来ないかもしれないし、何にも助けられないかもしれないけど、やっぱり俺たちには音楽しかやることがないんだから、という想いがより強くなったので。本当に命懸けでやろうって。その想いは日々強くなりますね。いろんなことを恐れずやっていこうと。で、新曲は常に作っていないと落ち着かない人間なんで、それはいつ発表できるかは分からないんですけど、いろいろ作ってますよ。でも歌詩は悩みます。「震災があったからでしょ」って思われたらこそばゆいし、だけどそこに触れないのもおかしいし。だったら直球で忌野清志郎さんみたいに反原発ソングを作っちゃおうかなと思ったり。今はそういうところで悩んでますね。でもきっと真っ直ぐやると思います。
--このタイミングで『Second line & Acoustic collection』のようなアルバムを発表しようと思ったのは?
オオキ:これはバンド結成から15周年、デビューアルバム『創』のリリースから10周年っていうタイミングがちょうど良かったのもあるし、Second lineっていうシリーズも7作集まったし「ミニアルバムぐらい出せればな」っていうぐらいの気持ちから始まって。で、アコースティックライブの評判がだんだん良くなっていたので、それも作品にしたいなと思って。その空気感の似ているふたつを合わせれば、俺らのもうひとつの一面というか、ちょっと大人っぽい雰囲気を出せるんじゃないかなと。もう34歳なんで、そういうアルバムもいいんじゃないかなって。腰も痛いので(笑)。
--アコースティック始めた理由がソレは嫌です。
一同:(笑)
--今作の仕上がりにはどんな印象を?
サトウ:Second lineシリーズを4年ぐらいにわたって継続していたんですけど、作っている時期がバラバラで。でもそれがまとまってコンパイルされると、いろんな面白みがあって、いろんな楽しみ方があるなって感じましたね。
イチゴ:同じ曲なのに印象がすごく変わるというか。メロディと歌詩は同じで、聴こえ方をガラッと変えたいと思って作っていたんですけど、実際に同じバンドなのに違うバンドの曲を聴いているみたいな面白さはある。かっこわらい。
--……。
オオキ:なんで、かっこわらい? ちなみに今のイチゴのやつは、俺がよく言っている言葉で。人のコメントをパクって、かっこわらいってなんだよ?
一同:(爆笑)
--サラッとパクリましたね。
オオキ:昔「オオキ、良いギターフレーズ出来たんだよ」って聴かせてもらったのが、俺のパクリだったんですよ。その前日に俺が聴かせたやつで。
--(笑)。なんで? その事実を忘れちゃって聴かせたの?
イチゴ:バカなんでしょうね!
--「あ、俺、良いフレーズ、思い付いた」と思って聴かせてるんですよね?
イチゴ:そうそうそう!「俺、すげぇ」みたいな。
オオキ:まぁでも今回のアルバム『Second line & Acoustic collection』は、気楽な感じでしたね。インディーズから出してもいいかなぐらいの。そしたら「これは、もしかしたら「こっちの方が良い」って言われちゃうかもしれない」って思うぐらい出来が良くて。まぁ良い悩みなんですけどね。だからここから知ってくれる人が多くなるかもしれない。
--そのアルバムと同時リリースのライブDVD【LIVE TOUR“ALMA”in 日本武道館】。自分はこの公演を生で観て、ACIDMANの音楽におけるリアリティが増したなと思いました。特に『廻る、巡る、その核へ』は、東日本大震災そのものを表現した音楽のように感じたんですが、あの曲を披露するにあたってどんなことを考えましたか?
オオキ:実はサトマには「やっていいと思うかな?」って相談したんですけど「良いと思うよ」っていう意見をもらえたので、やったんですよ。ただ、震災をかなり連想させるなと思って。映像の中に木が抜けていくシーンもあるし、津波を連想させちゃうかもしれないと。でも最後に「未来を願うだろう」ってポジティブに歌っているから、暗い歌だけどネガティブな気持ちを伝えようとしている訳ではなく、命のことを伝える歌だからこそやろうと思いました。命のことを本気で考えると、決してハッピーな気持ちじゃなくて、すごく苦しくて真っ暗な宇宙に取り残された感覚になると思うんですね。でもそれが生きるってことだなと思って。取り残された人間が自分の力で小さな光を見つける。そこへ向かって一歩でも先へ進むっていうことが、生きることだと思うんで。残酷だけどすごく愛のあるメッセージだったりするので、今臆さずに、気遣いすぎないでやっちまおう!っていうことでやりましたね。
--オオキさんは「日本の音楽はまだまだ捨てたもんじゃない。日本のロックはまだまだ捨てたもんじゃない!」と叫んでいましたが、その背景にはどんな想いがあったんでしょう?
オオキ:あのときは何にも言うことを考えてなくて真っ白になって。ただ、さっきも言ったんだけど、今回のツアーは感謝の気持ちがずーっとあって。で、武道館の客席を見たら、本当にいろんな人が来てくれていて。こんなこと言えるバンドもいないだろうし、10分もあるシュールな曲と映像を知ってくれているファンがあんなにいる国もなかなかないだろうし、震災のこともあったし、人間、日本人は諦めることも多いけど全然捨てたもんじゃないなと本当に思って。日本は捨てたもんじゃないし、諦めないし、日本の音楽もこんなにもあんなにも素晴らしいオーディエンスがいるんだから。それはもちろん俺らのことだけじゃなくて、他にも最高のバンドはいっぱいいるし、本気で身を削って音楽やってる最高の奴らがいっぱいいて、それがただ単に世界に響いていないだけで、みんな誇りを持ってやってるから。だから世界のどんなミュージシャンより友達のバンドを見ている方が「格好良いな」って心の底から思う。そういう想いが溢れましたね。
Interviewer:平賀哲雄
ロックバンドはもう少し力を付けなきゃいけない
--イチゴさんは3度目の武道館公演、どんな印象や感想を持たれました?
イチゴ:うーんとですね、これは別に載せなくていいんですけど。
--載せたいんですけどね。
イチゴ:いつも通り緊張していまして。かっこあせ、みたいな。
オオキ:前のインタビューのときもね……あのインタビュー、すごく評判が良くて見させてもらったんですけど、イチゴくんの言葉はね、終始訳がわかんない。
一同:(笑)
オオキ:難しい話になると理解ができないから「難しい話ですね。もうついていけないです」とか、そんなことばっかり言ってる(笑)。
イチゴ:成長してないってことですか?
--箸休めみたいな感じになっちゃうんです。文章におこすと、どうしても。
一同:(爆笑)
イチゴ:言いましたね!
--僕はそのつもりでインタビューしている訳ではないですよ。編集するとどうしてもそうなるんです。オチになったり。
イチゴ:良いんです。箸休めになりたかったんです。
--すみません。真面目な話に戻っちゃうんですけど、これから音楽の役割はどうなっていくと感じていますか?
オオキ:音楽ってやっぱり生きることには直結していないと思うんです。衣食住には関わってないから。でもすべてのものは振動によって形作られているんですね。量子力学で言うと。あらゆるものを細かくしたら音楽なんです、すべて。すべては波長で、弦が揺れることによってそいつは形を成して、くっつき合って、共鳴し合って、無機物だったり有機物だったりいろんな形になっていく。ということを考えると、生きることには直結していないんだけど、万物すべての始まりはやっぱり音楽なんです。それは歌とかメロディとかじゃなく、響きという意味で。物理的にそういうことになっているということは、今鳴らしている音とか、喋っている波長とか、そういうものはあらゆるものに影響を与えるんだなって、ちょっとオカルティックな考えの方が好きで信じていて。そういうものの一部にいつか成れたらいいなと思うし、黄金のコードというか、黄金の響き、和音をひとつ鳴らせる可能性があるのかもしれないと思うと「最高だな」って。だから今後も芸術として、そうした最高のものを常に目指して進んでいきたいですね。
--前回のインタビュー時とはまた状況が変わっているので、敢えてもう一度聴きたいんですが、これから日本の音楽シーンはどうなっていくべきだと感じていますか?
オオキ:やっぱり日本人の特徴としては流される。ビジネスが根付いちゃっているので。でもその価値観はきっと崩壊すると思う。だから「俺たちが変えてやるぜ」っていう感覚よりは「真意を持って正しいことをずっとやっていればいつかみんな気付く」というスタンスで在りたいなと。きっとみんな変わるから。それはなんか信じてるんですよね。別に俺らが生きている時代じゃなくてもいいんだけど、その日本人の感覚っていうのはもう少し“自分で自分の道を選ぶ”“自分で自分が本当に良いと思った曲を買う”っていう風になるんじゃないかなって。そうなればいいなと思う。それはアイドルでもロックでも演歌でも何でも良いんだけど、流されすぎるのはあんまり良くないなと思う。上手く後ろで操っている大人の姿が、俺らみたいな場所にいると丸見えだから(笑)それによって買わされている現実は滑稽だし、残念だなと思うので。そういうところとは俺らみたいなバンドはずっと戦って、中指立て続けていくつもり。
--hotexpressは今年、今までにないぐらいアイドルをクローズアップするようになりました。そこには様々な理由や想いがあるんですけど、個人的にはアイドルファンがACIDMANを聴く未来、そしてACIDMANファンがアイドルを楽しむ未来があっても良いと思っていて。
オオキ:俺もそれは思う。
--様々な表現の魅力を否定するのではなく、もっと肯定し合うことがロックやアイドルだけでなく、シーン全体を面白くする為の起爆剤になると信じているんですが、そうした考えにはどんなことを思いますか?
オオキ:本当にすげぇ共感するし、俺は例えばチャートのTOP10全部ロックが良いなんて全く思っていなくて。でも今はアイドル、アイドル、アイドル、アイドル、まぁ固有名詞は出せないけど、なんか男の黒い集団がいて、アイドル、アイドル……みたいな。ロックが入ってないんですよ。それは俺たちの責任だと思うし、ヒップホップもそうかも知れないけど、コアでやっている人たちが肩を並べられていない。そこが肩を並べられる空気感になってほしいなと思っているだけで。俺もアイドルは全然好きだし、小学校のときにアイドルが好きで音楽を聴き始めたりする訳だし、そこからあーだこーだ理屈捏ね出して生まれたものがきっとロックだったりパンクだったりジャズだったり、そういうジャンルだったりするから。でもそういうところのシーンがちゃんと戦えないのは寂しいと思うので、ロックバンドはもう少し力を付けなきゃいけないんだろうなと思う。俺もその考えはずっと持っています。アイドルが悪いなんて思わないし、むしろ素晴らしいと思います。
--ちなみに今話した発想はACIDMANの影響を相当受けています。個人的な話でアレなんですけど、自分が対誰かや何かを肯定するように意識したのって、主にACIDMANの影響なんで。ただ、肯定するって否定する何倍も力を使うし、戦いだから、おかげで何度も苦しい経験をして。
一同:(笑)。
--その苦しい肯定の先に生まれる幸福や絆みたいなものも人生で学びました。って、なんか語ってますけど(笑)。今後ますますその力があらゆる次元で必要になると感じているんですが、どう思われますか?
オオキ:そういう力はすごく大事だと思う。俺もその考えは変わらず持っていて、その方が良くなるということもあるけど、相手を否定しちゃうと自分を否定していることと一緒になる。人間は自分の中にある嫌な部分が相手に見えるから否定しちゃうんです。ということは、自分も否定することになるから。まずそれを受け容れなきゃいけなくて。で、それを認めてあげなきゃいけなくて。それを愛してあげなきゃいけなくなる。その為には自分の中にある嫌な部分もとことん直す。楽な生き方って嫌なことを排除することではないから。嫌なことを受け容れて認めて乗り越えた先に「こんなに楽だったんだ、生きることって」って思える世界があるから。
--では、最後にシンプルな質問を。ACIDMANは今後どうなっていくと思われますか? もしくはどうなっていきたいですか?
オオキ:まずは……、2人組になるんですけど。
イチゴ:おい!
--満を持して。
一同:(爆笑)
イチゴ:あんまり上手いこと言い過ぎると、査定に響きますよ。
サトウ:「満を持して」っていいなぁ。
オオキ:もし本当に2人組になるときは使わせてもらいます。だってネガティブじゃないじゃん。
イチゴ:だったら俺も納得できるかもしれない。「満を持して辞めるんだ、俺」って。おかしいなぁ(笑)!
オオキ:まぁずっと続けていくことが目標だったりするんだけど、でも続けることだけが目標になってしまうとぶつかり合えなくなってしまうんで。やっぱり良い音楽を作るということが一番の目標。自分が感動できて「良い歌詩が書けたなぁ」「良いメロディだなぁ」って思える瞬間が一番で、それをやっぱりずーっとやり続けたい。その為には「誰を失ってもいい」っていう覚悟が必要。でも最終的に振り返ったときにこの3人だったら最高だなって思いますね。
Interviewer:平賀哲雄
Second line & Acoustic collection
2011/09/28 RELEASE
TOCT-27093 ¥ 2,619(税込)
Disc01
- 01.REMIND (Acoustic)
- 02.シンプルストーリー (Second line)
- 03.FREAK OUT (Second line)
- 04.spaced out (Second line)
- 05.赤橙 (Acoustic)
- 06.アイソトープ (Second line)
- 07.O (Second line)
- 08.香路 (Second line)
- 09.銀河の街 (Acoustic)
- 10.FREE STAR (Acoustic)
- 11.Ride the wave (Acoustic)
- 12.turn around (Second line)
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