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『Tequila the Ripper』リリース&Billboard Live 降臨記念。s-ken&小田原豊インタビュー

 世界のビートに乗せて、東京の街を生き抜いてきた“オールド・ディック”の言葉が駆け巡る――。5月23日、東京のクラブ・カルチャー/ストリート・ミュージックのドン、s-ken がBillboard Live TOKYOに降臨! 伝説のパンク・ムーヴメント、東京ロッカーズを牽引し、81年にメジャーデビュー。以降、ツバキハウスからインクスティック、青山CAYから新世界まで、時代を彩ってきた個性的なハコでイベントをオーガナイズし、レーベル&音楽プロデューサーとしては先進的なアーティスト達を輩出し続けてきたs-kenが、実に25年ぶりとなるニューアルバム『Tequila the Ripper』のリリース・パーティーを開催する。旧友の細野晴臣から新進女性サックス奏者・前田サラまで、参加アーティストの顔ぶれからも、その長いキャリアとディープな人脈が窺えるが、s-ken&Hot Bombomsのオリジナル・メンバー=窪田晴男(G)、佐野篤(B)、矢代恒彦(Key)、多田暁(Tp)、小田原豊(Dr)、ヤヒロトモヒロ(Per)も再集結。Billboard Live TOKYOのステージもs-ken&Hot Bombomsで立つことが決定した。リリース・パーティーを前にしたs-kenと小田原豊が、Bomboms結成時を振り返り、ニューアルバムを語る。

Interview: 君塚太

8ビートがない世界のストリート感

―小田原さんは1985年のs-ken & Hot Bomboms(以下、Bomboms)の結成に参加し、その後、当時メンバーだったレベッカが大ブレイクしたことで一時離脱、90年のアルバム『セブン・エネミーズ』で再合流という流れですが、まずは結成時の印象についてお聞かせください。

小田原:Bombomsに入って、とにかく大変なカルチャー・ショックを受けたんです。s-kenさんはもちろん、パーカッションにヤヒロトモヒロというすごい人がいて(笑)。ベースのあっちゃん(佐野篤)にしても、もうびっくりするほど個性派揃いでしたね。

―いわゆるロック・バンドという枠で括れない、メンバーですよね。

小田原:普通に「バンドやろうぜ!」という感覚とは全然違う。まずメンバーから、次々次々と聴いたことのないリズムを聴かされるわけですよ。「ブラジルにはロックの8ビートみたいなものはないんだよ」とか言われて、トモヒロくんの家でブラジルのビデオを観せられたんです。サンバでもない、歌謡ショーみたいなものなんですが「ほら、ドラムはいるんだけど、8ビートは叩いてないでしょ」って。ホントだ、すっげえなと。もう夢あふれるビートの世界だったんです。メンバーから色々と教えてもらっていると、最終的にはs-kenさんが出てきて、「次はこういう曲をやるから、豊はこんな感じで叩いてよ」と指示をしてくれるんですけど、それが知らず知らずに積み上がって曲が完成していくんです。

s-ken:Bombomsは初めに人脈ありきではなくて、自分の好きな音楽、興味を持っていたものをチョイスしていって、窪田(晴男)とメンバーを集めていったら、たまたまああいう形になったという感じなんです。ニューヨークに滞在していた時(75年よりヤマハ音楽振興会の特派員として渡米)から考えていたことだけど、パンク&ニューウエイブだけでなく、もともと好きだったニューオリンズファンクやサルサ、レゲエやスカ、ブーガルーなんかを全部ひっくるめた上で、ストリート感のある音楽をやりたかった。そういう美意識が当時ニューヨークでも、ちょっと失われつつある時代だったので。

―日本で使われていた形容でいえば「ワールド・ミュージック」的なものとはまた違った文脈でやるということですね。

s-ken:ワールド・ミュージックという言葉が日本で使われるようになったのは、90年代でしょう。Bombomsのメンバーを集め出したのは84年だから、スカでもレゲエでも、また日本でやっているミュージシャンは少なかった。ブガルーに至っては、何それ?って感じで。豊がカルチャー・ショックを受けたのも当然といえば、当然だったんじゃないかな。

東京サブウェイ・ジョー

―70年代の終わりのパンク・ムーヴメントは、80年代に入ってニューウェーヴと呼ばれるようになり、世界的にもジャズやスカを取り入れたバンドが増えてきました。

s-ken:そう。スタイル・カウンシルとか、スペシャルズとかね。パンク以前から聴いていた音楽を取り込んだようなものも出てきたので、これなら俺のほうがよく知ってるわと思いました(笑)。『ジャングル・ダ』(85年/ソロ名義のアルバムだが、同作のレコーディング時にBombomsのメンバーは集められた)には、ジョー・バターンの「サブウェイ・ジョー」が入っているけど、ニューヨークラテンの世界でもジョー・バターンが一番認められなかったような時期に、あえてカヴァーしたんです。このアルバムは当時ロンドンの「Face」という雑誌にも取り上げられて、そういったことをロンドンの人達が評価してくれたとするなら、やっぱり世界的なニューウェーヴの流れの中に自分もいたんだなと思います。
ただね、豊が好きな音楽、例えばザ・フーとかキンクスなんかも、もちろん僕は通過してきて大好きなんです。そこは豊との共通項は感じていましたよ。

小田原:s-kenさんはパンクからの流れで、日本のロック・ビートを意識しながら、世界のビートを融合させようとしていたわけですよね。僕にとっては初めての試み……それこそアポロに乗って月に行ったみたいな、ちょっと大げさですが(笑)、それくらいの新しい体験だったんです。具体的に言うと「サブウェイ・ジョー」のオリジナルは、ドラムが入ってないんですよ。もともとドラムセットでビートが表現されている音楽じゃないんです。そこにドラムを入れようというところから始まって、どんなビートにするのかトモヒロくんと2人でゼロから表現を考えていくわけですから、相当悩みましたね。

s-ken:トモヒロはアフリカや南米の音楽を聴いて育った(カナリア諸島で少年時代を過ごした)人だけど、歩み寄ってジャンル関係なく面白いものをつくろうという意識があるからね。結果的に「サブウェイ・ジョー」も東京の音楽になったんじゃないかな。『ジャングル・ダ』には「ゴールデン赤坂」という曲もあるけど、モータウンとサンバの中間くらいのビートで、これも往年の歌謡曲的な味もブレンドしてオリジナリティーがあると思います。「s-kenの音楽を聴いていると、浅草を歩いているような気分がする」と書いてくれた人もいたけど、まさにそういう音楽を目指していたんですよ。



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s-ken「Tequila the Ripper」

Tequila the Ripper

2017/03/22 RELEASE
QECW-1007 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.酔っ払いたちが歌い出し、狼どもが口笛を吹く
  2. 02.ジャックナイフより尖ってる
  3. 03.千の目、友にはふさわしき贈り物を
  4. 04.答えはNO!
  5. 05.HEY! TAXI! AMIGO!
  6. 06.夜を切り裂くテキーラ
  7. 07.オールドディック
  8. 08.最高にワイルドな夢を
  9. 09.月に吠える犬
  10. 10.泥水の中で泳ぐ鮫たち
  11. 11.嵐のなか船は出る
  12. 12.鮮やかなフィナーレ

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