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フォール・アウト・ボーイ 来日インタビュー~近況、リリース10周年を迎えた『インフィニティ・オン・ハイ』をピートが語る
約2年ぶりのジャパン・ツアーのために来日したフォール・アウト・ボーイ。ソールドアウトとなったツアーでは、新旧ヒット・ナンバーを網羅した、約半年のブランクを感じさせないタイトで熱いパフォーマンスを見せ、ファンを大いに沸かせた。また、今回の来日では、ONE OK ROCKのさいたまスーパーアリーナ公演にもスペシャル・ゲストとして参加した。今回Billboard JAPANは、東京初日のライブ前にバンドのベーシスト、ピート・ウェンツを直撃。近況、10周年を迎えた『インフィニティ・オン・ハイ』、『ゴーストバスターズ』リブート版のテーマ曲や最近お気に入りのアーティストについて話を訊いた。
◎2015年来日時のインタビューはこちらから>>>
TOP Photo: 後藤壮太郎
最近“アルバム”っていうフォーマットが堅苦しく感じてるんだ…
――調子はどうですか?
ピート・ウェンツ:いいよ、今日到着したばかりなんだけどね。今のとこ、特に時差ボケとかもないし。
――ライブをすること自体も久しぶりですよね。たしか、昨夏の終わり以来とか。
ピート:そうなんだ。でも、ちゃんとリハはしたから、多分大丈夫だと思う(笑)。セットリストはその日によって変えるけど、特に新しいことをする予定はないし。
――分かりました。週末には、ONE OK ROCKのアリーナ公演にスペシャル・ゲストとして出演しますが、過去に同じステージに立ったことは?
ピート:それがないんだ。でも、何度かハングアウトしたことはある。Takaは、過去に何度か俺たちのショーを観に来てくれたし。今回、俺たちに出演のオファーをくれたのは嬉しかったよ。しかも、日本のアリーナでプレイするのは初めてだから、楽しみにしてるんだ。
――彼らとのコラボや曲作りを一緒にする話などは?
ピート:前に、対談みたいのはしたことがあるんだけどね…。俺とTakaで曲作りをする計画もあったんだけど、スケジュールが合わなくてさ。でも、いずれできたらいいな、とは思ってるよ。
2017.3.22 FALL OUT BOY @ 新木場STUDIO COAST / Photo: 後藤壮太郎
――ピート自身は、ここ数か月どんな風に過ごしてましたか?ランウェイモデルもしてましたよね。
ピート:(笑)。あれはクレイジーなショーだった!あとは、まぁ色々ちょこちょこやってる感じ。ついこの間『Escape Plan 2』っていう映画の撮影に3日間ぐらい参加したんだ。
――へぇー、役どころは?
ピート:バグっていう役を演じるんだ。なかなか面白いと思うよ。デビッド・バウティスタと共演してる。知ってる?映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』でドラックス役を演じてる、元レスラーなんだけど。
――あ~、わかりました!
ピート:あとは、子供たちとハングアウトしたり、ゆっくりしてたよ。
――新曲作りは今のところしてない?
ピート:いつも何となくはしてるんだけど、特に目的に向かって、という感じではないな。終点は見えてない。
――今はまだニュー・アルバムを見据えてという感じではないんですね。
ピート:最近“アルバム”っていうフォーマットが堅苦しく感じてるんだ…。
――ドレイクの新作のように“プレイリスト”という形などは?
ピート:あのフォーマットは、彼にはピッタリだけど…。何曲かとか、色々なフォーマットを試してみてもいいんじゃないか、って。みんなもオープンに受け入れてくれるような気がするし。それか、“ヴィジュアル・エクスペリエンス”みたいなものとか。まだ定かではないんだけど模索中なんだ。
▲ 「Bloom」
――それに関連すると思うのですが、昨年の夏頃「Bloom」と題された映像を公開していましたよね。
ピート:そうそう!あれはみんなを混乱させてしまったみたいで…。当初みんなには「これはニュー・アルバムのティーザー?」って言われて、「いや違う」って感じだったし(笑)。とはいえ、プロジェクトについて理解してもらえたら、みんなオープンで、クールだと思ってくれたみたいだけど。ああいう風に、次のプロジェクトのアイディアを構想していってるんだ。
――映像のインスト曲は、どのように形になったのですか?
ピート:今夜のショーにも登場するインスト曲でもあるんだけど、【Wintour】っていうツアーをやった時、バイクに乗った人物が氷河を進むビデオを冒頭に流してた。その映像の音楽が、ちょっと80年代ぽい、シンセ調のインスト曲だったんだけど、「Bloom」の音楽はその延長線っていう感じだったんだ。ロードムーヴィー的な、エンパワーメントをテーマにした。確か、音楽自体はジョーが作ったんだと思うよ。
ベイビーフェイスがいなかったら、全く違うものになっていたと思う
――話は変わって、今年『インフィニティ・オン・ハイ』がリリースから10周年を迎えました。正確には、先月ですよね。
ピート:そうそう。
――ピート自身、アルバムについてバンドの公式Facebookに投稿していましたが、今作は『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』で大ブレイクした後にリリースされた初の作品で、その真逆をいった、バンドにとってターニング・ポイントとなったアルバムでした。
ピート:まさにその通り。このアルバムは、俺たちのキャリアにおいてとても大事なアルバムだ。多分、『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』以上に。『フロム~』と似たようなアルバムを作ることもできたけど、意識的にそうしない決断を下し、まったく違う作品を作った。不安は少しあったよ。「This Ain't A Scene, It's An Arms Race」を外部の人に聴いてもらった時、「この曲はどうかな~」って言われた。怖い部分もあったけど、同時に解放された部分もあった。曲がリリースされて、反響もそこそこ良くて、共感してもらえたような気がしたから。俺たちが今やってる、少し風変わりな音楽を作るきっかけ、そして基盤となったんだ。
▲ 「This Ain't A Scene, It's An Arms Race」MV
――しかも、本作にはベイビーフェイスやジェイ・Zなど意外な面々も参加しています。
ピート:ベイビーフェイスに関して話すと、当時俺は映画ばかり観てて、たまたま『プシーキャット』(原題:Josie and The Pussycats)を観た。あの映画の曲は、パンク・ロックを聞いたことがない人が作ってるパンク・ロックのようなんだ。全然純粋じゃないと言うか。「パンク・ロックを作る」ってなった時、たまにあることだと思うんだけど「パンクはこうだ、ああだ」とか「このバンドみたいなサウンドにしなきゃダメだ」とか頭ばっかりで考えて作ることが多い。あの映画の曲は、まるでエイリアンによって作られたパンク・ロックのように俺には聞こえた。誰かがエイリアンにパンク・ロックというのがどんなものか説明をして、それを元に作られたような。だから、これを手掛けた人と仕事がしたいと思ったんだ。それがベイビーフェイスだった、っていうわけ(笑)。彼とは2曲作って、その一つが「Thnks fr th Mmrs」だった。あの曲は、ベイビーフェイスがいなかったら、全く違うものになっていたと思う。これはベイビーフェイスに会った時、毎回言うことなんだ。「あなたがこの曲をこの曲らしくしてくれた」って。
ジェイ・Zは、当時俺たちのレーベルのボスで、まだそんなに売れてない頃からショーを観に来てくれたり、ファンでいてくれてた。だから、アルバムのイントロを担当してくれるか聞いたら、快諾してくれた。すごくクールで、スペシャルなことだったね。
――そしてあまり一般的には知られてないと思うのですが、「This Ain't A Scene, It's An Arms Race」のリミックスをカニエ・ウェストが担当しました。
ピート:確かに、あまり話題にあがらないな。知ってる人も多くないような気がするし。リミックスはカニエに頼みたかった。当時、同じレーベルに所属してて、多少知り合いでもあった。パトリックと何度か、彼の家に遊びに行ったりしてたし。実は、俺たちカニエの「Touch The Sky」のミュージック・ビデオでレポーター役を演じるはずだったんだけど、スケジュールが合わなかった、ってことがあって。で、カニエに頼んだら面白い…リミックスをしてくれた(笑)。
――カニエのヴァ―スがですね(笑)。
ピート:そうそう。リル・ウェイン、タイガ、トラヴィー・マッコイとかが参加してるヴァージョンもあって、誰かが適当にマッシュアップしたと思われてるかもしれないんだけど、本当に俺たちがみんなを集めてやった公式のものだ。
――しかも、何人かの参加メンバーやブレンドン(・ユーリ/パニック!アット・ザ・ディスコ)とそのバージョンを生パフォーマンスしていましたよね。
ピート:あぁ、確かラスヴェガスで【VMAs】に出た時にパフォーマンスした。リル・ウェイン、タイガ、トラヴィー、それとブレンドンも。
▲ 「Thnks fr th Mmrs」MV
――現在カニエの奥さんであるキム・カーダシアンが「Thnks fr th Mmrs」のミュージック・ビデオに出演していたのも何かの縁ですね。
ピート:アハハ。キムはクールだよ。あの当時…ビデオに出演してくれる人を探している時にキムに連絡したら、興味があるって言ってくれて…。
――元々、バンドのファンだったのですか?
ピート:彼女が自分をファンと言うかは、さっぱり分からないけど、当時はそうだったのかも(笑)。ビデオには、快く出演してくれたけど。今でもたまにメールしてるけど、すごくクールな女性だ。
俺たちが、これまで極度に政治的なバンドだったことはない
――昨年公開された『ゴーストバスターズ』リブート版のためにリメイクしたテーマ曲について聞きたいのですが、映画共々賛否両論がありました。
ピート:確かに。
――どんなことを意図して作った曲で、批判に対するレスポンスがあれば教えてください。
ピート:俺たち全員、昔から『ゴーストバスターズ』が好きで、中でも特にパトリックが大好きだったから、「やろう」ってことになったんだ。映画自体が、様々な非難の矢面に立たされた感があるよね―とりあえず何でも批判する人々、リブートに対して嫌悪感を持っていた人々…最近多いから、ネット釣り師的な人々、そういう人たちがすべてあの映画に矛先をむけた。とはいえ、快く思ってた人々もいた。アンディと一緒に映画のプレミアに行ったけど、多くのファンたちが集まってたからね。俺はオリジナルのバージョンが好きだけど、リブート版はそれとはまったく違う客層をターゲットにした映画だ。俺たちは、ほんのわずかな関わりしかなかったけど、映画に対する嫌悪感が飛び火してきたって感じなのかな。
――あのミッシー・エリオットまで参加していたのに。
ピート:最高じゃんね!コラボできて、すごくクールだったよ。何年か経った後に再評価されるんじゃないかな。「史上最高の映画だ!」とかそこまでのレベルではないと思うけど。必要以上に、酷評されたとは感じるな。
▲ 「Ghostbusters (I'm Not Afraid) feat. Missy Elliott」 (Audio)
――先ほど、新曲づくりに関して少し訊きましたが、最近の、特にアメリカの政治情勢が最近書いた曲に影響を与えているとは感じますか?
ピート:俺たちが、これまで極度に政治的なバンドだったことはない。ブッシュ政権の時にも作品は発表していたけど…俺個人の意見としては、自分がどんな人間なのか、というのは政治姿勢にも関係してくる。共感性の高いの人にとって、理解、思いやり、他の人間の考えに対してオープンになることは重要なことだ。それは自分以上に大きなもので、多くの人々に影響を及ぼすものだ。同時に、今アメリカ…そして国際社会の大半で、2つの対立するグループによる世の中への見解から、大きな溝が生まれている。世代、年齢、性別、人種などもそうだ。父親として…みんなに俺と同じ見解を持ってほしいとは思わないけど、寛容さ、共感性は大切だと思う。
――そういう問題について話し合うことも大事ですよね。物事は白黒ではないので。
ピート:あぁ、きちんとした会話の場を持つことは重要だ。俺にとってハードなのは、その人の人柄に問題があるからって…どの人にも基本的人権は与えられるべきだと思ってる。でも、それが間違ってると思うんだったら、歴史の流れに逆行してる。繰り返しになるけど、寛容さと理解はとても重んじてることだ。だから、それが作っているアートに、自ずと現れないわけはないと思う。とはいえ、自分の政治的な考えを、みんなに無理矢理押し付けることは絶対にしたくない。それは、俺たちらしくないから。
2017.3.22 FALL OUT BOY @ 新木場STUDIO COAST / Photo: 後藤壮太郎
――では、最近お気に入りのアーティストはいますか?
ピート:たくさんいるよ。ナッシング,ノーウェア.(nothing,nowhere.)っていうバンドはすごくいい。ヒップホップなんだけど、ゴスっぽい要素も持ってて、面白いバンドだ。バべオ・バギンズ(Babeo Baggins)っていう女性ラッパーも好き。バーフ・トループ(Barf Troop)っていうグループの一員なんだけど、クールなんだ。インターネットとかSoundcloudに関して唯一好きなのが、新しいアーティストが山ほどいるところ。中でも、グレイトなものあれば、まぁそこそこいいものもある。
――最近ではアーティストもよく作っている、Spotifyのプレイリストにしてみてもいいかもですね。
ピート:ついこの間作ったんだよ!“semi-super sad”っていうタイトルなんだけど。この後、曲を追加しておくよ。
――では、最後に春にピッタリな1曲を教えて下さい。
ピート:ドラマラマの「Anything, Anything」。春を彷彿させる曲と言ったら、これだな。
ザ・ボーイズ・オブ・ザマー・ツアー ライヴ・イン・シカゴ
2016/10/21 RELEASE
UIXL-1001 ¥ 5,390(税込)
Disc01
- 01.シュガー、ウィアー・ゴーイン・ダウン
- 02.イレジスティブル
- 03.ザ・フェニックス
- 04.ア・リトル・レス・シックスティーン・キャンドルズ、ア・リトル・モア “タッチ・ミー”
- 05.スリラー
- 06.アローン・トゥギャザー
- 07.アームズ・レース~フォール・アウト・ボーイの頂上作戦
- 08.インモータルズ
- 09.ヤング・ヴォルケイノーズ
- 10.ダンス、ダンス
- 11.アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ
- 12.ユマ・サーマン
- 13.サンクス・フォー・ザ・メモリーズ
- 14.アイ・ドント・ケア
- 15.センチュリーズ
- 16.僕の歌は知っている
- 17.サタデイ
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