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野呂一生 CASIOPEA 3rd The organization 40th anniversary インタビュー
結成以来、数多の作品をリリースし、華やかさと巧みな技術を兼ね備えたライブ・パフォーマンスで日本を代表するフュージョン・バンド、CASIOPEAが今年結成40周年を迎える。今回は4月に40周年記念ライブ・ツアーの開催を前に、リーダーの野呂一生にインタビューを敢行。40年を振り返り、印象に残った楽曲や今のグループの状態、現在のフュージョン・シーン、そして来たるツアーについて語ってもらった。
“スリル、スピード、サスペンス”ですね(笑)
――CASIOPEAが、今年結成40周年を迎えますが、今のご感想はいかがですか?
野呂一生:40周年といっても、結成40年周年で、デビューはその2年後になります。さらに40年の間には、6年ほどブランクがありましたから、そういう意味では正確な40周年とはいえない部分もあるんですけど、ただその40年間、何事もなく生きてこられたというのは嬉しいですよね。やっぱりバンドっていうのは、人間関係とか、いろいろありますから、それを含めても、40周年というのは、めでたいことだなって思います。
――グループが40年間続いてきたということは、それを応援してくださっているファンの方がいらっしゃったということでもありますよね。
野呂:そうですね。ファンの方がいらっしゃってこその、40周年だと思います。
――CASIOPEAというグループが、40年間ファンの人たちから愛されてきた、他のグループにはない魅力があるとすれば、どういったところだと思われますか?
野呂:きっちりアレンジしているというところはありますよね。セクション、セクションによって色分けしているという。そういったところは、ジャズの方々とは違うところかも知れません。当初はインプロヴィゼイションというものがあまり得意ではなかったので、それを補うためにアレンジをきっちりとして、構成をしっかりして、という方向になったのが始まりだったんですけど。それがかえって個性というような形で出てきたのは、ラッキーだったなって思います。
――デビュー当時のキャッチフレーズが“スリル、スピード、テクニック”でしたもんね。
野呂:今は“スリル、スピード、サスペンス”ですね(笑)。やり始めた当時というのは、打ち込みとかも全然なかったので、いかに正確に弾くか、というやり方がメインになっていた時代だったんですね。でも今はコンピュータでプログラムした方が、よっぽど正確だという(笑)。だからそういったシステムが世の中に出回ってきてからは、正確性というよりは、むしろハプニング性というか、そういう方向に力を注ぐようになってきました。アレンジをキッチリとは書くんですけど、それだけだとハプニング性がゼロですから、最近は、自分が書いた素材が、バンドでやったらどういう風になるか、というハプニングがすごく楽しいなという方向になってきました。
――“神保彰伝説”みたいなものがありましたよね。ガイドを聴かずにドラムを叩いても、リズムがまったく乱れないという。
野呂:神保くんが加入した直後に作った『THUNDER LIVE』(1980年)というライヴ・アルバムで、ドラム・ソロがあるんですけど、実際のソロが長過ぎて、当時のLPレコードには収まり切らなかったのでソロの間の何分かをカットして繋げたんですけど、まったくリズムが狂っていなかったという(笑)。
――1990年に鳴瀬喜博(b)さんが加入してから、そのハプニング性がさらに増した気がします。
野呂:そうですね。書いた通り弾いてくれないですから(笑)。いちばんのフックになる部分は、ちゃんと弾いてもらっていますけど、あとの細かいところは、もうお任せしてます。だから今は、デモ・テープのようなものは、あえて作らないんです。デモを作ると、自分の中で一回完成してしまって、実際の音とのギャップが出てきてしまうので、今はあえて譜面だけにしています。
――特にCASIOPEA 3rdになってから、その傾向が顕著になっていますよね。
野呂:そうですね。譜面の書き方もずいぶん変わってきていて、昔は一人一段の4段譜だったんですけど、それが実に読みにくいということが判明しまして(笑)、だんだん段数を縮めていって、今は2段で書いてます。
――結成当時と今とで、大きく変わったところがあるとすれば、どういったところでしょうか?
野呂:若い頃は、理論的背景というのがまだまだ薄かったので、そういう部分は、今のほうがより深みが出てきたかなとは思います。ただテクニックとかの部分については、やっぱり若い頃の正確なテクニックというのは、今では再現できない部分もあったりします。そういう部分を、その深みで補っているという。
――初期の「Black Joke」や「Galactic Funk」などといったテクニカルな曲は、今ライヴで演奏するのはたいへんだったりするんですか?
野呂:たいへんですよ(笑)。「Space Road」とかも。やっぱり若気の至りですから(笑)。CASIOPEA 3rdを立ち上げた時に、「Space Road」を久々にやりましたけど、あれはしんどいですね(笑)。
公演情報
CASIOPEA 3rd LIVE 2017
The organization 40th anniversary
ビルボードライブ東京:2017/4/9(日)
1stステージ開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ開場18:30 開演19:30
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ビルボードライブ大阪:2017/4/15(土)
1stステージ開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ開場19:30 開演20:30
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名古屋ブルーノート:2017/4/16(日)
1stステージ開場16:00 開演17:00 / 2ndステージ開場19:00 開演20:00
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CASIOPEA 3rd Fan Meeting~the Organization 40th anniversary
渋谷DUO Music Exchange:2017/5/20(土)
開場17:00 開演18:00
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Interview: 熊谷美広
この間、初めてダーティ・ループス聴いたんですけど、ぶっ飛びましたね(笑)
――この40年の中で、野呂さんにとって、特に思い出深いアルバムや曲はありますか?
野呂:印象深いのは、初めてロサンゼルスでレコーディングした『EYES OF THE MIND』(1981年)ですね。ハーヴィー・メイソンのプロデュースで、全部そぎ落とされて、骨と皮だけになっちゃったというか、そんなサウンドになって、えーっ、こんなになっちゃうんだっていう驚きはありました。あと『MAKE UP CITY』(1980年)は、神保くんが加入して最初のスタジオ・レコーディングで、ある意味その後の方向性が如実になってきた作品だったと思います。他には、第2期の最初に出した『THE PARTY』(1990年)ですね。スタジオでライヴで演奏して、それをスタジオ盤のように加工した音源と、ライヴのように加工した映像との2種類を出すという、稀に見る無茶な企画でした(笑)。しかも映像はフィルム撮影で、デジタル録音の音とシンクロさせるのがたいへんで、編集にもものすごく時間がかかりました。
――楽曲で、印象深いものはありますか?
野呂:作曲者としていちばん力が入ったのは、「UNIVERSE」(『MARBLE』収録、2004年)という、25分の曲ですね。あれは、可能な限り自分を痛めつけた曲です(笑)。デビュー25周年記念の曲だったので、テンポは125で、2度と5度の音を使わないで、曲の長さも25分きっかりにするという制約の中で作ったので、稀に見るハードな楽曲でした。あれが自分の、コンポーザーとしていちばん凝った作品だと思います。
――「ASAYAKE」や「FIGHT MAN」など、ずっとライヴで演奏し続けている人気曲というのがありますよね。そういった曲については、どのような印象をお持ちですか?
野呂:「ASAYAKE」は18歳ぐらいの時にイメージしたものを書いた曲で、まさかその曲を60歳になってもやることになるとは(笑)。「FIGHT MAN」は気軽に書いた曲だったんですけど、やってみたらなかなか面白いじゃん、ということになって、今でもやってます。あと「TAKE ME」なんかも、18歳か19歳の頃に、ボサ・ノヴァ調の展開がやってみたくなって一生懸命見よう見まねで書いた曲でした。
――そして今、CASIOPEA 3rdとして活動されていますが、今のグループの状態はいかがですか?
野呂:すごく自由だなって感じています。自分でも、完成したものを追わなくなってきているし、面白くなればいいという、そういう部分ではすごくうまくいっていると思います。完成度を求めるのではなくて、こういう風にやってみようというアイディアをみんなで持ち寄って、それがサウンドになっていくという。大高清美さんという女性のキーボーディストが入ったことによって、少し柔らかいムードも出てきましたし。まぁ、本人はかなり男っぽい感じですけど(笑)。
――野呂さんご自身は、現在の日本のインストゥルメンタル・ミュージックのシーンについては、どのような印象をお持ちですか?
野呂:発表するチャンスがなくなっているのは、若い人たちにとってはかわいそうだなって思います。我々がデビューした頃は、そういったものの過渡期で、テレビの番組などでも見ること、聴くことができたんですけど、今はそういう場がなくなってて、そういったものが聴けるのはネットの中だけ、という感じになっちゃいましたから。だからもっといろいろなメディアで、そういったものが盛り上がってくれたら、もっと素晴らしいミュージシャンがたくさん出てこれるのにな、という気持ちはあります。
――ダーティ・ループスなどは、CASIOPEIAをコピーしていたって言ってますもんね。
野呂:この間、初めてダーティ・ループス聴いたんですけど、ぶっ飛びましたね(笑)。なんだこれは、って(笑)。彼らがぼくたちの音楽を聴いてくれていたということは、とても光栄なことだとは思いますけど、一世代変わったな、という気持ちもありますよね。新しいものになっているというか。
▲ 「Hit Me」 Dirty Loops
――今回40周年記念ライヴが、Billboard Live TOKYOで行なわれますが、どういうライヴになりそうですか?
野呂:第1期、2期、3期という、時系列に沿った楽曲を演奏することになると思います。実は今年に入って、初のライヴなんです。なので、みんなかなり力を入れてやると思いますので、ご期待ください。Billboard Live TOKYOのライヴは、ステージと客席との距離がすごく近いので、この会場ならではのパフォーマンスを楽しんでいただけると思います。
――CASIOPEA 3rdとしては、今年はどのような活動を予定しているのですか?
野呂:40周年記念の、3枚組のベスト・アルバムを出すことになっていて、夏にCASIOPEA 3rdのツアーもあります。あと個人的には、ぼくのもうひとつのプロジェクト“ISSEI NORO INSPIRITS”も結成10周年で、10周年記念アルバムもリリース予定です。今の年齢でできることを一生懸命やりたいですね。昔に戻りたいといったことは全然なくて、今の自分の知識と体力が最大限に活かせるものをやっていきたいと思います。
公演情報
CASIOPEA 3rd LIVE 2017
The organization 40th anniversary
ビルボードライブ東京:2017/4/9(日)
1stステージ開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ開場18:30 開演19:30
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ビルボードライブ大阪:2017/4/15(土)
1stステージ開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ開場19:30 開演20:30
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名古屋ブルーノート:2017/4/16(日)
1stステージ開場16:00 開演17:00 / 2ndステージ開場19:00 開演20:00
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CASIOPEA 3rd Fan Meeting~the Organization 40th anniversary
渋谷DUO Music Exchange:2017/5/20(土)
開場17:00 開演18:00
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Interview: 熊谷美広
A・SO・N・DA ~A・SO・BO TOUR 2015~
2015/12/09 RELEASE
HUBD-10937/8 ¥ 5,907(税込)
Disc01
- 01.CATCH THE WIND
- 02.FEEL LIKE A CHILD
- 03.MODE TO START
- 04.DAYS OF FUTURE
- 05.HELLO THERE
- 06.THE SKY
- 07.MIDNIGHT RENDEVOUS
- 08.TIME LIMIT
- 09.BACKTALK BABE
- 10.ORGANIC EVOLUTION
- 11.SMASH!
- 12.BRAIN TO BRAIN
- 13.KA.NA.TA
- 14.A.O.ZO.RA
- 15.ARMFUL
- 16.PAL
- 17.TOKIMEKI
- 18.ARROW OF TIME -E.C.-
- 19.ASAYAKE -E.C.-
- 20.太陽風 -E.C.- (全20曲収録)
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