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スペンサー・ウィギンス初来日記念特集&思い出ソングのプレイリストを公開!来日公演に向けてのコメントも到着
“サザン・ソウルの秘宝”スペンサー・ウィギンスの奇跡の来日公演が2017年4月に開催される。1960年代、メンフィスのレーベル、ゴールドワックス・レコードで活動し、当時はヒットには恵まれなかったものの、マッスル・ショールズの伝説的な「フェイム・スタジオ」での録音は後に高く評価され、“メンフィスが産んだ最も優れたシンガーの1人”としての名声を不動のものとしたスペンサー。今回の初来日ではアル・グリーンやアン・ピーブルズなど数々の名作を決定付けたハイ・リズム・セクションからホッジズ・ブラザーズ、そしてスペンサーの兄弟のパーシー・ウィギンスを従えたドリームチームが実現する。これを記念して、ソウル音楽評論家の鈴木啓志氏にスペンサー本人へのメール・インタビューの内容も盛り込みつつ生い立ちから現在に至るまでの軌跡を辿ってもらった。
ソウル・ファンを奮い立たせる奇跡の来日
▲『フィード・ザ・フレイム
ザ・フェイム・アンド・
XLレコーディングス』
スペンサー・ウィギンス来日の噂ほどソウル・ファンを奮い立たせた出来事は近年なかっただろう。目立つヒット曲もなく、また決して多くの作品を残してきたとはいえない彼になぜかくも注目が集まるのか。その答を探そうとした時、確信めいたものがうちに湧き上がってくる。78年に彼の作品が日本独自でLPの形で紹介されてから、ほとんど途切れることなく何らかの形で彼は紹介され続け、いわば伝説が出来上がった。積極的に耳を傾けた人は誰しもがその歌のうまさに舌を巻き、サザン・ソウルの深さに恐れおののいた。一度そのとりこになった人は未だにそのすばらしさを讃え、その衝撃の大きさを口にする。彼を最高のシンガーと考える人はファンのみならずミュージシャンにもいる。
そんな彼を日本に呼ぼうという話は随分前からあった。2000年代に入ってゴスペルのCDをリリース、まだ元気に歌い続けていることがわかったので、招聘の話が持ち上がったのだ。ところが彼に改めてソウルを歌う気がないと知らされた。その後海外に行って心境の変化があったようだ。アル・グリーンやキャンディ・ステイトンがゴスペルの世界からソウルに再び戻ったことに関しても神から授かった才能と語っているので、それはまさしく彼自身のことでもあるのだろう。ようやく来日が実り、個人的にも何十年かの思いが叶ったという感じだ。
▲Percy and Spencer Wiggins live in Porretta Soul Festival 2011
一緒に来日するパーシー・ウィギンスは実の弟だ。42年にメンフィスで生まれたスペンサーの一つ違いが彼だった。兄弟は他にも5人いたが、当時としては普通で、3ベッドルームの家で育てられたという。ところが大学に進んだのはパーシーだけで、ナッシュヴィルの大学に進み、その地が音楽的拠点となった。端正で生真面目なパーシーの歌に対し、ダイナミックで破天荒とも言えるスペンサーの歌だが、その中にも計算され尽くした緻密な構成があった。いやそれは計算されたものではなく、まさに神から授かった天賦といえるものだったのだろう。彼はメンフィスでウィリー・ミッチェルと並ぶバンド・リーダー兼トランペッターのジーン”ボーレッグズ”ミラーに誘われ、そのバンド・ヴォーカリストとなった。20年くらいそのバンドで歌っていたというからそれは50年代末に始まったのだろう。まだ高校生だった彼はB.B.キング、ボビー・ブランド、レイ・チャールズの3人がアイドルで、彼らの曲などをステージで歌った。B.B.の「スウィート・シックスティーン」は後にレコーディングしているほどだ。ちなみに弟のパーシーは大のサム・クック・ファンだったという。
しかし実際にレコーディング・デビューしたのは65年のこと。ゴールドワックスのクイントン・クランチにスカウトされ、その所属アーティストとなった。当時のジーン・ミラーのバンドにはキーボードのアイザック・ヘイズやギターのクラレンス・ネルソンらが在籍し、いわゆるゴールドワックス・サウンドと言われるスタックス・サウンドやハイ・サウンドに拮抗する音を作り出していた。「テイク・ミー」や「オールド・フレンド」といった名作が生まれたが、特に後者はニューオーリンズのチャートで長く1位を続け思い出深いという。だがファンにとって思い出深いとなればもっともっと多くの作品を挙げることができるだろう。
▲Spencer Wiggins - Uptight Good Woman
だがこうした60年代のサザン・ソウル全盛も彼には微笑まなかった。同じレーベルのジェイムス・カーが曲がりなりにもヒット曲を生み出し、アルバムも2枚作ったのに対し、スペンサーは8枚のシングル盤が無言で語りかけるのみだ。それでも彼はくじけなかった。60年代末にマスル・ショールズにスタジオを移し、さらにフェイム、サウンズ・オブ・メンフィスに新たな契約を求めていった。このことが実は彼の評価をさらに高めているのだ。70年代に入って自分を見失い、方向性をなくしたサザン・ソウル・シンガーが多くいた中でも彼は全くその力を落とさずに歌い続けた。
自然体、彼の良さを一言で言えば、それに尽きるだろう。無理せず自然に流れるように歌ってあのすごさ。当分彼は教会ではゴスペルを歌い、ソウルをリクエストされればそれを披露するという。その自然な振る舞いが彼の歌手生命を長くさせているのだろう。今回の来日では、「アップタイト・グッド・ウーマン」、「ワンス・イン・ア・ホワイル」「ソウル・シティUSA」、そしてアレサ・フランクリンのカヴァー「アイ・ネヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」などを歌う用意があるというから何とも楽しみという他ない。スペンサー・ウィギンスが目の前に現れるのはもうすぐだ。
スペンサー・ウィギンスが選ぶ思い出ソングのプレイリストを公開!
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来日公演情報
スペンサー・ウィギンス
featuring パーシー・ウィギンス & ホッジズ・ブラザーズ(Hi Rhythm Section)
"Memphis Soul Spectacular"
ビルボードライブ東京
2017年4月17日(月) - 18日(火)
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
⇒詳細はこちら
メンバー
スペンサー・ウィギンス / Spencer Wiggins(Vocals)
パーシー・ウィギンス / Percy Wiggins(Vocals)
チャールズ・ホッジズ / Charles Hodges(Keyboards)
リロイ・ホッジズ / Leroy Hodges(Bass)
デリック・マーティン / Derrick Martin(Drums)
パトリック・ムーディー / Patriq Moody(Trumpet)
マイケル・ロバーツ / Michael Roberts(Saxophone)
※当初出演を予定しておりましたイーライ "ペーパー・ボーイ" リード(Guitar)はアーティストの都合により出演キャンセルとなりました。
関連リンク
Text: 鈴木啓志
フィード・ザ・フレイム ザ・フェイム・アンド・XLレコーディングス
2010/07/21 RELEASE
PCD-17380 ¥ 2,750(税込)
Disc01
- 01.I’M AT THE BREAKING POINT (Mono)
- 02.WE GOTTA MAKE UP BABY
- 03.THIS LOVE IS GONNA BE TRUE
- 04.HOLDING ON TO A DYING LOVE
- 05.YOU’RE MY KIND OF WOMAN (Mono)
- 06.I CAN’T BE SATISFIED
- 07.I’D RATHER GO BLIND
- 08.LOVE WORKS THAT WAY
- 09.FEED THE FLAME (Mono)
- 10.MAKE ME YOURS (Mono)
- 11.OOH-BE OOH-BE-DOO (Mono)
- 12.TAKE TIME TO LOVE YOUR WOMAN
- 13.LET’S TALK IT OVER (Mono)
- 14.I CAN’T GET ENOUGH OF YOU BABY (Mono)
- 15.DOUBLE LOVIN’
- 16.LOVE MACHINE
- 17.LOVE ATTACK (Mono)
- 18.HIT AND RUN
- 19.BEST THING I EVER HAD (Mono)
- 20.WATER
- 21.LOVE ME TONIGHT (Mono)
- 22.CRY TO ME
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