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ジャズの帝王マイルス・デイヴィスの甥ヴィンス・ウィルバーン・Jr.にインタビュー



 マイルス・デイヴィスにゆかりのあるプレイヤー達によって結成されたマイルス Electric Band。『ビッチェズ・ブリュー』(1970年)から『TUTU』(1986年)までのエレクトリック・マイルスのレパートリーを再現するこのバンドには、マイルスの甥であり、『デコイ』(1984年)や『オーラ』(1989年)といった作品にも参加したヴィンス・ウィルバーン・Jr.と、マイルスの最長のコラボレーターの1人であり、後期マイルス・サウンドをシンセサイザーで支えたロバート・アーヴィング3世、さらに、ベーシストのダリル・ジョーンズらが参加している。今回、4月上旬に来日公演を控えるヴィンス・ウィルバーン・Jr.にインタビューを行い、バンドメンバーや偉大なマイルスとの思い出を語ってもらいました。
 さらに、ヴィンス、ロバート、ダリル、DJロジックの4名に、それぞれが推薦する“BESTジャズソング”を4曲ずつ選んでもらい、プレイリストを作成。このプレイリストはApple Musicで配信中なので、来日公演前にぜひとも一聴してほしい。
“日本人で最もマイルスに取材したライター”として知られる小川隆夫氏と、昨年発売された『MILES:Reimagined 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』の監修者でもある柳樂光隆氏の対談記事はこちら>

音楽に一切の妥協をするな、常に音楽を第一に考えろ

――今回、なぜエレクトリック・マイルスに焦点を当てたプロジェクトをやろうと思ったのでしょうか?

ヴィンス・ウィルバーン・Jr.:私のパブリシストからこのプロジェクトのもととなる話が来たんだ。カリフォルニアで開催されていた【Sunset Junction Street Fair】というフェスに、“Bitches Brew 40th Remix”という名前で一夜限りの結成をする機会があって、それでフルバンドを結成したんだよ。その後マイルス・デイヴィス・フェスティバルというのがあって、シカゴのMartyrsという会場でもプレイしたんだ。

――今回一緒に来日するバンドメンバーを少し紹介していただけますか?

ヴィンス:全員、最高の奴らだよ。メンバーのほとんどがマイルスと一緒にプレイした経験があって、彼と非常に深い関わりを持つプレイヤー達だ。同時にマイルスに対する深い愛情も持っている。誰もがマイルスによって厳選されたプレイヤー達だよ。

――ビルボードライブ東京と大阪で開催されるショーはどのようなものになるのか教えていただけますか?

ヴィンス:マイルスが手掛けた多くの音楽に対する私達なりの解釈を披露することになる。かなりファンキーな、グルーブ感のあるショーをお届けするよ。

――豪華なバンドメンバーですが、今後このプロジェクトでレコーディングを行う予定はありますか?

ヴィンス:イエス。実は今、スタジオで作業を進めているところなんだ。

――あなたは30年程前にマイルス・バンドとしてマイルスと一緒に来日もしていますよね? 当時のことで鮮明に覚えている思い出はありますか?

ヴィンス:ああ、あれは私の人生を変える大イベントだったな。叔父はブランドのイッセイミヤケが好きだったんだが、イッセイ本人と一緒にディナーをしたんだ。あとは、日本中を見渡せるほど高い場所でライブをやったこともあったけど、あそこからの景色は本当に美しくて、実に素晴らしかった。最近では、映画『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』のプロモーションで来日したよ。

――あなたがマイルスから受けた教えの中で一番重要なものは何でしょうか?

ヴィンス:音楽に一切の妥協をするな、常に音楽を第一に考えろ、かな。

――最後に、あなたにとってエレクトリック・マイルスの音楽とはどういうものでしょうか?

ヴィンス:明確なヴィジョンと世界平和を表現したものだよ。

――貴重なお時間ありがとうございました。来日公演を楽しみにしています。

ヴィンス:ありがとう、私も楽しみにしているよ。待ちきれないな。

ヴィンス、ロバート、ダリル、DJロジックが選ぶ「BESTジャズソング」

★ヴィンス・ウィルバーン・Jr.が選んだ楽曲
Blue in Green- Miles Davis
Naima- John Coltrane
Poinciana- Ahmad Jamal
Concierto de Aranjuez- Miles Davis

★ロバート・アーヴィング3世が選んだ楽曲
Midnight in Carlotta's Hair- Wayne Shorter
A Remark You Made- Weather Report
Runnin’- Earth, Wind & Fire
Spain (I Can Recall)- Al Jarreau

★DJロジックが選んだ楽曲
Bitches Brew- Miles Davis
Chameleon- Herbie Hancock
125th Street Congress- Weather Report
Soul Eyes- John Coltrane

★ダリル・ジョーンズが選んだ楽曲
「これは本当に難しい選択だったよ。ジャズは計り知れないほどの多くの楽曲があり、どれもそれぞれ異なっていて一括りになんて出来ないからね。たったの4曲だけ選ぶのは至難の業だったし、よくある選曲になっちゃったかな。ともかく、僕が個人的に気に入っている4曲がこれだ。」
Dinah- Louis Armstrong
The Duke Steps Out- Duke Ellington & His Orchestra
So What- Miles Davis
Nubian Sundance- Weather Report


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